レビュー「日本におけるインターンシップ施策の展開」
日本的インターンシップはどこまで広がってきたか

開催日:平成16年7月23日

※無断転載を禁止します(文責:事務局)

配布資料


労働政策研究・研修機構 金崎 幸子

本日は、労働政策フォーラムにご参加いただきまして、どうもありがとうございます。フォーラムの進行をさせていただきます労働政策研究・研修機構の金崎と申します。

本日のテーマは、「日本的インターンシップはどこまで広がってきたか」ということで設定しておりますが、予定しております内容の紹介を兼ねまして、企画の趣旨をご説明したいと思います。

インターンシップ推進施策のスタート

お手元に「日本におけるインターンシップ施策の展開」というタイトルの資料をお配りしております。こちらをごらんいただきますと、日本におけるインターンシップ推進施策のスタートとして、 1997 年の出来事が幾つか掲げてあります。

インターンシップという言葉自体は、ずっと以前から日本でも知られており、医師のインターンや教員の教育実習など、漠然とした形ではありますが、学生の職場実習に対するイメージはある程度あったと思います。しかし、政府の施策として、インターンシップを積極的に推進していくことが明確になったのが 1997 年でして、そういう意味で、この 97 年が施策としてのインターンシップ元年ということが言えるかと思います。

97 年当時、インターンシップにかかわる省庁として、通産省、労働省、文部省の 3 省がありましたが、企業・産業サイドに立つ通産省と学校側に立つ文部省との中間的立場ということで、労働省がインターンシップに関する研究会を設置し、そこに他の 2 省庁も参加をし、関係者のコンセンサスを取りまとめようということになったわけです。それがこの資料にあげております「インターンシップ等学生の就業体験のあり方に関する研究会」でして、この研究会の座長が、本日、基調報告とパネルディスカッションのコーディネーターをお願いしております諏訪康雄先生でいらっしゃいました。

このときの検討をもとに、とりあえずの指針として、 97 年 9 月にまとめたのが関係の 3 省連名による「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」というものです。これは、 7 年前になりますが、施策推進のスタート時、行政としてどんな問題意識を持っていたということがよくわかる資料ですので、参考として資料の 2 枚目以降に加えております。

インターンシップの定義

インターンシップの定義自体、いろいろな考え方がありますが、これ以降、行政としましては、「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」というように幅広にとらえることになっております。これは当時、既に民間ベースでいろいろな形での取り組みが始まっていたということで、そういう試みの足かせにならないように緩めに定義しておきたいという意図がありました。

インターンシップのあり方として提示された条件

ただし、行政として推進していくべきインターンシップのあり方としまして、一応のガイドライン的な線を打ち出しております。資料に 6 点挙げているように、職業意識の啓発としての役割、あるいは学校教育の一環としての位置づけ、産学連携による実施、責任の明確化──これは労災とか事故の場合の対応の問題、また運用の公正性とオープン性、就職活動の早期化を加熱させないといった幾つかの条件を提示しております。

これらのスタート時の問題意識が、現時点で見て果たしてどうなのかということ、既に解決しているのか、あるいは引き続き問題になっているのか、取り越し苦労だったのかということなどを、これからのご報告をお聞きいただく中で、念頭に置いていただければありがたいと思います。

インターンシップの普及状況

現在のインターンシップの状況につきましては、資料の 2 頁に、文部科学省の「インターンシップ実施状況調査」の数字を挙げております。

このような議論がスタートした平成 8 、 9 年時点では、学校単位で見ても 2 割に満たなかった大学のインターンシップの実施率が、平成 14 年には 5 割に近づいておりまして、昨年度から今年度には、過半数に達するのではないかという状況です。学生数ベースでは、文部科学省は出していませんが、おそらく 5 , 6 %ぐらいの実施率になっているのではないかと思われます。

これを多くなったと見るか、あるいは期待したほどではないといいますか、評価はさまざまであると思いますが、昨年 6 月に策定された若者自立・挑戦プランにも位置づけられており、今年度も引き続き 3 省もインターンシップの推進に力を入れていくことになっております。この後のご報告をお聞きいただきながら、どのような施策の展開が求められていくのかということを、ご一緒にお考えをいただければと思います。

前置きが長くなってしまいましたが、この後、まず当機構の下村英雄研究員から、最近実施した調査をもとに、学校や企業のインターンシップへの取り組み状況や考え方についてご報告いたします。続きまして、インターンシップを取り入れている学校、企業、経験した学生の方々からご報告をいただき、これらを受けまして、諏訪先生から問題提起をしていただきます。そして、パネルディスカッションで議論を深めていただくという順序で進めてまいりたいと思います。

このように、本日はたくさんの方々からご報告をいただくという少し欲張ったプログラムになっておりまして、お一人ずつに大変短い時間でまとめていただくようにご無理をお願いしております。また、事前にご質問をいただいておりますが、これから 3 時間というなかで、例えば外国の事例や、あるいは高校でどうなっているかなど、言及しきれないかと思います。そこで、参考資料の中に、白表紙の『インターンシップの制度化をめぐって』という資料があり、若干アメリカの事例なども出ておりますのでご参照いただき不足の部分は補っていただければと思っております。