報告「職業資格」
我が国における職業に関する資格の分析―Web免許資格調査から―

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キャリアガイダンス部門の西村と申します。私からは、パワーポイントとそれからお手元に今日配っていると思いますけれども、同じ題名をつけました資料、パワーポイント以外の補足資料も入っておりますので、それを両方、ご覧いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

これは、パワポ1ページに書いてございますように、報告書121−1、2(『我が国における職業に関する資格の分析― Web免許資格調査から―』)というふうになっております。私どもJILPTの研究報告書としては大変珍しくて、二分冊になっております。先ほど藤本研究員から職業資格というお話が出ましたけれども、これは我が国における職業資格を、考えるだけ包括的に調査をしたものでございます。したがいまして、第二分冊のほうはどちらかというと資料をきちんとまとめた形になっておりまして、この我が国における職業に関連する資格の情報をたくさん提供しているというふうなものになっているはずでございます。

したがいまして、膨大な調査でございました。研究者も10人が参画しておりまして、報告書は8人が執筆いたしました。今日はその中の右代表ということで、私のほうからお話しいたします。この、ちょっと大きな調査ですけれども、私たちがそれをやりまして出てきたこと、それから言いたかったこと、かなりいろいろあるのですが、ポイントだけ絞って効率的にやっていきたいと思います。

パワポ2ページにいろいろ字で書いてありますけれども、資格というと皆さんすぐに、私もそうですが、今の藤本研究員の報告の中にもありましたけれども、資格というと何を思うかというと、資格を取って能力が証明されたことになるから何かいいことがあるんじゃないか、心強いんじゃないか、特にこの不確実な世の中では、資格を持って労働市場の中をわたって歩くことができるんじゃないかと、こういうふうに考えるのは当たり前ではないでしょうか。

学者のほうでもいろいろな議論があるのですが、やっぱり資格というのはキャリアの目標、キャリア形成の目標に向けての学習への動機づけになるとか、主体的なキャリア形成の手段とか、実践的な能力習得のための準備段階のものだ。資格があって、それで実務経験で鍛えられて仕事がうまくいくようになるみたいな、資格をかなり肯定的に評価する先生方がたくさんいらっしゃいます。

ところが一方で、資格を取得したところで、その資格者といったって仕事ができることは証明していないよとか、職業マッチングの世界でも、個人の期待ほどに、この資格を持っているからこの職業につけると、そういうふうには資格は物を言いませんと、そういう議論があります。資格に対する期待が大きいだけに、その期待が外れたときに「あら?」というような議論があると思います。

我が国における資格は、数え方によるのですが、1,000とも3,000とも言われています。この議論は、いろいろな資格に対する議論がある中で、資格はとにかくたくさんある。それは、さっきのお話にも出ましたけれども、国家資格で業務独占、その資格を持っていなきゃやれないというような強い資格もありますし、その資格を持っていて、そういう資格者がいないとだめだという必置資格もあります。でも、そういう能力がありますよという能力証明のような資格、資格の強さは随分違いますし、発行している団体も国であったり、民間団体であったり、すごく多くて複雑で多様なんですね。したがいまして、この多くて複雑で多様なやつを何とか整理してみたい、そういう思いがすごくありました。

そこで、本調査研究ではウェブ調査という調査の手法を用いまして、これが大量にデータが集まってくるものですから、ただし、そのデータの限界もありますけれども、在職者を対象とした調査をやったわけです。

もう一つ、これからどういうことをやったかとか中身に入りますけれども、今から私は資格、資格と言っていきますが、この資格という言葉は、私がここで使いますのは、職業に関連する免許とか、検定とか、それから何とか資格も、何とか試験もあります。国や、それからその他の民間機関でもいいのですが、第三者によって発行、認定されたものと位置づけます。したがいまして、資格、資格と言っても、何とか検定というのも入ります。けれども、企業の中での職能資格制度、その企業だけで通じる企業内の資格は入りません。そういうことでご理解ください。

そのような資格をどんなふうにして調査したのかということでございますけれども、パワポ3ページにあるように、調査は2回行いました。ウェブ調査というのですが、母集団は、民間にウェブ調査会社があるんです。そこで141万人のモニターがいます。その方々にメールを送りまして調査を依頼したわけですね。

そして、パワポ4ページが調査の画面です。後ろのほうでもし見にくいようでしたらば、お手持ちの資料でも同じものがありますので見ていただいたらよろしいのですが、まず、職業を聞きました。職業についていない人は、そこで「ありがとうございました」という形になりますので、企業調査ではありません。労働者一人一人、しかも今、職業についている人に対する調査をやりました。それで第1段階で、どういう職業についていますかと、ちょっと見にくいですけれども、「モノづくり」、いろいろ職業の大クラスターが並んでいますが、ほんとうに具体的な職業までここで下りていって、どういう職業についているのかを聞きます。

