報告「雇用多様化の今日的課題」
登録型派遣労働者のキャリア形成は可能か?―派遣元ヒアリング調査から―

配付資料(PDF:284KB)

この研究は、我々雇用戦略部門で行っているプロジェクト研究のサブテーマとして、2008年から派遣労働の研究として行われております。派遣労働というのは、皆さんご存じのように、派遣労働者と、派遣先と、派遣元と、この三者の契約によって成り立っている労働です。ですので、研究においても、この三者の調査というのが必須になります。調査方法については、今日お話しするのは、派遣元のヒアリング調査についてですが、2008年から派遣労働者についてヒアリング調査を行い、そして、この間までアンケート調査で三者について実施しております。ですので、一連の派遣労働に関する調査の中、研究の中の一つということで、きょうはお話を聞いていただきたいと思います。

お手元のほうにございます資料ですが、パワーポイントのものがありまして、その後ろに、途中から付属資料という形で表などがつけられています。主にパワーポイントに従ってきょうはお話をさせて頂きますが、適宜パワーポイントの中で付属資料何表参照というふうに出てまいりますので、そこの部分では付属資料のほうを見ていただけるとよろしいかと思います。

また、本日報告します内容は、ついこの間ホームページのほうに公表されまして、「労働政策研究報告書」のNo.124(『人材派遣会社におけるキャリア管理―ヒアリング調査から登録型派遣労働者のキャリア形成の可能性を考える―』)というもので、ホームページで全文ダウンロードできるようになっておりますので、詳細はそちらのほうを見て頂ければと思います。

まずキャリア形成という言葉についてですが、ここでちょっとあらかじめ定義をしておきたいと思います。資料2ページです。キャリア形成とは、派遣労働者の職業能力の向上に伴って職務が高度化して、それとともに処遇が向上すると。賃金が能力とともに上昇していくよということをキャリア形成の一つの定義としたいと思います。そして、キャリア管理というのは、派遣会社が派遣労働者のキャリア形成を支援する取り組みや制度のことを示すと思っていただけたらと思います。

派遣労働者のキャリアを考える上で、その人が生きてキャリアを積んでいく上で、派遣労働というものが、その人の人生のキャリアの中でどういう位置づけであるかということを、まずちょっと考えたいと思います。資料3ページです。それで、まず入り口と、出口と、そして通過点というものがあるのではないかと思うわけです。入り口はここです。まず派遣労働の入り口として、ヒアリングの中で聞くということは、入職のハードルはどのぐらいのものなのかと。例えば普通の正社員で入職していくときには、学歴であったり職歴であったりとかということで、かなり中途の転職市場というものは厳しいということになりますけれども、派遣労働者の場合はどうかということですね。前の報告にもありましたけれども、専門的な即戦力の人材を派遣労働では必要とされているということになっておりますけれども、少なからず業務未経験者というのがどの程度派遣社員の中に入っていって、派遣労働の中で業務経験を積んでいけるかということも見たいと思っています。

そして、真ん中にある派遣社員のキャリアをちょっと飛ばしまして、出口のほうですけれども、派遣社員がキャリアを積んでいく上で、行く末というか、将来的になれるものというのは、2つ考えられると思います。一つは、正社員に転換するということですよね。もう一つは、派遣社員を続けるということになります。おそらく中には非労働力化する方もいらっしゃるでしょうし、パートタイムになる方もいらっしゃると思いますけれども、キャリアという面で考えた場合には、派遣労働を継続するか、正社員に転換するかという、この2つの点で見ていきたいと思います。

そして、派遣社員をやっている期間中のキャリアはどのように形成されていくか。ちょうど真ん中のところですけれども、非常に重要なのはマッチングです。それによってキャリア形成がどの程度できるのか。能力が上がったときにどの程度派遣社員で賃金が上がるのかということです。そして、教育訓練とか、キャリア支援制度というものは、どの程度の効果があるのか。そして、派遣会社というのは、ちょうど派遣先と派遣労働者の間に入っていろいろ交渉したりしますけれども、そういう役割というのはどうなのか、そういったことを今回の研究では見て、それぞれのポイントでちゃんとその機能が果たせているのであれば、派遣労働というものでキャリアがある程度形成できるのではないかと考えるわけです。

