第15回 旧JIL講演会
会社分割法制の実施を前に
~労働契約承継法指針のポイント~
(2001年3月1日)

厚生労働省労政担当参事官
岡崎 淳一

目次

講師略歴

岡崎 淳一(おかざき・じゅんいち)
 昭和32(1957)年3月7日、東京都生まれ。
東京大学法学部卒業後、昭和55(1980)年4月労働省入省。以来、在アメリカ合衆国日本国大使館一等書記官、労政局労働法規課企画官、職業安定局地域雇用対策課長、労政局労政課長などを歴任。  平成13(2001)年1月より厚生労働省労政担当参事官。

労働契約承継法と省令、指針

 厚生労働省の岡崎でございます。会社分割法制に伴う労働者保護のかかわりにつきまして、ご説明したいと思います。
 会社分割に伴う労働契約承継法の基本的な趣旨について申し上げますと、経済情勢が激しく変わっていく中で、企業も組織の変更を含めまして、いろいろな対応をしていかなければならない状況です。その中で、企業組織を変更する手続を比較的簡単な仕組みにできないかということで、法務省において商法の改正について検討していたわけでございます。従来は、いわゆる営業譲渡のような個別の債権債務関係の引継ぎを要する手続でないと、会社の分割、分社化などはできませんでした。そこで、分割計画書等を作るという手続を踏めば、比較的簡易に分社化できる制度が構想されたわけでございます。
 この会社分割制度に基づきまして、今後、いろんな会社が分社化等を進めていくことが予想されるのですが、労働契約の関係などがちゃんと整理されているかどうかというのが大きな問題になったわけです。このため、法務省での検討と並行しまして、会社分割制度が創設されるのに伴って何らかの法的措置が必要かどうかということを、当時の労働省で検討してまいりました。
 そして、現在の労働法制では対応できないところもあるということになり、新たに「会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」、私どもは労働契約承継法と略しておりますが、この法律を商法の改正法案と併せて国会に提出したわけでございます。この法案につきましては、国会において野党である民主党からもいろんなご議論をいただきまして、一部修正がなされたわけでございますが、昨年5月の通常国会で改正商法とともに成立しました。
 基本的な契約の承継に係る部分は当然、法律に書いてあるわけでございますが、契約関係の整理とともに、会社分割に伴って労働関係がある程度円滑に承継されるようにという意味で、指針を設けることとされました。会社側、あるいは労働者側のほうできちんと対応できるような制度にする必要があるということで、併せて規定したわけです。この指針につきましては、昨年7月以来研究会を開催し、学識経験者だけでなく労使の皆さんにも入ってご議論いただき、昨年12月に告示することができました。
 本日は法律、それから省令、指針、これら全体につきまして、ご説明して参りたいと思います。まず、会社分割に伴いまして労働関係でどういう手続が必要になるかということをお話しします。その後で、労働契約の承継がどう整理されているのかということについて、お話ししたいと思います。

会社分割制度の基本的なポイント=分割計画書等の記載

 「分割手続の流れ」という図(資料5)をご覧ください。これを見ていただきながら、分割手続の流れを聞いていただきたいと思います。
 この図の左側は労働契約承継法と改正商法の附則による労働者、あるいは労働組合にかかわる手続、右側が商法関係の手続です。商法の手続の大きなポイントですが、真ん中辺りに「株主総会による分割計画書等の承認」というのがあります。分割計画書等が株主総会で承認されることにより、会社分割の中身が最終的に固まるわけです。もちろんその後に、債権者の異議など商法にかかわる手続がございますけれども、基本の部分は株主総会の分割計画書等の承認のところでおおむね決まります。そこに向けた事前の手続のところで、労働契約承継法及び改正商法の附則の規定によって、労働関係で幾つかお願いしているということです。
 商法の会社分割制度について若干ご紹介しますと、1つの会社がありまして、これを2つに分割するとします。その場合、どの部分のどういう営業、あるいは債権債務関係をどう割り振るかということにつきまして、個別の手続ではなく、分割計画書等で明確に書き、その会社の分かれ方を決めます。異議がなければ、分割計画書等の記載をもとに債権債務関係が確定していく、これが会社分割制度の基本的なポイントです。つまり、分割計画書等がどう書かれていくかによって、基本の部分が定まっていく。その分割計画書等に至るまでの間に、労働関係で幾つかの手続をお願いしているわけです。
 1つの会社をAとBとに分けるとしたら、Aの部分、Bの部分にそれぞれどういう営業を行わせるのか。もちろん基本的なアウトラインは会社側で決めるわけです。ただ、労働者との関係、どの労働者がどちらに行くかということにつきまして、ある程度労働者の意向が反映されるようなシステムが作られているということです。