そしてその次、免許・資格に関しては、ここの大きな名前ですね。どんな資格を持っていますか。これは1,153資格をリスト化しました。実は、資格についてはインターネットを引いていただきますと、ハローワークインターネットサービスというのがあるのですが、そこで免許・資格コードが1,000ちょっとあります。それを改編して、追加して、こちらで1,153の資格のリストをつくりました。それを、リストを見て選び出せというのは大変な話ですので、フリーワードですとか、一覧表ですとか、そんなので何とか回答者の方が資格にたどりつけるように、いろいろ工夫をして回答していただきました。

そして、その資格ですね、C、D、E、Fですけれども、C、何歳のときに取ったんですか。それから、資格を取るための期間、本格的に勉強をし始めて資格を取得できるまでどれぐらいの期間がかかったんですか。それから、今の仕事につくとき、これは就職に限りません、入職ですね。同じ会社の中でも職種転換とかキャリアアップしてその仕事に入るときにその資格は有効でしたか。必須だったか、有利だったか、関係がなかったか、3つです。それで今度は入るだけじゃなくて、今その仕事をやっていますよね、あなたの今回答してくださっている資格は、今の仕事をするのに役に立ちますかと。非常に役に立つか、まあ役に立つというレベルなのか、関係ない、役に立ちません、こういう3つ。資格について、これだけを調べました。簡単なようですけれども、これは持ってる資格の数だけ、10まで数えて回答してもらいましたので、たくさん持っていらっしゃる方は随分たくさん回答していただいたなと思います。先ほどの、そういう画面でお願いをしたわけです。2回やりましたけれども、2回やったから同じ人が答えているのではないのかというと、同じ人は答えていません。依頼のメールを発送するのは、2008年に回答をいただいた方には発送していませんので、重複はありません。

それから、データもたくさんとればもちろんいいのですけれども、時間とお金の問題があります。したがいまして、一つは、ある職業にどういう資格が必要なのかなというのを見たかったものですから、2008年調査では、ある職業についていると最初に答えてくれた人が、職業が700ぐらいあるのですが、それについて1職業50人で、来たらそこで切りました。2009年は、2008年と合わせてそれが100人になるまで、そういうふうにやりました。

ですから、これは在職者からの調査ですと申し上げましたけれども、残念ながら、資格所持者は世の中の、日本国の全体の母集団からのランダムサンプリングではありません。したがいまして、そこは限界があります。しかしながら、普通のランダムサンプリングでは、この職業では得られなかったようなある職業に対する資格と、そういうふうなことも調べられたというメリットもあります。データの収集の限界と、その裏腹のメリット、それはちょっとご留意ください。ここはほんとうに、すべてこういう傾向ですと自信を持って言うためには、母集団からのランダムサンプリングでなければいけませんけれども、そこはちょっと違うというところです。ただし、この調査は1,153の資格を用意して、それをちゃんと包括的に、網羅的に、そして職業もすべて700職業についている人をターゲットにしてという、非常に包括性と網羅性があるというところは、なかなかない調査かなと思っています。

それで、どれぐらいの回答があったかということで、結果のほうに入ってまいります。これにつきましては、パワポ5ページの回答者の属性、資格収集データ数というところですけれども、最終的に2年間の2つの調査を合わせまして、5万3,133人の回答者を得ることができました。そのうち、2万3,556人は資格を1つも持っていませんという人でした。2万9,577人、回答者5万3,133人のうちの55.7%、過半数の人は資格を持っていると回答してくださいました。そのうちの1万3,803人は1つ、2つは7,770人、3つ以上と答えてくださった方は8,004人ということです。

これを資格の側から見ますと、100人以上の人が持っていますと言われた資格は147資格ありました。50人から99人は84資格、1人から49人は803資格、計1人以上持っていますと答えた資格は、1,034の資格。1,153の資格の中から1,000ちょっとの資格を答えていただいたというものになります。

こうした先ほどご紹介した結果ですけれども、これをどう料理するか。すごくたくさんの材料が集まったので、さあ、どう料理しようかということになるわけですが、報告書自体の目次は、お手許の資料の中の最初のほうが、これからお見せするパワーポイントが全部入っておりますけれども、後ろのほうで、真ん中から参考図表がありますけれども、そこから1ページと振ってありますので、そのページ数で申し上げますと、15ページと下に振ってあるところが報告書の章構成になります。それを見ながらパワポ6ページも見ていただきたいのですが、まず1章では、今お話しした、どうやって集めたかといった内容を書いています。2章以降が結果とか考察をしていますが、2章では資格を職業との関係で体系的に、こういう職業にはこんな資格を持っている人が多いよという整理。

