パネル討論──日独の働き方の比較

事例② カゴメが取り組む“生き方改革”

講演者
佐藤 雅訓
カゴメ株式会社 人事部長
フォーラム名
第105回労働政策フォーラム「労働時間・働き方の日独比較」(2019年9月30日)

会社で使いすぎていた時間を個人に振り向ける

当社は、今年で創業120年になります。売上は2,000億円強、従業員数が約2,500人で、事業内容は、飲料を中心にしたものが4割強、トマトケチャップやソースといった食品系が3割強、国際事業が2割強、残りは生鮮トマトの農事業を展開しています。当社はトマトのイメージが強いと思いますが、実際には日本の緑黄色野菜の消費量の17.2%、野菜消費量の4.2%は当社が商品として提供しています。

本日はそんな当社が取り組む"生き方改革"についてお話したいと思います。会社における働き方改革や個人における暮らし方改革、それらを支える人事政策として多様な生き方の推進があります。全ての人がイキイキと働くことは、最終的に生き方改革へつながっていきます。当社では、「会社で使い過ぎていた時間を個人に振り向けることによって、充実した人生を送っていこう」といったメッセージをトップからも発信して、働き方改革を進めています(シート1)。

個人の価値観に応じた働き方のオプションを

当社が考える、あるべき未来の"理想の働き方"とは、カゴメのなかでキャリアをつくっていくうえで、多様化する「個人の価値観」に応じて、柔軟に選択できるような働き方のオプションを多く持つことで、一人ひとりが自分のキャリアを自分で決めることができるようになること。具体的には、時間や地域、キャリア志向、場所などについて、一人ひとりのオプションを多く持つことを目指しています。

「時間」や「場所」に関する柔軟な勤務スタイルを設定

そのような働き方に向けて、ここ数年に実施した人事制度改革の取り組みを説明します。

まず「時間」については、仕事内容に応じた柔軟な勤務スタイルを選べるようにして、それが結果的に総労働時間の短縮につながるよう、当社の2020年度の1人当たりの総労働時間1,800時間を目指しています。制度としては、選択制の時差勤務やフレックスを進めているところです。そして「場所」については、勤務場所を会社のオフィスに限定せず、テレワーク勤務制度を導入するとともに、サテライトオフィスの活用も試行しているところです。

キャリア構築の機会を提供する副業制度も

キャリア志向では、「1カ所に限定されないキャリア構築の機会を提供する」目的で、2019年4月から副業制度を導入しています。この目的は、「自己研鑽による自立したキャリア構築の一助とする」ことや「社外での学びや経験をカゴメのなかに活かして欲しい」ことがあるが、その背景に「総労働時間の削減により増える個人の可処分時間を有効活用することの一手段」として位置付けたことがあります。裏を返せば、総労働時間を削減できた人が副業できることになっており、実際に副業をするには年間総労働時間が1,900時間未満にならないと許可が下りない制度設計になっています。

育児・介護と仕事の両立を可能にする「地域カード制度」

最後に「地域」に関しては、退職理由として多い配偶者との同居や、今後増えてくる育児と仕事の両立を叶えるオプションとして2018年度から「地域カード制度」を導入しました。これは現勤務地が本人の希望勤務地であれば、一定期間動かない「オプションA」と、現勤務地が自分の希望の勤務地でない場合は動ける「オプションB」のどちらかを使える制度。対象は全社員で、カードは社員1人当たり2枚。カード1枚当たり3年という制度設計になっています(シート2)。こうした人事制度改革の取り組みが進んだ先には、個人が自分の価値観に応じた多様な働き方ができるようになります。そして、自分のキャリアを自ら決めることで、会社と個人がフェアで対等な関係になっていくことを目指しているのです。

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