行政報告 国土交通省の取組報告
- 講演者
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- 指田 徹
- 国土交通省 物流・自動車局 貨物流通事業課長
- フォーラム名
- 第145回労働政策フォーラム「物流における労働問題を考える─トラック業界の人手不足等を中心に─」(2026年5月22日-29日)
- ビジネス・レーバー・トレンド 2026年8・9月号より転載(2026年7月27日 掲載)
1.トラック運送業の現状と課題
トラック事業者数はコンビニよりも多い
まず、日本を支えるトラック物流の規模感を確認します。日本のトラック事業者数は、近年、約6万3,000社で横ばいとなっています。コンビニエンスストアの数は約5万6,000店なので、それよりも数が多いです。同じように数が多いと言われる歯科医院は約6万5,000院です。
国内貨物輸送量(トンベース)はトラックが9割
シート1は国内貨物輸送量の推移を輸送モード別に分類したものです。貨物の重さで算出するトンベースでは、自動車輸送、すなわちトラック輸送は9割を占めています。貨物の重さと輸送距離を乗じたトンキロベースでは、長距離の移動に適している内航海運、あるいは鉄道貨物も台頭するため、トラック輸送は約5割となっています。もちろん、例えば宅配などの小口輸送は主にトラック輸送に頼っており、トラック輸送は国内貨物輸送の最も重要な手段として機能しています。
年間総労働時間が全産業平均より約2割長く、賃金は5~15%低い
一方で、トラック運送事業で働く人の現状は、必ずしも良いとは言えません。トラック事業を全産業平均と比較すると、年間総労働時間は約2割長く、年間賃金は5~15%低い状況です。特に中小型トラックのドライバーについては、労働時間の長さや賃金の少なさがより深刻な状況です。
人手不足の状況については、有効求人倍率が2倍を超えています。また、年齢別の従業員構成をみると、若手の割合が少ない一方、50歳以上の割合が多く、これらの世代が抜けた後に人手不足がさらに深刻化することが懸念されます(シート2)。
荷主等の立場が強く、価格転嫁が難しい
こうした状況の背景として、取引関係において荷主等の立場が強く、トラック事業者のコスト上昇分の転嫁が難しいことがあります。中小企業庁の調査によると、トラック運送業での価格転嫁の実施割合は、調査対象の30業種中27位と低迷しています。近年はようやく賃上げが進みつつありますが、依然として全産業平均には及ばない状況です(シート3)。
こうしたことに加えて、働き方改革関連法の法施行から5年後にあたる2024年4月からは、自動車の運転業務の時間外労働が年間960時間に上限設定されたほか、ドライバーの拘束時間を定めた厚生労働省の改善基準告示においても、拘束時間の制限が強化されました(シート4)。
この結果、かねてより健康への影響も懸念されていたトラックドライバーの働き方は改善されました。一方で、何も対策を講じなければ輸送能力が約14%不足すると推計されていた、いわゆる物流の2024年問題が起こりました。
それでもなお、監査したトラック事業者の約半数が新たな労働基準を未遵守
それでもなお、トラック事業者への監査では、新たな労働基準の未遵守が指摘された事業者は358者で、これは監査件数の約半数にのぼります。主な指摘事項としては、1日の拘束時間の限度あるいは休息期間を守っていないことが多いほか、連続運転時間、すなわち4時間を超えて運転する場合は30分以上の休憩を挟まなければならないとする事項についても、未遵守の指摘が多いです(シート5)。
こうした状況に対して、基準告示の周知を徹底することはもちろんですが、構造的にこのような働き方を生んでいる要因を変えていくために、さまざまな工夫を講じていく必要があります。
遵守できない要因に荷待ちによる残業発生など
トラック事業者に対して時間外労働の上限遵守に関するヒアリングを行ったところ、しっかり遵守している事業者もあれば、そうでない事業者もあることがわかりました。遵守できない要因を質問したところ、荷主の都合で積み込み時間が指定され、荷待ちによる残業時間が発生したこと、スペースが限定されていたことで荷下ろしに時間を要したこと、あるいは荷主から高速道路料金の収受が十分にできず、深夜割引を受けるために運転待機時間が発生したことなどがあがりました。
事業者によっては、長距離フェリーを組み合わせて休息期間を確保する、あるいは長距離輸送と地場輸送を組み合わせるといった工夫も行っていますが、これはすべての事業者において有効な取り組みというわけではありません(シート6)。
