報告「個別労使紛争」
個別労働関係紛争処理事案の内容分析

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私、労使関係・労使コミュニケーション部門というところにおりまして、昨年度からこの個別労働関係紛争処理事案の分析という新しい、内部的にはサブテーマということになりますけれども、研究テーマに取り組んでおります。それを1時間で、しかもお話しするのは45分なので、なかなか立ち入ったことまで、細かいところまでお話しするのは難しいのですが、ちょっとまず、何でこんなことを研究するのかという前提のところを、ごくかいつまんでお話をしたいと思います。

資料2ページですが、労使関係といいますと、大体集団的労使関係が今まで通常指す言葉でありました。終戦直後に労働組合法、あるいは労働関係調整法というのができて、労使の間で発生する紛争を、いろいろ調整する、あるいは解決する仕組みというのはできたのですが、基本的には労働組合、あるいは組合員というのが紛争の主体であって、個別の労働者が紛争の主体として何かやっていくということを想定してはいなかったのであります。

と言っても、実は日本国憲法にも書いてあるとおり、すべての国民は裁判を受ける権利があるわけで、裁判所に行って何年越しの裁判闘争をやろうという気があれば、それはだれだってできるのですが、しかし、労働関係に着目した紛争処理システムというのは、集団的な枠組みしかなかった。ところが、労働組合にどれぐらいの労働者が入っているか、3ページですが、これもよく使われるデータですけれども、終戦直後、一番高かったのは1949年、5割以上あったんですね。労働者の半分以上は組合員だった。それが70年には約3割強、90年には約4分の1、昨年は――実はちょっと上がったんですよね、労働者が少し減ったものだから、組合組織率がちょっと上がったのですが、それでも2割を切っております。これは全体でして、とりわけ中小零細企業、100人未満では、実は昨年の数字で言うと1.1%、100人中99人までは組合に入っていないということは、要するに組合に入っていることを前提とした紛争処理システムの対象にはならないと。しかも、組合のある会社であっても、日本の企業別組合というのは大体非正規労働者というのは組合員から除外していますので、そうするとこの集団的労使関係では救えない個別労働者が増えてきたということになります。

さっきも言いましたけれども、個別労働者に道がないわけではないと。4ページですが裁判というのはあります。しかし、法律上はみんなこれできますが、しかし日本の裁判所……、最近の司法制度改革で大分短くなってきましたけれども、特に労働関係の裁判というのは、昔は10年以上かかるなんていうのは結構ざらにあります。組合がバックについてない限り、なかなか個人でこれをやるというのは大変な状況でありました。

1つ、実はうちの労使関係部門の呉学殊という研究員がやっているのが、企業外の、いわゆる何とかユニオンというようなところに駆け込んで、そこで個別の問題を解決するというやり方が、ある程度の時期から発生してきていまして、これはこれで、それなりに有用といいますか、役には立っているのですが、ただ、要するに中身は個別紛争なものを、形式的に集団紛争だという形にしてやっていると。それから、いわゆる紛争といっても、労働基準法などの公的な法律に違反するという形になると、これは監督署に申告して解決するということになりますが、例えば本研究で一番大きな対象になっている不当解雇などの場合のいわゆる民事紛争はこの対象外ということで、これは大体10年数年ぐらい前からこの問題が結構議論されてきまして、5ページですが、第一歩が1998年の基準法改正で、このときに当時まだ都道府県労働基準局といったのですが、ここの局長が紛争当事者に助言、指導するという仕組みが設けられました。2001年に個別労働紛争解決促進法というのができまして、これによって都道府県労働局で相談をし、そして局長が助言、指導する。さらに紛争調整委員会であっせんを実施するという仕組みができました。これと同時に、各地方自治体でやっている労働委員会でも個別紛争の斡旋を実施するという仕組みが広がっております。さらに、司法制度改革の中で2004年に労働審判法というのができて、これは三権分立の中でいうと司法の中に労使の参加する労働審判委員会、これは各地裁に置かれておりますが、ここで審判を実施するという、かなり個別紛争処理システムというのは広がりを持ってきております。

私どもが昨年度からやっている研究は、この紛争処理システムそのものをどうすべきか、という問題意識で行っているものでは基本的にはありません。ここは少し誤解されている向きもあるのですけれども、むしろ問題意識はシステムそのものよりも、紛争そのものの中身に関心がございました。出発点は6ページの数字をごらんいただければわかりますが、2001年に――この年10月からですから、半年分ですけれども、すべての相談、そのうち民事上の相談、そして助言、指導の申し出、そしてあっせん申請を受理した件数というものがどう推移してきているかという数字でありますけれども、これだけ膨大な数の労使関係、個別の紛争というものが労働局に来ている。