それからちょっと飛びますけれども、第6章ですね、資格の整備がおくれていると見られると思うような職業の分野を見つけたということです。その辺が、資格の何となく鳥瞰図的なところですけれども、3章、4章、5章というのは個別の資格にちょっと注目しました。

3章では、個別の資格の費用対効果です。費用対効果というのは、要はこの資格を取るにはお金もかかるし、時間もかかるわけです。それがどれぐらいの効果があるのか、コストに見合う効果があるのかどうかという分析。

それから、4章、5章では、収入、資格が一番物を言うのを端的に示すのは年収であろうと。年収に対する資格の効果はどれぐらいあるのかないのかという話。

第7章はまとめと、それからもう一つは、資格はいつごろ、どういう形で取られているのかということを整理しました。それが第1分冊です。第2分冊では、主要資格と職業という形で、所持者が50人以上の資格につきまして、1ページ1ページ全部同じ形式で整理しました。後で申し上げます。

したがいまして、2章や6章という辺は多分政策の立案者の方々にご参考にしていただけるのかなと思いますし、3章、4章、5章、7章というところは個別の資格も出ていますので、キャリア形成をするその人そのもの、あるいはキャリア形成を支援する人、そういうところに、こんな資格はこういうふうなものなんだよということで見ていただけるかなと思います。

それでは、随分前置きが長くなって申しわけありません。結果のポイントをかいつまんでいきたいと思います。

職業との関連で見た資格ということになっておりますけれども、これにつきましてはこのパワポ7ページと、先ほどのページ数が振ってあるところでいきますと、1ページから4ページの辺ですね。1ページをちょっと見ていただければと思います。ページ数が振ってあるところです。多分、中では真ん中辺になります。

これはどういうふうに見るかと申しますと、縦のラインです。それは厚生労働省編の職業分類で、大・中分類というのが職業の固まりなのですが、それが縦に来ていまして、その横それぞれには、こういう職業の人の資格はこんなのだよということ。取り上げた資格は1人以上が取得している資格ではなくて、20人以上が取得している資格について、その20人がどんな職業についているか。第1位の職業、第2位の職業、それはついている人の職業に対する数をざっと見たものです。

これはとにかく、ざっと俯瞰図的に2ページ、3ページと見ていますけれども、資格というのが、これは当たり前よと言ってしまえば当たり前ですが、専門的・技術的職業にかなり集中しています。1ページが丸々そうです。それから3ページ、生産工程・労務の職業、I−1とか、2とか、3とかいうところですね。世の中にいろいろな資格がありますけれども、やっぱり多いのは専門的・技術的職業に関連する資格や生産工程に関係する資格であるということです。

あともう一つこの表で見ますと、Ⅰ型資格、Ⅱ型資格というのが表の中ほどにあります。このⅠ型資格というのは、先ほど見ていただきました、取るのにどれぐらいの期間がかかりましたかというので、Ⅰ型資格は2年以上の学習が必要であったという、取るのがなかなか困難な資格です。Ⅱ型資格というのは、2年未満の資格ということです。

一つ一つざっと話している時間はないのですが、Ⅰ型資格というのは大体どこのところにもあるのですが、2ページを見ていただきますと、中ほどのD販売の職業、Eサービスの職業、それからG農林漁業の職業、そこにはⅠ型資格が出てこないんです。それは単なる事実ですから、それをどう思うかというのはそれぞれありますけれども、私どもは、資格というのはもちろんそれを取るためにやっぱり勉強しなきゃいけない。実務だけじゃなくて勉強もしなければいけない。その勉強が、能力開発の向上が図られるということが多いわけだから、この職業については、それの目安となるような、きっかけとなるような資格はまだないんだなということが言えます。

そして、そういう頭の発想も踏まえて、資格が未整備な職業の分野はどんなものだろうと見ました。これにつきましては、同じく今、2、3ページあたりを見ていただいていると思いますけれども、4ページと、パワポ8ページです。4ページのまとめがこれですので、4ページから来ています。4ページをちょっと見ていただきたいのですが、この縦のライン、まず金属の製造・加工、機械の設計・組立から動植物まで、ずーっと来ていますけれども、これは職業分類の中分類のクラスターなんですね。それぞれの職業についている人が、次を見ますと、保有なしというのは資格を持っているか、持っていないか、持っていると答えたかどうか。それで、持っていないと答えた人の割合を4ページの図表2に書いています。