検証内容としては、資料4ページですが、まず1番目で、青字で書いていますが、これが入り口のところの検証事項になります。入職のハードルです。2番目はマッチングです。これは赤い字で書かれていますので、派遣のやっている期間中のキャリア形成はどうなっているかというところで考える部分です。マッチングと、3番目として評価というのがどういうふうになされているか、それに従って賃金はどうなのか。4番目、教育訓練はどのように行われているのか。そして、緑の字で5番目、6番目書かれておりますが、ここが出口の部分で、検証する部分です。正社員転換というのがどの程度あるのか、派遣先、派遣元での正社員転換というのも考えられますので、そういう可能性はあるのか。6番目、年齢の壁ということで、将来にわたって派遣社員で継続して働くことになりますと、一般的には35歳の壁というようなことを派遣労働では言われますけれども、実際にその壁というものは存在するのかどうか、派遣社員でずっと働き続けることができるのかを考えていきたいということになります。

それで、調査方法について若干お話をしたいのですが、付属資料の2ページ、表の2というところがありますけれども、調査対象企業の概略という、横のマトリックスになっているのがあります。これが今回ヒアリングで調査した派遣会社の全体像になります。それで、A社からN社まであるのですが、最後のN社の部分については、これは常用型の技術者派遣の派遣会社を入れております。これは登録型の派遣会社とどのように違うかという、ある程度比較ができる対象として1社だけ入れております。残りは全部登録型派遣会社になっております。報告書の中の分析に関しては、技術者の常用派遣というのはビジネスモデルが相当違いますので、同じ分析の枠組みには入れられませんので、前の13社を中心に分析を行っております。この13社というのはどういう属性なのかということですが、資料5ページにありますように、ヒアリング調査対象というのは、売り上げの規模上位90社に入るということです。90社というのは、この図を見ていただくとわかるのですが、これは、ここまで、一番下のここの右端のところが90位まで書かれております。1位の売り上げというのが断トツに多くて、こういう累乗曲線を描くように、きれいな形を描くように売り上げというのが形成されているというのは、これが派遣労働市場の大きな特徴であります。すなわちどういうことかというと、上位の10社くらいがそのマーケットを独占しているというようなことになります。そして、実は日本での派遣会社数は、実際にはっきりとは把握されていないのですが、3~4万社程度だと言われております。このことから考えますと、上位90社というのは、0.3%ぐらいの上位に入ると考えていただきたいと思います。ですので、比較的今回お話しするヒアリングの対象になった企業というのは、本当の派遣会社で大手と言われるのは上位5社なのですが、それよりも90位ぐらいまでのところのすそ野の広い部分ですけれども、それでもまだリーディング、まだ先頭を走っている企業であると思っていただけたらと思います。

ただ、この業界の特性として、後ろの下位のほうの企業というのは、上位の企業が何をするかをかなりよく見て走るということがありますので、上位の企業がやることを大体下位の企業がやっていくという傾向にあると思っていただければと思います。

それで、附属資料第2表のマトリックスの見方なんですけれども、左側のA社からC社というのは、大手の事務系の独立の派遣会社になります。D社はそれを追いかける形の事務系のチャレンジャーの中堅企業になります。そして、E社から真ん中辺のあたりは資本系、もしくは専門派遣を中心にやっているような企業になっておりまして、L社というのが製造業務派遣をやっているところです。M社というのが軽作業をやっているということで、そのL社とM社が製造業と軽作業をやっているのですが、あとの多くは事務系の派遣で一般的な派遣をやっているか、それとも専門的な派遣をやっているかというようなカテゴリーで見れるようになっております。