これは実はある意味で宝の山ではないかなと考えたわけであります。宝の山というのは、先ほど言いましたように、日本の、普通その個別労働紛争の中身、どんなことが起こっているか知りたいというと、普通、判例集を見るわけであります。労働の判例、『労働判例』という雑誌もありまして、こういうのを見ると世の中でどんなことが――クビだとか、不利益変更だとかなんだとか起こっているというのはわかると皆さん考えてらっしゃいます。それは確かなのですが、ただ、実はこれ非常に大きな玄関の入り口の敷居が高いんですね。高いというのは、もちろん憲法上は皆さん、だれでも裁判を受けることはできますけれども、弁護士をつけるというのはお金がかかるというだけじゃなくて――最近、少し短くなってきて、平均して1年を越えるぐらいになってきた気がしますけれども、昔はもう、とにかく数年、下手したら10年を越えると。人生はそんなに長くありません。職業人生40年と考えると、その中の働ける人生をそんなむなしい裁判闘争に費やすかと。まあ、それほどの怒りを持っていればそういうことをする人もいますけれども、これはどちらかというとわりと例外でありまして、圧倒的に多くの方々は、そんなに無駄なことをするぐらいだったらしようがないということで、泣き寝入りしていただろうと。その方々が、こういう形で個別紛争を処理するシステムができたということで、これだけ出てきたということでありますから、そういう意味からいうと、裁判の判例集を見ているのではちょっとわからないような、いわば草の根レベル、あるいはちょっと言い方が失礼なんですけれども、どぶ板レベルの日本の個別紛争の実態というのがそこから見えてくるのではないかなと考えて……。

実はおもしろいことに、各労働局でどんな事件が起こっているかというのは本省はわからないんです。当たり前で、これだけ膨大な数ですから、一々こんなものを本省に集めていたら、それだけで部屋がいっぱいになっちゃいます。だから、毎年本省の労働紛争処理業務室というところがデータを発表しているのですが、データは数字だけなんです。そこの中身、解雇が普通解雇何件とか、整理解雇何件とか、いじめ・嫌がらせ何件とかというのはあるのですが、その中にどんなものがあるかというのは、実は本省も知らない。結局、各労働局の担当者しか知らないといいますか、そこにいっぱい資料が積み上がっているわけであります。これを見せてもらおうじゃないかということで……、といってもすべてというわけではありません。昨年度から始めたので、対象はちょっと太字になっておりますが、2008年度のあっせん申請を受理した件数が8,457件ございます。このうち4局ほど選んで、そのあっせんの関係の書類の固有名詞等のプライバシーにかかわるところを全部抹消した上でそれをいただいて、中身を分析してきたというのが今回の報告であります。

今回の報告は中間報告的な形になっております。昨年度から来年度にかけての3年計画でやっておりまして、とりあえずこういう形で昨年度分が取りまとまったということで、ここで今の報告をさせていただくということになります。

それから、前書きのようなところがやたら長いのですが、もう1つ、実は問題意識がございまして、この研究を始めるときに、まだ当時、政府に規制改革会議というのがございまして、そこから日本の解雇規制というのが大変厳しいと、諸外国に比べて大変厳しいと、これをいろいろ社会的、経済的な観点から検討せよというような、そういう指示といいますか、依頼が来ておったということがございます。ただ、これは一体何を素材に考えるか。判例集を素材に考えると、こんな解雇もだめだ、あんな解雇もだめだというのがいっぱい並んでいるわけであります。これが日本の実態だと思うと、確かにそれはそうだなと見えるのですが、ほんとうにそうだろうかというと、これは労働の現場に近い方ほど、実は必ずしもそうじゃないよということを言われるんですね。ところが、なかなかこういうのがアカデミックな場に出てこない。

例えば、労働法の先生がそういうことを言われるかというと、言わないですね。それはやっぱり、裁判に出てきて、ちゃんとしかるべき判決を見ますと、けしからんやつはだめだということになっています。労働経済学の先生なんて、これはやっぱり経済学の理論に基づいてものを言います。そうすると、日本の企業の職場の実態というのはそうでもないよという話はなかなか出てこない。全くないわけじゃなくて、これは例えばマスコミ、ジャーナリストの方々なんかは、そんなことをよく取材されて書かれたりするんですね。そういうのを読むとこんなひどい例もある、あんなひどい例もあるということが書いてあるのですが、ただ、じゃあこれは一体なんなのかというと、これはエピソード主義というか、あるいはアネクドート主義といいますか、たしかに世の中にはそんなこともあるだろうけれども、それが一体世の中でどれぐらい広がっているのかどうなのか、裁判例に出てきているほうが普通なのか、それとも新聞記者がいろいろ聞いてきて記事に書いているほうがほんとうなのかというのは、なかなか、いざというところに出てくるとよくわからないというところであります。ある意味で言うと、労働局というところに来ているケースを見ていくと、実はこうなんだよということを示すというのも私どもの1つの目的でございました。

