基調講演『アニメーターはどう働いているのか?』からみるフリーランス労働

このたびは、拙著『アニメーターはどう働いているのか 集まって働くフリーランサーたちの労働社会学』(ナカニシヤ出版、2020年)に対して「第43回労働関係図書優秀賞」を賜り、恐縮ながら、その受賞記念という形で基調講演させていただくことになりました。「『アニメーターはどう働いているのか?』からみるフリーランス労働」というタイトルで、若干の自己紹介の後、私が重要だと考えるアニメーターの働き方に関する論点をお話しし、その後、関連する部分に絞って拙著の内容を紹介したいと思います。また、労働政策フォーラムですので、労働政策におけるインプリケーションについても私の限られた見識の範囲でお話ししたいと思っています。

労働関係図書優秀賞の受賞

私の専門は労働社会学で、ワークプレイス研究という職場の相互行為などの研究も行ってきました。2019年から長野大学の企業情報学部で教育・研究をしています。主な研究関心はフリーランス労働などですが、特に最近は労働者の生活や、労働者がどのような生活の展望を持っているかなどについても強い関心を持っています。

アニメ産業の労働現場に関する研究は、大学院生になったばかりの2013年頃から、軸足の一つとして行っています。おかげさまで、アニメに関する本も何冊か書きました。今日は、そのうちの『アニメーターはどう働いているのか』という本を焦点にお話ししますが、最初に申し上げたように、労働関係図書優秀賞という栄えある賞をいただきました。JILPTの『日本労働研究雑誌』の2020年12月号のなかで、シート1にあるようなご講評を京都大学の久本憲夫先生からいただきました。「1社専属フリーランス」という言葉は、私は本の中では全く使っていないのですが、確かに、そういうふうに言われてみれば、フリーランスであるものの、一つの会社に事実上専属しているような人たちについての研究は私もほとんど見たことがないので、働き方が多様化するなかで、混同されている働き方のあり方の一つを明らかにしたことが評価されたのだと思っています。

それでは報告に入りますが、最初に、アニメーターの働き方をめぐる論点を確認し、「集まって働くフリーランサー」という特徴に注目するといいのではないか、という視点でお話しします。その後、実際に私が調査したアニメ作画スタジオ、X社でのマネジメントの実践方法や職場秩序がどのように成り立っているのかについての一端を紹介します。最後に、フリーランス労働への認識を豊かにしていくために、フリーランス労働を営む労働者の相互行為に注目していくことが必要なのではないか、といった点をお話ししていきたいと思います。

アニメーターの労働問題

アニメーターの労働問題というのは、今ではそれなりに知られるようになったのではないかと認識しています。日本アニメーター・演出協会が数年おきに実態調査を実施しており、最初の調査報告となった2009年の結果から、動画職の年収が110万円台だというニュースが流れたことがきっかけになって社会問題化しました。これについては、批判的な言説が多く、まさにやりがい搾取ではないかというような議論もされました。実際、下請けの制作会社における参与観察の調査では、1日8時間、普通のフルタイムの作業を続けても最低賃金を下回る賃金水準しか得られないという指摘がされました(大橋雅央「アニメーターを主としたアニメ制作者の労働実態に関する現場調査」『財団法人徳間記念アニメーション文化財団年報2006―2007』、2007年)。

私もこういうような文脈の下で研究を始めました。『アニメーターの社会学』(三重大学出版会、2017年)という本では、一般的に労働条件が低いと言われるアニメーターがどういう条件の下でそれを受容しているのか、インタビュー調査を行いました。実はアニメーターの皆さんも相当問題意識を持ちながら働いていることは分かったのですが、インタビューだけでは捉えられない課題が残りました。

アニメーターの勤務場所

受賞本では、タイトルに「集まって働くフリーランサーたちの労働社会学」という副題もつけているのですが、「集まって働くフリーランサー」というところがポイントになっています。日本アニメーター・演出協会の実態調査によると、制作会社で働いている人は2015年で90%、2019年だと結構減って68.3%です。この変化については検討の余地がありますが、どちらにしろ、かなりの数の人が制作会社を勤務場所としています。アニメーターはフリーランサーが多いのに、フレキシブルな、働く場所が自由みたいなイメージからちょっと離れるところがあります。