その次に、入職評価が低い、先ほど見ていただきました、この資格は今のあなたの仕事につくためにどうでしたかというときに、ここに書いてありますように、2を必須である、1を有利である、0を関係ないというふうに数値化したときの平均値です。

仕事遂行評価の低いというのは、これも同じです。仕事をする、入職じゃなくて、今あなたが仕事をしているのにこの資格はすごく役に立っていると答えたら2、役に立っているは1、立ってないは0、それの平均値です。

ところどころシャドーが塗ってありますけれども、保有なし、これは先ほど見ていただきましたように、調査回答者の過半数が資格を保有しておりましたから、保有がないというのが過半数は、逆にその職業分野では資格があまり持たれていないというところなので、それはこういうふうにシャドーを塗っています。

それから入職評価が低い、2が満点ですから、低いものから3分の1の分類のところにシャドーを塗っています。

それから仕事遂行評価が低い、これも2が満点で、平均値が低いところから3分の1の分類のところにシャドーを塗っていまして、問題頻度というのは、保有しているかどうか、入職評価が低い、それから仕事を遂行するために資格が役に立っているという割合評価が低いと、その3項目について、3つともシャドーが塗ってあるのが3、2つが2、1つだけが1、何もシャドーがないのは0、こういうすごく簡単な、簡単なんですけれども、ざくっと見るのにはこういう感じで。

そしてパワポ8ページに書いてあるのは、シャドーが3つとも塗られたものです。見ますと、日用品製造、印刷・写真というのもありますけれども、百貨店・スーパー、販売・配達、レジャー・スポーツ、マスコミ・芸能、デザイン・広告、芸術・工芸の職業分野において、そこの職業分野ではあまり資格がなかったり、持っているけれども役に立つとか、そういう評価が低かったという感じです。どちらかというと、これも大ざっぱな解釈ですけれども、概してサービスを提供したり、個人のセンスなどを発揮して財の、財といっても目に見える財も含みますし、ないものもありますけれども、財の創造・提供を行う、そういうような職業分野では資格の整備がちょっとおくれているかなという傾向が見られました。

また、下のコンピューター、それから事務、研究の職業分野でも、これは問題頻度が2です。これは資格の保有者が結構いるのですが、入職評価が低いし、仕事遂行の評価が低いんです。資格がたくさんあっても、あまり在職者は評価していない。そういう意味でこれが続いているというふうに見てください。こんなふうにざっくり。

一つ一つちょっと問題が、そういう職業分野がゴシックですけれども、括弧内に書いてあるのはその中のクラスターで、資格の所持者が少なかったり、評価値が低かったりした職業を具体的に書いています。後で見てください。こんな感じです。

ですから、なかなか資格って、先ほどの発表にもありましたように、どういうふうにつくっていくのかとか評価していくのかは難しいんですね。物をつくってやってもらうのだったらいいのですが、物じゃないもの、サービスを提供するのに資格をどうつくるのかというのはなかなか難しい状況。コンピューターのように、資格はあれども実態としてどうなのかという資格もあるということです。

次に、今度は個別の資格について少し見ていきたいと思います。これは費用対効果という考え方をしました。費用は何か、資格を取る費用はいろいろあります。実際にかかったお金、1番だと思いますけれども、さっき見ていただきましたように、調査票にはそんなものはありません。したがいまして、私たちが考えましたコストというのは期間です。本格的に勉強をし始めてから、どれぐらいの期間で取れるか、その期間。時間がかかるし、学びに行ったらお金もかかるし、その間働けないから機会費用もかかるしということで、とにかくあの調査からは期間というものをコストと考えようと思いました。

そして、これはちょっと細かいですね、取得難易度指数というのを期間に応じて計算しました。そして、メリットというのは入職時や仕事上の、遂行上の有効性であろうと。そういうコストに対応したメリットがあるのかないのかということを見ていこうとしたわけです。

その前に一つ、もうこれは完璧にコストが高いよというのはどんな資格かを見てみました。これは取得難易度指数を計算したのですが、それを見ますと、そこの中身はどんな資格かといいますと、5ページと下に打ってあるところです。図表3というのがあります。それの中身というか、まとめたものをパワポ9ページに文章で記述しています。

見たらおわかりですよね。医療・健康管理、医療関係とか教育訓練とか、先生ですね、社会教育関係、学芸員が入っていますけれども、そういうものがずらっと並んでいます。一つこれを見て、「あれ?司法試験とかが入っていないじゃない」と思われるかもしれません。それは実は、100人以上の資格取得者の回答があった資格でやりましたので、司法試験は残念ながら94人だったので外れています。これは100人です。100人が所持をしているという資格につきまして見ました。