ちょっと、やや宣伝めきますが、そういう問題意識を菅野和夫先生という労働法の先生によく理解していただいておりまして、うちのJILPTが出している『日本労働研究雑誌』という雑誌がございます。今月の7月号が創刊600号記念ということになっておりますが、その中で菅野先生はこういうことをおっしゃっていただいております。ある意味で、私どもの研究の趣旨というのを非常によく理解していただいているなと思うので、ちょっと宣伝になりますけれども読ませていただきますと、「JILPTでされている研究などを少しお聞きしただけでも、我々労働法学者は法がどのぐらい浸透しているかについてもっと知らなくてはいけないと思います。労働委員会などへ来るケースはひどいケースかと思っていたけれども、それがむしろ普通のケースではないかという印象があります」ということをおっしゃっていただいております。大変ありがたいなと思います。

ということで、ここから具体的な中の話にまいってまいります。7ページですが、先ほど言いましたように、2008年度の4局のあっせん事案、1,144件を対象に報告書を作成いたしました。すべてを対象にしてもよかったのですが、とりあえず多くの皆様方に関心のあるテーマということで、4つテーマを取り上げました。

雇用終了事案。解雇だけではなくて、実はこれ解雇というか、退職勧奨というか、自己都合退職というか、要するに言葉じりひとつですごく変わってくることがございます。あまりそこで細かく見てもしようがない。とにかくそこで雇用が切れているということは確かだと。それに対して労働者側が文句を言っているという事実があるというものを一まとめにしまして、雇用終了事案と唱えました。

それから、いじめ・嫌がらせ事案。これは裁判例にはほとんど上がってこない……、ぽつぽつと最近あるのですが、なかなかないのですが、こういう個別紛争のシステムには非常に多くの件数が来ております。そして、労働条件の引き下げ事案、この3つがかなりの部分を占めておりまして、それとともに、昨日のテーマともかかわりますけれども、いわゆる非正規、とりわけ三者間労務供給関係、派遣とか請負とかという関係でやっているものが、この個別紛争でどういう形であらわれてきているかという、ある意味ではいろいろな事案がある中でも、皆様に特に関心が高いのではないかなと思われるこの4つの観点で分析をいたしました。

8ページ以降で数字的なことを申します。ここにない数字も申しますと、まず、何だかんだいっても実は雇用終了が一番多いです。756件で66.1%。約3分の2は雇用終了が問題になっております。ちなみに、ダブっているのもあります。首にもなったし、いじめられたしというのは両方にカウントしていますので、足して100%にはなりません。やっぱり雇用終了というのが3分の2ぐらいで結構数が多いと。これはだれでも想像のつくことになりますが、結構多いのが、いじめ・嫌がらせ。いわゆるパワハラというやつですが、これが260件、22.7%と、2割以上件数がございます。これは、やっぱり個別紛争だから出てくるのだろうと思います。ちょっと後で言いますけれども、このいじめ・嫌がらせ、雇用終了というのは雇用が終了しているということはお互いに確かに認めているのですが、いじめ・嫌がらせ事案は、私が見た感じでは大体9割5分以上は「そんないじめなんかないよ」と言っているというのが多い。なかなかそういう意味で、ある意味で立証とか何とかというのが難しい世界。そういう意味から言うと、まさにあっせんだから上がってくる、そういう世界かなという感じがいたします。

それから労働法的には非常に関心の高い、労働条件の引き下げ。これが128件で約1割強と、こんな感じになっております。ほかにもいろいろとあるのですが、主なものはこんなところで、大体これを今回は対象にしたということになります。

それから、ここには入れてございませんが、労働者の属性で言いますと、正社員が51.0%、約半分であります。これは雇用終了でも大体半分は正社員になります。それから直用非正規、パートやアルバイトとか契約社員とか、こういうのが約3割、30.1%。そして派遣が11.5%ということになっております。派遣について言うと、今のデータから言うと、大体3%ぐらいということからすると結構多く来ているということがわかります。何で派遣がこの個別紛争に結構いっぱい来ているかということについては、最後のところで申し上げますけれども、これは結構おもしろいことかなという感じがいたします。

それから、実はこの労働局でやっているあっせんというのは、制度の説明をここでやりますと大変なことになるのですが、あっせんの性格上、いやだよと言ったらもうそれ以上強制できない。これはある意味当然であります。強制仲裁じゃありませんので。そうすると、入り口で嫌だよと言うと、それでもう話は始まらないということがあります。これは結構多いです。左下の合意状況で言うと、3つ目の「不参加打ち切り」、42.7%、入り口で会社側が、参加しませんと、あっせんは結構ですと言っているのが実は半分近い件数あります。ここをどうするのかというところはいろいろ議論があるところだろうと思いますが、かつ、紛争処理システム論としては、ここと、労働審判と、裁判とどうつなげていくかという議論が結構重要なところではあるのですが、我々の研究では、そこは実はあまり重点を置いておりません。それはそういう制度であるということを前提に分析をしております。

それから、あっせんの中に入ったけれども、しかしお互いに労使の意見があまりにも離れ過ぎていて、どうしても合意に至らないなという「不合意打切り」も結構あります。18.4%と、これは物事としてそういうことはどうしても避けられない。怒って、怒りのあまりあっせん申請したけれど、やっぱり考えてみて取り下げますという「取下げ」も8.5%と結構数があります。最終的に合意が成立したというのが約3割、30.2%。この数字をどう見るかということなのですが、おそらく最大の問題は不参加打ち切りの4割強というのをどう考えるかなんだろうと思います。ここでは数字をお示しするだけで、ここでは申し上げません。