アニメーターを離れて、働く場所に関する研究動向に触れると、テレワークなどについては以前からかなり蓄積はあり、そのほかにもオフィス内でのコミュニケーション促進を目指した「オープンオフィス」の議論もあります。いわゆるフリーアドレスのオフィスや自由席にするオフィスのことです。

ただ、レイアウト等を工夫したら、すぐに柔軟な働き方やコミュニケーションが促進するかというと、そうではないというような研究もあり、その場の成員が行う相互行為次第だというような研究も今では出てきています。というのも、例えば実際にレイアウトを自由席にすると、コミュニケーションが促進されたりすることは当然あるのですが、逆にコミュニケーションが多過ぎる。職場の人同士が干渉し過ぎるような状態になってしまって、仕事上の自由が逆に制約されるようなことがあるという研究も出てきています。

アニメーターの就業形態

フリーランサーという点ですが、同じく日本アニメーター・演出協会の2019年の調査で、フリーランスが50.5%、自営業19.1%となっており、ほぼ7割がフリーランサーないしは自営業となっています。

フリーランス労働の研究動向を見ていると、日本でもそれなりに蓄積はあるのですが、ここ10年~15年くらいでは英語圏でフリーランス労働の論文が多く出てきています。どういう研究がされているかというと、フリーランス労働の「不安定性」にどう対処しているかといったものや、不安定性への対処の実践が見つかったとして、それはどれぐらい維持可能なのか、というような研究があります。

そうした研究は、三つぐらいにテーマを分類することができます。一つは、「不安定就業」。労働者保護が乏しいことを特に問題視するような研究群になります。二つ目が、「不安定性への個人的対処」で、仕事がなくなっても、すぐに失業保険がもらえる状態であれば、むしろそれは成功だというような認識を持っている労働者の話などです。三つ目が「集団的対処と職業コミュニティ」で、報酬を分け合ったりするようなコミュニティをつくるとか、そういったコミュニティがどういうときにきちんと機能して、どういうときに壊れてしまうのかというような研究がよくされています。

組織で働くフリーランサーとしてのアニメーター

多くのアニメーターが制作会社という組織と関係を持ちながらもフリーランサーとして働いている特徴は、研究上、あまり主題化されてこなかったと思います。フリーランサーが持つ「自由」と「不安定性」、良い面、良くない面はそれぞれあるわけですが、これらにとってその特徴がどういう意味を持つのかということを考えたかったのが今回の受賞本です。

自由をある程度担保できて、不安定性を軽減できるような働き方がもし成り立っているのであれば、集まって働くフリーランサーというあり方は、無前提に批判するのではなく、一種肯定的にも考えることができると考えています。この本では、アニメーターたちはいかにして職場における自由を担保しているのかと、不安定性に対処するコミュニティをいかに維持しているのかという2点を問いとして立てました。

これは研究の動向にあまり興味がない人にとっては退屈な話かもしれませんが、少し触れさせていただくと、労働を対象とする社会科学の労働研究という分野は、労働者の働き方や、職場の秩序を規定する様々な水準の規則を捉えようと注力してきました。フリーランサーが働く職場では困ったことがあって、その場の秩序を支える規則、例えば就業規則が明文化されていないこともあります。これは場合によっては、とても無秩序な状態に見えてしまう。無秩序な状態だと、労働者が保護されないので、ひたすら厳しい働き方に見えてしまうことがあります。

私はここからもう少し踏み込んで、規則が明文化されていないから、規則がない=無秩序だというのは違うのではないかと思っていまして、社会学の「エスノメソドロジー」という相互行為の研究方法に注目してきました。ただ挨拶するとか、質問して答えるとか、そういう普段から日常的にやっているような行為のなかでも、それを秩序だった形で可能にしている規則があるのだと考えています。本では、そういう人の相互行為にひたすら着目して分析してきましたが、それに加えて職場の物質的な条件とか、非言語的な行為なども分析対象にしています。

