メンタルヘルス不調で連続1カ月以上休業した労働者がいる事業所割合は10.6%
 ――厚生労働省の2022年「労働安全衛生調査(実態調査)」

国内トピックス

厚生労働省が8月に発表した2022年「労働安全衛生調査(実態調査)」結果によると、過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1カ月以上休業した労働者がいた事業所の割合は10.6%で、前回の2021年調査の8.8%からやや上昇した。メンタルヘルス不調により退職した労働者がいた事業所の割合は5.9%で、こちらも前回調査(4.1%)から上昇した。調査は2022年10月末時点を対象としており、事業所調査は8,144事業所、個人調査は7,959人の有効回答を得た。

メンタルヘルス不調で退職した労働者がいる事業所は5.9%

2021年11月1日~2022年10月31日の1年間に、メンタルヘルス不調により連続1カ月以上休業した労働者がいた事業所の割合は10.6%で、前年に比べ1.8ポイント上昇した。また、メンタルヘルス不調により退職した労働者がいた事業所は5.9%で、同1.8ポイントの上昇となった。メンタルヘルス不調により休業または退職した労働者がいた事業所の割合は13.3%で、前回調査を3.2ポイント上回った。

連続1カ月以上休業した労働者がいた割合を事業所規模別にみると、「1,000人以上」が90.8%、「500~999人」が88.7%、「300~499人」が65.3%、「100~299人」が46.9%、「50~99人」が23.6%、「30~49人」が14.1%、「10~29人」が4.8%となっている。退職した労働者がいた割合は、「1,000人以上」75.4%、「500~999人」43.1%、「300~499人」33.2%、「100~299人」23.6%、「50~99人」9.3%、「30~49人」8.7%、「10~29人」3.1%となっており、ともに事業所規模が大きいほど割合が高い。

休業・退職ともに情報通信業がトップ

産業別にみると、連続1カ月以上休業した労働者がいた割合は「情報通信業」(32.0%)と「電気・ガス・熱供給・水道業」(25.0%)が特に高い。退職した労働者がいた割合は「情報通信業」(17.0%)が最も高く、「医療、福祉」(12.2%)が次いで高かった()。

表:過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1カ月以上休業した労働者または退職した労働者がいた事業所割合(2022年、単位:%)
画像:表

注1)「事業所計」には、該当する労働者がいなかった事業所が含まれる。

注2)「連続1カ月以上の休業した労働者」「退職した労働者」には、受け入れている派遣労働者は含まれない。

注3)同じ労働者が連続1カ月以上休業した後に退職した場合は、「退職した労働者」のみの計上。

(公表資料から編集部で作成)

6割超の事業所がメンタルヘルス対策に取り組む

メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は63.4%で、前回調査(59.2%)から4.2ポイント上昇した。

メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所において、その具体的な取り組みの内容(複数回答)をみると、「ストレスチェックの実施」が63.1%(前回調査65.2%)で最も割合が高く、次いで「メンタルヘルス不調の労働者に対する必要な配慮の実施」が53.6%(同50.2%)、「職場環境等の評価及び改善(ストレスチェック結果の集団ごとの分析を含む)」が51.4%(同54.7%)、「メンタルヘルス対策に関する事業所内での相談体制の整備」が46.1%(同50.2%)などとなっている。

ストレスチェックを実施した事業所のうち、結果を部や課などの集団ごとに分析した事業所の割合は72.2%(同76.4%)だった。また、分析を実施した事業所のうち、分析結果を活用したのは80.2%(同79.9%)となっている。

分析結果の活用について、その具体的な内容(複数回答)をみると、「残業時間削減、休暇取得に向けた取組」が50.4%(同53.3%)で最も高く、次いで「相談窓口の設置」が47.8%(同44.6%)、「上司・同僚に支援を求めやすい環境の整備」が42.4%(同41.1%)、「衛生委員会又は安全衛生委員会での審議」が38.8%(同35.2%)、「業務配分の見直し」が35.8%(同33.9%)などとなっている。

8割超の労働者が仕事や職業生活で強いストレスを感じる

労働者に対する「個人調査」の結果によると、現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスとなっていると感じる事柄がある人は82.2%となっている。

ストレスの内容(主なもの3つ以内)をみると、「仕事の量」が36.3%で最も割合が高く、以下「仕事の失敗、責任の発生等」が35.9%、「仕事の質」が27.1%、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」が26.2%などとなっている。

ストレスの内容(主なもの3つ以内)を就業形態別にみると、正社員では「仕事の量」(38.1%)や「仕事の質」(37.5%)が高い割合となっているのに対し、契約社員では「仕事の量」(37.4%)が最も高く、それに「雇用の安定性」(34.6%)が続いた。

パートタイム労働者では「仕事の失敗、責任の発生等」(35.6%)、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」(34.2%)、「仕事の量」(33.8%)の割合が高く、派遣労働者では「雇用の安定性」(70.7%)の割合がきわだって高かった。

相談できる相手で最も割合が高いのは男性が「上司」、女性は「家族・友人」

こうしたストレスについて、相談できる人がいると回答したのは91.4%。その相談相手(複数回答)は「家族・友人」が68.4%で最も割合が高く、次いで「同僚」が68.0%、「上司」が65.0%など。

これを男女別にみると、「家族・友人」は男性65.4%に対して女性72.6%で、女性のほうが約7ポイント高い。「同僚」は男性が68.0%で女性が67.8%。「上司」は男性69.9%に対して女性58.8%で、男性のほうが約11ポイント高くなっている。

ストレスについて相談できる相手がいる労働者のうち、実際に相談したことがある労働者の割合は69.4%。相談した相手(複数回答)は「同僚」(63.5%)が最も割合が高く、次いで「家族・友人」(62.0%)、「上司」(58.5%)などとなっている。

(調査部)