事例報告1 2024年問題に対応したサステナビリティな物流を目指して
- 講演者
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- 吉田 明宏
- 西濃運輸株式会社 執行役員 運行部 部長
- フォーラム名
- 第145回労働政策フォーラム「物流における労働問題を考える─トラック業界の人手不足等を中心に─」(2026年5月22日-29日)
- ビジネス・レーバー・トレンド 2026年8・9月号より転載(2026年7月27日 掲載)
当社はBtoB物流、いわゆる企業間物流を主軸としており、ロジスティクス、3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)といった物流全般を生業としています(シート1)。私の所属する運行部は、輸送ネットワークの中でも幹線輸送全般を取り仕切っています。
幹線輸送とは、お客様からお預かりしたお荷物を全国に届けるために必要な輸送の一部で、ターミナルとターミナルの拠点間輸送のことを言います。当社では、毎日4,700便、グループ全体では6,000便の大型トラックを運行させています。当社の幹線輸送に従事しているドライバーのことを路線乗務社員と言いますが、約3,300人がこの業務に従事しています。
前半では、2024年問題の1つである、時間外労働時間の規制が強化されたことに対する、特に労働時間の短縮の取り組みについて説明いたします。
2024年問題に対する取り組み
当社の路線乗務社員についても、働き方改革関連法案の施行前から、また、自動車運転者の拘束時間等を定めた改善基準告示の改定を守るためにも、拘束時間を削減するという取り組みを実施しなければならない状況にありました。
当社では2つのことを実施しました。1つは、長距離運行のモーダルシフトを推進すること、2つめは、拠点間輸送のダイヤグラム化(定時運行)です(シート2)。
モーダルシフト
もちろん、すべての乗務員が労働時間を超えているという状況ではありませんが、幹線輸送に従事している乗務員は、距離が伸びれば伸びるほど何かしらの改善策を講じなければならないという状況にありました。当社の長距離輸送とは、600km以上の輸送を意味しています。イメージで言うと、東京~大阪間が600kmぐらいだとお考えください。また、拘束時間の関係で350km以上になると、用務先での1泊宿泊といった運行体制を組まざるを得ないという状況になりますし、場合によってはトラックに2人で乗るということもあります。
さらに、新規採用や従業員の定着という観点からも、日帰り運行であることが望ましく、同じトラックに他人と乗るということを嫌がる乗務員もいます。特に若手の乗務員については、その傾向が高いと感じています。
こういった拘束時間の短縮や宿泊ありの運行を回避し、さらに、2024年問題を見据えて、トラック輸送の運び方を変えてきたというのが、JR貨物様と共同で取り組んだブロックトレイン(貸切列車)の運行です。後ほど説明しますが、現在ではブロックトレインは3路線あります。仙台~大阪間、名古屋~福岡間、東京~福山間の3路線を毎日交互で運行させています。また同時に、ダイヤグラム化にも力を入れています。こちらの取り組みも2024年を見据えて2018年から取り組みを開始し、現在も集中的に取り組んでいます。
モーダルシフトという言葉は聞かれたことがあるかもしれませんが、輸送用語の1つで、当社の場合では、長距離のトラック輸送から鉄道や船舶輸送にシフトすることを指します。
事例を紹介します。シート3のように、従来までは愛知県の名古屋支店から佐賀県の鳥栖支店まで、トラックを交互で運行していました。距離は850㎞となり、この距離をトラックに2人で乗車するツーマン運行を行い、2台で交互運行をしていました。交代要員として1~2人配置し、合計5~6人の体制でこの区間を走行していました。
しかし、この体制では将来的な労働力不足に対応できず、また、若手が働きたくなるような働き方なのか、こういった観点から考えると不安でいっぱいな状況でした。そうであるなら、運び方を変えようと考え、大型のモーダルシフトを実施しました。それがシート4のような内容です。
こちらのように、名古屋支店の乗務員は1人でコンテナに荷物を積んだ後、コンテナを名古屋貨物ターミナル駅に持ち込みます。そして、鳥栖支店から名古屋貨物ターミナル駅に到着したコンテナを積み、1人で名古屋支店へ戻ります。
名古屋貨物ターミナル駅に持ち込まれたコンテナは列車に積まれ、福岡貨物ターミナル駅までJRで輸送されます。同様に、鳥栖支店の乗務員が1人で福岡貨物ターミナル駅までコンテナを持ち込み、そして名古屋貨物ターミナル駅から到着したコンテナを引き取ります。
先ほども申し上げましたが、モーダルシフトというのは、トラックから鉄道・船舶などの環境負荷の低い輸送モードに変えていくことですが、さらに重要なのは、この図のとおり、近隣の貨物駅までの往復運行になりますので、1人で行うことができ、かつ、毎日家に帰ることができるということです。
労働力についても、法令遵守についても、モーダルシフトで解決することができ、これまで推進してきました。この10年間で、これまでの3倍以上に増やして、今では1日350便のライナー運行をさせています。
また、当社の運行させているライナー便の半数は、このブロックトレイン(貸切列車)による輸送運行となっています(シート5)。
当社は、モーダルシフトの中でもブロックトレインの運行にこだわっています。なぜなら、列車には締め切り時間や運行時間など、われわれの業界に合う、時間帯に合う列車ばかりではないからです。
当社が使いやすい時間にカスタマイズして運行させることのできるブロックトレイン、これに優位性を感じています。持ち込む物量はトラックにして約30台~40台をトラックからコンテナに変えて、そして貨物ターミナルに持ち込みます。ターミナル内では構内ルールや順番・詳細を決めた中で、円滑な作業をJR貨物さんと協業して運用に当たっています(シート6)。
