パネリストからの報告2 NPO法人ICDSでの新版OHBYカードの活用①──事業概要

若い人たちのキャリア形成をテーマに運営

当法人でのOHBYカードの積極的な活用についてお話しします。当法人の概要はシート1のとおりです。私どもは、地域若者サポートステーションや、新しい事業として名古屋の市立中学校におけるキャリアサポート事業など、いずれも若い方々のキャリア形成をテーマに運営しています。

もともとはキャリアコンサルタントの養成を19年ほど実施しています。私自身がその養成を行っていくプロセスの中で、最初はいろいろな団体の養成講習を自分が受け、勉強していましたが、当時の養成講習では、JILPTのツールやJILPTの存在をほとんどお伝えにならない団体が多かったように思います。同じような資格を持っている方でも、資格を取って活動を始めてからJILPTのことを初めて知った人も非常に多かったと思います。

私自身がJILPTのツールに出会って、実際に使ってみて、非常に有益であるということを体感しましたので、少なくとも私どもの講座の中ではこのOHBYカードを実際に使っていますし、JILPTの他のさまざまなツールなども、養成のプロセスの中で必ず触っていただくようにしています。

自分の経験から若者のキャリア支援に携わる

簡単に自己紹介します。私は何も考えずに中学校から高専の土木工学科に進学したのですが、勉強してみて初めて、「これは俺がやることではないな」と思って退学をしています。この私のキャリアの失敗から、若い方々を含め、さまざまな職業や進路の情報をインプットしたうえで選択をしていくサポートをしていくことがとても重要であると考えています。この経験から、若者のキャリア形成支援に取り組んでいきたいと思い、現在に至っております。

余談ですが、私は大型2種免許、大型特殊免許の資格も持っています。キャリアコンサルティングに何ら関係がないじゃないかと思われるかもしれません。私は40代のときにOHBYカードを利用してみて、電車の運転士ではなくバスの運転手を選びました。何でかなって考えてみると、人に縛られるのが嫌ということもあり、電車はもう敷かれた線路の上を決まった時間と場所もぴったり走ります。路線バスもある程度制約はありますが、これがタクシーとなるとルートはいろいろあります。

ルートを自分で選べる、そういう生き方が好きだということが分かったので、その後、観光バスが運転できる大型2種免許を、40歳を超えて取りに行きました。そんなリスキリングをしている人間です。そんなことが、OHBYカードをやってみると、効果として表れる一例です。

今日紹介する事例については、2024年4月から始まった名古屋市の「キャリアサポート事業」です。名古屋市にある110校の中学校に、キャリアコンサルタントを朝の8時から夕方の5時まで、そして、月曜から金曜まで1年間ずっと常勤で配置しています。それ以前も、ボランティアとしてOHBYカードを持っていって、いろんな中学校や生徒さんに体験してもらう出前授業的なものは提供していました(シート2)。

子どもを自死から守る市長の公約を後ろ盾に実現

この事業は、まだ名古屋市以外では行われていないと思います。河村前市長の肝煎りで始まりました。

そもそも、なぜこういう事業が始まったかというと、子どもを自殺させないまちをつくりたい「ナゴヤ子ども応援大綱」という公約があったからです。すでに名古屋市の学校には、スクールカウンセラーという臨床心理士が1人1校ずつ配置されていました。それでも自死がなくならない。

ではどうしたらいいかという話の中で、将来に関する展望や夢を子どもたちが実感として持てる、キャリア支援体制をつくることが自殺をなくすには有効ではないかと直接市長にお手紙で提案しました。臨床心理士、スクールカウンセラー、キャリアを支援する人材の役割の違いを提案し、かつ、同時に110人のキャリアコンサルタントを集めることは当然できないので、ほぼ3年がかりで30校ずつぐらい増やしていけば担えるという提案もし、ようやく今年(2024年)になって実施することができました。

予算を頂いて、人件費や教材費などの予算をつけて、子どもたちが自分の将来のことについて考えるきっかけ、それから、情報を得るきっかけとなるような機会をつくっていく取り組みを実施しています。今回、OHBYカードをたくさん購入しましたが、こういった予算の中で行っています。ちなみに、名古屋市の中学校をいろいろなエリアに分けて運営をしています。

学校で同時に200人、300人の生徒が使うことも可能

今回、私どもは新版のOHBYカードを400セット購入しました。名古屋市の110校に1セットずつ常設しています。また、1つの学校で、例えば2年生200人で体育館で使ってみたいということが時間割の都合上、多々ありますので、残りの300セットはすべてラミネート加工して、同時に200人や300人の生徒に対して提供できるように準備をしています。

学生以外でも、ニート状態の若者や生活困窮者の支援に活用

現状でOHBYカードを活用しているのは学校、ニート状態の若者を支援している「地域若者サポートステーション」、そして、生活困窮者の方々が生活保護に至らないようにするための「仕事・暮らし自立サポートセンター」になります。したがって、かなり幅広い世代で活用ができています。

OHBYカードを有効に使うことが大事

私が最初に出会ったのは、CD-ROM版のOHBY(Windows XP以降は使用できない)で、私のしごと館の「Job Job World」という動画配信システムもよく活用していました(現在は廃止)。「キャリアマトリックス」も学生向けによく使っていたのですが、政府の事業仕分けによって廃止されてしまいました。

こういったツールがなくなってしまわないように、関係者がどんどん積極的に使っていかないといけないということを、ぜひみなさんにお伝えしたいです。

プロフィール

深谷 潤一(ふかや・じゅんいち)

NPO法人ICDS 理事長/有限会社キャリアサポーター 代表取締役

自身の若年時のキャリアの挫折経験から若年者にこそキャリア支援が必要であるという仮説に基づき、(有)キャリアサポーターを設立。20年以上にわたり若年者向けキャリアコンサルタントの養成講座を実践するとともに、輩出したキャリアコンサルタントの活躍の場の開拓をミッションとしてNPO法人ICDSを設立し19年以上、若年者の就労支援キャリア教育の実践など若年者のキャリア形成支援に取り組んでいる。1級キャリアコンサルティング技能士、キャリアコンサルタント(国家資格)、産業カウンセラー、社会教育士、関西大学心理学研究科社会心理学専攻 博士課程前期修了。

※所属・肩書きは開催当時のもの

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