改善基準告示に違反する事業場が5割強
――自動車運転者を使用する事業場に対する2022年の監督指導、送検等の状況
国内トピックス
厚生労働省がさきごろとりまとめた全国の労働局や労働基準監督署が2022年にトラック、バス、タクシーなどの自動車運転者を使用する事業場に対して行った監督指導や送検等の状況によると、8割超の事業場で労働基準関係法令違反が認められた。拘束時間や休息時間などの基準を示す「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」の違反が認められた事業場は5割強にのぼっている。
8割超の事業場で労働基準関係法令違反が認められる
2022年に監督指導を実施した事業場は3,785事業場。このうち、労働基準関係法令違反が認められたのは、83.0%にあたる3,142事業場だった。また、改善基準告示(「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号))の違反が認められたのは、2,037事業場(53.8%)にのぼった。なお、現行の改善基準告示では、トラック運転者の1カ月の拘束時間は「原則として293時間が限度」、バス運転者の場合は、4週間を平均した1週間あたりの拘束時間が「原則として65時間が限度」、タクシー・ハイヤー運転者の場合は、1カ月の拘束時間が「299時間が限度」などとなっている。
業種ごとにみると、法令違反事業場の割合は「トラック」(82.8%)、「ハイヤー・タクシー」(88.2%)、「その他」(83.3%)が8割超、「バス」(76.4%)が7割超となっている。主な違反事項で最も割合の高いものをみると、いずれの業種も労働時間で、その割合は「トラック」で49.8%、「バス」で34.1%、「ハイヤー・タクシー」で39.1%、「その他」で39.1%となっている。
また、改善基準告示違反の事業場割合は、「トラック」が58.1%、「バス」が40.7%、「ハイヤー・タクシー」で30.3%、「その他」が36.9%。
「トラック」での違反事項のトップは最大拘束時間
主な違反事項は、「トラック」では「最大拘束時間」が42.8%、「総拘束時間」が32.9%など。「バス」では「総拘束時間」が22.8%、「最大拘束時間」が19.5%など、「ハイヤー・タクシー」では「最大拘束時間」が24.4%などとなっている。
(調査部)
2023年10月号 国内トピックスの記事一覧
- 賃上げ率は3.60%で1994年以来の3%台に ――2023年「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」
- 管理職に占める女性の割合が12.7%で前回調査からわずかに上昇 ――厚生労働省の2022年度「雇用均等基本調査」結果
- メンタルヘルス不調で連続1カ月以上休業した労働者がいる事業所割合は10.6% ――厚生労働省の2022年「労働安全衛生調査(実態調査)」
~最近の監督行政の結果から~
- 2022年に全国の労働基準監督署で取り扱った賃金不払事案の件数は約2万件 ――賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(2022年)
- 監督指導を行った事業場の4割超で違法な時間外労働 ――長時間労働が疑われる事業場に対する2022年度の監督指導結果
- 改善基準告示に違反する事業場が5割強 ――自動車運転者を使用する事業場に対する2022年の監督指導、送検等の状況
- 実習実施者の7割以上で法令違反が認められる ――外国人技能実習生の実習実施者に対する2022年の監督指導、送検等の状況