シート7は左側が大型トラック、当社の路線車です。そして右側が31フィートのコンテナを積載したライナー車両です。タイヤの数に違いはありますが、積載量について、スペースについても大きな差はありません。
こちらがブロックトレインの導入実績です(シート8)。3運行の内容は、吹田~仙台間928km、名古屋~福岡間826km、東京~福山間779kmとなります。こちらはさきほど申し上げた、600km以上の長期運行の輸送ネットワーク維持のための手法です。また、現在では複数の影響を得ることでカバーできる範囲を広げており、ブロックトレインの取り組みが継続できるよう配慮もしています。
まとめますと、ブロックトレインによるモーダルシフトによって、将来的な労働力不足への対応、コンプライアンスの遵守、環境配慮といった課題が改善に向かったのではないかと思います(シート9)。しかし、昨今の気象条件の悪化、特に集中豪雨、台風、積雪では、運用は煩雑なものになりやすいです。台風や積雪といった場合には、JR様も計画運休が当たり前になりつつあり、貨物列車も止まってしまえば運送も遅れるということがあります。そういった点に日々担当者がやりくりをしています。企画から維持・管理につきましても、ある程度の専門性や知識・経験が求められるということを感じています。
拠点間輸送のダイヤグラム化(定時運行)
次に、2つめの大きな取り組みであるダイヤグラム化についてお話しします。ダイヤグラム化というのは定時運行のことで、先ほど申し上げました4,700便、グループ全体で6,000便ある幹線便のトラックの定時運行についてです(シート10)。
現在、このダイヤグラムについて取り組みの強化を図っています。取り組みの当初は、出発時間だけを設定している簡単なところからスタートして、現在ではドライバーの出勤時間、出発時間、運行時間、休憩場所、終了時刻を設定し、拘束時間を遵守させています。
運行時間超過となる便については、1便1便、原因を追求して改善策を講じています。また、2018年にこの取り組みを開始しており、加速的に進んだのは、2020年に大流行したコロナ禍に起因することが大きくあったと思います。特に荷主企業様も時間短縮に向けていろいろと頭を悩ませている時期でした。われわれも一緒になって取り組み、試行錯誤して進めてきて、現在に至っています。
現在でも繁忙時期に時間を超えるとダイヤグラムが乱れますので、この対応を現在進行で管理していますが、直近では設定したダイヤグラムを97%まで守れるようになってきました。そうは言っても、すべて荷主様に起因するところが問題ばかりではありません。運行距離が長い、また、運行便が複雑で立ち寄り店舗数が多いといったコースも多いことから、当社自身でも解決しなければならない問題もあります。運行距離の長さについては、これまで説明させていただいたモーダルシフトで対応します。また、中継輸送についても力を入れて、その中身を拡大してきました。
これまでは、3カ所の立ち寄りであった運行を2カ所の立ち寄りに削減し、時間短縮を図っています(シート11)。当然、中継輸送ですので、東京支店から深川支店に行く中継の運送便を設定する必要もありますが、こういった中継拠点を1つの県に1カ所設けることで、時間的な効率を上げていくことを推奨しております。
ここからは環境への対応についてお話しします。まず、モーダルシフト、ブロックトレインの往復でのCO2削減効果ですが、トラック60台分について往復でモーダルシフトしておりますので、年間で2万7,820トンのCO2削減効果が出ています(シート12)。
また、CO2 ZERO EMISSIONにも取り組んでいます。現在、大型水素自動車の実証実験を行っています。シート13に記載のとおり、2023年当時ではトラック業界初の取り組みでした。当初は東京都から日帰りの運行でスタートし、現在では福島県と東京都の往復運行をしています。実装可能と判断しましたので、今年度については8台納入して運行させています。環境配慮車両として、その運用と今後の実効性について、さらに見識を深めてまいります。
また、先進的な取り組みということで、ダブル連結車両の商品化も取り入れています(シート14)。自社間で8台、ヤマト運輸様と共同運航で2台の計10台のダブル連結車両を毎日運行させています。まさに1人で2人分の輸送を可能としています。ダブル連結車両については拡大していく方向で、今期さらに15台の連結トラックの導入を計画しています。
続いて、自動運転車両について説明します(シート15)。こちらは日本郵便グループ様との協業で運行をしています。現在は自動運転レベル2、高速道路上のみ自動運転かつ有人走行となっています。今月は500kmの走行、または24時間の走行を実現させました。こちらはニュースにも取り上げられています。将来的には、自動運転レベル4、高速道路上を完全無人走行に向けた未来に向けた取り組みを実施しています。
自動運転車両の実現に向けて、われわれも協力してあらゆるコンソーシアムに参加しており、法令の整備、技術・安全性の確立を待っているところですが、近い将来、完全無人の自動運転トラックとダブル連結トラック、そして水素トラック、こちらが高速道路上を往復し、高速道路直結のハブターミナルを活用した幹線輸送という将来が見えているところです。
プロフィール
吉田 明宏(よしだ・あきひろ)
西濃運輸株式会社 執行役員 運行部 部長
1991年西濃運輸株式会社入社。2020年より同社執行役員 名東エリア 統括マネージャーとなり、2023年から名古屋エリア 統括マネージャーと西濃名古屋エキスプレス 代表取締役社長を兼務。2026年4月より現職およびセイノーホールディングス株式会社 事業推進部 運行担当部長およびTGL山陰株式会社 取締役を兼務。


