事例報告 女性のキャリア形成を考える
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- 斉之平 伸一
- 三州製菓株式会社 代表取締役社長
- フォーラム名
- 第106回労働政策フォーラム「女性のキャリア形成を考える─就業形態・継続就業をめぐる課題と展望─」(2019年11月5日)
当社はもともと埼玉県で、煎餅などの米菓を製造販売する事業を行っていました。以前は男性中心の会社でしたが、現在では女性社員の活躍を取り入れて、パスタスナックの製造販売にも力を入れ、業績も非常にプラスになっています。女性社員も多く、全従業員246人のうち182人が女性です。
当社では、特に支援型の職場風土を作ることに重点を置いてきました。一日一善と言って、助け合い・お互い様の風土作りを目指しています。ダイバーシティを意識して、男性、女性、若者、シニアなど様々な社員を支援しやすい職場、そして、支援する側も役に立つことで感謝され、喜びを感じるような職場作りに取り組んできました。その具体的な内容を説明します。
女性管理職や正社員への登用を積極的に
まず、女性活躍に関する組織や体制について、本社や各部門より社員を1人ずつ選出した男女共同参画委員会の設置、女性活躍推進のKPIの設定、残業時間の抑制などを行っています。また、女性の管理職を増やすために、男性が1人昇進するときは女性も1人昇進するルールを設けています。現在の女性管理職の比率は31%ですが、50%に向けて積極的に登用しています。女性の役員比率は既に50%に到達しております。
次に、ダイバーシティ経営について、短時間正社員制度を設けて、売り上げ予定に応じた時間の配分や在宅ワークの活用を進めたり、能力の高い女性パート社員で本人が希望する場合は、積極的に正社員への登用を行ったりしています。現在は女性正社員の31%がパート社員からの登用です。当社では残業量で評価するのではなく、時間当たりの成果をどのくらい上げたかによって評価していますので、短時間勤務の社員であっても不利にならないようにしています。
周囲のサポート体制も充実
柔軟な働き方やサポート体制にも力を入れております。短時間正社員制度には、フレックス制度を組み合わせることも可能で、子どもが急に体調不良になった社員が、すぐに帰宅できるようにしています。周りの社員は残業を頼まないようにして、自由に帰ることができる雰囲気を作っています。会社では一人三役制度という、各社員がメイン業務以外に二つの業務スキルを身に付ける制度を導入して、不在の社員がいても誰かが応援にまわることができるようにしています。
そして、キャリアを継続するためにはワーク・ライフ・バランスの充実が欠かせません。当社では有給休暇の取得奨励や、子どもが小学校3年の間まで取得可能な育児中の短時間勤務制度を設置しています。女性だけでなく、男性の育児有給休暇取得率も全国平均では5%ですが、当社では100%を達成しております。また、業務改革としても、先ほど触れた一人三役制度や、朝礼で社員が助け合って働くための事例発表を行い、優秀な事例を委員会で表彰するということを行っております。
これらの取り組みが功を奏し、女性社員の活躍、そしてパスタスナックのヒット商品化にもつながりました。短時間勤務の社員を助けるため、周りの社員もパフォーマンスを上げています。社長の私も決裁が回付された際は、なるべく早く決断して、承認するように協力しています。会社全体の業務スピードが上がるといった効果も出ており、社員が一丸となって、残業時間を減らして早い時間に帰れるように取り組んでいます。
女性が自由に提案できる仕組み作り
女性活躍経営を推進するにあたっては、五つのステップを重視しています。①理念・戦略の確立と展開、②情報の共有化、③教育、④エンパワーメント、⑤レビューと評価・報酬によって、自立型人材による経営を行うことができると考えています。また、これらのステップを踏まえて、八つの仕組みを進めています(シート1)。このうち三つを具体的に説明します。
シート1 女性活躍経営 8つの仕組み
- 一人三役制度
- 一人一研究
- 社員満足度調査
- システム手帳型事業計画書
- 委員会活動
- 逆ピラミッド型組織
- 月間優秀社員賞
- 社員持ち株会
まず、社員への満足度調査を年2回行っています。制度を変えるためにボトムアップ方式で、現場で困っていることをアンケートで拾い上げて、男女共同参画委員会で十分検討し、私に提言してもらっています。採用したものをその日からすぐに始めることができるのは、中小企業の非常に良いところだと思っております。
次に、システム手帳型の事業計画書を作成しています。これは、一冊のシステム手帳に目標管理や必要事項を全て記載したもので、新入社員や人事異動をした社員が、新しい仕事にすぐに対応できるようにしています。
そして、委員会活動を積極的に行っています。当社では経営意識を持つために、13の委員会を立ち上げ、それぞれに予算を与えて、小さな会社を運営するイメージで活動しています(シート2)。委員会は若手社員や女性社員がリーダーを経験することで、社員育成の良い機会となります。プロジェクトの計画から実行までを通してPDCAサイクルを意識することや、部門横断型の活動を通して会社全体を把握しつつ提案できる力を身につけることにもつながっています。先ほど触れた男女共同参画委員会も、13のうちの一つです。
シート2 13の委員会
クレーム・ゼロ委員会 | 環境チェック委員会 |
安全衛生委員会 | 一人一研究委員会 |
男女共同参画委員会 | 月間優秀社員推進委員会 |
シスター&ブラザー委員会 | IT委員会 |
感動創造委員会 | 工場感謝祭委員会 |
一人三役委員会 | 旅行委員会 |
味覚評価委員会 |
このような仕組みを実施した結果、女性が自由に発言・提案できるような会社になり、新商品がヒットする確率も非常に高くなっていると感じています。