報告 女性の活躍と人口移動

講演者
林 玲子
国立社会保障・人口問題研究所国際関係部長
フォーラム名
第81回労働政策フォーラム「移動する若者/移動しない若者─実態と問題を掘り下げる─」(2015年11月14日)

本日のシンポジウムのテーマは「若者の移動」ということですが、ここでは男女でどのような移動の違いがあるのか、また地域分布に違いがあるのかということをマクロの視点からご報告したいと思います。

2000年以降に都市部と非都市部の性比が逆転

女性が都会に集まり、女性が減ってしまった地方の自治体は消滅の危機に晒されるという議論があります。図表1は、都市部と非都市部における若者(20~39歳)人口の性比(男性人口÷女性人口)を示したものです(都市部=東京23区と政令指定都市と定義)。1950年代は、非都市においても男性の方が少なかった。これは戦争で多くの若い男性が亡くなったためであり、平常時では考えられない状況にありました。1960年代~70年代は、中卒の「金の卵」が都市部へ流入したため、都市に男性が集中し、性比が高くなるという傾向が顕著になりました。ところが、1980年代から都市部の性比が下がり始め、2000年に都市と非都市の性比が交差し、2010年になると逆転してしまいます。つまり、都市に女性が集まっていると言われるのは、2000年以降について見れば、数字としては正しいと言えます(「都市女性指数」を「都市部の性比から差し引いたもの」と定義して示したものが、図表2になります。)。

図表1 都市部と非都市部の若者人口性比

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参考:配布資料6ページ(PDF:687KB)

図表2 都市女性指数(20‐39歳) 1950‐2010

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参考:配布資料7ページ(PDF:687KB)

都市に女性が増える傾向は世界共通

じつは、都市に女性が増える傾向は日本だけではなく、世界的にも共通して見られます。図表3は国連の人口統計から、1980年~2015年の世界の都市女性指数を年齢別に表したものですが、2015年を除けば、いずれの年や年齢層でも都市には女性が多いという結果になっています。地域別に見ると(図表4)、アジアやアフリカ以外で都市部への女性の集中が見られ、国別では(図表5)欧米・ラテンアメリカの国々のみならず、イランやインドネシアでも都市部へ女性が集中しています。

図表3 年齢階層別都市女性指数 世界, 1980‐2015

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参考:配布資料8ページ(PDF:687KB)

図表4 年齢階層別都市女性指数 地域別, 2015年

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参考:配布資料9ページ(PDF:687KB)

図表5 都市女性指数(20‐39歳) 国別, 2015年

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参考:配布資料10ページ(PDF:687KB)

経済水準が上がると都会に若い女性が集まる傾向に

都市女性指数と1人当たりGDPの相関関係を見ると(図表6)、経済水準が上がるにつれ都会に若い女性が集まってくるという傾向があり、逆に、発展途中の状況では男性が都市に集まるといった国際的な傾向が見られます。日本の場合も、1960~70年代は都市に若者が集まりましたが、国際的に見ても、経済が急速に発展する時には、働き手の男性が都市に集まるということが言えます。

図表6 都市女性指標(20‐39歳)と一人当たりGDP, 国別

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参考:配布資料11ページ(PDF:687KB)

女性は男性より移動の動きが小さい

日本に話を戻し、都市部と非都市部における人々の移動について見てみると、図表7は、住民基本台帳の人口移動報告から作成したもので、政令指定都市の転入者と転出者の数を示しています。これによると、特に1960年代前半は都市に入ってくる人の方が多く、1970年代は逆に都市から出ていった人の方が多くなっています。転入数と転出数の差が徐々に縮まってくるのが1980~90年代であり、2000年以降は男女とも常に都市に入ってくる方が多いということが分かります。

図表7 都市部と非都市部との人々の移動

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参考:配布資料12ページ(PDF:687KB)

先ほど、都市女性指数から、2000年以降、都市部に女性の方が多いと紹介しましたが、それは転入-転出の差の幅が男性より女性の方が大きいためです。つまり、女性の方が都市に入ってきた後も出て行かず、都市部にいったんとどまるという傾向がこのデータから見て取れます。加えて、男女別の特徴を挙げれば、男性は女性より動きが大きく、より多く入って、より多く出ていくという点があります。女性は男性より入ってくる量は少ないですが、出ていくのも少ないので、女性の方が都市に多くなっていきます。

女性活躍と所得の関係

これに関連して、佐賀県の男女共同参画センターが作成した都道府県別の女性活躍指数と、1人当たりの県民所得、また転入超過数をプロットしてみると(図表8)、断トツの東京を除いても、女性の活躍度が高い県の方が1人当たり所得が高くて転入数も多いという、統計的に有意な相関関係が見い出されました。

図表8 都道府県別にみた女性の活躍と経済、移動

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参考:配布資料13ページ(PDF:687KB)

男性の26%が地元にUターン

図表9は、第7回人口移動調査(2011年)の結果から、県移動パターンを男女別、学歴別、年代別、そして地域別に示したものです。出生県から他出し、初職時に出生県へ戻る割合を「県Uターン割合」とすると、男性は26%、女性は23%。僅かな差ですが、やはり男性の方が地元に戻ってくる割合が高くなっています。また、学歴が高いほどUターンしている傾向が見られ、男女差は学歴が高いほど縮んでいる結果になりました。年代別に見ると、明らかに若い世代ほどUターンしています。また、出生地が三大都市圏(東京、名古屋、大阪圏)か否かで見ると、非三大都市圏の人の方がUターン割合は高いという結果になりました。

図表9 県移動パターンの男女差

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参考:配布資料14ページ(PDF:687KB)

四国・九州で高い女性のUターン

更に11の地域ブロックに分けると、かなりばらつきがありますが、注目すべき点として、四国や九州・沖縄でUターン割合は女性の方が高くなっているということです。なお、東北のUターン割合が低くなっていますが、これは、東日本大震災の影響により被災三県(岩手県、宮城県、福島県)の調査ができなかったことが影響しています。

プロフィール

林 玲子(はやし・れいこ)

国立社会保障・人口問題研究所国際関係部長

東京大学保健学修士、東京大学工学士(建築)、パリ大学修士(D.E.S.S.)、政策研究大学院大学博士(政策研究)。セネガル保健省大臣官房技術顧問(JICA専門家)、東京大学GCOE「都市空間の持続再生学の展開」特任講師などを経て2012年より現職。保健と人口、都市化と人口移動、人口と開発に関する研究に従事。”Long term world population history - A reconstruction from the urban evidence”により2009年度日本人口学会・優秀論文賞受賞。

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