公的機関における支援の取組2 埼玉県DX推進支援ネットワークの取組について
- 講演者
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- 澤田 知之
- 埼玉県 産業労働部 産業支援課 創業支援・DX推進担当 主査
- フォーラム名
- 第141回労働政策フォーラム「企業におけるデジタル技術の活用と人材育成」(2025年12月24日-2026年1月8日)
- ビジネス・レーバー・トレンド 2026年3月号より転載(2026年2月25日 掲載)
新型コロナウイルス感染症の世界的流行を契機として、社会活動のあらゆる場面でデジタル化が急速に浸透しています。テレワークやリモート会議、キャッシュレス決済など非対面非接触の取組が広がり、デジタル技術の活用による経営変革の機運が高まっています。また、県が直面する人口減少・超少子高齢社会という歴史的な課題への対応において、生産年齢人口が減少するなかでも経済成長を実現するためには生産性向上が不可欠であり、その鍵となるのがDXです。
県が実施している「四半期経営動向調査」の結果では、県内中小企業におけるDXに向けた取組割合は、2024年度末で53.7%となっており、50%を超える結果となりましたが、まだ多くの中小企業においてDXに向けた取組が進んでいない状況です。そのため、県内中小企業におけるDX推進を支援するため、埼玉県DX推進支援ネットワークでは各種取組を行っています。
2021年10月に埼玉県DX推進支援ネットワークを立ち上げ
まず、埼玉県DX推進支援ネットワークの概要について説明します。本県では、あらゆる業種の県内中小企業におけるデジタル化やDXを促進するため、2021年10月に埼玉県DX推進支援ネットワークを立ち上げました(シート1)。
本ネットワークは、国、県、市、経済団体、金融機関、支援機関など27の団体で構成しています。県内中小企業におけるDXへの取組をワンチームでサポートするために、各種支援などの一元的な情報発信を実施しており、県内中小企業のDXを促進するための軸となる存在です。
シート2は大野元裕知事からのDX推進に関するメッセージです。
ポータルサイトではDX取組事例や支援情報を一元的に発信
次に、埼玉県DX推進支援ネットワークで実施している取組について紹介します。埼玉県DX推進支援ネットワークでは、県内中小企業の皆様にDX推進に関する有益な情報を一元的に発信するため、埼玉県DX推進ポータルサイトを運営しています(シート3)。
埼玉県DX推進ポータルサイトでは、県内企業における優れたDXへの取組事例を動画などで紹介しているほか、埼玉県DX推進支援ネットワークで実施している各種支援情報や、本ネットワーク構成機関などが実施しているセミナー等各種支援情報、補助情報の紹介といったDX推進支援に関するさまざまな情報を掲載しており、県内中小企業の皆様がワンストップでデジタル化・DX推進に関する有益な情報を得ることができます。
専門家であるDXコンシェルジュが相談に対応
次に、県内中小企業の方々がデジタル化やDXに取り組む際にご利用いただける相談窓口を紹介します(シート4)。
「デジタル化の第一歩を踏み出したいのに、何から手をつけてよいか分からない」といったはじめの段階における悩みごとや、「デジタル技術を活用して経営課題を解決したい」という具体的な相談まで、ワンストップで幅広く対応するため、埼玉県DX推進支援ネットワーク事務局である埼玉県産業振興公社にて、専任の相談員である「DXコンシェルジュ」が対応する無料相談窓口を用意しています。
DXコンシェルジュによる支援メニューとしては、1年間で経営課題の分析・DX推進計画の策定を伴走支援する「オーダーメイドタイプ」のほか、県内中小企業の皆様からご相談いただいたデジタル化やDXの課題に対してITソリューションを有する企業である「埼玉DXパートナー」から課題解決の提案をしていただき、両者のマッチングを支援する「マッチングタイプ」などがあります。
オーダーメイドタイプについてはすでに今年度の応募を終了していますが、マッチングタイプについては随時ご相談を受け付けています。各支援内容の詳細については、埼玉県DX推進ポータルサイトに掲載しています。
IT企業などに「埼玉DXパートナー」に登録していただき、現在(発表時点)は373社に
先ほどDXコンシェルジュに関する説明の際に言及した「埼玉DXパートナー」は、県内企業のデジタル化・DXに関する課題解決の支援にご協力いただけるIT企業など、DXやデジタル化に関するソリューションを有する事業者に登録していただく制度です(シート5)。
埼玉DXパートナーは、2025年12月4日時点で373社が登録しており、県内外の企業から随時、登録の応募を受け付けています。また、前年度において優れた提案・商談・契約受注実績をあげたパートナーを「埼玉DXゴールドパートナー」として認定しており、2025年度は8社を認定しています。
経営幹部層を対象とした講座も実施
次に、経営幹部層向けDX推進人材育成講座について説明します。DXの推進には、企業の経営者や幹部層の方々がDXの重要性や推進のためのノウハウ・知識を理解し、自らが社内の旗振り役となって取り組むことが重要です。埼玉県DX推進支援ネットワークでは、県内中小企業の経営幹部層を対象とした「DX推進人材育成講座」を実施しています(シート6)。