X社の調査結果

(1)X社の概要

作画スタジオというといわゆる元請けやグロス請けという区分もあるのですが、X社は、先に全体を作るというよりは、アニメ制作のなかの作画、いわゆる絵を描く部分に特化した会社です。会社の概要はシート2にあるように、創業40年以上で、老舗のスタジオです。従業員数は、フリーランサーの人たちなのでかぎ括弧を付けているのですが40人ほどいて、あとは社長とマネージャーと経理になります。マネージャーと経理は直用の労働者です。マネージャーの職務内容については後で触れます。

所属するアニメーターは報酬の一部をX社に納め、X社はアニメーターに対して仕事のあっせんや技術指導を提供します。「手数料を取ることに不満を感じてX社を離れる人もいる」ということは社長もおっしゃっていました。

作画スタジオというのは、アニメ制作会社のなかではそんなに利益が取れる方ではないと、よく言われます。しかし、X社は40年続いていますし、どういうふうに組織を維持してきたのかということにも興味があり調査を行わせていただきました。

(2)調査方法

どういう調査をしたかというと、2017年1月~4月まで、取りあえずひたすら通いました。37回、昼、夜、深夜といろいろな時間にスタジオにお邪魔し、計164時間分のフィールドノートをつけました。フィールドノートには、「誰々さんが何をしている」のように、気づいたことをひたすら書き取っていきました。また、アンケートやインタビュー、ビデオ撮影も行いました。

(3)労務管理と人材育成

今日はフィールドノートの話を中心に取り上げますが、まず労務管理についてお話ししたいと思います。先ほどマネージャーの話を少ししました。マネージャーは、アニメーターとして絵を描く仕事はしません。アニメーターのマネジメントを専門に行います。フリーランサーなのにマネジメント(管理)するとはどういうことか、と思う人も多いと思うのですが、このマネージャーの役割は結構重要で、フリーランサーが被りやすい不安定性リスクを低減するものになっています。

シート3に表を掲げていますが、役割は三つあります。「社外からの受注管理」、「労働条件の交渉」、「社内アニメーターの進捗管理」を主にやっており、受注管理では、社外から「この作品のこのカットを描いてください」というような発注が来るのですが、そういうものを取りまとめる。同時に、社内のアニメーターがどういう仕事をしたいのかを常に把握しておいて、希望が合うと思われるアニメーターに仕事をあっせんしています。これによってアニメーター自らは仕事を探すコストを割く必要がなくなり、絵を描くことに集中できる。

また、アニメーターが自力で仕事を探そうとすると自分が持っているネットワークから探していく形になるのですが、こういうふうにすることで、会社に仕事の情報が溜まっているので自力だとアプローチしにくい作品の仕事などを得られる。

労働条件の交渉では、X社のアニメーターを例えばある作品に作画監督で使わせて欲しいというようなオファーがあったときに、マネージャーがその労働条件の交渉を代行して行います。偶然に、契約上の月給を何割か引き上げる例にも出くわすことができました。交渉のコストを低減できますし、アニメーターは絵描きが仕事なので、交渉をするのを得意としているわけではありません。一方、マネージャーは他の会社がどういう仕事を幾らでやっているかある程度把握しているので、交渉で有利に立つことができるという面があります。

進捗管理では、アニメーターの業務の遂行状況を常に把握しておいて、必要に応じて次の仕事を紹介します。これはかなり重要なことで、フリーランスの場合、仕事がないと収入が途絶えてしまう。これは業界用語で「手空き」と言われているのですが、マネージャーが「誰々さんの仕事はそろそろ切れてしまうかもしれない」というようなことを把握しておいて、それに合わせて仕事を持ってくるというようなことをしています。

人材育成については、フリーランサーが被りやすいリスクの一つに、技能形成のための訓練を受ける機会に乏しい点が挙げられます。ともすると、すぐに自助努力みたいなものに頼ることになってしまう。

X社では、調査当時は新人のアニメーターが何人かいて、新人一人ひとりに対して、社内の中堅~ベテランのアニメーターを育成担当として配置していました。調査当時はこれを(現役のアニメーターでもある)社長が担当しており、新人アニメーターの現場指導をかなり精力的に行っていました。