労働者との協議

(1)内容

 手続としましては、図(資料5)の2段目に「労働契約の承継に関する労働者との協議」と書いてあります。これは国会での修正により改正商法の附則で定められたわけですが、労働契約の承継につきまして、まず労働者と協議をしてくださいという規定です。会社として営業を大体こう分けるということが既に決まった上でお話しいただくわけですが、それを前提に個々の労働者と十分に協議することを法律上、商法の附則に基づいてお願いしています。
 会社がAとBとに分かれた場合、個々の労働者がどちらに行くかということを中心にお話ししていただくわけですが、AとBとがそれぞれどういう会社になるのかということの概要についてまず話さないといけません。分割の中身が分からないまま労働者の方で判断しろと言っても、これは難しいわけでございます。
 それで、残る会社をA、出ていく会社をBとしますと、Bの会社に行っていただくかどうかということについて、個々の労働者とお話ししていただきます。個々の労働者には、後ほどご説明します異議申立権などがあるわけですが、そういった要件に該当するかどうかもお話の内容に含まれます。労働者の希望を必ず踏まえなければいけないということではありませんが、やはり通常の人事ヒアリングなどと同じように、ある程度個々の労働者の希望を含めてお話ししていただくことが必要だろうと思います。
 その中で会社としてはどちらに行ってほしいかということについても、お話ししていただくことを想定しています。当然のことではありますが、新しい会社に行った場合、どういう労働条件でどんな業務に就くのか、あるいはどういう勤務場所かということについてもお話しする必要があろうかと思います。そういったことをいろいろ説明し、希望を聞きながらご協議していただくということであります。
 もちろん、そこで必ず同意を得なければいけないということではありません。最終的には協議の結果を踏まえて、後でご説明する通知によって会社としての判断を示すわけです。その前に、どういう会社になるのか、その会社でどういう仕事をしてもらうのかというところをできるだけ労働者の方に理解していただけるような協議をお願いしています。

(2)対象となる労働者

 協議の趣旨はそういうことですが、どういう労働者と協議をしていただくかということにつきましては、承継されるほうの営業に従事する労働者についてお願いしています。会社をAとBとに分ける場合、分かれていくBのほうの営業に従事している労働者について協議をお願いするということです。「従事している」ということでは、後に「主として」「従として」という概念が出てくるのですが、要するに、分かれていく営業に何らかの形でかかわっている労働者の方について協議をしていただくということであります。
 分かれていく営業とともに新しい会社に移る方もいるでしょうし、会社側の判断でそのまま元の会社に残る方もいるかもしれません。結果としてどうなるかというところがあるわけですが、協議の対象といたしましては、分かれていく営業にかかわっている労働者の方と協議をしていただくことになっております。
 指針を作る際、この協議について個々の労働者としないといけないのか、あるい労働組合である程度代理できるのかという議論がございました。その議論を受けて指針には、民法の規定に基づく代理人を選任して協議を行うことは可能であるということが書いてあります。労働組合等が代理人としてこの協議を受けることも、システムとしては可能であるという言い方になっております。
 ただ、労働組合として団体交渉を行ったり、労働者の理解と協力を得るための措置として会社と労働組合で話し合いをすることは、別途あるわけでございます。労働組合が労働者の代理人ということでお話しすることを否定はしていませんが、この協議は、企業が人事ヒアリングのような形で個々の労働者の希望を聞いた上で、最終的な配置を決めるためにお話をしていただくということです。労働組合のほうと会社分割全体のお話をされるというのは、この協議本来の趣旨ではありません。
 労働組合を代理人としてもいいのですが、個々の労働者がどう考えているかとか、個々の労働者の希望はどうだとか、そういったところまで含めて労働組合のほうで対応していただけるかどうかというのが、本来の趣旨からいくとポイントになっていくような気がいたします。最終的にAに残るかBに行くかということについて、個々の労働者の希望を十分に聞くことが、手続として想定されているわけです。代理で行われても差し支えありませんが、協議本来の趣旨がちゃんと確保できるような形でお話をしていただきたいと思います。
 最終的な会社の判断と個々の労働者の希望がずれることは当然あり得ます。けれども、できるだけ個々の労働者も納得した形で配置が決まっていくことが、トラブルを少なくする1つのポイントでもありますので、この点に留意した上で、この規定に対応していただければ非常にありがたく思います。
 要するにここでは、新たな営業がどういうものになって、どういう働き方になるかということを個々の労働者に理解してもらうとともに、その希望も聞きながら配置を決めていく1つの過程として位置づけていただきたいのです。これは改正商法の附則に基づく使用者側、会社側の義務として書かれているところです。