問題はむしろ、合意が成立した約3割、これを100%と考えたときに解決金額、これは雇用終了から、いじめから、引き下げから、全部合わせたものですが、なんぼで解決したかという、これをざっくりと見たものでありますが、ちょっと数字が万円とか何とかというのがないので、パッと見にくいかもしれませんが、一番多いのは上から3つ目、10万円から20万円未満というところが一番多くて、これが約4分の1であります。10万円台で解決というのが一番多い。その次が20万円台、30万円台というのがいずれも13%台、そして5万円から10万円の間というのが、ちょっと下がって12.4%と、ほぼ大部分はこの10万円台を中心とする領域にあるということがわかります。これをまた高いと見るか低いと見るかというのはいろいろな考え方があるだろうと思いますが、少なくとも、裁判例で見ている観点からすると、えらい低いじゃないかとお考えになるかもしれません。ただ、これは判定しているわけではないんですね。あくまであっせんであります。こんなもんでどうですかと言って。それで、両方がわかったと、うんと言った結果がこれだということでして、多分これ以上高いと、使用者側が「いや、それだったらそんなもんは受け入れられないよ」ということで、多分この辺に落ちついているのだろうなと。そういう意味では、あっせんというものの1つの成果というのはここにあらわれているのだろうなという気がいたします。

それから、これはあるところで報告したときに、これって大体月収のどれぐらいに当たるんだということを聞かれて、実はこのあっせん資料からは月収いくらというのが明確にわかるものもあればわからないのもあるので、ちょっとすべてのデータはないのですが、ちょっとわかるところの範囲で調べてみた感じでは、大体一月分強ぐらいの感じ。大体この10万から20万の間というのがほぼそれぐらい。逆に言うと、結構それぐらいの低い人たちが来ているということだろうと思います。

少し話が戻るかもしれませんけれども、確かに半分は対象の正社員であります。ところが、企業規模別で見ると、実は全体の半分以上、58.2%が100人未満、30人未満が約36%という、大部分が中小零細企業に集まっているという実態がございます。そういう意味からいうと、正社員といっても決して給料が高い人が来ているわけではないと。非常に低いように感じられるかもしれませんけれども、しかし、そういう非正規、あるいは中小零細企業の正社員と言われる人たちからすると、大体一月分強ぐらいの金額で解決しているのが実態ということになろうかと思います。

以下、この報告書で言いますと、各章ごとの話になってまいりますが、ちょっと申しますと、うちの部門の4人がそれぞれ各チャプターを担当いたしまして、私が統括なのですが、私が担当したのがこの雇用終了事案。全体の約3分の2ぐらい。あとは内藤、鈴木、細川という者が担当していまして、実は私、自分で書いてないところのことまでここで発表していいものかどうなのかと、いろいろ議論があるところかもしれません。研究者としては若干問題があるのですが、後ろのほうにつけておりますので、ちょっとそれもお話ししますが、どうしても私が自分でやったところが中心的になるということはお許しをいただきたいなと思います。

それで私の分析した部分ですが、この雇用終了事案。厚労省が示して、各労働局でチェックしている項目では、普通解雇とか懲戒解雇とか整理解雇とか退職勧奨とか自己都合退職とか雇い止めとか、こういうふうに分類をしております。だけど、それも全く意味がないわけではないのですが、実はいくつか問題があります。期間の定めがあって雇い止めというのは確かなのですが、例えば何でやめたか。つまり、解雇なら労働者は「解雇だ」と言っていて、使用者側は「いや、これは自己都合退職だ」と言って、労働局は「やめたらどうかと言っているから退職勧奨だ」に丸をつけたりとかですね。こういうのは結構ありまして、その3つのどこに入っているかというのを議論するのは、実はそれほど意味がない。むしろ、それがどういう理由で、使用者側がどういう理由で雇用終了に至っているかということを分析することに意味がある。

もう1つ言いますと、例えばこれで言うと非行を理由に首だというのは、これは懲戒解雇だと皆さん思われると思いますが、ところが、実はそれでも普通解雇というのは結構多いんです。要は、法律上の退職金だとか、あるいは即時解雇がいいとか何とかという話にも関係があるので、懲戒解雇か普通解雇かというところをあんまり重要視してもそれほど意味がないとか、あるいは経営上の理由でと言っておいて普通解雇に丸をしているとか、しかもよく見ると経営上の理由と言うけれども、実は経営上の理由じゃないと労働者が言っているとかというのは結構ありますので、ちょっとあっせん処理表上の分類とは別に、その中身を見た上で、一体それがほんとうのところ何が理由で雇用終了に至っているかということを、全部ほぐして分類し直してみたのがこの表であります。

