「精神障害」の労災保険給付の請求件数が4,958件と前年度から1,100件以上増加
――厚生労働省の2025年度「過労死等の労災補償状況」
国内トピックス
厚生労働省が7月15日に発表した2025年度「過労死等の労災補償状況」によると、業務災害にかかわる「精神障害」の労災保険給付の請求件数は4,958件で、前年度の3,780件から1,178件増加した。決定件数も3,839件と前年度から343件増加した。ただ、決定件数に占める支給決定件数(1,082件)の割合である認定率は28.2%で、2025年度を含めた過去5年では最も低い率となった。「脳・心臓疾患」については、請求件数が対前年度比224件増の1,254件で、支給決定件数は同24件減の217件となっている。
「脳・心臓疾患」「精神障害」をあわせた請求件数は6,212件
厚生労働省は年に1回、過重な仕事が原因で発症した「脳・心臓疾患」や、仕事による強いストレスが原因で発病した「精神障害」の状況について、労災保険給付の請求件数や支給決定件数などをとりまとめている。
2025年度のとりまとめによると、「脳・心臓疾患」と「精神障害」をあわせた、過労死等による請求件数は6,212件で、前年度に比べ1,402件増加。決定件数は対年度比377件増の4,692件。支給決定件数は1,310件(対前年度比5件増)で、うち、死亡・自殺(未遂も含む)の件数は、145件(同14件減)だった。
精神障害の支給決定件数は対前年度比26件増の1,082件
事案別の状況について、「精神障害」からみていくと、請求件数は4,958件と前年度の3,780件から1,178件増加。うち未遂を含む自殺での請求件数は215件(前年度202件)だった。
決定件数は、前年度の3,496件から343件増加して3,839件。支給決定件数は1,082件(同1,056件)で、うち未遂を含む自殺での支給決定件数は76件(同88件)だった(図表1)。認定率は28.2%で、前年の30.2%をやや下回った。
図表1:「精神障害」の請求件数、支給決定件数推移

(公表資料から編集部で作成)
精神障害の請求・支給決定が最も多い業種は「医療、福祉」
業種別にみると、請求件数は「医療、福祉」が1,288件(同983件)と突出して多く、「製造業」が720件(同583件)、「卸売業、小売業」が645件(同545件)などと続いている。
支給決定件数も同じ順で多く、「医療、福祉」が292件(同270件)、「製造業」が158件(同161件)、「卸売業、小売業」が116件(同120件)などとなっている。
業種を中分類までみると、請求件数、支給決定件数のどちらも「社会保険・社会福祉・介護事業」(請求:706件、支給決定:151件)が最多で、以下、「医療業」(請求:578件、支給決定:139件)、「道路貨物運送業」(請求:202件、支給決定:68件)などの順となっている。
職種別の請求・支給決定件数はともに「専門的・技術的職業従事者」が最多
職種別にみると、請求件数は「専門的・技術的職業従事者」が1,367件(前年度1,030件)で最も多く、次いで「事務従事者」が1,137件(同796件)、「サービス職業従事者」が733件(同556件)など。支給決定件数は、「専門的・技術的職業従事者」が296件(前年度300件)で最も多く、次いで「サービス職業従事者」が174件(同182件)、「事務従事者」が165件(同161件)などとなっている。
業種を中分類までみると、請求件数、支給決定件数のどちらも「一般事務従事者」(請求:833件、支給決定:109件)が最多で、以下、「保健師、助産師、看護師」(請求:369件、支給決定:105件)、「介護サービス職業従事者」(請求:296件、支給決定:68件)などの順となっている。
請求・支給決定件数ともに20代~50代で全体の9割を占める
年齢別にみると、請求件数では、「40~49歳」1,344件(前年度1,041件)、「50~59歳」1,207件(同870件)、「30~39歳」1,122件(同889件)、「20~29歳」972件(同733件)などとなっており、20代~50代の件数で全体(4,958件)の9割以上を占める。
支給決定件数では、「40~49歳」294件(前年度284件)、「50~59歳」244件(同225件)、「30~39歳」243件(同245件)、「20~29歳」236件(同243件)などとなっており、こちらも20代~50代が全体(1,082件)の9割以上を占めた。
