話題提供 OHBYカードの活用──「カード式職業情報ツール」の開発と展開

OHBYカードの開発当時、私はJILPTでアシスタントをしていました。その関係で、今日は私の方からOHBYカードの活用について発表させていただきます。

OHBYカードはシート1のようなセットで、「カードソート技法」という、カードを分類したり、並べかえたりといった作業を通じて、自分の職業に対する適性や興味を知り、自分が興味のある職業やこれまで知らなかった職業について知ることができるというような特徴があります。

開発の思想としては四つあり、①カードの枚数が適切であること②カードは絵や写真などによる職業情報③多様なキャリアニーズに活用できる④これまでのJILPTのキャリアガイダンス研究の蓄積を十分に活用する──というコンセプトのもとで開発が進められました。

表と裏に職業の情報

今日、初めてOHBYカードについて聞く方も多いようですから、まず実際のカードの内容を少し見ていきたいと思います。ケースのなかにカードが入っており、あとは説明書があります。写真がカードの外観ですが、カードは表面と裏面に分かれていて、表面にはイラストと写真が入っており、裏側は説明書きになっています。

表面の上半分が職業を描いたイラストの部分で、下のほうは職業の内容を表す写真となっています(シート2)。まず視覚的な情報が表面に来るようになっています。

裏面は、いろいろなマークや職業名、番号、職業情報が書いてあり、説明を読んでいただければ、この職業がわりと端的にわかるようになっています(シート3)。

裏面の下半分には産業分類が入っています。また、ホランドの職業興味の分類に対するコード、それからDPT分類(DATA(文字や数字)、PEOPLE(人)、THING(モノ))それぞれに、どれくらいコミットメントしているかを◎~△のマークで表しています。この裏面を見れば、職業情報がきちんとわかる構成になっています。

48枚で「RIASEC」の6領域に準拠

カードに収録する職業をどのように選定したかですが、過去に『OHBY』という職業ガイダンスツールがあり、その中から48職業を抜き出してあります。ですので、カードの枚数は1番から48番までの48枚になります。

キーになっている概念が、VPIの職業興味の「RIASEC」の6領域に準拠する形になっているところで、職業興味をきちんと網羅しています。また、私としては大きなポイントだと思っているのですが、カードを見たときに、ぱっと見てわかる、カードを見ただけでイメージできるようになっています。絵柄や雰囲気も実は開発のときにはこだわったところです。

取り扱いが容易

OHBYカードの特徴を今の時点でまとめると、まず、取り扱いが容易であるといえます。絵や写真などを用いている。多様な目的、利用者で使用できる。職業理解と自己理解を同時に深められる。この職業理解と自己理解という二つがかなりキーワードになるかと思います。

さらには、カードのなかには取扱説明書が入っており、そのなかに標準的な手続きと具体的な活用方法のページがあり、カードがあればすぐ活用できる仕組みにはなっているのですが、キャリアコンサルタントや教員が活用の仕方を工夫することができるようになっています。

クライアントとの対話が促進

OHBYカードのポイントの一つとして、「質的アセスメント」という言葉もキーワードとして挙げることができます。私が実験的に、女子大生を対象に調査したとき、カードを活用した方がテストよりも簡単で納得できたというような報告がありました。検査やテストによって数字で量的に診断する方法がここまで紹介されたところですが、そういったものをもうちょっと質的に捉えられないかということが開発コンセプトになっていると思います。

まとめると、クライアントが自らの言葉で自分のキャリアに関する考え方を組み立てるための技法で、カードを使用することによって、クライアントとキャリアの対話が促進されます。ですので、カードを使ってすぐ終わりということではなく、クライアントとキャリアコンサルタント、教員との間を結ぶようなツールがOHBYカードです。その根底にあるのは、クライアントの過去や現在、未来やライフストーリーを紡ぎ出すための手法であって、量的に標準化されていない。こういった点が実は特徴になるのではないかと思います。量的に標準化されていないために、個人や特徴、差異などに実は焦点を当てているのです。

OHBYカードは自分の言葉で自らのキャリアを組み立てられるように働きかけるツールであり、このカードを使って終わりではなく、このカードをきっかけにして、いろいろな対話を促すきっかけとなるツールだと考えています。

(注)OHBYカードは、当時の日本労働研究機構が2002年に開発した若者向けのCD-ROMを擁したガイダンスツール「OHBY」がもとになっているが、「OHBY」は廃盤となっている。

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