(3)時期

 法律では、分割計画書等の本店備置き日までに協議することになっておりますが、私どもといたしましては、分割計画書等の中で個々の労働者がどちらの会社に行くのかなどを決めていく前の段階で、ある程度人事ヒアリングみたいなものを行うというのが本来の姿であろうと思っています。
 指針には、十分な協議ができる時間的余裕を見て、協議を開始してくださいと書いてあります。最終的に会社として分割計画書等を打ち出す前の段階で、個々の労働者をどうするかということについて、話し合いをしていただくことを想定しているわけです。後ほど申します異議申立てにできるだけ至らないような形で、会社と個々の労働者でお話ししていただければ、非常に望ましい形で会社分割が進んでいくのではないかと思っているところです。
 会社としましては、ある程度労働者の希望に配慮していただく中で、Aという営業をしていくために必要な要員と、新たに分かれるBの会社のほうに必要な要員とを振り分けていくことになろうかと思います。そういう過程を経た上で、個々の労働者がどちらの営業に従事するかという割り振りを、分割計画書等の中で最終的に行います。労働者の労働契約も、他の債権債務関係と同じように、分割計画書等の中で最終的に割り振られます。
 図の3段目のところで、分割計画書等が最終的に確定するわけです。商法の規定ではそうなります。逆に言うと分割計画書等が作成され本店に備えつけられた段階で、個々の労働者がどちらに行くか決まっているのにそれが書いていなければ、分割計画書等になりません。その段階までに協議が終わり、確定した範囲で分割計画書等に書いていただくことになります。
 例えば甲さんはA社、乙さんはB社、丙さんはB社ということが分かるような形で、分割計画書等の中で整理していただきます。では1万人いる会社では1万人の名前を全部書かなければいけないのかという議論もあるわけですが、指針では、どの方がどちらに行くのかを分割計画書等の中で明確にしていただく必要があるとしています。加えて、必ずしも個人の名前まで書かなくても、別の形できちんと特定されていれば結構ですということにしてあります。
 1つの工場が分社化されて出ていくとして、その工場の従業員と記載すれば、誰が見ても明らかに特定されるのであれば、もちろんそういう書き方でも結構なわけです。それから、基本はある工場の従業員ということにして、何人かをマイナス、何人かをプラスとします。そこだけ個人名で書くという特定の仕方もあると思います。いずれにしましても、その会社のすべての労働者がどちらに行くのかを明確に、きちんと特定できるように書いていただく必要があります。

