パネルディスカッション
30 代社員が挑戦する仕事の世界:第18回労働政策フォーラム

未来を拓く雇用戦略 —30代社員が挑戦する仕事の世界—
(2006年7月5日)

開催日: 2006 年 7 月 5 日

※無断転載を禁止します(文責:事務局)

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これまでのキャリアをどう培ってきたか

諏訪 このパネルディスカッションは、 30 代社員に焦点を当てました。 1967 ~ 76 年生まれの彼らは、第一次オイルショック前後に生まれ、青少年期にバブル経済を経験しました。 30 代後半の人はバブル期に就職。片や、 30 代前半の人は氷河期と言われるなかでの厳しい就職活動を強いられました。そして今は週 60 時間の長時間労働の比率が 30 代で高いなど、職場でいろいろと苦心している。このように、いろいろな意味で、時代の転換期を渡りつつある世代です。

そこで今日は、企業等で活躍中の 30 代の方々に、その過去、現在、そして未来のキャリアについてお聞きしたいと思います。まず、これまでの仕事の経験の中で能力がどう培われ、現在のキャリアになっているのでしょうか。

3回の転機を経てステップアップ

釜鳴 これまでの職業人生を振り返ると、大きく3回の転機がありました。私は卒業後、 1991 年に大手電機メーカーに一般職として就職しました。働きながら、この先 30 代になって、何を目標にキャリアを積み、仕事に夢を抱いたらよいか漠然とした迷いがありました。その会社では当時、一般職から総合職へチェンジするキャリアパスはほとんどなかったので、「ならば、そういったことが既に行われているような企業でチャンスが得られれば」と考え、成果主義的で女性も対等に働いている企業を探して転職活動をしました。これが最初の転機です。

97 年、ジョンソン・エンド・ジョンソンに転職後は人事総務部門に配属され、未経験の仕事をチャレンジを繰り返しながら覚えました。弊社は「社員全員に、あらゆる場面におけるリーダーシップを求める」風土があります。単なる「言った者勝ち」とは違いますが、手を挙げて発言し、コミットしたことに対しアウトプットを出していく、自ら行動を起こし周囲に示していくことでチャンスが広がっていきます。こうした環境の中で、 02 年に新規プロジェクトの立ち上げに参加することになり、2度目の転機が訪れました。

それまでは上司の下で比較的アシスタント的な業務をしていましたが、新規プロジェクトでは人事業務をほぼ一人でこなすことになり、半年間で約 40 人のセールス職を中途採用するなどの業務を経験しました。この時期に、自分自身で企画立案して実施する、といったスキルが培われたと思います。

03 年に現職の人事総務本部へ異動したことが3つ目の転機になります。組織全体を横断的に見る職場で、全社的にバランスの取れた判断を身につけるよう勉強しています。また、人事制度に関連する業務に携わることになり、人事関連の法規や賃金・評価などの諸制度を学んでもいます。

当社では、一つの仕事に慣れると異動して新たなチャレンジをさせることで人を育てています。例えば人事総務部門は、採用、人材開発、企画の3グループがあり、渡り歩きながら人事のゼネラリストとしてのキャリアを積むことになります。

パート労働者等への対応の重要性を認識

川戸 私の場合は、 94 年にジャスコ ( 現イオン ) に入社以来、店舗勤務がキャリアの大部分を占めていて、スキルや経験もほとんどが店舗で得たものです。店舗勤務の経験で最も大きかったのは、約9割を占めるパートタイマーやアルバイトに気持ちよく働いてもらうために彼らのモチベーションを把握し、個々人に対しアプローチしていくことの大切さを認識したことです。お客様はマニュアルの接客では決して満足されないので、その場その場での対応が求められます。パートタイマーやアルバイトに対して、お客様に臨機応変な対応を求めるには、まず我々従業員が彼らを大切に思う気持ちが不可欠なのです。