見ましたらこういうことになりますけれども、ここの中でコストに対するメリットというのは何だろうかというと、5ページの表で見ていただきたいのですが、表の一番右の「計」というところがあります。ここは関連資格、その資格に関連する職業につけているかどうか、働いているかどうかという割合です。これが従事する割合が85%以上と高いのは、医師や歯科医師、理学療法士、保健師、放射線技師、きゅう師、はり師などなどということで、これも5ページと書いてある図表4でまた見ていただきますと、有効であると答えた人の割合等々も出ていますが、これはとにかく仕事をするのに必須だし、入職に必須だし、仕事を遂行するのに非常に役に立つと答えている、そういうものです。医療系の資格というのは業務独占資格ですから、まあ納得というところですよね。

ところが、次の教育訓練・指導関係の資格です。高等学校教諭免許とか、中学校教諭免許、学芸員、これは関連資格へ従事する割合が、今の5ページの図表3で見ていただきますと、もう30%以下なんですね。小学校教諭は39%なんですけれども、それ以外は30%以下ということです。属性を下の図表4で見てみますと、女性割合が高い文系資格です。それは、同じように就職難易度はかなり高いです。だって、大学とかで一生懸命勉強しないと教員免許は取れない。だけれども、医療系とはちょっと対照的です。あまり関連職業についていません。そういうものが出ました。

次に、ほんとうにというか、費用対効果。要するに期間が短くて取れるのに効果が高いよという資格はどんなのだろうというふうに見ました。これにつきましては、資料では次の6ページと書いてあるところです。ちょっと図表が小さくて見えにくいので、パワポ10ページでまとめてありますので見ていただけたらよろしいんですけれども、要は、取得に必要な期間が短い、100人以上が持っていると答えた147資格のうちの、取得期間が短いベスト20のもののうち、その中で、かつ入職に必須であった、それから仕事遂行上非常に有効という資格を見ますと、生命保険募集人資格ですとか、損害保険募集人資格、床上操作式クレーン、小型移動式クレーン、フォークリフト技能者、玉掛技能者、陸上特殊無線技士3級、その辺とか、MOUSワード上級・一般、それから有機溶剤作業主任者、ガス溶接技能者、大型自動車免許、牽引免許、ずらずらっと挙がっているわけです。これを見ますと、生命保険募集人資格とか、損害保険募集人資格、それからMOUS以外は、広い意味で車両運転にかかわる業務独占や必置の資格が多いなという特徴がありました。

このように、すごい難関資格でなくてもちょっと強い資格の仕事上の有用性というのは発見できるといいましょうか、見えます。それともう一つは、国家資格にしたというところは、一つはやっぱり生命にかかわるところもあるのかなと思います。

ざっと見ましたけれども、これ以外に、じゃあこれだけという話になりますが、報告書の中では、難しいもの、簡単だけどすごく有効なものをちょっと紹介しました。では、中ほどです。それなりの期間はかかるんだけれども有効だよという、中堅資格という分類をしていまして、ここには今日は発表していません。報告書の中にはいろいろ入っています。それは、中堅資格を見ますと、国家資格だけではありません。民間資格もいろいろあります。だからそういうものを、2年以上はかからないけれども、頑張って努力すれば有効だという資格はかなりあるなと思いました。ここら辺の情報は、キャリア形成をする上では非常に重要な情報になるのではないかと思いました。

それから費用対効果が終わりまして、資格の効果という意味でもう一つは、収入がありますね。資格を持っていたら高い収入が得られるのではないか、期待しますよね。私もそうです。それが分析で出たらいいなと思いました。ところが、非常に驚いた。見れば当たり前なのですが、この7ページと下に打ってあるところが結果の分析表で、パワポ11ページがまとめた文章です。

まず、女性について資格があるかないか。ほかのいろいろな重回帰分析を入れて、収入の高さを説明する要因として資格はどれぐらいの強さがあるのかなと思ったら、何と、出てきたのはマイナスの効果です。「えっ?」と思いました。中等教育、大学じゃなくて高校以下の方の収入に対する資格の、これも、資格と言いましてもここで取り上げたのは、100人以上が持っていると答えた資格です。だから、すべての資格ではない、そこはぜひ注意してください。これもマイナスの効果が出た。「は?資格を持っていたら収入マイナス?何それ」という感じが実はいたしました。

