企業の取り組み1:第8回労働政策フォーラム
改正高年齢者雇用安定法と企業の取り組み
(2004年11月30日)

開催日:平成 16 年 11 月 30 日

※無断転載を禁止します(文責:事務局)

配布資料

株式会社エムティーフード 伊藤泰仁 人事部長

配布資料(PDF:4MB)

【伊藤(泰)】ご紹介いただきましたエム・ティー・フードの伊藤でございます。

本日は、このような場所で、皆さんのご参考になるようなお話ができるか分かりませんが、私がお招きに預かったのは、一中小企業としての高齢者雇用の取り組みの一例ということで参加させていただいていると理解しております。

会社概要

初めに、弊社の会社概要についてお話をさせていただきます。当社は、病院、福祉施設、オフィス、工場、学校などの施設の給食サービス、あるいは寮や企業の保養所の給食サービスと、それから施設全般の保守管理を受託している会社でございます。従業員数は、 2004年9月末で1,367名、うち約1,300名が各施設でサービス業務に従事しております。

従業員の高齢者の年齢構成を申し上げますと、 60歳以上が243名、17.8%となっております。後ほどお話をさせていただきますが、65歳を超えた雇用延長による従業員に関しては、65歳以上が72名(5.3%)で、最高齢は75歳の女性です。その方には、病院の給食施設で元気に働いていただいております。

65歳定年制の導入経緯と年齢に対する考え方

次に、 65歳定年制の導入経緯を、弊社の年齢に対する考え方と併せてお話しさせていただきます。

エム・ティー・フードの創業者(現在も代表者を務めておりますが)が、常々申していることがございます。それは、現在の高齢者の実年齢は、年齢の8掛けであると。つまり現代の 65歳の方の体力を含めた健康状態は、65×0.8=昔の50代前半の方とほぼ同様であるとの考えのもと、65歳定年制を導入しております。

また、年齢だけが健康状態や体力を測るための決定的な要因ではないだろうという見解を持っております。実際、当社で働く高齢者の中でも、同年齢で個人差が大きく、年齢で一律に引退時期を定めてしまうことは、今後も十分活躍できる貴重な人材を逃すことになると考えております。このような観点から、当社では、 1981年の創業時から65歳定年制を導入し、現在に至っております。

当社は創業期から数年、受託施設が増えていくとともに、それに対する労働力の確保が非常に困難な状況が続いておりました。この状況は、現在でもさほど変わっておりません。また当社の受託する施設は広域にわたり、必ずしも人口の密集した地域ではありません。工場とか福祉施設、さらには保養所などというものは郊外にあることが多く、このような郊外は地域的に労働力確保が非常に難しいのが現状です。さらにバブル期に入り、新卒者等の若年労働者の確保も非常に困難な状況になっておりました。

このような状況で、比較的確保しやすい労働力として高齢者に注目しております。ですから、最初から積極的に高齢者雇用を志向していたわけでなく、結果として高齢者の割合が増え、この傾向は現在も続いております。  当社が属する外食産業というのは、人材の流動性が非常に高く、当社の中途採用者の多くが、それまでも類似の仕事を経歴として持っております。これらの人材は、配属前の訓練等がほとんど必要なく、即戦力として期待できます。あるいは数多くの現場を経験しているため、どのような環境の施設に配属されても対応に時間がかからないというメリットもあります。それから、高齢者の方々は、人生経験と申しますか、いろいろな経験が豊富であるため、私どものお客様への対応も、非常に問題なくこなせるという点が大切なポイントとして挙げられると思います。

業界の取り組み

次に、集団給食業界を挙げての取り組みについてご紹介させていただきますと、この業界は、極めて労働集約的な産業です。受託施設が増えれば、必ずそこに一定の定員を確保しなければなりません。ですから集団給食業界では、各社が人員確保に苦労されていると理解しております。常に従業員を募集しているような現状です。

集団給食業界で構成する団体と東京しごと財団が共同し、現在、 55歳以上の方の就職前準備講習を行っております。具体的には、調理現場のアシスタントとして入社していただくために、大量調理の基礎や衛生管理、調理実習等の講習を行っています。このような取り組みによって、慢性的労働不足を少しでも解消するために、業界として高齢者雇用を推進しております。

65歳定年制について

続きまして、当社の 65歳定年制度の内容についてお話しさせていただきます。

まず給与、退職金制度ですが、先ほども少し触れたように、私どもの業界は人員の流動性が大変高く、卒業からリタイアするまで複数の会社を経験される方の割合が、他の業界と比べてかなり高いと考えています。平均勤続年数も、他産業の平均に比べると、かなり短いのではないかと推測しております。この結果として、給与の年功部分については、従前からそれほど大きな割合を盛り込んでいなかったことが挙げられます。