次に、検証事項に入っていきますけれども、まず6ページの入り口の部分ですけれども、ここにも書かれていますように、入職ハードルは低いということです。附属資料の第3表なども見ていただけたらと思うのですが、入職のハードルが低ければ、キャリアを積むためであったり業務経験を積むために派遣労働を利用して、そこを足がかりにして業務実績を積んでいくことができますので、入り口が広いに越したことはないと思います。そして、1番目のところに書かれていますように、学歴、正社員経歴は問われず、業務経験歴が問われるということで、前歴で派遣社員をやっていようが、正社員をやっていようが、パートであろうが関係ないと。学歴も、あまり高卒であるとか、大卒であるとかということを、正社員で転職するときほどは問われないということがあります。そして、業務未経験でも入職できる可能性があるということで、これは第4表のところを見ていただきたいのですが、いろいろとこちらも書いています。未経験でいいから、入れて育ててみませんかということであったり、業務は未経験なんだけれども、こういう人柄のいい方がいらっしゃいますよとか、最初の半年間は様子を見るために時給は低くても我慢して入れて育ててくださいというようなことで、派遣会社が業務未経験でも押し込むようなことをやっているということがあります。そして、3つ目ですけれども、新規派遣では、40代以降は厳しい面も見えるということで、これは第6表のところにつながるのですが、こういう事情があると。特に新規派遣については、40代はちょっと厳しいねというような声が多く聞かれたということがあります。継続して将来的に派遣でずっと働いていく場合はどうかという話については、これは後の出口のところでお話をしたいと思います。

次に、入り口、そして派遣期間中のキャリア形成について、7ページのマッチングということですけれども、これは非常に重要なことであります。実際につく仕事によって技能が向上していく、業務経験が磨かれるということになります。特に派遣労働者というものは、20~30代が非常に多いです。20~30代のうちにやはりきっちりとした職業経験、そして能力・技能というものを身につけていないと、40歳以降の働き方というのが、非常に賃金も低いものになってしまったり、そのままキャリアが途絶えてしまったりということになります。40代以降のキャリアをきっちりするためにも、20~30代の派遣労働でのキャリア形成というのは非常に重要なのですが、その中で一番重要だと思われるのは、マッチングだと思っております。

しかし、これが実際に思ったようにうまくいっていないという事実があります。キャリア形成を意識したマッチングは積極的に行われているとは言えないということですね。これはどういうことかというと、やはり派遣会社と派遣先の力の構造にあると思います。基本的に派遣先の意向に派遣会社というのは引きずられるということがありますので、派遣先のほうが、賃金を上げるにしても、もうちょっと能力開発してくださいと派遣会社が言ったとしても、そこの状態でとどめ置くというようなこともあります。ですので、なかなか派遣会社が思うようなマッチングができないというのが一つあると言っています。

ただし、主力の専門業務については行われる傾向にあるということです。特に資本系、中堅ニッチというふうに書かれておりますけれども、例えば経理や金融事務や医療事務、あとはクリエィティブ系で印刷の編集でというものについては、ある程度労働者の技能が伸びた段階で派遣先との交渉をして賃金を上げるなり、もしくはその人が次の契約に行ったときに、その賃金を担保した上で、新しい、一つ上の段階に上げたような派遣先に派遣労働者を出すというようなことも行われているわけです。けれども、非常にポーションとしては小さくて、派遣先とのパイプが、資本系のようにパイプが太い場合であったり、その派遣会社が自分のところの主力だと思っている専門業務に特化しているような場合は、これはもうその人たちの付加価値を上げることが、その派遣会社にとって利益が上がることですから、そういうことをやるという傾向にはあります。けれども、非常に小さいというふうに見えます。

