改正高年齢者雇用安定法の趣旨:第8回労働政策フォーラム
改正高年齢者雇用安定法と企業の取り組み
(2004年11月30日)

開催日:平成 16 年 11 月 30 日

※無断転載を禁止します(文責:事務局)

配布資料

石田 寿(厚生労働省高年齢者雇用対策課長)

配布資料(PDF:4MB)

【石田】 厚生労働省高齢者雇用対策課長の石田でございます。15分程の時間をいただいておりますので、配布資料「高年齢者雇用安定法の改正について」に沿って、簡単にご説明をさせていだきます。

ご承知の方も多いかと思いますが、この法律は2004年6月5日に成立し、11月4日公布、そして明日、12月1日から、一部が施行される予定です。今回は、法律改正の背景と改正内容の概要について、配布資料に沿ってご説明したいと思っております。

法律改正の背景

まず資料1ページ(PDF:63KB)には、生産年齢人口と労働力人口の推移( 2002年→2015年→2025年)が、年齢階層別に書かれています。2015年までに、若年の労働力人口が340万人減少し、高齢層が340万人増加するという予測ですが、全体としては確実に減っていく状況にあります。

次に、団塊世代の高齢化を表したグラフ( 55~70歳の年齢別人口、2007年と2012年)がありますが、いびつな形での高齢化の進行が見て取れます。2007年のグラフでは、人口が最も多い年齢層は50歳後半ですが、2012年には60代に移行しますので、向こう5年ないし10年が、高齢化対応の正念場と位置づけられます。同じページの(下)は、いわゆる年金法の改正で、支給開始年齢の引き上げ(2001年に開始した定額部分の引き上げ、2013年から開始される報酬比例部分)を図にしたものです。

定年の状況については、雇用管理調査から算出したもので、現状で、 65歳までの雇用を確保している企業割合を表しています。これを見ると、65歳まで働ける場を確保している企業は70%を超えているのですが、「原則として希望者全員を対象」としている企業は3割弱になっています。

次の表「求人倍率・完全失業率」を見ますと、いかに中高年齢層を取り巻く雇用・失業情勢が厳しいかが見て取れます。表には載っておりませんが、直近( 10月)の統計では、有効求人倍率(年齢計)は0.88、完全失業率(同)は4.7という状況です。60~64歳の年齢層を見ると、有効求人倍率(9月)は0.27、失業率(同)も男性は7.5となっており、全体の傾向は改善しつつありますが、高齢者層にとっては引き続き厳しい状況にあると言えます。

失業期間別の失業者数の表では、年齢が増すにつれて失業期間が長期化していることが分ります。 1年以上の長期失業者の(失業者に占める)割合は、25-34歳は30.2%、35-44歳は36.4%、45-54歳38.2%、55-64歳37.5%、65歳以上50.0%となっており、高齢者は非常に高くなっています。

その原因(失業者が仕事に就けない理由)を調査した結果が 6ページ(PDF:52KB)に書かれています。それによると、「求人年齢と自分の年齢が合わないから」という回答をしている人が高齢層で4~5割とかなり高い。中高年の方が一旦離職すると再就職が難しいという原因の一つが、求人年齢の制限であることが推測されます。

7ページ(PDF:3,708KB)は労働力率を国際比較したものですが、日本が他国と異なる点、そして誇れる点でもあることが、伊藤講師もお話されていたように、特に高齢層の就業意欲が非常に高いということです。例えば60~64歳の男性の労働力率は7割を超え、他国の状況に比べて極めて高い。ですので、高齢者の就労意欲をいかに活用していくかということが、社会全体の課題であろうかと思います。

こうした状況を踏まえて、労働政策審議会で公労使による活発な議論が行われ、 2004年1月に三者の合意のもとに建議いただき、それを基に法律の案文が作成されたという経緯です。

この建議の結論は、意欲と能力のある限り、少なくとも 65歳まで働きつづけることが可能となるような取り組みを各企業に求めていくべきとありますが、その際に、労使が十分話し合いをすることが必要であると指摘しています。厳しい経営環境下でのコスト管理、人材確保、就業ニーズの多様化など、企業や従業員を取り巻く諸々の環境や条件を踏まえ、賃金や労働時間など人事処遇制度の見直しが求められており、労使の取り組みの必要性は答申でも述べられています。

高年齢者雇用安定法の改正

それでは、これから高年齢者雇用安定法の改正についてご説明させていただきます。

8ページ(PDF:3,708KB)がその概要ですが、(1)65歳までの雇用の確保、(2)中高年齢者の再就職の促進、(3)多様な就業機会の確保、と書かれており以下、簡単にご説明いたします。なお、施行日は、(1)は平成18年4月1日から、(2)と(3)については平成16年12月1日です。

