開催挨拶:第68回労働政策フォーラム
アンダークラス化する若年女性:労働と家庭からの排除
(2013年7月13日)

小杉 礼子
労働政策研究・研修機構 特任フェロー/日本学術会議連携会員

写真:小杉氏

JILPTと日本学術会議「社会変動と若者分科会」による労働政策フォーラムの共催はこれで5回目です。

労働政策に特化した研究機関であり、実証研究を基にした発信を行っているJILPTにとって、過去、現在、未来へとつながる普遍の世界である「学術の世界」に根差すということは大変重要なことです。一方、人文社会科学から自然科学に至るまでの幅広い科学者たちが集まる日本学術会議にとって、政策的な提言をしていくということは、今まさに求められていることであり、学術会議のミッションと言えます。こうした背景から、2つの組織が共同して、フォーラムを運営するという運びとなりました。

2009年に第1回のフォーラムを開催しました。このとき取り上げたのが、若者たちの現状、自立の困難さの背景や、誰が自立の困難に直面しているかということでした。私もその中で発言したのですが、もっとも困難を抱えているのは誰か、データを分析すると、性別で言えば女性でした。

学歴が低かったり、中途退学であったり、そうした女性たちが安定的な就業の世界にはなかなか入れない。貧困などさまざまな形で自立の道が見えない状況にあることが09年の会議で、すでに指摘されていました。

その後の4回までの会議では、若者問題の中で、特に女性が重要だということを意識しながらも、議論の真ん中からは抜け去ってしまっていたところがありました。その背景を改めて考えると、もともと若者の問題としては、1990年代の後半から若い人たちがすんなり労働市場に入れない、就職が難しいという状況になり、企業内での訓練を受けられず、非正規の世界に入ることで自立が難しくなるということがテーマでした。ところが80年代の非正規労働について改めて考えてみると、そこにあったのは主婦パートといわれる女性たちの働き方でした。日本の非正規の働き方と正社員との間で格差が非常に大きいということが背景にあったからこそ、非正規化する若者たちが大きな問題になったわけです。

80年代の非正規は、まさに女性の問題であったわけですが、日本の労働の世界の中では、あまり大きな問題だと意識されてこなかった。そこにあったのは、家族のなかで、稼ぎ手と育児・家事の役割を性別で分業してきた日本の家族の在り方だったと思います。そして、私たち自身がそういう家族の中で育ってきたため、見えてはいても、視野の中心からは外れがちであった。

そこで今年の会議では、若い女性たちの自立困難を真正面に見据えて議論をしようということにいたしました。