受賞の言葉(武内真美子)

労働関係図書優秀賞・論文優秀賞(平成17年度)

「女性就業のパネル分析配偶者所得効果の再検証」

『日本労働研究雑誌』2004年6月号(No.527)

このたびは、思いもかけず拙稿『女性就業のパネル分析―配偶者所得効果の再検証』に、労働関係論文優秀賞受賞の報せをいただきまして、とても嬉しく感じております。このような光栄な賞をいただき、微力ながらも当研究が女性労働の分野に対してなんらかの貢献ができたと思えることはとても幸せです。同時に、当研究は決して一人で成しえたものではなく長年にわたりパネルデータを開発、構築されてこられました(財)家計経済研究所の先生方をはじめ、研究の開始時から御指導くださいました松繁寿和先生、有益なコメントをくださいました関西労働研究会およびレフェリーの先生方に心からお礼を申し上げます。

この研究を開始した当初の着眼点は、女性の就業意欲や行動の通時的な影響力にありましたが、研究の後半からそれに加えて、実証分析を行う上での分析上の制約を緩め、配偶者の選択などを含めた女性の選択権を意識したものになりました。実証分析において本研究に残された課題については触れておりますが、私自身、研究を通じてわかったことよりはわからないことのほうがずっと多く、データを分析する研究には限界があることを感じております。例えば、本研究からも示唆されましたように、女性の就業行動に継続性が強いのなら、その間の働く女性の不安や仕事を辞めた女性の心の悔いなどをくみとることが、就業継続や再就職を支える上でも大切なことだと思っています。今後はその為にも聞き取り調査のような研究に参画できればと思います。

最後に私事で恐縮ですが、拙稿は私が在籍しております大阪大学大学院において執筆したものを大幅に加筆・修正したものです。社会人として大学院への入学を果たしたものの当初は不安も多々ございました。丁寧に御指導くださいました諸先生方に加え、多くの時間を割いて研究へのアドバイスと励ましをくれた同じ研究室の方々には意を尽くせないほど感謝の念でいっぱいです。受賞を励みに、また一歩前に踏み出すことが、本研究を通じてお世話になりました学内外の先生方や皆さんへの恩返しになると思い、気持ちを引き締め精進することを心に誓いましてお礼の言葉とさせていただきたいと思います。