3つ目に、製造系、軽作業系では先着順ということですね。ですので、能力によってのマッチングというものがほとんど行われていないということがあります。特に今現在不況期です。不況期の場合というのは、派遣先から派遣労働者を送ってくれという案件がもう激減しているわけですね。そういうときにどういうことが起きるかといったら、派遣会社としてはオーバースキルの労働者を低い案件にも出してしまうということになります。これは労働者のほうから見たら、自分はこれだけの業務ができるのに、こんなに低いレベルの業務につかされている。この低い業務というのは、賃金も低いですから、不況期になると、派遣労働者で働いている人の賃金が下がるというのは、そういうところにもあるかもしれないというふうに思っております。賃金がやはり技能や能力にリンクしない構造に、派遣の労働市場というのはなっているんですね。

どのような関係になっているのかというところなのですが、8ページの図をちょっと見ていただきたいんですけれども、これは常用型の技術者派遣のマッチングの図になっております。これでどういうことがわかるかというと、まずマッチングというのは、この黄色い部分で起こるのですが、まず仕事内容(ジョブ)というのが決まって、それに見合った派遣料金というのがあるわけです。この派遣料金というのはある程度市況によって変動するんですね。一方、常用型派遣の場合は、普通は正社員と同じような感じで考えていただけたらわかると思うのですが、能力・技能の評価というのをきっちりやっています。技能・能力に見合った賃金というのが、ここが賃金制度ででき上がっておりますので、派遣料金に見合った賃金の人を出すということで、ここでこういうマッチングが行われるということになります。ですので、この派遣料金の市況が直接この賃金に与える影響というのは非常に少なくて、常用型技術者派遣では、市況が悪くても賃金がそれほどダウンしないという状況になります。

一方、9ページは一般的な事務の登録型派遣になりますけれども、市況というものが派遣料金を通じてここに直接賃金に連動してくるということになります。じゃあ、どこでマッチングするかというと、派遣先が出してくる、こういう仕事に人を送ってくださいという仕事のジョブの内容と、この人、こんなことができますよと、派遣会社が派遣労働者の持っているスキルの内容でマッチングすると、これだけのことなんですね。派遣料金はここに決まっていまして、ここから連動して賃金が決まると。ここが低くなれば、この賃金はおのずと下がっちゃうということになります。ここの点線の部分は評価がほとんどないんです。能力・技能の、この人はこのぐらいだから、このぐらいの賃金だねっていう、この評価というのがほとんどありません。そういうこともあって、完全に派遣料金、市況によって変動する派遣料金に賃金が連動するというような構造が起こっています。こちらの軽作業・製造系も同様です。特にここは点線で書いていますけれども、製造系・軽作業系の場合は、先着順でマッチングが行われる、つまり、人であったらだれでもいいというような状況ですので、スキルという考え方がほとんどないと思ってください。ここに書かれていますように、賃金は派遣料金に連動するということですね。賃金の上昇は、移動型よりも内部型であると。同じ仕事を行っている限り、賃金は上昇しないということです。派遣先での業務が高度化すると上昇する傾向にあるということなのですが、ただし、アドホックということで、派遣先が、じゃあ、上げてもいいよというような形で言った場合のみ上がると。業務が高度化したとしても、必ずしも賃金が上がるわけではないということになります。そして、派遣先への料金交渉というのは、個人の契約一年に一度というのが大体通例で行われているようです。けれども、この不況期ですので、ほとんど機能していないというのが現実で、実は2004年ぐらいまでは派遣会社が集団的に派遣先に対して料金交渉を行っていたということがあったのですが、そういうものも消滅したというような状況になっております。

先ほど言いましたけれども、評価制度は基本的にないということで、ただし、ここの真ん中辺に書いています製造業派遣については、評価制度がある場合もあるということで、ただ、基準は異なるということで、おもしろいなと思ったのは、派遣先である大手の製造業の工場では、やはり製造業の派遣の人たちの技能レベルを高めるために評価制度を入れているというようなこともあります。大体2割ぐらいです。その2割ぐらいのところでは、正規転換になるときに、そういう評価を使ったりするという事実もあるわけです。