店舗以外でのキャリアとしては 2000 年から2年間、社内留学制度を活用して大学院で学びました。食品売り場は、売場変更や値段設定など自分の判断が日々、結果を生むので非常に面白い。でも、それだけでは「自分は食品部門だけでいいのか ?  会社は多様な事業を展開しているのに、自分の視野が狭くなってしまうのではないか」といった危機感が募ってきます。そこで、ドラスチックに視点を変えてみたくなりました。

釜鳴さんもおっしゃっていましたが、当社も手を挙げて声を大きくすると、割と意見が通る環境にあります。例えば、社員が希望する職位があれば「イオン・ビジネス・スクール」という社内学校で希望職位の研修を1年間受ければ、人事が連動して希望職位に付くことも可能です。

人事制度の改定が意識改革のきっかけに

杉村 私は 97 年にトヨタに入社し、人材開発部に配属されました。当時は、とにかく実務を覚えるのに精一杯で、先々の会社人生を見据えた具体的な将来像を思い描けていないことに対して、モヤモヤとした気持ちは抱えていました。

そんな自分の意識が変わったのは、 99 年、会社が人事制度の改定を行い、管理職までの層を対象とする「プロ人材開発プログラム」という制度を立ち上げたことがきっかけです。この制度を簡単に説明すると、管理職になるまでは部門内でローテーションされることによってその部門の専門的な知識等を身に付け、プロフェッショナル人材を目指す、というものです。この制度の導入により、人事のプロ、という自分の将来に向けた道筋が見えてくるようになりました。また、自分自身がその人事制度の担当者として業務に従事する機会にも恵まれ、新制度の趣旨に沿って昇進昇格や異動の運用実務の仕組みを見直す、という貴重な経験ができました。

さらに、 01 年には労務管理を担当する人事部に異動して、主に労働時間関連の労働条件を管理する担当となり、社内だけでなく、他社の動向等にも目を配る必要性が高くなってきたことで視野も広がりましたし、労働組合との交渉にも関わることで、キャリアが一段アップしたという実感を得ることができました。

仕事が形になることの喜びが転機に

渡邉 私は 94 年にJR東日本に入社し、半年間の実習の後、上野駅に配属され、約2年半を過ごしました。 1 日に数十万人のお客様がご利用される駅の業務に従事するなかで、泥酔者への対応などの経験を通じて、社会人として生きていくことの厳しさ・大切さを学びました。その後、東京支社の営業部に異動したのですが、ここで自分にとっての最初の転機が訪れました。自分が企画した商品が、管内の「みどりの窓口」で販売され、ポスター等で大々的に宣伝されたのです。このことを通じて自分の仕事・成果が形になることの喜びを実感でき、モチベーションの向上につながったと思います。

その一方で、JRの仕事に慣れるにつれ、自分の感覚が世間の社会常識と比してどうなのかと考えるようになりました。そこで自ら願い出て、 98 年から2年間、社団法人経済同友会に出向させてもらいました。与えられた調査テーマを自分の責任と判断で実施するといった経験を積むことができ、自己責任の重さと大切さを学びました。

その後JRに戻り、グループ企業の監査を行う部門に配属され、子会社のコンプライアンスやマネジメントの改善をサポートする業務を担当しました。まだ他社に子会社監査の前例が少ないなかで、「どういった視点で監査したらよいか」などについて、同僚たちと議論を積み重ねながら、一つずつ手法を確立していく経験を通じて、企業の社会的責任の重さとチームワークの大切さを痛感しました。このように、今までのキャリア・経験の積み重ねが、今の自分自身の考え方やスキルとなっていると思います。

外部市場でも通用する人材でありたい

 私は当機構の研究員ですが、研究者は二足のわらじを履くものだと思っています。大学の先生方は研究者であると同時に教育者でもありますし、当機構のような政策研究機関の研究員は、政策研究を行うと同時に学術論文も書かなくてはならず、常に二つのことの両立を考える必要があります。

