クロージング・コメント

日本は世界で最も高齢化が進んでいる国である一方、高齢者の就労率という点でも世界のトップを走っています。したがって、多くの国々は、高齢者の就労について、日本から学ぼうと考えています。

本日の報告におけるキーワードの一つに「好循環を生み出す」というものがありました。具体的には、労働者は自らの技能を改善することで生産性を高め、雇用主にとって魅力的な人材となる。雇用主は技能に見合った賃金を支払うとともに新たな機会を与える。機会を与えられた労働者は、そのなかで技能をアップデートすることで、さらなる機会が与えられ、労働市場で継続的に活躍することができる──こうした好循環を生み出すための政策を厚生労働省でも展開していることは重要です。

高齢者の就労促進に向けて、政府が行うべきことはまだまだありますが、同時に地方自治体が果たすべき役割も少なくありません。今日の発表では、すでにいくつかの地方自治体で様々な取り組みが始まっているとのことでした。さらに、今後は、こうした政府、地方自治体の取り組みに企業も関与させることも求められています。その意味で、企業も高齢者を雇うことで恩恵を受けられるとの報告は意義深いものでした。

高齢者の活躍を促進するためには、労働組合の活発な関与も必要です。社内の全ての職場において、あるいは全ての年齢層において、従業員のニーズが適切に満たされているか、そして、その結果として、ワーク・ライフ・バランスの充実や適切なタイミングで研修を受講できることにつながっているかを労使の協力で管理していくことが重要です。

先ほどの麻田氏からの問いかけに対する回答ですが、今回の提言で終わりというわけではなく、今後、その内容を実現、実践するための取り組みについても提言していきたいと考えています。併せて、日本と同じような問題に直面している国の事例も紹介していきたいと思います。

例えば、アメリカでは1978年に包括的な年齢差別規制を導入し、定年を70歳以上とすることが定められました。さらに1986年には定年制を完全に廃止しています。

イギリスも当初は、定年制を導入していましたが、これを引き上げた上で、2011年10月には廃止に踏み切りました。

企業における雇用の柔軟性を確保する必要もあります。例えば、年齢に見合った成果を発揮できていない人材を解雇できるよう規制を見直していく必要もあるのではないでしょうか。同時に全ての年齢層において、生産性を維持できるようにすることも重要です。また、仕事を続けたい人には続けることができるよう様々な取り組みを行なわなければなりません。

年齢ベースの雇用慣行については、他のOECD加盟国では多様な取り組みが行われています。例えば、ドイツでは、2008年に化学産業の使用者団体と労働組合が高齢化社会への対策を定める「生涯労働時間・人口動態協約」を締結しました。この枠組みにおいては、労働者が長期にわたって働くことができるよう、ワーク・ライフ・バランスを踏まえたうえで、能力開発を行うためのアクションプランを労使が連携して作成することが定められています。

今後もこうした各国の好事例を紹介することで、日本での改革が進むようお手伝いしたいと考えております。