ちょっと12~13ページは飛ばしまして、14ページの教育訓練についてですけれども、実は教育訓練というのは、かなり整備されている状態ではあるのですが、大企業ほど多くて、フリーライドできるような基礎的な研修メニューが多いということがあります。登録型派遣というのは、いろんな派遣会社を同時に登録していて、必ずしも同じ派遣会社から派遣されるわけではないということがありますので、必ずしも教育投資の投資した部分が自社に回収されるということがなくてリスクが高いわけですね。ですので、なかなか小さいところでは、そういう充実した教育訓練メニューを立てることができない。じゃあ、何のためにやっているかといったら、引きつけであったり、つなぎとめのために教育訓練をやっていると。どちらかというと福利厚生的な意味合いが若干強いかなという形ではあります。ただし、資本系であったりとか、主力専門分野があるような、小さな派遣会社においては、仕事紹介へのつながりが見られるということもあります。製造系というのは、派遣前研修というのが中心になっておりまして、大体6割程度の賃金が支払われて半分ぐらいの労働者に対して行われているということです。

そして、出口の部分にいよいよ入ってきましたけれども、その派遣労働でやった業務経験というものをステップとして正社員転換が望めるのかどうかということなんですよね。15ページにありますのは、派遣先での直用化ということであります。付属資料の9表、10表のところに具体例が載っておりますけれども、紹介予定派遣と同じぐらいに引き抜きがあるということです。今現在統計上では紹介予定派遣というのは、年に3万件ぐらいは直接雇用に転換しているというようなことがあります。派遣会社の方の実感、まあ、体感といいますか、そういう感じでは、大体同じぐらい、もしかしたらもっと多いかもしれないと言っていました。どういうところで多いかというと、外資系や中小企業、そして、契約社員という形でまずは転換して、そこから、さっき高橋さんのお話もありましたように、契約社員から正社員に段階を踏んで上がっていくようなケースもあるのではないかということです。とはいっても、派遣社員から正社員、直接雇用になったときに、賃金が必ずしも上がるわけじゃなくてむしろ下がるというケースもあります。ですから、こういうケースの場合、派遣労働者の方のほうが、もう正社員、直接雇用にはなりたくないと、私は派遣会社で派遣社員をずっと続けたいんだということをおっしゃって断られる例というのもかなり多いと聞いております。そして、どの年齢層で多いかといいますと、30代半ばまで、40代はちょっと厳しいねという話がありました。これはどういうことかと考えますと、大体30代半ばまでは正社員との賃金格差というのが比較的小さいんですね。ですので、企業側としても乗り入れがしやすいという状況もあるかと思います。

次に、16ページの正社員転換の派遣元での常用雇用というのがあります。これは昨今の法改正の影響もありまして、請負化が今派遣業界では加速しております。多くの派遣会社では、今やっている派遣の事業をどうにかして請負という形に転換できないかというようなことを模索している途中です。請負をするには、必ずその部門を、請負社員を見るリーダー役というものが必要になってきます。大体このリーダー役というのは正社員、もしくはちゃんとした正社員に近いような契約社員の方がやられる場合が多いのですが、そういう人たちを派遣社員からリーダー格に上げて、そして、そこの部門を請負化するというような事例が出てきております。2番目に書いてありますけれども、この集約化というのも、現在の派遣業界のトレンドといいますか、形になっています。大きな派遣先ですと、10社、20社と派遣会社が幾つも入っている例があるんですね。そうした場合に、やっぱり事務作業が煩雑になりますので、どこか1社、もしくは2社ぐらいに派遣会社を集約しようと大企業が動く場合があります。そうした場合に、その集約したときに、大企業の中には何百という派遣社員が働くことになりますので、その派遣社員と派遣先をつなぐ窓口といいますか、リーダー役みたいな形で派遣元で常用雇用、いわゆる派遣会社の正社員に転換するというような例もあります。