こう見てくると、一番多いのは、ある意味では当然だろうと思いますが、「経営」を理由とするもので218件、28.8%ということになります。ただ、この件数はちょっと水ぶくれしている件数であります。そして若干問題があります。これについては後で申し上げます。

その次に多いのが何かというと、この左側の真ん中あたりに「態度」、167件、22.1%。態度が悪いというのが個別的な――経営上の理由というのは個別的というよりも会社側の理由ですので、労働者本人の理由とする解雇理由、雇用終了理由として一番多いのは態度であるというのが、おそらく日本の非常に大きな特徴であるように思います。これが「能力」の70件、9.3%、「傷病」の6.3%、あるいは「非行」の5.2%よりも多いというのは多分1つの注目すべき点ではないかなと思いますし、実は能力と言っているものの中身もほんとうの意味での職業能力なのかどうなのかというのはかなりいろいろと疑問もあるところがあります。それもまた申し上げますが、もう少し中身を。

先ほどの表の一番上の2つ、「権利行使」と、それから「ボイス(発言)」というのがございます。これは何かというと、要するに文句を言ったから首だというたぐいであります。そんなの正当な理由じゃないじゃないかと思われると思います。それはそうです。普通、こういうのが裁判に来たら、なかなか客観的に合理的な理由ということには普通ならないと思いますが、しかし世の中には結構そういうのもあると。かつ、件数的にいうと、そんなに全体として多いわけではないのですが、この権利行使とボイスをどうやって区別しているかというと、その労働法上の正当な理由、権利行使を権利行使、それ以外のものをボイスと分類したのですが、大体それぞれ14件、23件、件数的にそれほど多くないかもしれませんが、両方合わせて5%というところですから、それなりのものにはなっているとも言えます。

例えば有給や時間外手当がないので監督署に申告したら解雇されたと。25万円で解決したとか、年休取った時点で普通解雇されたと。これ、12万円で解決したとか、育児休業を取得したら雇い止めされたと、これが30万円で解決とか、こんなのは結構あります。さすがにこういうのは、いくら何でも解決しているものが多いです。

ボイスへの制裁、これは必ずしも労働法上のものではないのですが、例えば個人情報、家族の国籍をほかの従業員に漏らしたことに抗議したら普通解雇されたとか、いじめの現状を公にしたら派遣を解除されて雇い止めされたとか、そんなのがあります。あと、これはボイスと言えるかどうかですが、企業経営に意見を述べたら制裁として雇用終了されたというのがあります。こういうのは大体金銭解決しておりません。生意気なことを言うやつはそもそも相手にしないとやっぱり会社側も思うようであります。

それから1つ、結構重要なものじゃないかと思うのは、次の2つ。労働条件変更拒否と、それから変更解約告知、これが実は両方合わせると6%強になります。これはどういうものかというと、要は配転とか賃金の引き下げとか、あるいは雇用上の地位変更、正社員からパートにするぞとかいうのを拒否したことを理由に雇用を終了したという、これが3つ目のものであります。

そして、実は同じ話なのですが、そのときにどっちがいいんだと。要するに、賃金引き下げをのむか、それとも首がいいか、どっちだと。そんなふうに迫るという、これは労働法上では正に典型的な変更解約告知というやつですが、こういうやつも結構あります。この辺が多分、いわゆる労働法の世界、学問的な労働法の世界と現実の世界の、非常に、ある意味で違うというか、ねじれているところだと思うのですが、労働法の世界では、変更解約告知なんていうのは大変高度なもので、ドイツではあるけれども日本ではなかなかないと言われるんですが、それは裁判に寄ってくるようなものがあまりないわけで、こういう草の根のレベルになると、実は結構多いのであります。請負にするか、やめるかとか、あるいは長女が長期入院なのに転勤を命令されて、嫌だったらやめるかとか、結構そういうのは多い。こういうのも、おそらく最近の日本のいろいろな裁判例の傾向からすると、あまり正当じゃないと言われることが多いだろうと思うのですが、わりとこういうのがあります。件数的にはそれほどではありませんが、草の根の雇用終了では結構こういうのがあります。

しかし、やはり何と言っても日本の雇用終了の一番最大の特徴、私はこれだと思います。態度不良を理由とする雇用終了が非常に多い。個別的な理由によるものでは一番多いということだろうと思います。全部で167件。問題は、態度といってもいろいろあります。例えば、業務命令拒否。これをしろと言われたのにそれをしない。これは態度といっても、やっぱり雇用契約というものの性格から言ってこれは許しがたいということになるのだと思いますが、こういうのも結構それなりにあります。しかし、21件。要するに、業務命令を拒否したから雇用終了や解雇したというのは21件です。それから、業務命令拒否ではないけれども、例えば業務怠慢だとか、あるいは業務遂行上の態度が不良であるといったものが29件と、これがそれなりに数ではあるのですが、しかし、実はこの態度の中で一番数が多いのは、その次の、職場のトラブルというやつです。