当社は平成9年に、給与の大部分を、勤続年数や年齢、あるいは学歴等に関係なく、職責等に応じたものに改定いたしました。この制度は、途中途切れることなく、 65歳まで同じテーブルで算出しております。一般的な企業に見られるような(最近は一般的なのかどうかわかりませんが)、長期勤続者の多くが高い給与水準を得ているという状況が少なかったことが、高齢者の割合が高くなっても人件費の効率性が一定に保たれている原因ではなかったかと、現在考えております。

勤務形態の多様化

次に、勤務形態の多様化に関してお話しさせていただきます。当社の勤務形態は、給食サービスを受託している施設の営業時間によりさまざまです。このため、多様な勤務形態を持たざるを得ないのが現実ですが、ここに高齢者を活用する余地が多くありました。

当社で就労する高齢者は、1日8時間、週 40時間、フルタイムで働きたいという者もおりますが、実際は、そのような人が全てではありません。やはり個々の事情、体力や就労意欲等の差があり、短時間を希望する、あるいは週5日でなく3日、4日という勤務を希望する者も多数おります。

現在、個々の体力や希望する給与水準に応じて、短時間勤務や早朝・夜間のみの勤務など、高齢者のそれぞれのニーズにある程度合わせることが可能となっております。また、繁忙時間帯にコアなメンバーを集め、効率的な要員を配置することが容易になったという副次的メリットも挙げられます。

年金併用制度については、年金受給資格が発生した従業員のうち、本人が就業を希望する場合は、先ほど申しましたように労働日数や勤務時間を短くして運用しております。給与所得は減りますが、年金を含めた所得は変わらなく、空いた時間を自分の趣味や退職後の準備に費やすこともできますので、現在、導入しております。

選択定年制・再雇用制度

次に選択定年制、再雇用制度の内容に関してお話をさせていただきます。

世の中の大きな流れは雇用延長へと確実に流れておりますが、一方、個人個人で就労に対するニーズが異なっていることも確かです。 60歳で定年・退社後、他の仕事に就きたい、或いは引退してゆっくりと過ごしたいと考える従業員も、少数ですが確かにいます。ですから、既に導入している65歳の定年制が、60歳で定年したいという希望の妨げにならぬよう、退職金制度も取り入れております。当社では、通常、自己都合退職と定年退職では算定時の係数が異なる制度を取り入れておりますが、勤続10年以上・60歳以上であれば、自己都合でも、定年退職と同様な算出により退職金を支払っております。ですから、退職金制度は、上記の条件を満たせば、60歳を超えて任意の時期に利用できるようなシステムになっております。

再雇用制度については、業務遂行上、健康状態に支障がないこと、そして本人の希望と会社の提示する条件が合致すれば、1年ごとの嘱託契約により再雇用しております。時には、会社や本人が再雇用を希望する以外にも、当社の顧客である施設所有者から再雇用の依頼を受けることもあります。このような時は、従業員の日々の成果が外部から高く評価されているということで、大変うれしく思うと同時に、会社に貢献してくれる従業員を活用できるという、会社としても大変有用な制度であると実感いたします。現在、継続雇用制度を利用している 65歳以上の従業員が72名おります。

以上、当社の高齢者雇用の取り組み、概要を簡単にご紹介させていただきました。

【伊藤(実)】ありがとうございました。シフト制について、具体的にどのぐらいの種類があり、どのような時間帯の組み合わせがあるのか、補足していただけますか?

【伊藤(泰)】例えば、病院では朝番・中番・夜番というシフトがあります。高齢者の方で、朝から昼まで働きたいという方がいれば、朝晩( 5時~13時)を毎日受け持っていただきます。病院が一番忙しい時間帯は朝10時から夕食を配る17時前後までなので、その時間帯にコアのメンバーが重なり、効率的に業務を進められるという点で、会社としてもメリットを感じております。

【伊藤(実)】どうもありがとうございました。続きまして、富士電機ホールディングス株式会社における 60歳以降の雇用延長制度について、黒江部長からご説明をお願いします。

【黒江】富士電機の黒江でございます。時間が限られておりますので、会社の概要等は一切割愛させていただきます。本日は、I.選択定年延長制度を 2000年に導入した経過、II.制度導入後の運営状況と状況変化への対応、の大きく分けて二点を配布資料に沿ってご説明申し上げます。

>> 企業の取り組み(2)

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