パネル報告2 企業内キャリアコンサルティングの現在と未来―NEXCO中日本における取り組み―
- 講演者
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- 原 和正
- 中日本高速道路株式会社総務本部人事部人財開発チームサブリーダー
- フォーラム名
- 第95回労働政策フォーラム「企業内キャリアコンサルティングの現在と未来」(2018年2月16日)名古屋開催
本日は、NEXCO中日本の人財育成、キャリア開発支援の仕組み、セルフ・キャリアドックの導入事業。この3点について、ご説明させていただきます。
中日本高速道路株式会社は、2005年10月1日、日本道路公団の分割民営化に伴い、発足しました。従業員数は2,100人強。グループ企業が25社あり、全体では1万人弱です。事業は、高速道路の建設や保全をする高速道路事業、サービスエリアを運営する関連事業があり、従業員の9割近くが高速道路事業に従事しています。
知識と姿勢を行動に移すことが重要
NEXCO中日本で求める人財像は、知識、姿勢、行動が基本となります。知識と姿勢、これは、持っているだけでは意味がありません。きちんと行動に移すことが重要です。この知識、姿勢、行動の関係が、組織の基本姿勢、さらには経営理念につながってきます。
弊社では、人財育成マスタープランという、人財育成の教科書をつくっています。その中に、人財育成の基本方針を掲げています。ここでは、全社員に日常の仕事を通じ、公平かつ平等に学習の機会を提供し育成すること。社員は、自己の成長につながる学習の機会を与えられるものではなく、主体性を発揮し、意欲的に獲得していくこと。こうしたことを、人財育成の基本方針に掲げ、社員に周知しています。
成長に向けた人的資源の強化
キャリア開発の目的は、社員の能力・スキルの高度化・多様化を促すとともに、自律的行動、リーダーシップを加速させ、これにより、会社の成長に向けた人的資源を強化することです。
求める人財像を実現するには、社員ひとりひとりが自ら積極的に学ぶことによって、自身の成長を高めていくということが必要です。そのためには、社員ひとりひとりがキャリアビジョンを描くこと。エンプロイヤビリティ、つまり、従業員の雇用に値する能力を高めること。チャレンジ精神を醸成すること。自己投資を習慣化すること。こういうことが重要となります。
キャリア開発には人事制度との連携が必要
キャリア実現に向けては、評価制度、目標管理制度、ジョブローテーションなど人事制度との連携が必要です。OJTに加え、OFF-JT研修も体系的に組み込み、社員のキャリア開発支援を行っています。
キャリア開発支援は、先ほどのマスタープランの人財育成の4つの視点の中のひとつに掲げています。社員の自律的なキャリア形成を支援していくもので、自己理解を深め、キャリアデザインの構築に関する能力開発を行っていくものとして、社内では整理しています。
キャリア研修は節目ごと実施
キャリア研修は、節目ごとに実施することが重要です。まず、新入社員です。次は、入社5年目。その次は、管理職登用前の35歳。45歳では、役職者等に向けたキャリア開発研修を行っています。50歳から55歳には、ライフプランセミナーを実施しています。
また、キャリア相談窓口を設置しており、キャリア開発研修とも連携しています。キャリア相談窓口では、キャリアコンサルタントの有資格者等である人財開発チームのリーダー、私、担当者の3人で対応しています。
キャリア開発の意識向上をめざして
弊社はセルフ・キャリアドック導入支援事業のモデル企業となっています。モデル企業に手をあげた理由は、キャリア開発に関する社員の意識が全社的に低かったことです。2012年5月、キャリア相談窓口を開設したのですが、任意来談でもあり、これまでの相談実績はゼロでした。今回、職業能力開発法が改正されたこともあり、こうしたことを追い風として、社内にセルフ・キャリアドックを導入するために、モデル企業に名乗りをあげました。
セルフ・キャリアドックの仕組みにつきましては、先ほどの伊藤忠様と同様、研修と面談をセットでやっています。キャリア開発研修とセットの面談は強制来談となっています。
言葉にすることで考え方が整理される
相談内容は、大きく5つにわかれます。ジョブローテーションに伴い、ビジョンやキャリアプランの継続性、持続性が難しいことです。また、職場における関係性構築に関する悩みもあります。上司、部下とコミュニケーションをとるのが難しい。これは、どの企業様でもあることではないでしょうか。それから、異動先の不透明さによる不安があります。
さらに、女性社員に関しては、ロールモデルとなる女性社員がいないこと。さらに、高速道路の建設も2020年ぐらいで終わるので、当社の事業展開、将来展望などに関する情報不足による不安などがあります。
面談を通じて気付いた点は、「言葉にすることで、考え方の整理できた」という声が、多数、寄せられたことです。そのほか、ライフイベントとキャリアとのつながりを具体的に考えている社員が多かったことも、確認できました。
今後のキャリア支援の課題
今後のキャリア支援における課題としては、面談に対する認識の払拭や当事者以外の社員の理解促進があります。また、面談で得た声を組織・制度に反映する仕組みづくり、キャリアコンサルタントの育成と質的向上、産業医等との連携、研修とキャリア面談の期間設定などもあります。
最後になりますけれども、今回のフォーラムでは先進的な企業事例ということでご紹介させていただきましたが、弊社の実態としましては、制度、仕組みはありますが、まだまだ十分に機能できていない面もございます。今後も他社様の事例を参考にしながら、キャリア支援に取り組んでまいります。