職場のトラブルって何かというと、要するに上司ともめた、同僚ともめた、あの人とやってられないと、こういうやつでありまして、これが実は一番多いんです。49件ございます。これは、あっせん事案の対象の中でいっぱい来ているケースは先ほど申し上げたように中小零細企業が多いんですね。中小零細企業は大企業と違って、そんなに雇用終了の閾値は高くない。わりとスパスパと雇用終了されているのですが、しかし職場の和といいますか、職場の一種の共同体的なものが一番大事で、それを乱すようなものが一番よくないんだという考え方が強固にあるという点では多分共通している。おそらく、ちょっとこの報告書の範囲を越えるのですが、日本の職場の特徴を、例えば長期雇用が保障されているとか、年功制だとか、企業別組合だとかいうのは、実は中小零細に行けば行くほど、だんだんそういうのは薄れるんですね。大企業の特徴です。

じゃあ中小零細企業は日本的でないかというと、やっぱり日本的なんです。どこが日本的かというと、職場の共同体意識が非常に強くて、あの人、まともにコミュニケーションをとってくれないんだよ、こっちは一生懸命やっているのにすたすた帰るんだ、これは困ったものだなというのが、しかも大企業だとそれですぱすぱ首を切ったりしないのですが、わりとそれが理由で雇用終了に至るというのが、むしろ日本の中小企業の特徴かなという感じがいたします。

それから、計数的に業務命令拒否とか業務遂行の不良性に近いのが、顧客とのトラブル。これも22件と結構、数が多いんです。これもなかなか、ある意味今の日本の職場というものをよく示しているのかなと。つまり、取引先からあいつは何だと言われたと。これも大体、多いのは電話の受け答えが悪いと取引先が怒っている、あんなやつは何だと言われたと。こういうのは実は結構多い。そうすると、大企業なんかだと、そういうところに会わないところに、裏に回すとか、大体そういうことで処理をするのだと思いますが、中小零細企業でそういう余地がないと、もうどうしようもなくて雇用終了に至るというパターンがありまして、この辺も日本の職場社会を非常によくあらわしている感じがいたします。

それから、解雇というのもいろいろ広くあるのですが、休みとか、あるいは遅刻、欠勤といったものもあります。1回勝手に休みを取ったというだけで首だというレアケースも、実は結構あります。さっきの有給とどうつながりがあるのかということです。実はよくわかりません。重なっているのだと思いますが、労働者側が正当な権利である有給を取ったら首になった、けしからんと言ってきているのは、一番最初のほうに入っていて、いや、休みを取ったらって、その休みが一体、有給なのか欠勤なのか何なのかよくわからないので、こっちに入れているということであります。これはそもそも裁判ではないので、事実を明らかにするのではなくて、あっせんのためのものですので、当事者が言ってないものはよくわからない。ちょっとそういう面はあるのですが、これも日本の職場の一つの特徴というものをよく示しているだろうと。

そして件数はそれほどではないのですが、ある意味で最も日本の職場というものをよく示しているのが、多分、この相性というやつだろうと思います。相性が合わない、おれ的にだめだとか、カラーに合わない、社風に合わないということが理由で雇用終了をしているのは15件で、それほど多くないといえば多くないのですが、1%強ですから。しかし結構そういうのがあるということであります。

それから次に、非行。非行というのはある意味で、労働法でいう個別解雇事由の三大要件の1つですから、非常に重要なはずであります。確かに非行も結構数が多い。それなりの数とはいえるのですが、しかし全体の中でいうと39件で、それほどあるわけではありません。背任行為が17件で、これも背任的というと、何か大層なことに見えるのですが、バスの通勤定期がありながら、自転車で通勤していたからけしからんと。確かにこれは背任です。法律上、確かにどう考えたって背任です。果たしてそれでというのは、可罰的違法性というのは、刑法の話がちょっと違うのですが、多分、裁判に行ったら何だそれはという話になるかもしれませんけど、結構こういうのもあります。

あと非行といっても、意図的なものではなくて、業務上の事故によるものも6件あります。ただ、これは何だと、確かに職場でいじめ、セクハラをやったからとか、職場で窃盗したとか、1件ですけど、業務中に放尿をしたとか、変なのもありまして、確かにそれはいろいろと、別にみんなけしからん首ではないんです。やっぱり労働者に結構問題があるのはいろいろあります。

それから、私生活を理由とする雇用終了というのが、7件ですからほとんどはネグリジブルだったとは言えるかもしれませんけど、結構おもしろいと思うのは、大きく2つあります。1つのタイプが、会社にヤミ金から電話がかかってきて仕事にならないと。これは私生活というのか何ていうのかよくわかりませんが、これが実は4件あるというのは、ある意味で日本の今の社会を示しているのかなと。