従業上の地位に関しまして、これもロジスティック回帰分析をやりましたら、それは、女性の就業上の地位については、特に資格は何の効果も持ちませんでした。私たちがやった分析の結果ではということですよ。それから、中等教育修了者の従業上の地位について、資格の効果というのはややプラス。プラスというのは、正社員になるという効果があると出ました。統計の分析でやると、そういうふうになるわけです。

そこで、はたと考えたわけです。資格を持っていて、何でマイナスなんだということです。さらに、決定木分析というのがあるのですが、これはいろいろな属性を入れまして、資格を持っている、持っていないを入れまして、一番収入を説明する影響が高いものからずっと分岐していくような分析なんですけれども、それも、調査回答者全体では、収入に一番大きな影響を持つのは性別なんです。男性か女性か、もちろん男性のほうが高いです。次いで男性はどうなのかと言ったら、男性は年齢ですね。やっぱり日本はまだまだ、年功序列の賃金が崩れた、崩れないという議論がありますけれども、やっぱり年齢が高くなるほど収入が高くなる。女性では学歴。資格の効果は決定木分析でも出てこない。調査全体で、調査回答者全体をばくっとやってしまうとそうなのです。先ほどの重回帰分析では、むしろ女性、それから中等教育以下の人の収入に対してはマイナス。資格こそ、そういう人たちに味方になってほしいじゃないかと思ったら、ちょっと意外や意外でした。

でも、じゃあ資格は何の影響もないのでしょうかというわけではありません。パワポ12ページの図表と、それから8ページ、9ページあたりを見ていただきたいのですが、ざくっと分析してしまうとそういう効果しか出ない。ところが、もう少し細かく見ました。

図表12は大卒女性につきまして、これが決定木分析、アンサー・ツリーというのですが、いろいろな属性を入れまして、その全体から収入の高低に影響がある要因でずっと分岐していくのですが、ちょっと難しい説明はやめまして、何が一番最初の分岐点になったかというと、その資格を持っている、その資格が今の仕事に対する役立ち度というのが、一番、大卒女性の収入に最も影響を与えるものになりました。四角で黒く囲ってあるところ、じゃあ、どういう資格を持っている人の収入が高いのでしょうかというのが、この8ページの黒で、ゴシックで囲ってあるところですけれども、それは、専門・企業サービスの職業であったり、教育・研究職業で、かつ30代以上の人であったりというふうに見ます。このように、大卒女性に限って見ると資格の影響は出てきます。

それから次が9ページですけれども、高卒女性に限って見ます。そうしますと、これはまた即、非常にシンプルですけれども、収入の高低に一番影響を与えるのは年齢でもなく、職業でもなく、入職に必要な資格を持っているかどうかという、入職時必要性というものが出てきました。それの収入が高い資格というのは、入職時に持っている必要性が高い、非常に必要、そういう資格であるというふうに分析が出てきました。

それで、具体的なもの、具体的な資格の名称をパワポ12ページに書いています。男性はちょっとここに資料として載せていませんけれども、報告書のほうにはあるのですが、これも大卒男性、高卒男性でやってみますと、それぞれ高卒の中では次に年齢が来るのですが、その年齢の後に第2番目の要因として、入職への必要性とか、そういうものが出てきます。しかもそれが、高卒の場合は30代が出てきました。50代もちょっと出てきました。大卒の場合は、20代と30代の入職に必要な資格を持っている人に、20代の中では入職に必要な資格を持っている人、30代の中でも入職に必要な資格を持っている人の収入が高い、その具体的な資格は何かというのがここに書いてあるという感じです。したがって、細かく性別、学歴別に見ていくと、やはり資格の効用というのは出てきます。

以上をまとめますと、パワポ13ページですが、資格を所持しているということがそのまま高い収入につながるというのはもちろん早計です。だって今、資格を持っていてもそれと関係のない仕事についている場合は、その資格は何の効果も持ちませんものね。その一方で、女性にとっては入職や仕事遂行に必要な資格を所持していること。男性にとっては、その次に年齢要因がよく出てきましたので、特に高卒の30代、大卒の20代、30代という中で資格を、そういう比較的若い段階、キャリアの初期から中期ぐらいの段階で入職に必要な資格を持っていると、その年齢の中では非常に収入が高くなるということです。そういうことが出てきました。一つ一つの具体的な資格の中身につきましては、先ほどの、この一つ前のパワーポイントを、ここに、小さいですけどありますので、ごらんください。

それで、一つ一つの資格を見てまとめたのが、やはり高卒男性では技能系の国家資格。大卒男性、20代・30代では医療とか法務とか、そういう資格。高卒女性や大卒女性もそれぞれ書いてありますが、またちょっと時間も押しておりますので、後でごらんください。