労働者への通知

(1)通知で最終確認を

 分割計画書等の作成は株主総会の少なくとも2週間前までとなっています。その分割計画書等を見ればどの方がどちらの会社に行くのかということが明確になる、そうなるようにしなければいけないわけですが、では個々の労働者が分割計画書等を簡単に見られるかといいますと、なかなか難しいところもございます。このため労働契約承継法の規定に会社側の義務として、労働者に通知していただくことが書かれております。図(資料5)の3段目左側の「労働者への通知」というところです。労働契約承継法の第2条第1項に基づきまして、株主総会等の日の2週間前までに通知してくださいとお願いしています。
 分割計画書等の中で明確に特定された方について、結局あなたはこちらの会社に行くことになりましたよということを最終的に確認する形で通知していただきます。先ほど申しました労働者との協議の中で、あなたはこっちへ行っていただくということを話していくと、ある程度労働者のほうでも分かってくるだろうとは思いますが、最終的にどちらになったかというのは労働者にとって非常に重要なことであります。それに次に申します異議申立てとの関係でも、最終的にどちらの会社に行くことになるのか個々の労働者に伝わっていないといけないわけです。
 通知は株主総会の2週間前までとなっていますが、商法の「分割計画書等の本店備置き日」も株主総会の少なくとも2週間前です。両方とも最低限2週間前なのですが、例えば商法の手続のほうで余裕を持って3週間前にする場合、労働者への通知は2週間前であっても法律上の要件を備えてはいるわけですが、指針には、商法の手続のほうを例えば3週間前にするのであれば、労働者への通知も3週間前にお願いしたいということを書いてあります。
 分割計画書等でどの人がどちらに行くか既に明確にしているものを通知するという意味でありますので、会社にとってそれほど負担にはならないだろうと思っております。それに分割計画書等を見れば分かるにもかかわらず、労働者への通知が遅れるのは、法律上はともかくとしてあまり好ましい状況ではありません。このため、指針の中で、決まったものは早く通知してくださいとお願いしているわけです。

(2)通知事項(法律に規定された2項目)

 通知事項につきましては省令で定めることになっています。資料の4ページ(資料2)に関係省令がありますが、第1条に労働者への通知というのが書いてあります。この項目について労働者の方に通知をしていただきたいということです。
 注意していただきたいのは、省令事項と、それから法律でそもそも定まっている通知事項とがあるということです。法律のほうは資料1ページ(資料1)の第2条第1項のところです。長い文章で読みにくくて恐縮ですが、「分割計画書等の中の記載の有無」、それから「第4条第1項に規定する期限日」「その他労働省令で定める事項」とあります。「その他労働省令で定める事項」というのが資料4ページ(資料2)に書いてある事項になります。つまり、法律の中で定まっている2項目と、省令で書いている7項目について通知をしていただくということであります。
 法律に書いたのは何かと言いますと、当然といえば当然ですが、1つは労働者がAに残るのかBに行くのかということについて、明確に書いてくださいということです。2つ目は「第4条第1項」などと難しく書いてありますが、要するに、一部の労働者に異議申立権があるわけですが、その異議を申し出る期限の日を明確にしてくださいということです。

(3)通知事項(省令に規定された7項目)

 それから省令で書いてある項目について通知をしていただきます。中身を順次見ていただきますと、まず「通知の相手方たる労働者が法第2条第1項各号のいずれに該当するかの別」と書いてあります。これは、その営業に主として従事する労働者か否かということであります。
 主として従事することにどういう意味があるかというのは、ご説明しないと分かりにくい部分もありますが、要するに異議申立権がある労働者であるかどうかということです。そういったことを通知していただきます。この部分と、先ほど申しました「異議を申し出る期限の日」というのはある程度セットでありまして、異議申立権のある方については、この日までに異議を申し立ててくださいということを通知していただくことになるわけです。
 省令の2号以下は、会社の概要、分割の概要について必要な通知をしていただくということです。2号に書いてありますのは、新しく分割してできる会社がどういう会社であるのか、その概要をお示しいただくということ。3号はそれぞれの会社の名称や所在地、従業員数。4号はいつ分割されるかという日を書いていただくということです。5号には「従事する業務の内容、就業場所、その他の就業形態」と書いてあります。これも協議の中でお話ししていただくことではありますが、分割された後、労働者の方がどの工場のどこで働くことになるのかを最終的に通知していただくということです。
 したがいまして、2号から5号までは、新しい会社、仕事の概要をきちんと労働者に通知してくださいということであります。これらは労働者の方がいろいろな判断をするための前提になる事項でありまして、協議の中でもこの部分について相当触れていただくということですが、最終的に確認の意味で、書面で通知していただくことを想定しております。
 それから、6号のところにちょっと分かりにくいのがあります。「分割後の分割会社及び設立会社等のそれぞれが負担すべき債務の履行の見込みがあること及びその理由」というところです。商法の分割法制ができていく中で、不採算部門の切り捨てのために会社分割をやるのではないかというのが大きな議論になりました。法務省の説明では、そうではなく、会社分割というのは経済の変化の中で、企業が機動的に会社組織を変更しながら発展していくための仕組みであるとしています。
 会社を分割していく中で、一方の会社が債務の履行の見込みもないような、ある意味で泥船みたいなものにならないことが必要です。労働者との関係でもそうですが、債権者との関係でも当然そうなるわけです。したがいまして、商法の手続でも会社側は債権者等にその部分をお示しいただくと明確に書かれています。それを労働者にもきちんとお示しいただきたい、債権者との関係でちゃんと示すことになっている事項を労働者にも通知願いたいという趣旨であります。
 7号は異議申立ての手続について、いつまでに誰に異議を申し立てるか通知してくださいということです。
 通知事項は以上のようなものです。これらの事項につきまして、法律上は株主総会等の日の2週間前まで、それより前に分割計画書等を備えつける場合にはその日までにお願いしたいということになっております。
 法律上は「書面による通知」となっています。この点については、通知の電子化という話もあったわけですが、労働関係につきましては、労働契約を結んだ際の労働条件の明示など幾つか書面で通知する事項があります。労働者との関係では、より明確に書面で通知する必要があるという労働組合側の意見もありまして、書面の電子化は法律に載っておりません。電子的な手段ではなく、紙の媒体による通知をお願いしています。ただ、遠隔地等の場合には、ファックスなど紙に残る形の通知であれば差し支えないと考えています。

