教育訓練投資額は「人材開発支援助成金」の受給企業が非受給企業を上回る
――厚生労働省の2025年度「能力開発基本調査」
国内トピックス
人材開発支援助成金を受給したことがある企業と受給したことがない企業で、OFF-JT・自己啓発支援に支出した労働者1人あたりの費用(教育訓練投資額)を比べると、OFF-JT・自己啓発支援のいずれについても、受給したことがある企業のほうが投資額が大きいことが、厚生労働省が7月31日に公表した2025年度「能力開発基本調査」結果の特別集計で明らかになった。また、職業に関連した資格を取得した労働者の増減をみても、受給したことがある企業のほうが「増加した」割合が高くなっている。
調査は2001年度から毎年実施しており、「企業調査」「事業所調査」「個人調査」からなる。「企業調査」「事業所調査」は常用労働者30人以上を雇用している企業(7,542社)と事業所(7,194事業所)を対象に実施し、「個人調査」は調査対象事業所に属する労働者(2万127人)を対象に実施した。2025年10月1日時点の状況について調査し、有効回答率は「企業調査」が52.6%、「事業所調査」が54.2%、「個人調査」が43.9%。
<人材開発支援助成金の受給と教育訓練投資>
「人材開発支援助成金」の受給経験がある企業は15.3%
職務に関連した専門的な知識・技能を習得させるための職業訓練等を事業主等が計画に沿って実施した場合等に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部などを助成する制度である「人材開発支援助成金」(旧キャリア形成促進助成金も含む)の受給状況をみると、受給したことがある企業の割合は15.3%となっている。内訳をみると、「2024年度に初めて受給した」が1.8%、「2024年度かつ2023年度以前に受給した」が5.5%で、「2023年度以前に受給したことがある」が8.0%となっている。
一方、「制度について知っていたが、受給したことはなかった」は51.9%と約半数。「制度について知らなかったため、受給したことはなかった」は32.8%と3割にのぼり、受給したことがない企業が全体の8割以上を占めた。
受給経験のある企業が2.4万円に対し、ない企業は2.0万円
人材開発支援助成金の受給状況と、2024年度の1年間にOFF-JTに支出した労働者1人あたり費用との関係をみると、受給したことがある企業が2万4,000円で、受給したことがない企業の2万円を4,000円上回った。
自己啓発支援に支出した労働者1人あたり費用でも、受給したことがある企業は7,000円で、受給したことがない企業の3,000円を2倍以上上回った。
受給経験のある企業では資格を取得した労働者数が「増加した」が約5割に
職業に関連した資格を年度中に取得した労働者数の2023年度と2024年度での増減を、受給経験別にみると、「増加した」とする割合は受給したことがある企業では50.9%と半数に達したのに対し、受給したことがない企業では33.3%だった。
社内の職業能力評価基準等に沿ったスキルの向上がみられた労働者の増減についてもみると、「増加した」とする割合は受給したことがある企業では41.6%と4割に及んだが、受給したことがない企業では25.2%と2割台だった。
<OFF-JTと自己啓発の状況>
教育訓練費用を支出した企業は54.4%と半数超
特別集計以外の結果をみていくと、2024年度に教育訓練費用(OFF-JT費用や自己啓発支援費用)を支出した企業は54.4%と半数超だった。支出の内訳をみると、OFF-JTと自己啓発支援の両方に費用を支出した企業は21.5%で、OFF-JTのみは28.5%、自己啓発支援のみは4.4%となっている。一方、OFF-JTと自己啓発支援のどちらにも支出していない企業は45.5%だった。
企業がOFF-JTに支出した費用の労働者1人あたり平均額(2024年度1年間に費用支出した企業の平均額)は2万円で、自己啓発支援に支出した費用の労働者1人あたり平均額は4,000円となっている。
正社員以外にもOFF-JTを実施している事業所は約3割
事業所調査によると、正社員または正社員以外にOFF-JTを実施したとする事業所は72.6%。内訳は、「正社員と正社員以外、両方実施した」が29.0%、「正社員のみ実施した」が41.9%、「正社員以外のみ実施した」が1.7%となっている。
OFF-JTの実施対象を職層等別にみると、正社員では「新入社員」が58.7%、「中堅社員」が57.4%、「管理職層」が49.0%となっており、「正社員以外」は30.7%。
8割の事業所が能力開発や人材育成で問題があると認識
能力開発や人材育成に関して何らかの問題があるとする事業所は80.1%で、約8割となっている。何らかの問題があるとする事業所があげた問題の内容(複数回答)をみると、「指導する人材が不足している」(59.5%)が最も高く、「人材を育成しても辞めてしまう」(51.6%)、「人材育成を行う時間がない」(45.5%)などと続いている。
正社員以外のOFF-JT受講率は2割弱