また、研究者と企業の方との大きな違いとして、仕事で必要なスキルや知識を、就職してからOJTやOFF−JTを通じて職場で身につけていくのではなく、大学院といった高等教育機関で基本的には身につけてから就職することにあると思います。最低でも5年間、大学院の修士課程、博士課程で勉強・研究してから大学や研究機関で働き始めます。ですから、 30 歳を超えてから初職に就く人も少なくありません。私自身も、当機構に就職して、ちょうど丸3年が経ったところです。

今現在、自分の職業スキルや知識を新たに身につけたり、維持していくためには、機構内の業務をこなすだけでなく、大学院時代にご指導を受けた先生方など機構外の研究者との研究会に参加したり、共同研究を行うことが必要不可欠となっています。これまでもそうでしたし、これからも変わらないと思います。機構内の閉じた世界だけにいても、新しいスキルを身につける機会が限られてしまうからです。

また、外部労働市場で通用する人材でありたいと、常に強く意識しています。そうでなければ、機構内の仕事もきちんとできませんので、機構内で生き残っていけないという厳しい現実があります。そのためにも、機構外の研究者との研究会や共同研究を、新しいスキルや知識を身につけるだけでなく今現在の自分のスキルレベルを知る機会として用いています。これは、現在そして将来のキャリアに役立つと思いますが、当然のことですが、機構の業務と両立していくには、時間的にも体力的にもかなり厳しいのが悩みです。

その他にも日々の悩みは尽きませんが、そういうときに私を助けてくれるのは、目標となる研究者の存在、特に目標となる女性の先輩の存在です。尊敬している女性研究者がいるのですが、将来、彼女のような研究者になりたいと思っています。ですから、自分のキャリアを省みるときはいつも、彼女が私と同じ年齢のときに何をやっていたのか、私の今の年齢と同じときに彼女がやっていたことと今の私がやっていることに差がないのか、ということを意識しますし、実際に時々、相談にも乗ってもらっています。そういった目標となるような先輩研究者が、仕事上の悩みや障害を乗り越える上での参考になっています。

ワーク・ライフ・バランスの現状は

諏訪 皆さん、段階を経てキャリアを積み重ねているのですね。では、持続する働き方を確保するために、ワーク・ライフ・バランスの現状はどうなっているのでしょう ?  働き方や生活面の状況、会社のワーク・ライフ・バランスへの対応等をお聞かせください。

育児休職取得にあたっては復職への不安も

杉村 我々の世代は人数的に薄い層で、上からは仕事を任せられ、下の育成にも注力しなければならない状況にあり、なかなか休めないのではないか、という不安がありました。そこで、年に数回設定されている上司と今後のキャリアについて話し合う制度や、日常的な上司とのコミュニケーションの場において、出産・育児の意向を伝えておき、上司にも私が職場からいなくなる状況を想定してもらっておいたおかげか、人員が増強されたタイミングで妊娠・出産し、育児休職を取得することができました。

休職前は、自分自身もがむしゃらに働いていたところがありましたし、同様に頑張る同僚たちの姿を見ていたので、業務量の面からもキャリア形成の面からも「復職してきちんと働けるか」という不安に駆られていました。母子だけで家にいる生活を続けていた休職中には、社会との関係が希薄になり、断絶感を感じたりしていましたので、積極的に情報収集に努めたりしました。このような経験をしていくなかで、早く社会に復帰したいという思いが次第に強くなり、当社では子が2歳になるまで休職が可能ですが、私は子どもが1歳になった時点で復職しました。

育児をしながら働ける環境に

不安を抱えながら休職期間を終えましたが、いざ復職してみると、他の人より早く退社することに対して理解が得られやすい風土が出来ていたことに驚かされました。私の休職中に、労使共同でメリハリのある働き方を推奨する風土改革を強力に推進していたのです。

