事例紹介3 行政の取組 横浜市の多文化共生施策について

講演者
松本 貴之
横浜市国際局 国際政策部 政策総務課 多文化共生担当係長
フォーラム名
第128回労働政策フォーラム「外国にルーツを持つ世帯の子育てと労働を考える」(2023年10月13日-19日)

在住外国人の状況

大阪市に次いで多い在住外国人数

横浜市の多文化共生の施策について、全般的な取り組みを紹介します。横浜市の在住外国人数は、現在約11万人です。市町村別では大阪市に次いで多くなっています。基本的には一貫して伸び続けており、多い時は月に約2,000人が新たに住民登録をしています。国籍別にみると、中国、韓国、ベトナムという順で多く、在留資格別にみると、永住者が約4割を占め、「技術・人文・国際」や「家族滞在」の方が1割ずつです(シート1)。

多文化共生の根拠規定等

国際平和推進条例では多文化共生も柱の1つ

シート2は、横浜市の多文化共生の根拠規定などを一覧で表したものです。「横浜市国際平和の推進に関する条例」を定めており、ここで、国際交流、国際協力と並んで多文化共生を3本柱の1つとしており、これらを通じて国際平和に貢献をしていくと明記しています。また、横浜市国際戦略のほか、地域における多文化共生プランの1つとして、横浜市多文化共生まちづくり指針を策定しています。そのほか、各分野において、例えば人権施策基本指針や子どもの貧困対策に関する計画の中でも外国人に関する記載があります。

2022年に策定した横浜市の「中期計画2022-2025」では、基本戦略として「子育てしたいまち 次世代を共に育むまち ヨコハマ」と銘打ち、その中に「誰もが生き生きと生涯活躍できるまちづくり」という戦略を掲げており、多文化共生の推進を、横浜市としては初めて中期計画の政策の柱として位置付けています。

同計画の下、外国の方からも選ばれる国際都市を目指していくという視点も含めて、多文化共生を実施しています。政策の目標としては、在住外国人の方の生活満足度を高めることを掲げています。そのための施策として、情報提供・相談対応の充実、日本語指導が必要な児童生徒へのきめ細かな支援を掲げており、加えて、横浜市は多文化共生に関わる市民団体が約500団体ありますので、そうした団体との連携、基盤づくりも施策として位置づけています。

最近は在住外国人市民の活躍に向けても取り組む

シート3は、中期計画で位置づけている施策の推進イメージです。外国人のお困りごとへの相談対応などを中心とした「課題解決」に加えて、最近では、在住外国人の皆さんの「活躍促進」を新たに掲げて、これらを両輪で進めていくこととしています。それぞれの施策の担い手が連携をしながら、「多様性・包摂性に富み、誰もが活躍できる共生社会」の実現を目指しています。

在住外国人支援の体制

横浜市国際交流協会(YOKE)が市の重要なパートナー

横浜市には、横浜市国際交流協会(YOKE)という外郭団体、地域国際化協会があります。設立は1981年で、多文化共生社会実現に向けた各種事業を実施する重要なパートナーとなっています。

また、これは横浜市の特徴ですが、市内に12カ所、「国際交流ラウンジ」という地域の身近な多文化共生の拠点を設けています。現在13カ所目を2024年3月に開館する予定で、身近な場で相談対応や情報提供をしています。ラウンジでは、市民のボランティアの皆様にも協力いただいて、通訳ボランティアの派遣も行っており、区役所窓口での手続きなどでの言語面での支援を行っています。人材育成という観点から日本語ボランティアの入門講座を行っているほか、日本語教室も開催しています。

シート4にある「横浜市多文化共生総合相談センター」は、法務省からの補助を得て、一元的に情報提供や総合相談に対応するワンストップセンター(YOKEが運営)で、ラウンジとも連携しながら、しっかり外国人からの相談を関係機関につないでいく役割を果たしています。

日本語教育支援の拠点も設置

文化庁の補助を得て、地域における日本語教育の総合的な体制づくりを推進しています。「よこはま日本語学習支援センター」を設置して(YOKEが運営)、市内に約140ある地域日本語教室実施団体と連携を図り、支援事業をしています。