個人調査の結果から、2024年度にOFF-JTを受講した人の割合をみると、労働者全体では37.3%で、正社員は44.5%、正社員以外は19.4%となっている。
男女別にみると、「男性」(43.5%)に比べ女性(29.8%)の受講率が低い。最終学歴別にみると、「大学(文系)」(42.5%)、「大学(理系)」(48.5%)など、大学卒業以上の受講率は4割を超えている一方、「中学・高等学校・中等教育学校」(31.5%)、「専修学校・短大・高専」(31.2%)は3割台となっている。
年齢別にみると、「20~29歳」(47.5%)が最も高く、「30~39歳」(38.5%)、「40~49歳」(38.5%)、「50~59歳」(34.6%)など、おおむね年齢が高くなるほど受講率は低い。
大学院卒、大学卒でより高い自己啓発の実施割合
2024年度に自己啓発を行った人の割合は、労働者全体で35.5%。雇用形態別では、正社員が43.3%に対し、正社員以外は15.9%となっている。
男女別にみると、「男性」(40.3%)よりも女性(29.8%)が低い。最終学歴別にみると、「大学院(文系)」(68.7%)、「大学院(理系)」(69.6%)が7割弱で、「大学(文系)」(49.0%)、「大学(理系)」(48.3%)が半数弱なのに対し、「専修学校・短大・高専」(30.2%)は約3割で、「中学・高等学校・中等教育学校」(21.5%)は2割超にとどまっている。
自己啓発の実施方法(複数回答)は、「eラーニング(インターネット)による学習」(正社員45.6%、正社員以外45.9%)が最も高く、次いで「ラジオ、テレビ、専門書等による自学、自習」(同37.3%、34.8%)、「社内の自主的な勉強会、研究会への参加」(同22.7%、19.6%)などとなっている。
自己啓発を行った理由(複数回答)をみると、正社員、正社員以外ともに「現在の仕事に必要な知識・能力を身につけるため」(正社員82.9%、正社員以外75.5%)が最も高く、次いで「将来の仕事やキャリアアップに備えて」(同58.9%、36.2%)、「資格取得のため」(同35.5%、21.9%)などとなっている。
<教育訓練のための休暇・勤務制度>
教育訓練休暇制度を「導入している」企業は5.7%
企業調査によると、教育訓練休暇制度の導入状況は、「導入していないし、導入する予定はない」とする企業の割合が85.4%で最も高く、「導入していないが、導入を予定している」が8.8%、「導入している」が5.7%となっている。
教育訓練短時間勤務制度の導入状況は、「導入していないし、導入する予定はない」が86.2%、「導入していないが、導入を予定している」が9.1%、「導入している」が4.7%となっている。
教育訓練所定外労働時間免除制度の導入状況は、「導入していないし、導入する予定はない」が86.4%、「導入をしていないが、導入を予定している」が8.9%、「導入している」が4.6%となっている。
教育訓練休暇制度、教育訓練短時間勤務制度および教育訓練所定外労働時間免除制度の導入を予定していない企業について、導入予定がない理由(複数回答)をみると、いずれも「代替要員の確保が困難であるため」の割合が最も高く、「制度自体を知らなかったため」「労働者からの制度導入の要望がないため」「制度導入のメリットを感じないため」などが続いている(図表1)。
図表1:教育訓練休暇制度、教育訓練短時間勤務制度などの導入の予定がない理由(複数回答)

(公表資料から編集部で作成)
<技能継承>
「製造業」の約3分の2が技能継承に問題を抱える
事業所調査によると、技能継承に問題があるとした事業所は44.2%で、産業別にみると「製造業」(65.8%)、「建設業」(59.2%)、「学術研究、専門・技術サービス業」(56.2%)で半数を超えている。
技能継承の問題点(複数回答)は、「意欲のある若者・中堅層の確保が難しい」(74.5%)が最も高く、次いで「技術・ノウハウ等の伝承に時間がかかり円滑に進まない」(60.6%)、「継承者(技能・ノウハウを受け継いだ者)が習得後離職(転職)してしまう」(28.5%)、「教える人材がいない」(25.8%)、「教える方と教わる方の年代やレベルの差が開きすぎていてコミュニケーションがうまくいかない」(25.7%)などと続いている。
技能継承の取り組み内容は「中途採用を増やしている」が半数超
技能継承の取り組みを行っている事業所の割合は83.7%で、取り組みの内容(複数回答)をみると、「中途採用を増やしている」(56.2%)が最も高く、次いで「退職者の中から必要な者を選抜して雇用延長、嘱託による再雇用を行い、指導者として活用している」(54.7%)、「新規学卒者の採用を増やしている」(30.0%)、「不足している技能を補うために契約社員、派遣社員を活用している」(22.5%)、「退職予定者の伝承すべき技能・ノウハウ等を文書化、データベース化、マニュアル化している」(22.0%)などとなっている(図表2)。
図表2:技能継承の取り組みの内容(複数回答)

(公表資料から編集部で作成)
(調査部)
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