異議申立て

 債権債務関係ですと、通知をして、株主総会が終わった後で異議の申述等の手続となるわけですが、労働契約の場合、労働契約承継法に基づいて、一部の労働者に異議の申立権を認めております。
 では、異議申立権があるのはどういう方なのか。会社が営業をAとBとに分けるとして、分かれて出ていくBの営業のほうをまず想定していただきたいのですが、分かれていく営業にどういう形で従事しているかによって、異議申立権の有無が異なっております。
 分かれていく営業に主として従事している方につきましては、その営業とともに新しく分割されてできる会社のほうに行く場合、異議申立権はありません。一方、出ていく営業に主として従事しているにもかかわらず、元の会社のほうに残ってくれと言われた場合、異議申立権があります。仕事とともに行く場合に異議申立権はなく、仕事と切り離されて残れと言われた場合には異議申立権があるということです。営業と一緒に行ってくれと言われればそのまま行く。残ってくれと言われた場合、労働者が異議申立てをすれば、残るのではなくて行くほうになるというようになっております。
 それから、出ていく営業に主としてではなく、従として従事している方についてです。「従として」というのは、その営業と関係ないわけではないけれども、主力は別の営業のほうにあるという方です。こういう方が新しいほうに行ってくださいと言われた場合、主として従事している営業と切り離されるわけですから、異議申立権があります。これに対して、元の会社に残ってくださいと言われた場合、主として従事している営業と切り離されるわけではありませんので、異議申立権はないということになります。
 つまり、仕事と一緒に行ってくれ、あるいは残ってくれと言う場合、会社の判断がそのまま適用されます。主とするほうと切り離されて別のほうに行ってくれと言う場合、労働者当人が異議を申し立てれば、主とする仕事と一緒に残ることになるわけです。
 ここでご説明しておきますが、今回の法律は、何らかの形で分かれていく営業に従事している方が対象になります。大きな企業等で営業が幾つもある中で、分かれていくところとまったく関係ないところに従事している方につきましては、そもそも今回の法律の対象に入っておりません。ですから、その方を新しいほうに行かせる場合、この法制とは別のいわゆる普通の転籍と同じ概念で判断していただくことになります。したがいまして、「主として」「従として」というのも、あくまで分かれていく営業に何らかの形で関与しているという方が対象になります。
 異議申立権につきましては、形成権的な権利ということで整理してあります。当人が異議を申し立てた段階で、反対の法的な整理が行われます。異議の申立てがあって会社が再考するというものではなく、それによって契約関係が確定するわけです。つまり、会社側が考えていたのと反対の結果に契約関係上なります。異議申立てがあれば、それを前提に全体の要員計画を考え直していただかないといけません。
 異議申立ての期限は、通知してから少なくとも13日間は置いてくださいということになっております。通知するのは株主総会の日の2週間前までとなっていますので、ぎりぎり株主総会の前日までは異議申立権があることになるわけです。法律どおりやっていただければ、株主総会の前日までに基本的な契約関係はすべて整理され、株主総会の日には全体の契約関係が確定する仕組みになっています。