そしてあと、資格取得の各論だけちょっとご紹介します。パワポ14ページで、資格をいつごろ取っているのでしょうかということですけれども、所持者が50人以上の227資格を所持している延べ3万1,305人に、「あなたはいつ取ったのですか」と調べたら、20代です。やっぱりこれは、鉄は熱いうちに打て、若いときにはきっちりお勉強しましょうということになるのかなと思ったりします。資格を一つ一つ取った年齢のピークによって分けたのが下の図ですけれども、やっぱり同じですね、20代型が一番多い。

それから、パワポ15ページのランクですね。資格取得必要期間のランク、ABCDEと、注に書いてありますように、3年以上も資格を取るのに必要でしたと言った人の割合が一番高かった資格をAランクというふうな感じで、ABCDEと下にアルファベットが下がるほど期間が短くていい。Eだと1カ月未満。それで年齢との関係を見ますと、やっぱり20代はAのような難しい資格も、Eのような比較的取りやすい資格も、とにかく20代というのはどの資格も、資格取得の花の時期であると申します。

でも、じゃあ私はもうウン十歳代ですけれども、そういう中高年の方にとっての資格はあんまり意味がないのだろうかと、そんなことは、これまたありません。パワポ16ページで、30代以上での資格取得につきましては、30代型資格、取った年齢層が30代が一番多かったという資格を見まして、かつ、期間のランクを見ますと、ABCDのアルファベットの若いものほど取る期間が長かった、必要だった。結構30代の人というのも、ずっと勉強してきてAランク、Bランクの資格を取っているということになります。ですから、キャリア形成の中で一つの頑張ってやってきた到達点、あるいは目標に来たという感じかもしれません。

では、実は40代型がピーク、40代から50代がピークだという資格はないんですね。でも、これは全体の資格取得年齢が、50代、40代以上で取りましたという割合が6.8%です。だったら、その資格ごとに、ある資格で40代以上の占める割合が10%以上あるような資格というのは、結構40代、50代、中高年も頑張って取れる資格ということになります。これもパワポ16ページに一部示しておりますとともに、お手許の資料のほうでは、10ページに56資格ありました。後でごらんください。

見ますと、取るのにすごく長い資格もありますけれども、DとかCとかEとかいう資格もあります。これは、今までのキャリアにもう一つ何か加える。あるいはちょっと次の方向に行くために少し勉強する、そういう資格ではないかなと思います。ですから、私も含めて、中高年ももっとやっぱり、今までの自分のキャリアの上にもう一つ何か資格を、少し勉強すれば取れる資格というのも考えて、それが労働市場の中で次の職業移動をするために有効になってくる場合も多いのではないかなと思いました。

あと、資格の塊と職業の塊ということで、これも資格はいろいろな分類があるのですが、資格を縦にとって、その資格をだれが取っているんだというようなものも見てみました。パワポ17から20ページです。そうしますと、資格の塊が14出てきまして、因子分析をいたしますとこういうふうなもの。それで、その資格を持っている職業の人はこんな人たちですよということであります。

おもしろいのは、例えば事務関連の資格、簿記検定から始まる括弧内の資格ですね、こういうものはオフィスの職業の人が持っているのは当たり前じゃないと思いますけれども、消防関連の資格は専門・企業サービスの職業だとか、モノづくりの職業だとか、そういう職業の人も結構取っているわけですね。すなわち、資格の汎用性、ある職業群での資格の汎用性というのはあり得るのではないかなと思いました。

それから、因子5の土木工事資格、土木と一塊に言っても、因子5のような、実際に掘削したり、自動車とか装置を運転したりという資格と、11のような技術の資格と、これはまた全然違う。同じ土木と一まとめにしてはいけないというような感じもあります。14の資格の塊と、それを持っている人たちの職業の塊の相関が出てきたということです。

これを見て何がおもしろいのというのはあるのですけれども、一つはやっぱり、その資格の塊が職業の塊になりますので、ある職業、資格を持っていたら、今の職業じゃなくて、別の職業に応用していけるのではないかというようなこと。それからもう一つは、複数の資格を持っていることの強みというのもあるのかなと思いましたが、これについてはもっと詳細な分析をしないと何も言えないので、クエスチョンマークにしています。

以上が大体の分析のポイントですけれども、あと、第2分冊ではこんな形でご紹介しています。お手許の資料ですと11ページです。所持者が50人以上の277の資格につきまして、その資格を持っている人がどんな職業の人なのか、ベストテンですね。それから、その資格を持っていて、入職に有効だったと答えた職業の人はどんな職業の人だったのか。それから、仕事の遂行に有効だと答えた職業の人はどんな職業だったのかみたいな形で出しています。一つ一つの資格について、すなわち277資格について作成しています。

