事例紹介3 Gテストを利用した学生面談事例の共有

私は大学職員として就職支援課で働いた経験を生かし、学生対象のキャリア相談やキャリア授業の提供をオンラインの場で行っています。本日は、Gテストを利用した学生の面談事例を共有いたします。

オンライン教育プラットフォームを使用

まず、使用しているプラットフォーム「UrSTUDX(ユアスタディクス)」(シート1)を紹介します。このサイトは、「だれでも先生になれる」がコンセプトの無料の会員制オンライン教育プラットフォームです。2024年1月31日時点で登録者数は1万人超。その構成比は、私が授業する進路決定・就職活動などで自己分析が必要とされる年齢層である中学生~大学生の登録者が全体の63.4%を占めています。

私は2022年8月からUrSTUDXに登録し、授業を提供しています。特に自己分析クラスという、アセスメントツールの説明資料と動画を提供するクラスをまず受けてもらい、資料を見て、さらに深めたいという希望者のみに個別キャリア相談を行っていく流れになっています。

学生が抱く「就職活動に向けて不安なこと」

学生にアンケートなどで就活に向けて不安なことについて聞くと、「自己分析の仕方がわからない」「業界や職業の調べ方がわからない」「アセスメントツールで出てきた結果の解釈についてどうしていいかわからない」といった内容に分類されます。私はこれらを見て、漠然とした悩みを解消するために、まずは一歩行動するためのサポートをしていく支援が必要だと感じました。

job tagが学生に提供できること

そこで利用したのがjob tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))です。job tagは、学生に対するキャリア教育という部分での自己理解のサポート、職業理解のサポート、そして免許などの関連資格を確認できるという点から、まず自己理解を深めた後にそのまま職業についてもワンストップで調べることができるので、利用しました。

具体的には、Gテストを活用したキャリアコンサルティングの事例になります。テスト受検後、その結果をスクリーンショットなどで送付してもらうところまでを宿題とし、当日に60分間、読み解きをして、次に何をするかを考えるような流れが理想です。ただ、実際には学生の急な体調不良や学業が忙しいなどの理由もあり、当日の60分間でテストを受けて、そのまま読み解きをするような駆け足な内容になることも少なくありません。

それでは、2つの事例を紹介します。先に相談内容に触れた後に、結果の画面を見ながら、読み解きの際のポイントをお伝えしたいと思います。

事例1 ─就活が迫るなか、何から始めればよいかわからないケース

1人目は大学3年生のAさんの事例です。最初の相談内容はシート2にあるように、「就活に向けて自己分析をしたいけれども、何から始めていいかわからない」というものでした。話を聞いていくと、就活が迫るなかで、自分が動けていないということへの焦りが強く感じられました。また、自分が就きたい職業を考える以前に、自分が何をしたいのか、何に興味があるのかが固まっておらず、自信のない状態が見受けられました。なので、説明後にGテストを行い、結果の読み解きを含めたキャリアコンサルティングを行う流れになりました。

受講後の様子を見てみると、結果画面の後にそのまま続けてjob tag内で職業検索を行うことができます。そこでさまざまな職業があることを知り、そのなかでどれに興味があるかでも絞れるのですが、逆に「これはやりたくない」「興味がない」などと検索するものを狭めたり、Aさんのペースで検索するような姿が見られました。

事例2 ─希望職種が自分に向いているか自信がないケース

2人目の事例はBさん、大学1年生です(シート3)。希望職種があって大学・学部を選んで入学したのですが、自分に向いているか自信がなくなってしまったという事例でした。幼い頃から憧れた職業があって、その養成課程がある大学に入学したのですが、同じ職業を目指すクラスメートの性格や成績と自分を比較して、「タイプが違う」とか「自分があまりよくないのではないか」と不安を感じ、相談に来ました。

この人もGテストを行い、表示された職業を見ていくなかで、自身が希望の職業を目指した背景や、そこにかける想いを振り返るきっかけとなり、「過去の自分のような経験をした人を今度は自分が助けたいと思った」という言葉を聞くことができました。

