事例報告② 愛知県労働協会の事例

私どもの職業適性相談の業務は、大きく分けて、個人向け、学校向け、企業向けの3つです。現在、私は個人向けと学校向けを主に担当しています。個人向けは、新規学卒者の方だけではなく、再就職や転職を考えている人の相談にも乗っています。学校向けは、キャリア教育ということで、学校に出向き、適性検査の結果をベースにキャリアについての講話を行っています。

経験豊富なスタッフを配置

職業適性相談コーナーでは、「気軽に窓口へ」ということで、就職活動に関する相談ならどんなことでも受け付けており、年間834人が利用しました。職業適性相談コーナーには11人の職員が配置されており、キャリアカウンセラーやコンサルティング技能士なども在籍しています。また、産業カウンセラーも2人います。相談員のなかには、愛知県職員の心理職のOBで児童相談所の元所長など経験豊富なスタッフを配置しています。また、キャリア教育の関係では、高校教員のOBもいます。

職業適性相談コーナーには「キャリア・インサイト」の端末が2台あり、自己分析したい人が受けて、キャリアコンサルタントがその結果の見方について、予約不要で対応する格好です。毎週木曜日の午後は、適性検査などを使った「適職探しセミナー」を実施しているほか、予約制の個別相談も実施しています。

「キャリア・インサイト」の利用者は約800人で、セミナーは250人、個別相談で500人ぐらいの利用があります。ジョブカフェの愛知県版「ヤング・ジョブ・あいち」にも週2回出向いて、個別相談をしています。労働局や県、市、町が主催する合同企業説明会が年間70回程度あり、そこでも適性検査コーナーということで、パソコンを使った検査の結果の見方と相談を行っています。

利用状況は、これらをトータルすると、2013年度は4,120人の利用がありました。男性と女性の内訳は約半々。個人相談・セミナーについては、半数以上が20歳代の若者です。

7割超が「自分の適性や考え方の特徴がわかった」

相談やセミナーの後に行っているアンケートをみると、個別相談の目的(図表1)については、「自分の性格や考え方の特徴を知りたい」と「自分の能力や得意分野(苦手分野)を知りたい」がともに5割を超えています。これに続いて「就職に関する自分の考えを整理したい」「履歴書の書き方を知りたい」などがあがっています。

図表1 個別相談の主な目的(複数回答)(事後アンケート)
グラフ

来所から半年後の追跡調査も行っていて、進路決定や変化に役立った内容について聞いた問い(図表2)では、「自分の適性や考え方の特徴がわかった」との答えが7割を超えて断トツに高く、次いで「履歴書作成や面接への対策がわかった」「話をよく聞いてもらえた」などが続きます。予約制の個別相談では、午前、午後の単位で長く時間をとって対応しています。

図表2 進路決定や変化に役立った内容(追跡調査)
グラフ

本人の知識確認と検査結果を踏まえて助言

相談事例を紹介します。現在、正社員としてチェーンの飲食店で接客業務に就いている26歳の大卒男性Bさんは、転職を考えていて、次に何をしたら良いか知りたいということで適性検査を受けに来所しました。相談は、「そもそも転職しなければいけないのか」というところから始まって、転職のメリット・デメリットを書き出すことから行いました。大卒の方でしたが、社内のジョブローテーションの知識があるかを確認したところ、その知識はありませんでした。退職まで接客を行うイメージしか持っていなかったので、「まず、その点を確認したほうがよい」とアドバイスして、適性検査を受けてもらいました。

適性検査は、知的能力から手腕の器用さまでの適性能力を測った評価と、そこから導き出されるいろいろな仕事に対する適性評価で構成されています。Bさんの検査結果をみると、数理能力が平均100点のところ132点とA評価でした。書記的知覚も平均100点のところ113点とB評価で、この2つの能力がかなり高いことがわかりました。適性職業では、経理、会計の仕事の適性が高く、この結果も踏まえて、「ジョブローテーションの話の中で一度聞いてみた方がよい」とアドバイスして相談を終えました。

半年後にBさんの追跡調査をしたところ、自由記述欄には「自分の特徴がわかり、その特徴に合った経理職をめざすことにしました。現在は、今までの職場で働きながら専門学校に通い簿記の勉強をしています。また、経理部門への異動を希望しているところです。この決心ができたのも、このコーナーで検査を受けたのがきっかけです」と書いてありました。

適性検査を活用したキャリア教育を

学校向けの進路指導相談については、基本的スタンスとして、適性検査を活用したキャリア教育を実施していきたいと考えています。ハローワークと連携して、高校の進路指導主事会議や中学の職業紹介関係業務担当者の連絡会議には必ず出席し、検査の説明とメリットについて話しています。

ハローワークが展開する職業意識形成支援事業では、若年者のキャリア形成、職業感・勤労感などの職業意識の形成を狙った「キャリア探索プログラム」を実施しています。そのメニューの1つに、職業レディネス・テスト、一般職業適性検査の検査用紙の配付が入っています。愛知県の場合、非常に多くの学校が利用しています。とくに「あいち・出会いと体験の道場」と呼ぶ中学生の職場体験を実施していて、この事前指導の中で、適性理解、職業情報の収集と理解のために、適性検査を活用しています。学年単位でその結果を出して、検査結果の見方から始めて、働く上で必要なことなどの話を「職業講話」と呼んで実施しています。

夏休みには、中・高・大学、専門学校の先生に集まってもらい、進路指導講習会を開きます。適性検査の正しい使い方の解説はもちろんのこと、実際に先生たちに検査を体験していただき、採点するところまで説明しています。

職業講話には力を入れていて、2010年度に54校、昨年度は119校に出向いています。2013年度の受講人数は、1万人を超えました。受講した中学2年女子の感想を紹介します。

「検査結果の見方、活かし方をみて、私は考えさせられました。それは、職業にはとてもたくさんの種類があるということです。今まで知っていた職業はすごく少ないことに気がつきました。そう思うと、もっと職業のことについて知りたいと思いました。もっといろいろな職業のことを知れば、将来の夢への見方も、もしかしたら少し変わるかもしれません。私は音楽関係の仕事に就きたいと思っています。なので、そのことについていろいろと調べて、一番自分に合い、やりたいと思う仕事をみつけていきたいです」

やはり中学生の段階では、世の中にはどんな仕事があるのだろうというところから始まると思います。この生徒のように、この検査をきっかけに自分で調べてみようという意欲が出たところが非常にうれしくて、皆さんに聞いていただきたいと思って紹介しました。