事例報告1 ハローワークにおける高校生の就職支援:
第49回労働政策フォーラム
変化する若者へ向きあうキャリア・ガイダンス
(2010年10月21日)

新田 仲/労働政策フォーラム開催報告(2010年10月21日)

東京労働局渋谷公共職業安定所事業所 第一部門就職促進指導官上席  新田 仲

私からはハローワークが行う高校生の就職支援策についてご紹介させていただきます。

まず、高校生の就職環境についてご説明します。図1は高校新卒者の求人・求職状況の推移(7月末現在)を示したものです。求人倍率は平成4年には3.08倍もあったのですが、平成23年度は厳しいと言われていた昨年よりもさらに低下し、0.67倍になってしまいました。これは昭和60年の調査開始以来、6番目に低い数字でした。

図2は高校新卒者の就職内定率の推移を示しています。平成22年3月末は93.9%となっており、最終的には9割の高校生が内定をもらっています。しかし、平成21年9月末、11月末時点の内定率をみると、それぞれ37.6%、68.1%と非常に厳しい状況だったことがおわかりいただけるかと思います。平成23年3月卒業予定の高校生の9月末時点の内定率もおそらく30%台になるのではないかと推測しています。

図1 高校新卒者の求人・求職状況の推移(7月末現在)/労働政策フォーラム開催報告(2010年10月21日)

次に近年の高校生が就職するうえでの課題を企業の立場と生徒の立場からご紹介します。企業の立場として、まず1点目は景気の影響などから高卒求人を控えていることがあげられます。2点目として、採用した人材を即戦力化したくても教育訓練を行うゆとりがないことがあげられます。したがって、企業側は採用にあたっては、すでにスキルをもっている方、経験のある方を求める傾向にあるのではないかと感じています。

一方、生徒側については、1点目として、就職活動の準備、就職に対する心構えが不足していることがあげられます。2点目として、進学を希望していた生徒が経済的理由で急に進路変更しなければならない状況があることです。

図2 高校新卒者の就職内定率の推移/労働政策フォーラム開催報告(2010年10月21日)

こうした課題を踏まえたうえで、ハローワークがどのような支援を行っているかご説明します。図3は1年間における新規高卒者の支援の流れを示したものです。高校生の就職活動は求人の受付から内定に至るまでのスケジュールがきっちり決められています。求人の申込みは、毎年6月20日以降でなければしてはいけないことになっています。具体的な求人内容について、生徒、学校と企業が接触していいのは7月1日以降です。生徒が企業の求人に応募できるのが9月5日以降、企業が採用選考できるのは9月16日以降となっています。

高校生の就職スケジュールに沿って支援を展開

このスケジュールに沿ってハローワークが行っている就職支援をご説明します。まず、高校3年生とその保護者に対する支援を学校との連携により、年間を通じて行っているほか、求人の確保に向けた活動もしています。

4月の早い段階には、事業主団体などに対し、公共職業安定所長名で要請するほか、求人がどの程度ありそうかといった情報収集も行います。6月初めには、求人受付開始に先立ち、学卒求人の申込説明会を開催しました。高校生の採用に関するルールや公正な選考採用について、企業に理解を深めてもらうのがねらいです。企業との接触が解禁される7月には、ハローワーク渋谷独自の取り組みとして、学校長と渋谷公共職業安定所長との懇談会や企業向けの合同学校説明会を実施しました。さらに東京労働局とハローワークの共催で高校生のための合同企業説明会も開催しました。8月には、夏休み期間を利用し、高校生に対して、模擬面接によるトレーニングを集中的に行いました。10月は、ハローワーク渋谷主催の合同面接会を世田谷で、また、東京労働局と共催の就職説明会を六本木で行いました。

図3 新規高卒就職者の支援の流れ/労働政策フォーラム開催報告(2010年10月21日)

第一希望の企業に合格できなかった生徒を「未内定者」と呼びますが、彼らに対する個別支援を10月から3月末まで展開します。11月に入るとハローワーク渋谷主催の2回目の合同説明会を開催します。また、この時期から来年度の就職活動に向けて、高校2年生に対する支援も開始します。2月には、年が明けてもなかなか内定がもらえない生徒もいるので、彼らのための合同説明会を東京労働局と各ハローワークの共催で行う予定です。

ジョブサポーターによる支援

具体的な支援メニューについて、ご説明します。1番目は、高卒就職ジョブサポーターによる支援です。高卒就職ジョブサポーターはキャリアコンサルタントなどの資格を持っており、ハローワークで高校生のサポーターとして、就職支援にあたります。ハローワーク渋谷管内では毎年約350人の生徒が就職を希望しますが、彼らのために部長以下4人のハローワーク職員とジョブサポーター3人のチームで対応しています。

ジョブサポーターは学校を訪問して、先生方と今後の就職支援について相談や打ち合わせを行うほか、生徒と直接顔を合わせての就職相談を行っています。また、ジョブサポーターが持つ企業との人脈で求人の確保にもあたっています。

2番目は求人の確保です。とくに昨年からは景気が厳しい状況なので、安定所職員とジョブサポーターで求人情報を収集して、求人の確保に日々努めています。さらに渋谷の電光掲示板に「新規学卒求人募集」という案内も出しています。

3番目は高校との連携です。私たちは、高校と連携して、生徒を支援することが非常に重要だと考えています。具体的な支援の1点目として、高校担当者連絡会議を年に数回開催しています。就職担当の先生方を集め、その時点の最新情報を提供しています。先ほど室山先生よりご説明のあったVRTカードもご紹介しました。2点目として、学校長と渋谷公共職業安定所長との懇談会を開催しました。

3番目が就職面接会の開催です。ハローワーク独自の取り組みとして、企業のための合同学校説明会を開催しました。企業の担当者と学校の就職担当者をつなぐ場として非常に有意義で、実際に就職に結びついた生徒も複数います。また、世田谷で「ヤングワークフェア」を開催しました。さらに新しい試みとして、高校2年生向けの企業ガイダンスを11月に各高校で行う予定です。

最後に就職支援におけるハローワークの役割を3点あげます。1点目は、高校を卒業しても就職する生徒たちだけではなく、大学などを卒業してから就職することになる生徒も見通したうえで、学校や保護者と連携して職業教育を行っていくことです。2点目は新規学卒者が就職した企業に定着できるように、きめ細かな職業相談・紹介を行っていくことです。3点目は、新卒者の採用や定着に関するコンサルティングなど企業に対する支援を行い、積極的な採用を働きかけることです。

企業と生徒の両方に関わる労働市場の専門機関の1つとして、今年もハローワーク渋谷では100%の内定をめざして、全力で取り組んでまいりたいと思います。