それからもう1つ、これは地域的にいうと、ある特定の田舎のほうになるのですが、父が事件を起こしたからとか、親族で問題を起こしたというので雇用終了したというのもありまして、これは現代社会とは思えないのですが、そんなのもあります。一般的に個別解雇の最大の理由というのは、多分、能力不足ということになるのだろうと思います。ところが、その能力不足を理由とする70件のうち、具体的に、例えば車が運転できない、パソコンができないという具体的な職務能力の不足を示しているのは、実はたった6件です。それから成果主義といいますか、要するにノルマを果たした、だから終わりだというのが7件。しかしこれも雇用契約締結時にそんな約束をしたというのはどうも見られないので、勝手に会社側がそう言っていると思うのですが、しかしそういうのがある。しかしそれも、いずれもそれほどの件数ではないです。仕事上のミスというのも10件あります。これも何か1回ミスしたぐらいで首というのも結構あります。

しかし、実は一番圧倒的に多いのが、具体的にこれができないとか、具体的にこの成果を上げていないとか、そういうのじゃない。とにかくできない。能力がない。何がということはよくわからないというのが一番多くて、これが38件。一般的能力不足と言っておりますが、これが実は一番多いです。さらに言うと、これを能力に入れていいのかどうかわかりませんが、不向きというやつがありまして、これが約9件で、そうすると、先ほど能力よりも態度のほうが多いのが日本の特徴であると言いましたが、実は能力といっても、その中身はかなり限りなく態度に近いというところがおそらく日本の特徴なのかなと。この辺は裁判例といったレベルでは、なかなか上がってこない話だろうと思いますが、実はこのあっせん事案の対象となっている中小零細企業で非常に多いケースのような気がいたします。

あと傷病も結構あるのですが、48件。やっぱり私、今の日本の社会という意味で一番注目するのは、精神疾患が15件で、これが非常に多い。しかも中身は、うそかほんとかわかりませんが、いじめ、パワハラを受けて、うつ病になったとか何だとか。それで精神疾患を理由にというケースも結構あるという点からすると、結構この辺は1つの、やはり今の日本の職場を象徴しているのかもしれません。あと障害、年齢、外国人を理由とした雇用終了というのがあります。

先ほど言いました一番件数的に多いのが、経営上の理由による雇用終了。整理解雇と言っているものもあれば普通解雇と言っているものもあるのですが、218件あるんですけれども、しかしこの中にはドイツ企業から複数の労働者があって、一斉に個別紛争のあっせんを申請してきたというのがあります。これは何かって、今、個別紛争システムとか個別紛争なんです。1人1人であっせん表をつくっているのですが、中身は全部一緒なんです。要するに経営上の理由で何人まとめてバサッとやられたと。雇用終了だけじゃなくて不利益変更にもあるのですが、これって実は個別なのかというと、ほんとはむしろ本質からいうと、集団のような感じがいたします。だとすると、ほんとは集団的な枠組みがあれば、まさに集団的な形で解決すべきものだと。最初のところで申し上げたこの集団的な紛争処理の枠組みがだんだん小さくなってきたということが、どうもこういうことになっているのかなと。

2つありまして、組合がない中小零細企業で来ているというのもありますし、これは正社員の場合が結構多いです。それから組合があると書いてあってもそこの非正規ということで、やっぱりそこの非正規がまとまって、どっと来ているというケースもあります。そういうのは全部足し合わせてみると、実質はこの経営上の理由は144件ということになります。

経営上の理由というのは、実は経営上の理由以上のものはありませんので、あまり中身で詳しく見るというよりも、ざっと就労形態で見ますと、派遣が36件あります。期間途中の解雇が16件、雇い止めが15件、ほぼ半々。直用の非正規が61件あります。期間途中の解雇が32件、雇い止めが27件、若干期間途中のほうが多いかもしれませんが、約半々。正社員の解雇が109件、うち内定取り消しが7件という感じで、要するに中小零細レベルでは、正社員だから解雇できないということは実はあまりなくて、わりとこれだけ経営上の理由で正社員も解雇になっています。いますが、やはり派遣とか直用非正規も結構なっている。派遣とか直用非正規の場合、雇い止めしたいがためにやっているので、その部分、期間途中は難しいという。大体、労働法の議論はこうなるのですが、どうも必ずしもそうでもないかもしれない。このあたり、実は、理論的には確かにそうなんでしょうけれども、こういう特に中小零細のところになればなるほど、必ずしもそうではない面が結構あるのかもしれないですね。そういった姿も垣間見える感じがいたします。

あと、雇用終了ではいろいろあるのですが、ちょっと話を飛ばしまして、次に大きな柱として、いじめ・嫌がらせ事案というのがございます。14ページです。とにかくこれが2割以上ありますので、ほんとに理解しておかないといけないのですが、大体、加害者としては上司が約半分弱、そして先輩・同僚が3分の1弱、会社の代表者――要するに中小零細でほんとに小さいところになると、社長とか専務とかが直属上司というのは結構ありますので、実はそれほど上司と大した違いはないかもしれないのですが、こんな感じになっております。やはり女性、特にシングルマザー、あるいは非正規労働者が被害者になることが多い。