本講座では、DXに関する基礎知識やノウハウといったDXについて学ぶためのテーマや、DXで売上・生産性を向上させるための具体的なデジタルツールやSNSなどの活用を学ぶテーマ、DXへ取り組む際のサイバーセキュリティ対策に関するテーマなど、さまざまな講座内容を用意しています。また、既存のメニュー以外の独自のテーマで講座を実施したいという要望にも応えています。
今年度(2025年度)も、より多くの県内中小企業がDXに取り組めるよう、業界団体や経済団体、金融機関、支援機関などと連携した講座の実施を展開しています。
優れた事例を表彰し、周知することで、新たにDXに取り組む企業が生まれることに期待
次に、「埼玉DX大賞」について説明します。多くの県内中小企業の皆様がDXに対して関心を持ち、取り組んでいただくためには、そのきっかけとなるような成功事例を知っていただくことが重要です。埼玉県DX推進支援ネットワークでは、DXに取り組み、成果を上げている優れた事例を表彰し、幅広く周知することで、これを参考としてDXに取り組んでいただく企業が生まれてくることを目指し、2023年度に埼玉DX大賞を創設しました(シート7)。
埼玉DX大賞では、最優秀賞、優秀賞、奨励賞の3つの区分で優れたDXの取組を表彰しており、2024年度では最優秀賞1件、優秀賞3件、奨励賞2件を表彰しました。2025年度は、公共事業分野における建設業界の優れたDXの取組を表彰するため、先ほど説明した3つの表彰区分に加え、新たにインフラDX特別賞を創設しました。また、2024年度にはDXに向けた第一歩となる優れた取組を実施している県内中小企業等を選定する「埼玉DXファーストステップ企業」を開始し、2024年度は9社を選定しました。
2025年度における埼玉DX大賞、埼玉DXファーストステップ企業の取組募集はすでに終了しており、12月4日現在、応募いただいた取組について審査を実施しています。審査の結果、受賞された取組については、例年、表彰式などを通じて他の中小企業に周知・紹介をしており、2025年度については2026年2月3日に表彰式を実施します。
2025年7月に開設した県のイノベーション創出拠点「渋沢MIX」を会場に実施し、受賞企業への表彰のほか、受賞事例の発表、過去の受賞企業によるパネルディスカッションを予定しています。
また、過去の埼玉DX大賞、埼玉DXファーストステップ企業における受賞企業については、埼玉県DX推進ポータルサイトにおいて、動画やテキストでわかりやすく取組内容を掲載・紹介しています。
2025年度からはノーコードツール活用によるDX促進を開始
続いて、2025年度から新規に実施している事業について説明します。2025年度は、ノーコードツール活用によるDX促進として、自社の業務課題解決につながる業務アプリの作成を専門家が伴走支援する実践型ワークショップを新たに実施しています(シート8)。
プログラミングに関する知識やスキルがなくても、簡単な操作でアプリなどのソフトウエアを作成できるデジタルツールである「ノーコードツール」について、伴走型の支援によって、自社の状況・課題に応じた適切な業務改善アプリを作成してもらい、ノーコードツールに関する知識やアプリ開発・改善に関するノウハウを学んでいただくことで、支援後もノーコードツールを活用したDX推進を自走して取り組んでいただけるよう支援するものです。
県内中小企業50社を対象にセミナーやワークショップを実施
具体的な事業内容としては、ノーコードツールを活用して業務改善や生産性向上に取り組みたい県内中小企業50社を対象に、事前学習のためのセミナーおよび個別訪問によるワークショップを実施しています。
まず、ステップ0として、ノーコードツールの概要や各企業が提供しているノーコードツールの特徴といった知識を学ぶ事前セミナーを県内3カ所で実施します。その後、自社で使用していただくノーコードツールを選んでいただいた後、専門家が個別訪問によるワークショップを実施します。
ワークショップは、「ステップ1」改善したい課題に応じたアプリ開発の企画、「ステップ2」作成する業務アプリで使用するデータベースの内容や画面デザインといった仕様・デザインの設定、「ステップ3」ステップ1・2で決定した内容に基づく業務アプリの作成、「ステップ4」作成した業務アプリを実際に業務現場で使用することによって見出した業務アプリの改善点・課題の分析・改良、「ステップ5」これまでのステップを基にした今後のアプリ運用・改修計画の策定の5段階に分けて計5回実施し、ノーコードツールによるアプリ作成の手法や運用に関する考え方といったノウハウを学んでいきます。
ワークショップでは、業務アプリ開発の支援を通じて、今後、自社内でアプリの開発や改修、運用に関して自走して取り組めるよう、ノーコードツールに精通した専門家が事業者の状況に応じて丁寧に支援しており、2025年度に参加の事業者の皆様は、現在ワークショップに取り組んでいる段階です。
また、本事業で生まれた業務アプリ開発などに関する成果については、ノーコードツール活用事例として今後周知をしていく予定です。
ネットワークで今後も中小企業のDX推進を支援
本県における県内中小企業のDXへの取組をさらに促進するため、埼玉県DX推進支援ネットワークでは、中小企業の実態やニーズに即したきめ細かな支援に引き続き取り組んでまいります。
プロフィール
澤田 知之(さわだ・ともゆき)
埼玉県 産業労働部 産業支援課 創業支援・DX推進担当 主査
令和7年4月より現職。県内中小企業におけるDXへの取組の促進を支援に関する業務を担当。埼玉県DX推進支援ネットワークを運営する(公財)埼玉県産業振興公社と協力し、各種支援策を実施。