トラックドライバーの1運行あたりの平均拘束時間に関する調査によると、2020年と2024年の比較で拘束時間全体は約40分減少しています。しかし、内訳としては運転時間が約50分減少したものの、荷待ち・荷役と言われる作業時間はほぼ横ばいです(シート7)。
2.改正物流法・トラック適正化二法の概要
こうした状況を変えていくために国土交通省が行っているさまざまな取り組みを紹介します。まず、一昨年成立した改正物流法と、昨年成立したトラック適正化二法の概要を紹介します。
改正物流法は物流の持続的成長を図るために2024年5月に公布
物流2024年問題に直面した状況をふまえて、物流の持続的成長を図るため、2024年5月に改正物流法が公布されました。改正物流法は、流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律の改正(改正物流効率化法)と、貨物自動車運送事業法の改正から構成されます。このうち改正物流効率化法は、荷主を対象として義務づけを行ったという点が画期的です。
また、トラック事業者に対しては貨物自動車運送事業法において、運送契約の締結に際して書面交付を義務づけるなどの改正が行われました。
これらの改正事項は、2025年4月と2026年4月に相次いで施行しています(シート8)。
すべての荷主や物流事業者に対して物流効率化の努力義務を課す
改正物流効率化法で2025年4月から施行していることとして、すべての荷主あるいは物流事業者等に対して、物流効率化のために措置を講じることの努力義務を課したことがあげられます。いわゆる着荷主も対象となっている点がポイントです。
物流効率化としては、例えば①積載効率の向上等として、地域における配送の共同化②荷待ち時間の短縮として、トラック予約受付システムの導入③荷役等時間の短縮として、パレットの利用や検品の効率化──がそれぞれ想定されます。これらの取り組みにより、2028年度までに荷待ち・荷役時間をドライバー1人あたりで年間125時間短縮させるとともに、積載効率は全体で44%まで増加させる目標となっています(シート9)。
一定以上の規模を有する荷主等の「特定事業者」に中長期計画の作成を義務づけ
次に、改正物流効率化法で2026年4月から施行されたのは、物流効率化について一定以上の規模を有する荷主、トラック事業者、倉庫業者等については「特定事業者」と指定して、中長期計画の作成や定期報告を義務づけて、実施状況が不十分な場合、国が勧告・命令を発するなどの規定により物流効率化の実効性を担保するという内容です。
また、「特定事業者」のうち荷主等に対しては、経営幹部が適正な物流を実施するための事業管理体制の確保や、必要な投資を行うための責任者となる物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)の選任を義務づけています。これはまさに、物流は企業の主要経営課題の1つであることを法律上示したものです(シート10)。
中長期計画の提出は2026年10月末まで
今後の予定としては、2026年5月末までに特定事業者に該当する事業者に届出をしてもらい、その後、速やかに物流統括管理者の選任についても届出をしてもらう予定です。また、特定事業者の中長期計画については、2026年10月末までに提出してもらい、2027年7月には最初の定期報告を提出してもらう予定です(シート11)。
貨物自動車運送事業法では「実運送体制管理簿」の作成を義務づけ
貨物自動車運送事業法では2025年4月から、下請けの状況等を明らかにするために、「実運送体制管理簿」の作成を義務づけています。また、運送契約の締結等に際して、契約の内容について記載した書面の交付を義務づけています。一定規模以上のトラック事業者等については、他の事業者の運送の利用(=下請けに出す行為)の適正化について、管理規程の作成や責任者の選任を義務づけています。こうした規定を実施することで、下請行為の適正化に取り組んでいます(シート12)。
さらに2025年6月には「トラック適正化二法」と呼ばれる議員立法が成立し、こちらも施行を迎えています。この法律は、トラックドライバーの適切な賃金の確保とトラック運送業界の質の向上等を目的としています。2026年4月からは、下請けの委託次数を2回以内とする努力義務等が施行されています。加えて、トラック事業の更新制の導入や、国土交通大臣が定める適正原価を継続して下回らないことを確保するといった規定がおおむね2年以内に施行されることとなっており、大きな注目を集めています(シート13)。
3.トラック・物流Gメンについて
トラック・物流Gメンが360人規模で活動