また、集まって働いているということもあり、後輩が先輩に疑問点を尋ねて、先輩が「ここはこういうふうに書くといいんじゃない」といった指導の実践も見ることができました。

面白いと思ったのは、「上がり棚」です。アニメーターが作画を終えた、要するに、納品する段階のカットなどを置いておく棚があり、棚に提出された原画を、ほかの人に見られないように見ることができる。ほかの人が作成した原画を通して学ぶことができる仕組みで、これは興味深かったです。

(4)職場における自由の確保

このように、X社ではアニメーターを支援する労務管理や人材育成の取り組みが行われており、フリーランス労働が抱える不安定性に対処する仕組みを備えています。ただ、これらの実践はちょっとデリケートなところもあり、アニメーターの作業への干渉を伴う面もあります。

アニメーターは基本的にフルタイムで作画の仕事に集中しており、しかも、報酬制度も出来高制であることが多い。1枚、1カット幾らみたいな世界で働いている人も多いので、例えば、「教えてください」と言うことであっても、相手の作業を止めて何かさせるということは結構デリケートな行為です。集まっていろいろやり取りができるという利点がある一方、それをやり過ぎると相互の自由というか、時間の使い方をかなり侵害してしまう可能性がある。これにどう対処するのかが重要な話になってきます。とはいえ、ただ集まって黙々とやっているわけにもいかないので、仕事の必要性上、この人に聞かないと分からないということがどうしてもあるわけです。こうした場面での相互行為の実例(シート4)を一つだけ見てみたいと思います。

小松さんというアニメーターが、中田さんという方の席に移動してちょっと質問をするという場面がありました。同じAという作品の9話という同じ話数を偶然やっているときで、小松さんが中田さんに、カットの指示の意味が分からないと聞きました。

小松さんの移動の仕方は、小松さんが2人の間にある席をぐるっと回って中田さんの席の横にかなり寄って行く感じでした。何でこんな移動の仕方をするのか。

小松さんと中田さんの席は、正直言って、「中田さーん」と呼べば聞こえるような距離でした。中田さんのすぐ近くには、小笠原さんと阿部さんという別のアニメーターがいました。席に近寄ることで、会話の宛先がほかの人である可能性を排除していると見ることができます。要するに、歩いて行ったときに、阿部さんと小笠原さんから「自分のところに来たのかな」と一瞬見えてしまうのですが、通り過ぎて中田さんのところまで行くと、「あ、自分じゃないんだ」と、集中が削がれる時間を短くすることができる。それで、相談を終えたらすぐ戻りました。これは干渉を最小化している。

また、小松さんの「カット113ってやった?」という質問が大事なところです。小松さん、中田さんのほか、実はそこにいる小笠原さんも同じ作品の作業をしていました。小松さんと中田さんは原画作業を、小笠原さんは絵コンテという作業を行っていました。実は、「作品Aのカット113ってやった?」と言ってもいいはずなのですが、作品名を発話してしまうと、小笠原さんも同じ作品をやっているので、小笠原さんにも関連があるものとして聞かれてしまう可能性がある。しかも、カットというのは、原画マンが仕事を請け負うことの単位であり、あえて「カット」という語から質問を始めることによって、小松さんと中田さんを同じ原画マンとして、小笠原さんをコンテマンという演出をする人としてカテゴリー化している。いきなり「カット」というところから質問を始めるということによって、小松さんがしようとしている質問が小笠原さんに関係している可能性があるということを排除しています。

本にはもう少しいろいろなことが書いてありますので、興味があれば御覧になっていただきたいのですが、このように会話の一つを見るだけでも、X社のアニメーターはお互いの作業を中断させないように細やかな配慮をしていることが見て取れるのではないかと思います。しかも、周囲のアニメーターを邪魔しないよう、あえて「作品A」ではなくカットという言い方をして配慮をしています。こうしたことを通して、個々人が集中する作業空間という秩序が達成され、個人が属している作業場における作業を尊重することが、X社の一つの規則になっていると見ることができます。

