パネリストからの報告3 多業種からの人材活用 中途採用者の定着と養成

私は障害福祉の世界で50年近く働いてきました。現在、公益財団法人日本知的障害者福祉協会の会長を務めています。ご存じの方は少ないと思いますが、日本知的障害者福祉協会は全国の知的障がい関係の施設・事業所を会員とする事業所団体の全国組織で、知的障がいがある方々の自立と社会経済活動への参加を促進することを目的としています。現在の会員数は6,551カ所で、全国9地区、47都道府県に支部がある社会福祉法人の組織です。約90年の歴史があり、十数万人に利用されています。

今日は、「多業種からの人材活用──中途採用者の定着と養成」というテーマで報告させていただきます。

京都市内や府内南部などで障がい者のための福祉事業を展開

当法人は、京都市内と京都府の南部地域、奈良や大阪に近いところで事業を行っています。主に知的障がいのある子どもさん、就学前から老年期、みとり期、障がいのある方々が求められる福祉事業をほぼすべて行っており、京都府内で広く、小規模に、地方・地域分散を事業方針として事業運営していることが特徴と言えます。

福祉現場の法人として、明るさや地域とのつながり、地域貢献というイメージを大事にしてきました。福祉サービスを利用される方々が主役であることはもちろんですが、そこで働いていただく職員さんにとって、やりがい、働きやすさを意識しての施設・事業所づくりを目指してきました。

福祉サービス事業は、出生前から青年期、老年期、みとり期に至るまで、支援を必要としている人たちに対するあらゆる仕事があります。幅広い福祉ニーズに応えるためには、年齢、性別、国籍、障がいの有無を問わず、全世代の方々の参加が必要です。福祉の仕事は、支援者自身もその人生の過程で、被援助体験を通して必ず当事者となり得ること、つまり、家族も含め、誰もが経験する自分事であることがこの仕事の特徴です。家族介護の経験が契機となり、この分野へ転職された方も少なくありません。

設立当初から企業からの転職者を積極的に活用

当法人は、設立当初から、企業からの転職者を積極的に採用してきました。また、誰もが働きやすい、働きがいの持てる福祉現場の支援環境や、ICT(情報通信技術)を活用した、支援する側にとっての環境改善にも取り組んでいます。

法人設立以来、25年間の年平均退職率・離職率は3.1%と低く、企業出身の中途採用者も当法人の中核的人材として多く活躍しています。特に前職で定年近くまで培われた柔軟な思考力、忍耐力、社会的良識をお持ちの方々の雇用に、今後とも一層取り組んでまいりたいと考えています。

誰かの生活をより豊かにすることに生きがいを感じる人に大きな期待

中高年層の求職者は働く目的が明確で、元気で意欲のある方が多いです。経済的理由が最も多いですが、働きがい、生きがいを求めて来られる方も少なくありません。誰かの生活をより豊かにすることに生きがいを感じてもらえる人が1人でも多くこの分野に来ていただくことで、この分野がよりよい方向に発展していくのではないかと私は大きな期待を持っています。

採用にあたっては、適性を判断したうえで、人柄、誠実さを重視しています。知的障がいのある方ということが対象ということもありますが、この人なら利用者の方々を任せられると感じられるかどうかが採用基準です。まず、無理のない現場で少しずつこの仕事に慣れていただく、そういう進め方、働き方を考えています。

※報告の後、同法人で勤務しているシニアの方々の活躍の様子を動画で流しました。

プロフィール

樋口 幸雄(ひぐち・ゆきお)

社会福祉法人 京都ライフサポート協会 理事長

重症心身障害児施設での勤務を経て、1982年京都府下で初のグループホームを開設運営。障害者支援施設の施設長を経て、2001年社会福祉法人京都ライフサポート協会設立。5~6名単位の小規模、分棟型のユニット、職住分離を実現する『横手通り43番地「庵」』(障害者支援施設)の開設、運営にあたる。現在、公益財団法人日本知的障害者福祉協会会長。

※所属・肩書きは開催当時のもの

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