トラック・物流Gメンは、物流2024年問題への対応を契機として2023年7月に創設されました。「Gメン」というと、現場の差し押さえや取り締まりといったイメージがあるかもしれませんが、必ずしもそうではなく、違反原因行為があった場合に、貨物自動車運送事業法に基づく是正指導を実施することなどが活動内容です。この活動をサポートするために、各都道府県のトラック協会にはGメン調査員がいます。国と合わせて総勢360人規模で活動しています(シート14)。
違反原因行為とは、例えば荷主から長時間の荷待ちを求められる、契約にない附帯業務をやらされる、必要な費用を運賃・料金に計上させてもらえずに不当に据え置かれる、過積載運送、異常気象時の運行、無理な運送依頼など、関係法令に違反する原因となる行為を求められることを言います(シート15)。
トラック・物流Gメンは、まずは法令遵守を自主的に行っていただけるように働きかけを行います。さらに違反原因行為の情報を得た場合には、改善計画の提出と状況報告を依頼する要請をします。要請によってもなお状況が改善しない場合には、勧告と企業名の公表を実施するという流れです(シート16)。
違反原因行為の内容は半数近くが長時間の荷待ち
これまでに勧告5件、要請197件を含む合計2,587件の法的措置を実施しており、その7割近くは荷主に対する措置です。違反原因行為の内容は半数近くが長時間の荷待ちですが、他にも契約にない附帯業務の強要、運賃・料金の不当な据え置きといった事項もみられます(シート17)。
また、2026年1月から施行された中小受託取引適正化法(取適法)においても、荷主から元請けの物流事業者へ委託する行為を新たに法律の対象とするとともに、指導助言や報告検査に関する権限を事業所管省庁である国土交通省にも付与することとなり、トラック・物流Gメンが取適法に基づく指導助言を行うようになっています。
トラック・物流Gメンが単独ではなく、公正取引委員会との合同パトロールを実施するなど、省庁間連携により取引適正化の実効性を高めるように取り組んでいます(シート18)。
4.その他取り組みについて
中継輸送を促進するための改正物流効率化法が今年5月に公布
シート19は、中継輸送を促進するための物流効率化法の改正についてです。この報告の収録時は衆議院を通過しており、参議院の審議を待っている段階です(2026年5月20日に公布。公布の日から6カ月以内に施行)。これは、長距離運転あるいは宿泊を前提とする従来の物流の輸送形態がドライバーの負担になっていることに対応するものです。中継輸送を実施しようとする事業者が共同で計画を策定し、認定を受けた場合、税制特例や初年度運行経費の支援、あるいは施設整備に関する開発行為についての都市計画法上の配慮等の支援を受けられるといった内容です。
中継輸送で日帰り勤務が可能に
シート20は中継輸送のイメージ図です。例えば、福岡~兵庫間を往復で運行すると、拘束時間は約16時間となり、宿泊が不可避の労働形態となります。これに対して、中間地点の広島にある中継輸送施設を利用して、福岡からのトラックと兵庫からのトラックの荷物を広島で交換して、それぞれが戻っていく形をとれば、拘束時間は8.5~9時間となり日帰り勤務が可能となることから、労働環境が改善するというものです。
さらに、お互いに帰り荷を確保することができるので、片荷輸送の状態を回避することができて、運行効率が向上するというメリットもあります。このような中継輸送施設によって、トラックドライバーが長時間拘束される働き方から解放される可能性があるので、着実に取り組みを進めていきたいと考えています。
2030年度までの5カ年の「総合物流施策大綱」を閣議決定
次に、2026年3月31日に閣議決定された総合物流施策大綱について紹介します。2026年度から2030年度までの5カ年を対象としており、物流を単なるコストではなく新たな価値を創造するサービスとして捉え直し、より上質で魅力ある産業へ転換していくことを大きな目標にしています。
人口減少や担い手不足、イノベーションの進展等の現状に適応しつつ、2024年問題を契機とした意識改革や行動変容、商慣行の見直し、デジタル化やモーダルシフトなどをさらに推進するため、この5カ年の期間を物流革新の「集中改革期間」と位置づけて、施策の具体化・深度化を図っていきます。
これにより、将来にわたる物流の持続可能性の確保、成長エンジンや公共性の高いサービスとしての物流のポテンシャルの発揮につなげていきます。具体的には5つの柱として、徹底的な物流効率化、行動変容や産業構造転換、人材の地位・能力の向上と労働環境改善、標準化と物流DX・GXの推進、サプライチェーンの高度化・強靭化に分類しています。