また、1年のブランクにとどまったことで、身に付けていた知識が陳腐化してしまうことをある程度防げましたし、復職前と同じ職場で同じ上司のもと、同じ仕事を継続することもでき、あせりやプレッシャーをそれほど感じることなくソフトランディングできました。さらに、事業所内託児施設を利用しているので、朝は子どもと一緒に通勤できますし、急な残業があったとしても、 22 時半まで預けることができるので助かっています。

仕事が楽しいことが長時間労働に

釜鳴 今までは個人的には全速力で走り抜けてきた感があり、「私はワーク・ライフ・バランスがとれていない人」の実例といった感じでした ( 笑 ) 。新たなチャレンジによるプレッシャーや仕事自体の面白さによって、ついつい勤務時間が長くなってしまいがちだったのです。一方で、会社自体は約3年前よりダイバーシティ ( 多様性 ) への取り組みをスタートし、それに伴い、ワーク・ライフ・バランスの推進施策・さまざまな制度が整えられています。今後は、この点を自分自身の意識改革や効率アップなど、改善を行っていきたいと考えています。

子どもの存在が意識の変化に

川戸 小売業は土日祝日、盆と正月など一般的に休みの日は休めない宿命にあります。当社では休日が 110 日ほど設定されていて、その中には盆正月に代わる年2回の 10 日間の連続休暇もあります。ただ、人が休みの日に休めないうえに営業時間の延長も相まって、今はパートタイマーやアルバイトを集めにくい環境にあります。このため、どうしても管理職や一般社員に負担がかかり、労働時間は長くなりがちです。私個人も、休暇をしっかり取得できているかとなると、ちょっと自信がありません。

ただ、ワーク・ライフ・バランスに関しては、3年前に子どもが生まれたのが考え方を変える契機になりました。極論しますと、以前は「 100 % 仕事でいい」と思っていた節があるのですが、今は父親としての役割を意識して、もちろん仕事としての質は変えずに、なるべく早く帰るためには何をすべきか、部下に何を教育すべきか、その部下にもメリットを感じてもらえるようにモチベートするためにどうアプローチするかと考えるようになりました。

週の過半数は家庭の時間を優先

渡邉 私も独身時代は週 60 時間ぐらいの労働を続けていた時期もありましたが、結婚後は家庭生活を重視するようになりました。今は自分自身で「土日を含めた1週間のうちの過半数は家族との生活を優先させる」目標を立てています。この実現には仕事を効率よく進めることが必要で、フレックス・タイム制度の活用や不急な業務の自宅の持ち帰りなどの工夫をしています。JR東日本では、 04 年から「Fプログラム」をスタートし、育児支援制度の充実や一度結婚・出産等で退職した人への再就職機会の提供などの施策をワーク・ライフ・バランスの観点で行っています。とはいえ、制度を作っても魂を入れるのは本当に難しい。今は人事制度を企画する部門で働いていることもあり、いかに制度の実効性を高めるかに苦慮しているところです。

裁量労働制を活用し、長時間残業は避ける

 研究職であっても研究以外のさまざまな業務がありますので、純粋な研究時間を確保することが難しいのが悩みです。限られた時間を何にどの程度割り振っていくのか。時間を有効活用していくことも、社会人としての職業スキルの一つなのかなと、最近、感じています。

でも、当機構では、裁量労働制が導入されていて、研究者として働きやすい仕事環境を与えられていると思います。また、研究という仕事は職場でデスクに張り付いている必要性は低くて、自宅に持ち帰ることも可能な仕事です。職場のデスクにずっと張り付いていても、集中力が続きませんし、生産性も落ちます。効率的に仕事を行うためにも、ダラダラと職場に残って長時間残業することはしません。

ワーク・ライフ・バランスという点では、私の生活は、仕事に偏っていると思います。仕事の時間と余暇の時間は区別しているつもりですが、余暇のための余暇とでもいうのでしょうか、仕事とまったく関係ない形で余暇を過ごすことは少ないような気がします。むしろ、仕事のための余暇という感じで、仕事のために鋭気を養うなど、仕事に何らかの形で結びつくことをしているように思います。