Gテストとは

今回利用したGテストは、3つの検査結果から職業グループがわかるようになっています。今はアドバンスで2つの追加検査を行うことで結果の絞り込みまで可能ですし(※注)、これをすることで、能力的に適性のある具体的な職業例まで示すことができます。

※編集部注:本フォーラム開催時点では、Gテストはベーシックの3つの検査(A:展開図で表された立体形を探し出す検査、B:文章を完成する検査、C:算数の応用問題を解く検査)と、アドバンスの2つの検査(D:文字・数字の違いを見つける検査、E:同じ図柄を見つけ出す検査)で構成されていたが、2024年度からはベーシックの3つの検査(S:展開図で表された立体形を探し出す検査、V:文章を完成する検査、N:算数の応用問題を解く検査)と、アドバンスの3つの検査(Q:文字・数字の違いを見つける検査、P:同じ図柄を見つけ出す検査、K:見本と同じ位置に点を動かす検査)で構成。

結果画面からさらに職業探索が

まず、A、B、Cのベーシック検査を受けると、シート4のような画面が出ます。色をつけたり枠で囲んでしまったので、検査結果の画面表示とはちょっと異なりますが、1、2、3、4で表される自分の位置に近い職業グループが上から順に表示されていきます。そして、右側の「職業を検索する」という画面から検索が行えます。

追加検査で適職の表示も

さらに、追加のアドバンス検査を2つ行うと、シート5のような画面が表示されるようになっていて、「条件を満たしている職業」「ほぼ満たしている職業」として具体的な職業が出ます。

この職業をクリックすると、シート6のような画面に飛び、仕事内容や職業に就くまでのフローや類似の職業がわかる内容になっています。特に学生は動画が付いていると、「どういった内容かが視覚的に確認できてわかりやすかった」などの感想を持つので、すべての職業に付いているわけではありませんが、動画もかなり有用なようです。

読み解きの際の留意点

読み解きの際の留意点としては、「結果を『善し悪し』で捉えない」ことを大切にしています。結果を見て、何かこちらが発話する前に、どう思ったかというのを先に聞く。また、過去の経験やエピソードとリンクすることはないか、次につながるようなきっかけに昇華できるようなフォローを行っています。結果が出てそれで終わりではなく、ここでの関わり次第で、さらにそこから自己理解を深めていくことができると思っています。

自分を知る「入り口・きっかけ」の関わりを大事に

読み解き中によく出る悩みを、シート7にまとめました。例えば、結果に納得できないのであれば、その想いを聞くとか、具体的な就業イメージがつかめないのであれば、職業検索につなげていくなど、自分を知る「入り口・きっかけ」としての関わりを大切にしています。

行動変容のための「火種」となることを意識

最後にまとめです。本日は、私のように、学校教育現場に所属していなくともスキルを提供できるプラットフォームがあることを紹介しました。

また、Gテストと絡めたキャリアコンサルティングについては、結果をきっかけに、そこから想起される具体的な本人のエピソードや想いを引き出すツールとして使うことができます。行動変容にすぐにはつながらなかったとしても、その後のきっかけの火種となることを意識して関わっています。

プロフィール

玉手 桃子(たまて・ももこ)

キャリアコンサルタント

大学卒業後、地元福島県の書店に就職。その後、私立大学就職支援課勤務の経験有。退職後は、育児と仕事を両立した働き方をしたいという考えに加え、全国転勤がある夫に帯同するため、住んでいる場所に関係なく継続できる働き方を身につけたいという思いから、2022年夏に在宅で可能なオンライン面談業務を始める。オンライン教育プラットフォームUrSTUDX(ユアスタディクス)でのクラス開催数は2023年12月時点で120回。延べ270人の登録学生にキャリア授業・面談を行う。1992年福島県郡山市生まれ、福岡県北九州市在住。

(2024年6月25日 掲載)

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