政策説明 就業支援のための制度・施策

講演者
齋藤 久仁浩
宮城労働局職業安定部職業対策課長
フォーラム名
第85回労働政策フォーラム「地域における雇用機会と就業支援」(2016年5月11日)仙台開催

宮城労働局では、地方創生に向けた雇用対策の推進について、①宮城県や関係機関と連携したUIJターンの促進、②地域内の求職者を雇い入れた事業主に対する事業所設置・整備費用の一部助成、③実践型地域雇用創造事業、の三つの取り組みを実施しています。本日は、③の実践型地域雇用創造事業についてご紹介させていただきます。

実践型地域雇用創造事業

実践型地域雇用創造事業は、雇用失業情勢が厳しい地域において、その市町村が中心となって、地元の特産品や観光資源を活用して雇用創出につながる取り組みを行うというものです。県内では、2012~2014(平成24~26)年度まで大崎市で、2013~2015(平成25~27)年度まで気仙沼市で実施しました。

対象地域の要件は、①「同意自発雇用創造地域」であること、②地域再生計画の認定を受けていること、の2点です。①については、地域の有効求人倍率と人口減少率をもって対象地域に該当するか判断し、労働局長の同意を必要とするものです。宮城県では35市町村のうち、8市16町が対象地域の要件を満たしています。

対象地域においては、宮城県、当該市町村、地域の経済団体や外部有識者等で構成された「地域雇用創造協議会」が、雇用対策に係る事業構想を国に提案し、選抜されたら国から委託を受けるという仕組みです。事業の内容には、①事業主向けの「雇用拡大メニュー」、②求職者向けの「人材育成メニュー」、③雇用のマッチングや情報発信等を行う「就職促進メニュー」、④雇用創出効果が見込まれる商品・サービスの開発等を行う「雇用創出実践メニュー」の4種類があり、これらを組み合わせた事業構想を提案していきます。

事業の実施期間は3年度以内で、事業規模は1地域当たり各年度2億円が上限です。事業構想には、上記メニューを利用する企業数や求職者数などの「アウトプット」と、利用に対する新規創業や雇用創出の実績=「アウトカム」について、それぞれの目標数値を計上し、各年度で中間評価を行った上で事業継続の判断をします。

この事業実施に当たって、厚生労働省では地域雇用開発支援ワーキングチームから有識者等を派遣し、プランの修正や課題解決に向けた支援等を行っています。

気仙沼市の取り組み

実践型地域雇用創造事業を実施した気仙沼市の取り組みをご紹介します()。気仙沼市は東日本大震災により、基幹産業である水産加工業を中心に、人手不足や雇用のミスマッチが生じています。このため、水産関連産業や観光関連産業の早期復旧と、新しい産業分野の創出などによる雇用の場の復元と創出を図るため、気仙沼市、気仙沼商工会議所ほか経済団体、宮城県気仙沼地方振興事務所で構成する気仙沼市雇用創造協議会が中心となり、平成25年度から27年度まで、3年度にわたり事業を実施してきました。

主な事業は、「就職促進メニュー」の中にある「気仙沼カムバック促進事業」です。これは、震災でやむなく気仙沼を離れた方の帰郷を促す事業です。「雇用創出実践メニュー」については、大島特産のゆずや、唐桑町特産の大唐桑を使用した「気仙沼マドレーヌ」、よしきり鮫を原料とした「気仙沼さつま揚げ」などの地域資源を活用した新商品の開発と、「気仙沼食のブランド確立事業」などに取り組みました。

3年間という短い期間でしたが、事業成果のアウトカム指標を見ると、就職創業者数は目標を上回る成果を上げています。事業終了を迎えましたが、気仙沼市では今後、事業を通じて構築した関係機関・団体との地域内連携を活かし、地域課題の解決に向けて継続して各施策に取り組んでいくこととしています。

地方創生に向けた取り組みの中で、今後も、実践型地域雇用創造事業が各市町村に積極的に活用されていくことを期待しています。

図 実践型地域雇用創造事業

宮城県での取組みを図示化したもの

参考:配布資料5ページ(PDF:630KB)

プロフィール

齋藤 久仁浩(さいとう・くにひろ)

宮城労働局職業安定部職業対策課長

1978年4月宮城県商工労働部職業安定課(現厚生労働省宮城労働局)に入職。宮城県内のハローワークに勤務し、2010年4月から4年間宮城労働局総務部総務課勤務を経て、2014年4月からハローワーク須賀川(福島労働局)に勤務。2016年4月より現職。

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