将来のキャリアパスと生活のバランスは

諏訪  30 代になると会社でも中堅社員となり、仕事の責任も重くなってきます。ライフキャリア的にも結婚や育児、地域での役割も増えてくるでしょう。今後の会社におけるキャリアパスと生活とのバランスをどうしていこうと考えていますか。

割り切ってメリハリのつく働き方を

渡邉 JR東日本は今年、分割民営化 20 年の節目の年を迎え、「信頼される生活サービス創造グループ」になるとの大目標を掲げています。将来的には、その一員としてグループ経営の企画・管理業務をリードしていきたいという希望を持っています。

これまでの個人的なキャリアパスについては、どちらかといえばスペシャリストというよりゼネラリスト的な育成を受けてきたように思います。その結果、自分自身の意識として、「これだけは誰にも負けない」もしくは「他社に移っても即戦力で通用する」といえるような特定のスキルがないことが悩みになっています。したがって、今後は、これまで培ってきた経験のなかから、自分の適性に合った特定の分野の高度な専門スキルを身につけていきたいと考えています。

生活面では、やはり、仕事をするときは割り切って全力で働き、仕事を離れたら家庭を重視して邁進するような「割り切り」「見極め」をしっかりしていくことで「良き社員」「良き夫」「良き父親」の両立を追及していきたいと思います。

転勤がワーク・ライフ・バランスの課題に

川戸 私は今、 2020 年のグループビジョンの策定業務に携わっていますが、このプロジェクトは、「 2020 年の時代に会社にいる人材が思いを込めて作っていくべきだ」との考えから、メンバーは全員 30 代です。今の経営者の思いをある程度聞いて取り入れることは当然ですが、メインとなるのは我々であり、我々が魅力を感じて働ける職場であることがベースになっていかねばなりません。そういったビジョンを策定し、我々の年代に達成させていくことが柱であり、その目標実現のためのスキルや知識、ノウハウが何なのかを随時、見極めつつ自分の能力を高めていきたいと考えています。

ワーク・ライフ・バランスについては、転勤が大きなネックになっていると思っています。当社では、総合職で採用されれば原則、全国どこにでも行くことになっていますので、私の部下で子どもの幼稚園が3回代わったという実例もあります。こういうことが、家族にとっていいことなのかを考えて行かねばならない時期だと思っています。自分自身、父親が転勤族で、家族で全国を回った経験があります。今でこそ、「おかげで各地の良いところを見ることができ、結果として自分の幅も広がった」と前向きに捉えていますが、当時は友人と離ればなれになる転校や引っ越しに反発したりもしました。今後、ある程度企業規模が拡大できれば、各地域で完結できるような選択肢やキャリアを作っていかないと、魅力のある会社としてクエスチョンマークがつくのではないかと考えています。転勤に家族の意向をどこまで組み入れることができ、それでいて競争力も失わずに企業としてバランスを維持していくことを検討していかねばならないと思います。

後は、渡邉さんもおっしゃっていたように、生活面の課題は「割り切り」だと思っています。出勤したら、現状はなかなか早くは帰れません。ならば、割り切って休暇をしっかり取得していくことも必要だ、といった気持ちを持ちつつ仕事を目一杯やる。家族ともコミュニケーションを取りながら「仕事も頑張りたい」という気持ちを納得してもらい、自分でもバランスを取って働きたいと思っています。

