事例報告 中間的就労の取り組み

私は2003年の「若者自立・挑戦プラン」が契機となり、若者就労支援に関わるようになりました。この間、「働きたいけど自信がない」「やりたいことが分からない」「何十社も受けたが落ちてしまった」という悩みや葛藤を抱える様々な若者と出会ってきました。

その当時から「こんな仕組みがあったら良いのに」と思っていたのが、今日ご紹介する中間的就労です。中間的就労は、働く前に実習(試行期間)があること、雇用されない期間(無償の就労訓練・有償の就労訓練)があることが特徴です。働く本人の状況に応じて働き方の選択ができ、支援を受けながら一般就労に移行するという仕組みです。そのために、職場内には業務の指示などをする「職場担当者」と、第三者的に関わる「就労支援担当者」を配置し、具体的な仕事の相談は「職場担当者」が、そのほかの面では「就労支援担当者」が相談に乗って本人を支援していくというものです。

「ユニバーサル就労」の取り組み

10年ほど前から「ユニバーサル就労」という取り組みを始めました。前述の中間的就労と同じような仕組みですが、障がいや生活困窮などの様々な理由で働きづらい状態にある人を迎え入れ、ともに働くことを目指していこうという概念です。その特徴は、図1の下にあるとおり、ユニバーサル就労で働いている間は支援がずっと継続することです。働き方は4段階あり、実習を経て、働く本人、受け入れ事業所、支援者の三者でどの段階から始めるか三者の同意を得ながら進めていきます。非雇用の段階では「無償コミューター」、「有償コミューター」の2段階があります。この期間ではどうなったら次にステップアップできるのか、個別支援計画書で明確にして、モニタリングや面談・振り返りを行いながら、状況に応じて雇用契約へと移行します。雇用された後は、最賃保障職員として就労スキルを向上させ、人事考課に基づいて一般賃金職員への移行を目指します。その後、自信を深めて外部へ就職する人もいれば、支援を付けずにそのまま内部で継続就労をする人もいます。

「業務分解」でその人に合った仕事を

これまでに「ユニバーサル就労」システムを導入した職種には、介護・介護補助、事務・事務補助、指導員補助(学童等)、保育補助、清掃、洗濯、厨房、配送センターの倉庫内作業、配送業務のトラック添乗などがあります。その際、就労先の従業員がしている仕事を「業務分解」して、業務を切り分け、ユニバーサル就労で働く人の状況に応じて業務を組み合わせていきます(図2)。一般求人のように、仕事に人を合わせるのではなく、人に仕事を合わせる──。これもまた、中間的就労の一つの特徴だと思っています。例えば、就労先の従業員Aさんが1日にこなす仕事のうち、資格や経験が必要とされない業務を集め、それをユニバーサル就労のBさんがする。それにより、Aさんはより専門的な業務に時間を費やすことができ、その結果、サービスの質の向上や業務の効率化につながったという例もあります。

6割が1年以内に雇用へステップアップ

どのような人がユニバーサル就労をしているかと言うと、男性45%、女性55%、年齢別では、20代と30代が約7割、40代まで含めると87%となっています。個別支援の理由は、知的障がい(23%)と就労ブランク(22%)が多く、その他(22%)には就労未経験や引きこもり経験がある人も含まれています。また障害者手帳の有無は、「なし」が51%です。

また、2017年末現在で支援中が50人、支援終了が75人で、法人内で一般就労に移行したのが8人、外部へ就労したのが15人となっています。非雇用から雇用への移行にどのくらいかかるかと言うと、およそ6割の人が1年以内に、1年半まで延ばすと7割以上が雇用へステップアップしています。

制度の活用が今後の課題

中間的就労は、2015年4月に施行された生活困窮者自立支援制度のなかで、認定就労訓練事業(いわゆる「中間的就労」)として位置づけられ、厚生労働省の資料に私たちの「ユニバーサル就労」の取り組みも紹介されました。現在私たちは、千葉県8市の25事業所で認定を受けて「認定就労訓練事業」を実施しています。全国で見ると、2017年9月末時点で認定件数が1,122件、利用定員が2,992人と、約3,000人の受け入れが可能となっています。実施主体は、私たちのような社会福祉法人が56.1%と半数以上を占めており、主な訓練内容は「清掃・警備」「福祉サービスの補助作業」が多くなっています。 

認定就労訓練事業所数については、都道府県の1位は大阪府の79、指定都市では名古屋市が159となっています。ただし、2016年度の支援決定数は大阪府が35で1位、指定都市では横浜市の35が1位と、まだまだ活用されていないという課題があります。


最後に一つ、現在も支援継続している40代男性のケースをご紹介したいと思います。彼は大学卒業後、10年間会社に勤め、その間に体調を崩し、退職しました。原因不明の難聴でしたが障害者手帳には該当せず、どこに相談して良いかわからなかったため引きこもった生活が続いていました。母親から促されて来所した時は、難聴でブランクもあるので働けるかどうか、大きな不安を抱えていました。こちらで事務作業の就労体験をしたところ、徐々に自信を回復し、就職活動を開始するまでになりましたが、全て不採用になってしまいました。ところが本人に話を聞くと、「実は採用されずにほっとしている」と本音を漏らし、まだ不安が全て払拭されていないことが判りました。

この後、その男性は2016年秋から千葉の生活クラブ生協で「認定就労訓練事業」を利用しています。最初は非雇用型で週3日、1日2.5時間、交通費のみ支給というところから始め、本人の状況や希望に応じて日数と勤務時間を増やしてきました。報酬も時間当たり500円から最低賃金以上と上がり、業務内容は、常時/週1回/随時の仕事を組み合わせ、状況を見ながら負荷をかけたり減らしたりして、順調に進んでいます。

ご本人のなかには葛藤もあったと思いますが、このような就労訓練でスモールステップを踏み、中間的就労のなかでいろいろな人に支えられながら前に進んでいるということをご紹介させていただきます。

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