それから、これは資格から職業ですけれども、逆に職業から資格を見たのがパワポ22ページです。その職業について、属性が左半分部分にありますけれども、右半分部分には前職とか持っている資格、それから就くときに有利であった資格、仕事を遂行する上で有利であった資格と、そういうふうな資格をまとめております。これは120職業についてまとめております。

パワポ23から27ページはさまざまなランキングも、これは調査のデータが集まった範囲でですが、所持者数が高い、多いものからランキング、これは一部ですから50位まで、やっぱり普通自動車免許が一番持っている人が多かったですねみたいな話ですとか、入職時に必要だったと、2点満点でやるとこうでしたと、ランキング点数の高い順。それから、仕事遂行上有効でしたと、2点満点で高かったものからの順番。それから、取得するための期間が長かったランキング。これはちょっと、最後のほうも示しましたけれども、短い期間で取れたものから順に、これは275位になっていますけれども、20人以上が所持している資格のランキングです。今までランキングのざっと表を見せましたのはそういうものです。キャリアコンサルタントは、実は一番、ちょっとお年を召しても資格を取れていますというものになっております。

以上、ざっとご説明してまいりました。これを全部見つめて考えたこと。パワポ28ページですが、やっぱり資格というのはいろいろな資格がありますけれども、一つは収入に対する影響度を細かく見ていきますと、30代以降、20代、30代の初期キャリアの、男性なんかがそうでしたね、それにかなり影響を持っていました。すなわち、やはり資格というのは職業能力開発や向上の目標としての機能があると思います。今、若者、ニート、フリーターなど、自分たちは何をやっていいんだろうか、どうしたらいいんだろうかという人たちに、この資格を取るとこういう職業についていますよとか、そういうふうなところ、あるいは、この資格はこういうことを勉強して、こんなことをするんですよということをきちんと示して、目標というか、ほんとうは目標じゃなくて職業につく手段なのですが、それを示してあげる、それは非常に重要なことではないかなと思っています。

それから、30代以降のキャリア発展、40代以降のキャリア転換についても、資格を取ることによって頑張っている様子が見えました。

でも、資格だけではやはりこれはだめだと思います。職業経歴、自分でやってきたことの組み合わせによって、職業能力というのが見えるものになる。要は、労働市場の中で、これから一人の人間が一つの企業でずっと働いていく、これはもうなかなか難しいと思います。そういたしますと、キャリアプラス資格ということで、この人はこんなキャリアでこの資格があるのだからこういうことができるなということで、能力が見える形になっていけるのではないか。そういたしますと、ミスマッチへの解消につながっていくのではないかなと思いました。

あとは、非常にラフな資格、未整備分野候補の発見、若干やってみただけですけれども、やはりあれでもおもしろい結果が出たのではないかと思います。なかなか持っていない、もちろん資格はあればいいというものじゃないです。必要でというか、能力開発で、能力の向上がちゃんと証明できる資格でなければいけませんけれども、そういうのをもしサービス関係でもつくっていけたら、人材育成や人材高度化につながっていきますし、それから少し大きなことを言いますと、国際資格との関連、それから発展ということや展開ということも考えられるなと。いろいろな資格というのは、やっぱりいろいろな可能性を秘めているものだなと思いました。

このように、大量データをざっと整理して、報告書ではもうちょっとたくさんの分析もやっておりますのでぜひぜひ見ていただければと思います。

また、今後の課題は、私たちは先ほど申しましたように、何せ在職者の調査、労働者の調査です。したがいまして、需要側の企業に対してこれだけのすごいものはやっていませんので、企業調査、先ほど藤本研究員がなさっていることもありますけれども、企業に対してもうちょっと資格のことを聞いていく必要があるだろうなと思います。

それから、これは一つ一つの資格内容をもうちょっと詳細に検討して、どこがどう役に立っていくのかなということはやっぱり調査すべきだろうと。

それから、私たちのチームは実は心理学、社会学のチームでやりましたけれども、経済の目や法律の目やいろいろな目で、やっぱり資格というのは多方面で検討していかなければいけないなというふうに思っています。したがいまして、労働者のキャリア形成、あるいは人材育成、人材高度化への一つの手段になり得るであろう資格というのは、さまざまな調査やさまざまな学問的な目を持った人間のアプローチでやっていかなければいけないなと思っております。

すみません、ちょっと長くなりましたけれども、以上、私からの報告をこれで終わらせていただきます。どうもご清聴ありがとうございました。

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