専門性をより高めていく

 私が専攻する労働経済学は、一見狭い分野のように思えるかもしれませんが、今日これまでもずっと話に出ているワーク・ライフ・バランスなど労働者の働き方や失業問題、フリーターやニートに代表される若年労働問題、労使関係など実は幅広い学問なので、そのなかでもっともっと専門性を高めていきたいと思っています。例えば、 40 代の先輩研究者のほとんどの方は 「●●さんと言えば○○」といった具合に、名前と専門分野が結びつきます。私も専門性を高めることで、そういう風になれればと思っていますし、 40 歳になるまでのこれからの数年間を、そうなることを目標にして過ごしたいと考えています。

大学院生のときは時間だけは無限にあって、ダラダラと研究をしていました。今、社会人研究者として働き始めて、研究に使える時間が限られるようになって、ようやく本当に自分のやりたいことが見えてきた気がしています。今後希望する研究課題が、機構における業務として割り振られるように、声を大きくして機構に希望を伝えていきたいと思います。

ワーク・ライフ・バランス面では、今後は、仕事と生活両面の時間を確保した生活設計をしていきたいです。

多様な働き方に対応できる取り組みを

杉村 現在は、部門内で育成される立場から、能力を発揮するステージに移行していく段階にあります。これまでどちらかというと、国内だけを向いて事務・技術系を対象とした施策に関わる業務が中心だったので、今後は海外事業体の労務管理の支援や、製造現場に関わる業務を担当して、これまで身に付けた知識を活かしたい、という希望は持っています。

その一方で、その先、自分自身が管理職になって部下の指導をしていくことが想像しにくい、という現実もあります。今の社内の管理職は、多くの部下に対していわゆる管理監督者の立場から常時気を配らなければならない働き方をしていて、相当の労力が必要です。育児をしていることで必然的に社内での労働時間が限られてしまう社員にとって、「こうなりたい」と思える管理者像は少ないのではないかと思います。女性管理職が増えていくことを見据えて、小さなスパンのリーダーとして生きる道や、高度な専門性を活かして個人で業務を完結させる道など、新たなスタイルのロールモデルを模索して、多様な人材を活かすための人事施策に反映していきたいと思います。

また、現在の自分の働き方を見ると、会社にいる時間だけが成果に結びついているとは思えず、会社での労働時間に応じて報酬が決まる仕組みには違和感を覚えます。実際、自分自身の出産・育児・休職の体験や、その体験を通じて得た問題意識はもちろん、家で家事・育児をしながら思いついたアイデアを仕事に活かしている部分もあります。ワーク・ライフ・バランスの観点からも、企画業務型裁量労働制など多様な働き方に対応する取り組みが必要だと感じています。

社内女性のロールモデルが目標

釜鳴 今後のキャリア面の目標ですが、私にとって未経験である人材開発分野に携わり、経験を積みたいと思っています。また、当社は事業部制ですので、各事業部に一人、専属の人事担当者を配置し、社内の人事コンサルタント的な役割を行うポジションがあります。当然ながら、高レベルの人が就くことになるのですが、自分にとっての長期的な目標として、このポジションの仕事をしたいと思っています。

私はいま 30 代半ばですが、 40 歳になるまでに、いかに自分の武器を増やしていけるかを考えています。これまで通り、「自分で手を挙げてチャンスを得て、さまざまなプロジェクトや新しい仕事へのチャレンジを続け、与えられた仕事で精一杯の結果を出していきたい。その達成を通じてスキルアップにつなげていきたい」と考え、仕事に向かっていきたいと思っています。その後は、武器の数を増やすのではなく、強みとすべく質を高め、使いこなしていきたいです。自分自身のパフォーマンスだけでなく、周囲や後輩の育成などにも活かせたらと考えています。

また、当社では、育児・介護に携わる社員が活用できる在宅勤務制度や、小学校就学前の子どもがいる社員に年 30 万円を支給する「チャイルドケア支援金制度」があるなど、出産によるキャリアの断絶や、モチベーションの低下を防ぐための配慮がされています。少しずつ利用者も増えていますが、まだその運用例は少ないのが現状です。そこで、私自身が社内女性のロールモデルの一つになれたら、ということを目標に思っています。

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