労働政策へのインプリケーション

X社の実践から、X社で事実上の専属として働くフリーランサーのアニメーターに対して、どのような労務管理や人材育成が行われているのかを理解できたのではないかと思います。X社は専属のアニメーターから手数料を得ることを引き換えに、労務管理や人材育成を提供するという経営形態を取ることによって、フリーランサーにとって持続可能な働き方を可能にする場になっていると言えます。特に私が重要だと考えているのは、不安定性を軽減することや自由を阻害しないことを、マネジメント側もアニメーター側も日々の相互行為の水準で常に達成し続けているところです。何か公式的なルールが整備されているというわけではないのですが、相互行為の水準で何とか不安定性の軽減や、自由の阻害・干渉が大きくなり過ぎないことを達成している。

3点ほど政策的なインプリケーションを申し上げると、まず、アニメーターの働き方は「搾取」として批判されているところは実際あるのですが、無前提に批判していくのではなく、X社のような一定の持続可能性のある実践というのをもっと把握していくことが大事なのではないかと思っています。

というのも、一方で、アニメ産業のなかでは大手企業・元請け企業が外注せずに制作を進める内製化も進んでいるとの見方もあります(半澤誠司『コンテンツ産業とイノベーション:テレビ・アニメ・ゲーム産業の集積』勁草書房、2016年)。そうすると、不安定性への対処と自由の確保という機能は、X社の方法が全てではないと考えて良いと思います。ただ、それでは他にどういう方法があるのかについては、われわれはもっと調べていかないといけないと思っています。

2点目はフリーランス労働についてです。1社専属で働くフリーランサーは労働者性が問題になりますが、この問題はまた、相手の作業を必要以上に止めない、必要以上に干渉しないということはお互い一人ひとりが専門的な仕事をしていることを担保するためにやっていると見ることができるわけで、職場にいる成員にとっても対処すべき問題になっている。

フリーランサーへの労働者保護に向けて法整備なども重要だと思いますが、こういう現場レベルでの実践を解明して事例を蓄積することが政策形成を考えるうえで重要ではないかと、私は社会学者として考えています。特に、フリーランス労働は雇用労働と比較して労働条件が低いと指摘されますが、それを労働者自身がどう受容しているのか。受容しているだけではなく、受容しきれないことも当然あるわけです。そういったことを把握することが、労働者保護や労働運動のあり方を構想するうえで重要なのではないかと考えています。

最後の3点目ですが、こうしたことの解明に当たっては従来的な労働調査にこだわるのではなく、職場に存在する細やかな秩序を捉えるための手法を積極的に取り入れていく必要があるのではないかと考えています。今日は詳しく立ち入れませんでしたが、エスノメソドロジー・会話分析を基礎にするワークプレイス研究というものがあり、これは一つの方針になるだろうと強く思っています。ポイントは、秩序をあらかじめ存在するものとして捉えるのではなく、職場の成員の行為を通してその都度達成されるものとして捉えるということです。この視点によって、規則が明文化されていないことも多いフリーランス労働も、実は案外秩序をもった現象として見えていくことが多くなるのではないかと思っています。

フリーランス労働が持っている秩序の類を明らかにしていけば、最終的には、職場において労働者性がどういうふうに扱われているのか、アニメーターの職場をどう評価できるのかといった実践的な課題にもつながってくるはずだと思っています。こういう社会学、ないし、相互行為の研究の立場から労働現場を見るような研究がもっと増えていくと、アニメーターの働き方についてもフリーランス労働についても議論がもっと発展していくのではないかと考えているところです。

プロフィール

松永 伸太朗(まつなが・しんたろう)

長野大学 企業情報学部 助教

一橋大学社会学部卒業、一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了、博士(社会学)。主な著作に『アニメーターの社会学──職業規範と労働問題』(三重大学出版会、2017年)、『アニメーターはどう働いているのか──集まって働くフリーランサーたちの労働社会学』(ナカニシヤ出版、2020年)、『アニメの社会学──アニメファンとアニメ制作者たちの文化産業論』(共編著、ナカニシヤ出版、2020年)ほか。労働社会学・ワークプレイス研究専攻。

GET Adobe Acrobat Reader新しいウィンドウ PDF形式のファイルをご覧になるためにはAdobe Acrobat Readerが必要です。バナーのリンク先から最新版をダウンロードしてご利用ください(無償)。