地域における多文化共生にも取り組んでいます。国際交流ラウンジの強みを生かし、ラウンジに専任のコーディネーターを配置して、地域密着型の活動を実施しています。具体的には、町内会の会合などにそのコーディネーターが入って、地域住民の方が外国人の方をどう捉えているかなどの意見をうかがいながら、転入されてくる方への生活ガイダンスに生かしたり、相互交流を進める事業を展開したりするなど、地域で日本人も外国人も、ともに住みやすくなるように取り組みを進めています。

各区で課題に応じて独自事業を実施

市内のそれぞれの区も課題感を持って事業に取り組んでいます。鶴見区の事例では、集住地区において、子育てサロンに外国籍の親子にも参加してもらえるような仕組みづくりを行っています。南区では、南区の地域情報をはじめ、生活マナーも含め生活に必要なさまざまなことを紹介した「生活のしおり」という冊子を作っています。緑区では、霧が丘というインド人の方が集住している地域があり、そことの地域連携の強化に取り組んでいます。

防災・医療に関する取り組みでは、防災面ではYOKEと連携して、「外国人災害時情報センター」を設置しています。災害時には通訳ボランティアなど皆さんと協力しながら、地域防災拠点の言語面でのサポートをしていきます。医療の関係では、神奈川県との取り組みで、医療通訳の派遣事業を行っています。また、市独自のものとしては、電話による医療通訳サービスと、119番通報の多言語対応を実施しています。

続いて、ウクライナ避難民支援について紹介します。横浜市は、ウクライナのオデーサ市と姉妹都市であり、ウクライナ避難民支援に早くから力を入れてきました。その中で、市民や企業の皆さんと協力をしながら、パッケージで総合的な支援を実施しています。現在は約130人のウクライナの方が市内で避難民として暮らしています。

国際教室として専任教諭を配置

日本語指導が必要な外国籍および外国につながる児童生徒数は、横浜市においても、コロナの間も一貫して増加しています。多文化共生の学校づくりに向けた各種取り組みでは、日本語指導が必要な児童生徒数が一定数以上の学校には、国際教室として専任教諭を配置しています。現在、横浜市の全市立小中学校のうち2、3校に1校の割合にあたる194校で、国際教室を設置しています(シート5)。

また、日本語支援拠点施設「ひまわり」を設置しています。転入したばかりのお子さんには初期の日本語を教えているほか、保護者の皆様には、銀行口座の作り方、給食費の引き落としの説明といった学校生活のガイダンスなど、初期支援をする拠点施設を、市内に3カ所設けています。

横浜市の子どもの貧困対策に関する計画では、外国につながる子どもへの支援について記載しています。保育士や幼稚園教諭を加配する場合の経費の助成や、「ひまわり」における支援、多文化共生総合相談センター、国際交流ラウンジでの支援や連携について掲げています。

集住地区では支援を受けた子どもが支援する側に

最後に、集住地域の取り組み事例を紹介します。中区には在住外国人の方が約1万7,000人いて、これは人口のほぼ11%にあたります。「なか国際交流ラウンジ」では、学習支援教室の卒業生である外国につながる若者たちが、さまざまな地域活動を行っています。居場所ということで「レインボースペース」と名付け、活動しています。地域のお祭りやラジオ体操、清掃活動を一緒に実施したり、お祭りのチラシを多言語化するお手伝いをしたりしています。また、映画を制作するなど、若者の自己表現の場としても機能しています。学習支援をきっかけに、支援を受けた子どもたちが、行政や地域とつながって支援を受ける側から支援する側へと成長する機会に繋がっています。

プロフィール

松本 貴之(まつもと・たかゆき)

横浜市国際局 政策総務課 多文化共生担当係長

2011年横浜市入庁。これまで高齢者福祉(介護人材の確保等)や地域まちづくり(文化施設基本構想策定、中小企業と地域住民の相互理解促進等)などの部署を経験。経済産業省出向中にはAPEC関係業務を担当。現在は、市内約11万人の在住外国人の生活支援や活躍促進に関する施策の企画立案等を担当。東京大学経済学部卒、政策研究大学院大学地域政策コース修了。

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