「主として」「従として」の判断基準

(1)承継する営業に専ら従事している場合

 次に、指針との関係で幾つかご説明したいと思います。まず、営業に主として従事するという概念についてです。主として従事しているかどうかによって異議申立権があるかないか決まるという意味で、このことは非常に重要な法律的概念であります。その考え方を指針で明確にすることになっていたわけですが、資料11ページ(資料4)の第2-2-(3)に「承継される営業に主として従事する労働者の範囲に関する事項」という項目があります。そこで、どういう方が「主として」かという考え方を、ある程度、明確に示しています。
 主として従事しているかどうかにつきまして、まず判断の時点としましては、分割計画書等を作成する時点、少なくとも2週間前までに本店に備え置くという、その作成時点を基本的には基準日と考えています。ただ、基準日どおりに考えると適当ではない場合も幾つかありまして、その例外をロに書いています。基本はイのほうに書いてある「分割計画書等作成時点における判断」ですので、この時点を基本に据えて判断します。
 イの(イ)にありますように、「承継される営業に専ら従事する労働者」につきましては、主として従事する労働者になります。ここで主従が問題になる方はそういないだろうと思います。例えば鉄道会社がバス部門を分割する場合、バスの運転手はどう見てもバスの営業に従事しているわけです。そういう直接部門につきましては、営業の分け方によって若干違う場合があるかもしれませんが、専らそちらの営業に従事しているという形で整理されてくるのではないかと考えております。
 A工場を分離して別会社にする場合、そのA工場で直接、生産に従事している方、あるいは経理や資材、人事などをしている方につきましても、基本的に専らそこに従事していることになります。「主として」というよりは、「専ら」営業に従事していると考えていいだろうということです。相当部分はここで判断されるのではないかと考えております。

(2)いくつかの分野を担当している場合

 ただ、(ロ)に書いてありますが、1つの部門で幾つかの分野を分担していて、1人がその両方を行っている場合もあります。この場合は、個々の人がどちらの営業にどう従事しているかということで、ある程度、時間を基本に据えながら、時間は長くても役割としては重要でないという場合もありますので、果たしている役割も加味した上で総合的に判断することになっております。
 例えば、銀行等で個人営業と法人営業とがあるとします。個人営業部と法人営業部とで完全に分かれていればそれはそれでいいわけですが、営業に従事している方が両方やっている場合、どちらのほうに時間をかけているかということを基本にします。個人営業のほうに時間をかけているけれども、法人営業のほうの役割が非常に大きいという方につきましては、そこを加味した上で判断します。ここは業種、職種によって、一律の判断は難しいところです。
 もっと明確な基準がないかということで、いろいろな業種をヒアリングしたり、労使の代表の方にも入っていただき議論はしたのですが、やはり時間が基本だということと、ただし、時間だけではないという話にしかなりませんでした。したがいまして、最後は総合判断という形になっていますが、その方がどちらに多くの力を掛けているか、あるいは会社に貢献しているかということで、判断していただくことにしたわけです。この(ロ)も、ある程度、直接部門を想定して書いてあります。