支給決定件数の内訳を精神障害の発病に関与したと考えられる事象ごとに類型化すると、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」が222件(前年度224件)で最も多く、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」と「セクシュアルハラスメントを受けた」がともに127件(同108件、同105件)で続く。
「脳・心臓疾患」の請求件数は1,254件で前年度比224件増
「脳・心臓疾患」の請求件数は1,254件で前年度(1,030件)に比べ224件増加し、うち死亡での請求件数は303件(前年度255件)だった。支給決定件数は217件で、前年度(241件)から24件減少。うち死亡での支給決定件数は67件で前年度と同数だった(図表2)。
図表2:「脳・心臓疾患」の請求件数、支給決定件数の推移

(公表資料から編集部で作成)
脳・心臓疾患に関する請求・支給決定が最も多い業種は「運輸業、郵便業」
業種別にみると、請求件数は「運輸業、郵便業」が257件(前年度213件)で最も多く、次いで「サービス業(他に分類されないもの)」166件(同117件)、「建設業」164件(同128件)、「卸売業、小売業」151件(同150件)などの順となっている。
支給決定件数では、「運輸業、郵便業」が64件(前年度88件)で最も多く、次いで「卸売業、小売業」37件(同20件)、「建設業」21件(同16件)、「宿泊業、飲食サービス業」19件(同28件)などとなっている。
業種を中分類までみると、請求件数、支給決定件数ともに、「道路貨物運送業」が最も多く、請求件数が179件、支給決定件数が50件となっている。請求件数ではそのあと「その他の事業サービス業」(118件)、「社会保険・社会福祉・介護事業」(73件)、「総合工事業」(66件)などと続く。支給決定件数では、次いで「その他の事業サービス業」(15件)、「飲食店」(13件)、「その他の小売業」(11件)などの順で多くなっている。
職種別にみると「輸送・機械運転従事者」が最多
職種別にみると、請求件数では、「輸送・機械運転従事者」231件(前年度177件)、「サービス職業従事者」170件(同136件)、「専門的・技術的職業従事者」165件(同149件)などの順で多い。
支給決定件数では、「輸送・機械運転従事者」55件(同75件)、「専門的・技術的職業従事者」38件(同32件)、「サービス職業従事者」26件(同34件)などの順で多くなっている。
職種を中分類まで詳しくみると、請求件数・支給決定件数ともに「自動車運転従事者」(請求:215件、支給決定:53件)が最多。請求件数については、次いで「建設従事者(建設躯体工事従事者を除く)」78件、「一般事務従事者」70件などの順で多い。支給決定件数については、「法人・団体管理職員」17件、「飲食物調理従事者」16件などと続く。
請求・支給決定件数ともに40歳以上が全体の9割を占める
年齢別にみると、請求件数では、「50~59歳」508件(前年度411件)、「60歳以上」452件(同348件)、「40~49歳」220件(同213件)などの順で多く、40歳以上が全体(1,254件)の9割以上を占める。
支給決定件数では、「50~59歳」79件(前年度129件)、「60歳以上」63件(同44件)、「40~49歳」58件(同60件)などの順となっており、こちらも40歳以上が全体(217件)の9割以上を占めた。
裁量制対象者の支給決定件数は「脳、心臓疾患」が2件で「精神障害」が9件
2025年度の裁量労働制対象者にかかる支給決定件数は、「脳、心臓疾患」が2件、「精神障害」が9件だった。内訳をみると、「脳、心臓疾患」は専門業務型裁量労働制が1件、企画業務型裁量労働制対象者が1件となっており、「精神障害」は専門業務型裁量労働制のみだった。
複数の会社等に雇用されている労働者の複数業務要因災害にかかる「脳・心臓疾患」に関する事案の労災補償状況についてみると、支給決定件数は7件(同6件)で、うち死亡件数は2件(同3件)。同様に複数業務要因災害にかかる精神障害に関する事案の労災補償状況についてみると、支給決定件数は4件(同2件)となっている。
さらに複数業務要因災害にかかる裁量労働制対象者に関する事案の労災補償状況についてみると、「脳・心臓疾患」の支給決定件数は専門業務型裁量労働制の1件(同0件)で、「精神障害」の支給決定件数は0件(同1件)だった。
(調査部)
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