17ページは先ほど言った請負の例で、これは百貨店のG社の例ですけれども、皆さん百貨店に行かれたことがあると思うんですけれども、必ず入り口のところに案内業務というのがあります。きれいな制服を着たお姉さん方が案内をしてくださるのですが、これはもともと案内業務で百貨店の正社員の下に派遣社員がついてやっていたものを、案内業務全部を請負にしようということになって、ここの派遣社員をG社の正社員にして、その下に時給スタッフを置いて請負化をしていると。今多くの百貨店では、こういう請負で案内業務をやっているところが多くて、これも一つの請負化の形になっているのではないかなと思ったりもします。

そして最後に、いろんな事情で派遣を続けると、継続して働きたいという人たちもいます。18ページは、年齢というのはどのような障壁になるかということなのですが、以前35歳の壁ということが言われましたけれども、派遣各社、どこに聞いても、35歳というのはもうなくなったねというのは、皆一様に言っていることです。じゃあ、どこまで上がったか、5歳ぐらい上がって40歳ぐらいが今壁じゃないかなというような印象です。やはりアラフォー世代の牽引というのは非常に多くて、やはりアラフォーの時代の一般職で入った女性たちというのが、ずっと就業を継続する志向であるという人たちも多いらしく、その人たちがずっと、派遣先を継続しながら続けていっているということで、かなり年齢が高くなってきているという現象があると思います。けれども、やはり年金の受給年齢まで働き続けることはやっぱり難しいだろうなというのが印象です。特に製造系、作業系、そしてクリエィティブ系などは締め切りに追われるということもありますので、体力が低下すると、やっぱり続けるのは難しいということですね。

じゃあ、年齢の壁ですよね。40以降も働き続けられる条件というのはどういうものがあるかということで、詳しくは第6表などを見ていただきたいのですが、専門性であったり、経験であったり、ヒューマンスキルであったり、あとは派遣先を固定することは当然なんですけれども、派遣元を、派遣会社を固定することによって、その人を人物担保して売り込むことができるので、継続して一つの派遣会社で働いてほしいとおっしゃっていました。

最後になりますが、19~20ページの結論です。まず入り口としては、入職のハードルが低いということです。未経験から業務経験を積むきっかけをつくれるということがあります。派遣期間中ということを考えますと、かなりここでキャリア形成をすることは厳しいなと思います。業務経験は積めるのですが、能力の向上を伴う賃金の上昇というのはやはり望めないということがあります。そして、出口。少なからず正社員転換の道があるということがわかりました。派遣社員で年金受給年齢まで働き続けることは難しいですが、ステッピング・ストーン、いわゆるキャリア形成途中の正社員になる踏み台的なステッピング・ストーンとしての役割を担う可能性は、派遣労働は秘めているのじゃないかと思ったりもします。ただし、一番やっぱり大きな問題は、派遣を続けざるを得ない人たちが年齢の壁に当たって、キャリアを続けられなくてフェードアウトしてしまうということでして、こういうことを考えていかなければならないと思っています。

政策提言としては、やはり働き続けられる派遣労働ということで、プロフェッショナルや専門職派遣というものをもうちょっと醸成して育成していく必要があるのではないかと思っています。やはり先ほど言いましたように、評価がない、技能レベルに賃金がリンクしていないというところが一番大きな問題でして、ここの部分について、賃金の安定も含めて、職種別の賃金レートというものを業界内でつくれないかと。賃金レートを構築することによって、おそらく価格競争から質的な競争への転換ということにもつながっていくと思いますので、やはりここの部分を外部労働市場として構築していかなければならないんじゃないかと思っております。そして、やはり一番上のところに「政令26業務」と書いていますけれども、ヒアリングから見てきた中では、専門職種というものがある程度確立して、そこの中で賃金レートというのが何となく市場賃金であるということがわかっています。今現在、派遣法の中にある政令26業務では、その賃金水準というのはなかなか見えない。ですので、ちょっと古くなった政令26業務というものをやはり見直していかなければいけない時期に来ているのではないかと思っております。

いろいろ政策提言が書いてございますけれども、詳しくは報告書のほうを読んでいただいて、またご意見などをいただけたらと思います。きょうはこの辺で報告を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

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