コメント 高齢者就労レビュー日本レポートへのコメント

Keese氏のレビューの意義は三つあると思います。一つ目は、日本の高齢者雇用はうまくいっていると一般的に捉えられているなかで、高齢者雇用の「質」の問題をはじめ、様々な課題に踏み込んだ点です。二つ目は、定年制の廃止に向けて、短期的には段階的な定年の引き上げで対応し、長期的には廃止するという二段構えでの対応を提言された点です。三つ目は、日本における高齢者の技能の発揮度が外国よりも低い点や、高齢者に対して十分な能力開発が行われていないことを明らかにした点です。

先ほど濱口所長から「年齢に基づく雇用システムは持続可能なのか。もし、そうでないのであれば、年齢に基づかない雇用システムの構築は可能なのか」との問題提起がありました。私もこの部分に問題の核心があると感じています。OECDは「年齢に基づかない雇用システムを構築すべき」との提言をしています。具体的には、定年制、年功賃金、雇用保証、労働市場の二重性といったものを全て見直すべきという内容です。私はこの提言について、日本の「雇用システムを丸ごと変えてください」ということだと理解しました。

そこで、私からは濱口所長の報告の枠組みに沿って、二つの問いを付け加えたいと思います。1点目は、年齢に基づかない雇用システムへの移行に際し、具体的にどのようなプロセスを辿るのか。OECDの提言は、日本独自の雇用システムを全て見直す大転換を迫るものですが、果たして移行プロセスまで設計してくれるのでしょうか。

2点目は、仮に提言を実行した場合、わが国の労働市場のアウトカムは改善するのか。諸外国のなかには定年制が禁止されている国、正社員の解雇が日本より容易な国、同一労働同一賃金が確保されている国もあります。こうした国々はOECDにとっては理想的なのかもしれませんが、これらの国々の高齢者雇用率や雇用の質、中高年者の技能の水準や発揮度合いなど、日本と比べてアウトカムが優れているのでしょうか。

以上、二つの問いを私のコメントとさせていただきます。