大事な点は、国のみならず、物流事業者、発着荷主、一般消費者という物流に携わるすべての関係者が、責任と覚悟を持って一気呵成に施策を進めることをうたっていることです(シート21、シート22)。
このうち2つめの柱である「物流全体の最適化に向けた商慣行の見直しや荷主・消費者の行動変容、産業構造の転換」については、荷主と物流事業者との間において、例えば貨物の積み合わせなど、新たな商慣行の定着をうたっています。また一般消費者に対しても、配達にはコストがかかっていることなどの意識改革と、それに基づいた行動変容を促すことを掲げています。
価格転嫁の円滑化と適正取引の推進については、トラックはもちろんのこと、倉庫、内航海運、港湾運送、空港グランドハンドリング等、物流全体の共通課題としてしっかり施策を進めていくことが重要です。また、トラック運送については、適正化二法を契機とした適正原価の確保、あるいは違法な白トラへの規制、多重取引構造の是正等を進めるほか、協業化や事業規模拡大による事業基盤の強化を掲げています(シート23)。
自動運転やAIの普及なども見据えながら生産性向上を進める
3つめの柱である「持続可能な物流サービスの提供に向けた物流人材の地位・能力の向上と労働環境の改善」については、自動運転やAIの普及なども見据えて、人材の育成プランの策定と能力向上、それと並行した生産性の向上を進めます。また、物流統括管理者の指揮の下、企業間連携も進めつつ、高度人材の育成環境を整えます。
また、物流全体の生産性の向上をサポートするために、特定技能外国人も活用していくこととしています。さらに、ドライバーの休憩施設の確保等の環境改善、輸送の安全確保に向けた各種技術の活用も、安心して働ける職場環境を実現するための重要な柱として進めていきたいと考えています(シート24)。
3,000社以上が「ホワイト物流」推進運動を宣言
最後に、トラック運送の現場をより働きやすい職場として実現していくための取り組みを紹介します。まず、「ホワイト物流」推進運動は、生産性向上はもちろんとして、女性・高齢者等のさまざまな人が働きやすいホワイトな労働環境の実現という運動の趣旨に賛同いただける企業に自主行動宣言を発してもらうものです。2026年2月時点で3,466社が宣言しています(シート25)。
シート26は同様の取り組みで、働きやすい職場を認証する制度です。認証実施団体の指定を受けた一般財団法人日本海事協会が実施しています。トラックだけでなく、バス・タクシーの職場環境改善の取り組み状況も評価しており、1つ星から3つ星までの評価を与えています。審査条件としては、法令遵守、適切な労働時間や休日の確保、心身の健康、安心・安定、多様な人材の確保・育成、自主性・先進性の確保などの項目をあげています。
この認証を取得するインセンティブとしては、ハローワークや求人サイト等での見える化やマッチング支援などがあります。また、各種の補助金の採択にあたって、認証を得ていることを優遇条件にする制度もあります(シート27)。
「2024年問題」を契機に一般への理解が進みつつある
結びですが、物流の革新に向けては紹介できなかった論点のほうがむしろ多いぐらい、多岐にわたる取り組みが必要です。1つ申し上げたいのは、わが国の社会経済や生活の血液の役割を果たす物流には、それを適正に動かすためのコストがかかっているということです。
そのことについて、物流2024年問題を契機に一般への理解が進みつつあります。例えば、「送料無料」といった表現は改まりつつあります。しかし、「送料は事業者が負担します」という表現があった場合に、その裏で何が行われているのかといったことへの理解は、まだ途上であると感じています。
BtoBの取引においても、そうしたコストが消費者にとって見える化されていけば、現場のドライバーの方の処遇改善や労働環境改善につながり、ひいては商取引の変容につながると考えています。
ご視聴の皆様におかれましても、そうした取り組みにぜひご賛同いただき、何ができるかご検討いただけるきっかけになれば何より幸いです。
プロフィール
指田 徹(さしだ・とおる)
国土交通省 物流・自動車局 貨物流通事業課長
1999年(平成11年)東京大学経済学部卒業後、運輸省(現・国土交通省)入省。中部国際空港株式会社経営企画グループマネージャー、観光庁総務課企画室課長補佐、国土交通省鉄道局幹線鉄道課長補佐、航空局航空戦略課長補佐等を経て、大臣官房総務課企画官等を担当。航空局航空ネットワーク部首都圏空港課成田国際空港企画室長、内閣官房内閣参事官(内閣官房副長官補付)、海事局外航課長、航空局航空ネットワーク部航空ネットワーク企画課長を経て、2026年4月より現職。