対応としては、これもほんとにいじめ・嫌がらせを超えているかもしれませんが、暴力、傷害といった身体的な苦痛、暴言、罵声、差別、無視といった精神的な苦痛、あるいは仕事を与えないといった社会的苦痛といったものが結構あります。またいじめの影響としては、約3割がうつ病、その他のメンタルヘルスを患っていることになるのですが、実は報告書の中にもちらっとは書いてあるのですが、私が一通り全部ケースを見て、とりわけこのいじめ・嫌がらせ事件を見て感じたことは、いじめ・嫌がらせの場合、そもそもそんなことはないと会社側が言っているケースが圧倒的に多いです。

これは、不参加のやつもただ参加しませんというだけじゃなくて、そのときにそんなこと、いじめなんてありません、だから参加しませんと書いてきているのが結構多いんです。そういうのを全部カウントしていくと、私が見た感じでは、大体、おそらく9割5分以上は、指導はあった、しかしいじめはないというのが実は非常に多くて、これは今日の話から少し超えるかもしれませんが、いじめ・嫌がらせ問題、パワハラ問題というのを、今後具体的な政策として論じていく上で、非常に難しい点は多分ここだろうなという感じがいたします。

雇用終了だとか、あるいは不利益変更だとか何だとかといったようなもの、客観的にここにこういうことがあるというのとは、やっぱり違うというところからすると、ところがそうはいっても、これはわりと解決しているんです。解決しているのがあるんです。なぜ解決しているかというと、いや、いじめなんかない、厳しく指導しただけだと。しかしそうはいっても、本人がいじめられたと言って耐えられなくなってうつ病になってやめているんだと。じゃあ、いじめはなかったけれども、問題を解決するためにと言っても、よくわからないんです。

多分、裁判だったらこういうことにならないと思うのですが、ここが多分、あっせんの妙味だと思うのですが、会社側は、いじめなんかないと主張しながら、じゃあ10万円ぐらい払っておくかという形で解決しているケースが結構ある。この辺は逆にいうと、ここで解決しないから裁判にいったら解決するかというと、なかなか難しい話かなという感じがいたします。これは雇用終了とか不利益変更なんかと性格は違うところだろうなというのが、書いた内藤がそこまでいっているわけではないのですが、私が見た感想はそんなところでございます。

それから労働条件引き下げ事案というのがあります。15ページです。結構多いのが、実は勤務時間とか日数が減って、賃金が減った。あるいは配転されて賃金が減ったというのが結構多い。あと経営不振でもろに時給を、例えば今まで900円だったのを850円、800円に下げたとか何とかというのは結構多いです。あと勤務評価による賃金減少。それから雇用形態変更により賃金減少6件と、要するにこれは、嫌だと言っていたら、さっきの変更解約告知だとか、あるいは雇用労働条件変更拒否による雇用終了のほうにいったものを、わかったと言って、とりあえず受け入れてやったんだけど、やっぱりこれはけしからんといって文句を言ってきて、そうしたらこっちに移ると、こんな形になっているわけであります。

引き下げというのは、直観的にいうと、雇用が別に切れているわけではないと思うかもしれないのですが、実は労働条件引き下げを解消して継続勤務しているというのは全体の中で4件ぐらいで、ほかは全部解決金で決着をしております。そういう意味で、このあっせん制度というのは、基本的には破綻型といいますか、継続型もないわけではないのですが、基本的には破綻型で、多くのケースが、要するに切れちゃってから、この引き下げはけしからんと言って駆け込んでくるケースが非常に多いということが言えると思います。

最後に、ちょっと観点が違うのですが、16ページの三者間労務提供関係。いわゆる派遣とか請負といったものを分析したもので、大体派遣が半分、残りはかなりの業務請負なのですが、これは結構おもしろいのは、紛争は先ほど言いましたように、大体、請負がどれくらいあるかというデータは実はないのですが、派遣が大体全体の3%ということからすると、結構な件数が来ている。非常に多く来ているということは確かなのですが、逆にいうと、派遣のケースというのは、結構解決率は高いんです。使用者側も嫌だよということじゃなくて、むしろあっせんによる解決に前向きなケースで、実はこれは全体の中でいうと、先ほど規模別でいうと、規模を引き上げているのは実は派遣会社ということが多いんです。

えっと思うかもしれませんけど、派遣会社は結構、働いているところは小さくても派遣会社自体は結構大きくて、大きな派遣会社になれば、わりとこういう紛争を処理するシステムはそれなりに持っているところもあるんです。だから、結構それに対する解決に前向きで、あっせんに乗ってくるケースも結構多い。さらに派遣の場合、1つのパターンは切られたというのがあるのですが、もう1つそれとともに、むしろ派遣の性格からいって、そのことよりも、その次に新たな派遣先の紹介をめぐって紛争になっているケースが結構多い。あと当然のことながら、いじめとか何とかといった職場環境型の紛争では、派遣先を相手にして、非申請人としてあっせん申請しているケースが結構あります。この辺もある意味では派遣というものの性格をよくあらわしているのではないかと思います。

すいません、本来の予定よりも時間をオーバーいたしましたけれども、私からの報告は以上でございます。

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