(1)65歳までの雇用の確保

従来、努力義務であった(1)定年の引き上げ、(2)継続雇用制度の導入、(3)定年の定めの廃止、の 3項目が今改正により義務化されました。ただし、審議会の答申も踏まえ、企業の実態に合わせて選択していただくわけですから、必ずしも一律に定年引き上げを求めるわけでなく、定年は60歳のまま(2)の再雇用等の継続雇用制度による65歳までの雇用確保でも構わないということです。

さらに、(2)継続雇用制度の導入については、労使協定により対象者の基準を定めた場合は、希望者全員が対象とならない制度もあり得るとしています。労使協定とは、従業員の過半数で組織する労働組合、或いは過半数を代表する者との書面による協定ですが、このように、個別企業の実情に応じ、労使の工夫で柔軟な対応が可能となっています。

この対象者の基準に関しては、各企業の実情が様々であろうことから、労使で十分協議して決めていただくことを前提とし、その内容は原則として労使に委ねられております。ただし、十分協議の上定められたものであっても、例えば、単に「会社が必要と認めた者に限る」といったことだけで恣意的に継続雇用を排除しようとするなど本改正の趣旨に反するもの、或いは「男性に限る」という他の労働法令に違反するもの、また公序良俗に違反するといったものは認められません。

他方、望ましい基準としては、労働者みずからが基準に適合するか否かを一定程度予見できるような具体的・客観的なものが望まれます。厚生労働省では、基準に関する事例収集と情報提供を今後も行っていきたいと考えております。

労使協定で基準を定めるための話し合いの努力をしたにもかかわらず、労使協議が不調に終わった場合、就業規則等で基準を定めることが可能になります。なお、特例として、大企業には 3年、中小企業に5年の準備期間を設けております。

仮に定年の引き上げ、或いは継続雇用制度の導入を行う場合でも、施工後直ちに 65歳までの引き上げを義務づけるのではなく、段階的に引き上げ2013年度までに実施するものです。

(2)中高年齢者の再就職の促進

(1) 募集・採用時における年齢制限の理由の提示

雇用対策法で年齢制限是正の努力義務が課せられておりますが、公共職業安定所における年齢不問求人数は全体の 23%にとどまっており、現状はなかなか進んでおりません。23%から30%にするという目標も立てておりますが、年齢制限是正の取り組みをもう一歩進めていただきたいという趣旨で、制限を設ける場合は、その理由の説明責任を課する、理由の提示を義務づけるということです。書面あるいはインターネット等の方法で、例えばハローワークや民間の職業紹介に求人を申し込む場合、併せて理由を記載していただきます。改正雇用対策法で設けられている「年齢指針」では、募集・採用時における年齢制限が例外的に認められる10項目がありますが、提示される理由は、これらのいずれかに該当することが必要です。今回の改正の趣旨は、事業主の方に年齢制限の必要性や合理性を改めて考えていただくことですので、理由の記載を、単に10項目の番号「1」とか「2」と書くのではなく、具体的な事情を記載していただきたいと思います。

(2) 求職活動支援書の作成・交付

先ほどご紹介したデータからも、中高年齢層の再就職はなかなか難しいので、在職中から従業員の能力や適性等を十分把握している事業主が、離職予定者の再就職支援をすることが有効であると考えます。

特にこれまで積み上げてきたキャリアが一番のポイントでありますから、本人が提供する情報も参考に、職務の経歴、資格、免許、職業能力といったもの、それから、講じようとする再就職の援助措置の内容の両者を記載していただくことになります。

(3)多様な就業機会の確保

職業生活から次の引退過程に移行する段階で、生きがいのため又は追加的収入を得ることを希望する高齢者に働く場を提供することを目的に、シルバー人材センターという団体があります。これから団塊世代が引退過程を迎える時期に、多様な就業機会を提供するためにも、シルバー人材センターが労働者派遣事業を行えるようにするという内容です。

以上、制度改正、枠組みについて極簡単ではありますがお話させていただきました。残りの( 13ページ以降の)配布資料に、リーフレットやQ&Aでわかりやすく情報を提供しておりますので、後でご覧いただければ幸いです。また、ご質問やお問合せは、お近くのハローワークや労働局までご連絡いただければ対応させていただきますので、皆様のご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。

【伊藤(実)】 本日は、高齢者雇用に取り組んでおられる2社から、ご担当者をお招きしております。どのような企業のお話を伺うべきか考えましたが、高齢者の多くが実際に働いているところは中小企業が多い。中小企業のなかには、若い人を採用しにくい、あるいは採用してもすぐ辞めてしまうという事情を抱えるところもあるかと思います。共通項として言えることは、中小企業における高齢者雇用というものは、実態が先行し、制度が後から整備される場合が多いということです。それに対し大企業の場合は、年功制度が強固に定着しているので、どうしても実態より制度を先に整備することが多い。

このような背景から、本日は、実態が先行し高齢者雇用が進んでいる株式会社エム・ティー・フードと、制度を非常に精緻に組まれた富士電機の2社の事例を発表していただきます。

それでは、エム・ティー・フードの伊藤泰仁様からお願いします。

>> 企業のり取組み(1)

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