事例紹介2三井化学の中途採用の取り組み

講演者
櫨山 義裕
三井化学株式会社 人事部 人材グループ 採用チームリーダー
フォーラム名
第121回労働政策フォーラム「転職と中途採用について考える─キャリア採用の取組を中心に」(2022年7月22日-26日)

はじめに三井化学の「VISION2030」という長期経営戦略を説明し、そこに紐づく人材戦略の概要および中途採用の取り組みについてお話しします。

昨年、2030年までの長期経営計画「VISION2030」を発表し、これを実現するため、基本戦略を5つ、掲げました。この5戦略をもとに、さまざまな施策や人材戦略を策定しています。

長期経営戦略の転換をうけて人材戦略も改定

経営戦略における一番大きな変化は、素材提供型のビジネスから社会課題視点のビジネスへ、転換を進めることです。

当社はもともと、石油化学製品やファインケミカル製品といった素材を提供してきましたが、新しい計画では、素材だけではなく、サービスやソリューションを提供するビジネスモデルへの転換を進めていきます。また、カーボンニュートラルやリサイクルといった社会の課題に広く対応するために、サーキュラーエコノミー型のビジネスモデルを追求していきます。さらに、それらの基盤としてDXを加速し、大きくビジネスのあり方を変えようとしています。

人材戦略も大きく変化しています。経営戦略の変化を機敏にとらえ、実効性のある人材戦略・施策を具現化していこうと取り組んでいます。

2030年の"ありたい姿"から導き出される人材戦略上の課題として、「多様性に富む経営者候補の戦略的確保・育成・リテンション」「"ありたい事業ポートフォリオ"に連動した人材ポートフォリオのデザイン」があります。また、人材戦略の非財務KPI(重要業績評価指標)として、経営幹部の後継者準備率250%や、執行役員の多様化などを掲げています。これらを達成するために、即戦力採用の戦略課題に落とし込んでいます。

採用の半分は即戦力 100人以上採用

即戦力採用の推移を紹介します。前回の長期計画策定のタイミングである2016年以降、即戦力採用が大きく増えています(シート1)。19、20年はコロナの影響で少し採用を抑えていましたが、昨年のVISION2030策定からまた増えています。

ポートフォリオ変革のために即戦力採用を強化しており、総合職では即戦力採用比率が50%を超えています。これまであまり進出していなかったヘルスケアや、ICT分野のマーケティング・営業・開発人材のニーズが非常に高まっており、そうした人材を獲得するために即戦力採用を増やしてきました。

即戦力採用者の離職率は新卒と大差ありません。離職は少なく、要職で活躍しています。

KPIの執行役員の多様化比率でも女性もしくは外国籍20%を掲げており、達成に向けてキータレントを即戦力採用でも採用し、育成していく方針です。

課題は採用ソースの多様化と早期戦力化

100人を超える即戦力採用の採用方法と課題を、具体的に紹介します。人材ニーズは非常に多様化しており、すぐに欲しいという現場のニーズがとても高いので、迅速に充足するために、さまざまな施策を実行しています(シート2)。

今抱えている主な課題は、1つ目が採用ソースの多様化です。従来、当社では人材エージェント中心の即戦力採用を行っていましたが、三井化学の知名度がそれほど高くない領域、例えばヘルスケア・医療・ICT関連会社に勤める人材や、DX人材への訴求が難しく、人がなかなか集まりませんでした。また、採用人数が増えるにしたがってコストもかさんでしまいます。いかに人材エージェント経由以外の採用ソースを確保するかが課題でした。

そこで、今年から、社員に紹介してもらうような形でリファラル採用制度を導入しています。一部報奨金等も導入して、社員からよりマッチした人材を紹介してもらうという内容です。このほか、ダイレクトリクルーティングも強化しています。

2つ目は即戦力採用社員の早期戦力化です。すぐに会社になじんで戦力となってもらうことが重要なので、ここも採用の領域と考えて取り組んでいます。

具体的な取り組みとして、オンボーディングガイドラインの作成があります。今までオンボーディングはある程度職場任せでしたが、全社で共通して行うべき部分もありますので、こうした部分をガイドラインとして作成することを検討しています。

また、数年前から、入社後3カ月以内に入社後研修を、今はオンラインですが、丸2日間本社に集まり座学で実施しています。各部署、各機能を紹介したり、人材マネジメント方針の説明、ネットワーキングを深めてもらうためのワークショップを実施しています。

3つ目が採用ミスマッチの低減です。これまであまり面接をしてこなかった現場マネジャーなどに対して、昨年から面接官研修を始めています。1次面接官や最終面接官を対象に、全社共通のスキル、面接の基礎スキルや、心構えを研修しています。

4つ目は採用のマンパワーの充足です。昨年から中途採用担当の専任者を1人置き、スカウトのフォローやリファラル制度の設計、導入などを行っています。

ポイントは、「経営戦略に紐づいた人材戦略があって、その人材戦略を達成するためにはどういう中途採用が必要で、この中途採用を実現するためにはどういう課題があるのか」ということを考えて実行することだと考えています。

プロフィール

櫨山 義裕(はぜやま・よしひろ)

三井化学株式会社 人事部 人材グループ 採用チームリーダー

2008年三井化学株式会社入社。工場で生産管理を経験した後、樹脂原料の営業、開発、マーケティングに従事。2017年より人事部に所属。新卒採用担当を経て、現在は採用チームリーダーとして新卒、及びキャリア採用を統括している。

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