現場報告1 ハローワークにおける若年者支援

以前に勤務していたハローワーク横浜での若者支援に特化した機関としては、まず、「就職支援相談コーナー」があります。ここでは若者の支援を行うニート・フリーター相談コーナーだけでなく、雇用保険受給者の早期再就職を支援するコーナーや、がんの治療中の方の就職支援窓口も用意されています。

相談者がどのようにニート・フリーター相談コーナーまで誘導されるかというと、ハローワークの通常の職業相談窓口(職業紹介などを行う)でスタッフと話をした結果、「少し時間をかけた支援が必要ではないか」と判断された人や、本人の迷いが著しい人、支援が必要だと判断された人を私どもが案内して、相談を行うのが一般的です。

相談コーナーでは、各種ツールも活用しています。興味のある人にはキャリア・インサイト(職業適性診断システム)を使ってもらったり、セミナー形式でGATBを行うこともあります。

関連機関から相談コーナーに誘導されるケースも多いです。ハローワーク横浜の場合、湘南・横浜若者サポートステーションなどとの連携を密にしていて、そちらから案内される相談者も多くなっています。

本人からの申し出では、ホームページを見て来所する人が多いのですが、なかには保護者の方が相談しに来るケースも少なくありません。

就職困難な若者の傾向について、私なりに次のように整理してみました。まず、意欲は高いけれども、具体的な目標が定まらない。意欲が高いこと自体は決して悪いことではないのですが、柔軟性に欠け、なかなか聞く耳を持ってくれない場合があります。

また、こだわりが多く、職種が絞られ過ぎてしまう。このタイプでは、人との関わりが得意ではない人が多いです。

3番目は、偏った特性があることについて受容していない。慣れや少しトレーニングが必要な部分があったとしても、本人が改善を必要ないと思っているケースです。最後に、就職に対する意識が希薄なことが挙げられます。

こうした人との職業相談では、話をするだけでは進まないケースもあります。そこで、様々なツールを使いながら、支援を行います。

GATBでは、能力面を測定し、能力面から適職を探っていきますが、私自身は、デリケートな検査であることを認識した上で、慎重に振り返りを行うという点を特に注意していました。

キャリア・インサイトは、パソコンを使って検査を行うものですが、比較的個人のペースで進めることができますし、結果も即時出力されるので、利用頻度はとても高かったです。OHBYカード(カード式職業情報ツール)は、話が進まなかったり、相談者がなかなか口を開けない場合に活用していました。相談を促進するためのツールとして使っていました。

相談事例を二つ紹介したいと思います。最初は18歳の女性のケースです。この人の場合は母親が来所し、娘について「未就職のまま高校を卒業してしまったので、どうしたらいいのか」と相談に見えました。

本人は努力家で、よく勉強もしていたのですが、面接が苦手で、面接という言葉を聞いただけで顔が真っ青になってしまうほど、面接に対する不安がとても強い方でした。

相談コーナーでは、基本的に面接の練習は一度もやりませんでした。面接のネガティブイメージをいかに軽減するかを考え、まずは人前で話すことの不安についてじっくり話し合いました。職業選択については、できるだけストレスが少なく、長期的に働ける仕事は何か、話し合いながら進めていきました。本人が努力家だったこともあり、無事に職業を決定することができました。

もう一つは37歳男性で、年長フリーターのケースと言ってもいいかもしれません。この方は、親が高齢になってきたということで、いよいよきちんと働かなければいけない状況になり、相談に見えました。困ったのは、全く口をきいてくれないのです。粘り強く支援していくしかないなと思ったところで、活用したのがツールです。

OHBYカードを使って話をしてみたところ、少し、本人も意外だったようなのですが、免許は持っていなかったのに運転に関心がありそうだという結果を見出すことができました。相談は1回中断を挟んだのですが、再度、相談に来たときに、「免許は必要だけれどもやりたい」と言い、最終的には何とか就職することができました。どうしても目標が決まらない相談者だったので、できた目標をこちらも尊重して、うまく支援することができたケースでした。

プロフィール

土屋 秀樹(つちや・ひでき)

平塚公共職業安定所就職促進指導官

1994年神奈川県労働部職業安定課(現厚生労働省神奈川労働局)に入職。神奈川県内の各ハローワークに勤務し、総務部総務課では職員採用等の人事事務を4年間担当、2011年から2年間神奈川県に出向し国と地方自治体の連携した雇用対策に取り組む。ハローワーク横浜において、担当制・予約制による個別職業相談業務などの就職支援に通算約7年従事、主な支援対象者はニート・フリーターなどの若年層のほか長期療養者等。2015年4月より現職。2級キャリア・コンサルティング技能士。