(3)間接部門

 (ハ)の部分は間接部門を想定したものです。ここでは人事や経理、銀行の資産運用など、われわれがヒアリングした範囲で考えられたものを書いてあります。これ以外のものも含め、間接部門は(ハ)の部分にあるような考え方です。もちろん間接部門でも、例えば営業部門が2つに分かれた場合、どちらの営業部門の人事をやっているのか明確な方は、それで判断することになります。間接部門だから皆これでという考え方ではありません。間接部門で境目が分からない形になっている場合を(ハ)に書いてあります。
 したがいまして、間接部門でもどの部門の人事、あるいは経理をやっているのか明確な方は、むしろ(イ)や(ロ)で判断していただけばいい。そうではなく、人事や経理でまったく全社的なものを扱っている場合などを想定して(ハ)が書いてあるわけです。ここでは、要するにAとBの会社に分かれていくとして、結局どちらか大きいほうが「主」ということで判断していただくという割り切りをしています。このことが(ハ)の3つ目のパラグラフに書いてあるわけですが、間接部門でどちらの人事か、どちらの経理かということが明確でない方につきまして、AとBの会社のどちらか大きいほうに主として従事していると判断していただくことになっております。
 会社側の要員配置からいくと、例えばAとBとに分かれて、元の会社に残るほうが3分の2で、出ていくほうが3分の1とします。こういった場合、間接部門でどの部門の業務を主に行っているのか判断できない方につきましては、全部3分の2のほうに主として従事しているという判断になります。労働者一人一人が皆3分の2大きいほうをやって、3分の1小さいほうをやっているというように割り切って考えざるを得ませんので、このような判断になっています。
 では、小さいほうはだれもやらなくていいのかと言うと、そうではありません。そこは、話し合い、協議などの過程で納得を得て要員配置をきちんとやっていただきます。この部分は、法律的に、最終的に割り切ったらどうなるかという考え方です。労使でいろいろご議論いただきましたけれども、結局、他の基準は誰も思いつきませんでした。私どもとしましては、むしろ法律の割り切りということではなくて、ちゃんとした話し合いができているかどうかということで、最後に要員配置を行っていただくしかないということであります。

(4)分割前後の人事異動

 分割の前後で特段人事異動等が予定されていない人につきましては、今申しました(3)のイにあるようなことで判断していくことになっております。ただ、企業では一時的な配置替えなどもあるということで、ロの「分割計画書等作成時点で判断することが適当でない場合」で一定の手当をしてあります。
 資料の21ページ(資料6)を見ていただきたいのですが、図が8つ書いてあります。各図の真ん中の点線は、分割計画書等の作成時点を表しています。上が主として従事している部門、下が従として従事している部門になります。図1と図3は作成時点の前後で仕事を変わっていない普通のケースです。こういった方は分割計画書等の作成時点と言いますか、その前後を含めてまったく同じ判断になりますので、それで主従判断をしていただきます。
 分割計画書等作成時点の前に人事異動が行われる場合が、図2と図4です。図2のほうは、それまで従として従事していた方が、配置替えで主として従事することになった場合。図4はその逆の場合です。ちゃんとした人事異動が作成時点の前に行われていれば、作成時点の配置で判断していただきます。それまで従事していた業務が主従どちらに該当するのかということではなく、基本的には作成時点の業務でちゃんと判断していただければよいということにしてあります。
 先ほどの(3)のロで書いてありますのは、図5と図7の場合です。分割計画書等の作成時点のところで山が上に出たり、下に出たりしていますが、要するに一時的な研修命令や応援命令などで、たまたまそちらへ行っていたということです。図2及び図4と、図5及び図7との違いを申しますと、図2と図4は普通の配置替えの辞令に基づいて、仕事が前と変わり、後はずっとそちらに行くことが予定されている場合です。図5及び図7はそうではなく、1カ月、3カ月など期限を切って、そちらを応援していろとか、ここの工場で研修しろとか、そういった場合です。たまたま作成時点で主になっていたり、従になっていたりという場合には、そのたまたまのほうではなくて、元々のほうで判断してくださいということにしてあります。
 図6と図8は、作成時点後の明確な一定の時期に異動することが確定している場合でして、これは将来そうなるというほうで判断していただきます。例えば、育児等のために配置転換を従前から申請していて、作成時点の後でそういう形に配置されることになっていたとか、あるいは採用内定者でどちらに行くのかが既に決まっていた場合などを想定しています。こういう場合、作成時点とは違う形になったとしても、将来は反対のほうになるということが当事者間で、労働者を含めて明確になっていますので、作成時点にこだわらず、近い将来にそうなると決まっていたほうで判断していただくようにしてあります。

(5)恣意的な配置転換の防止

 ここまでが基本でありますが、企業が恣意的に配置転換をする場合があるのではないかということが、国会でいろいろ議論になり、どう裁くかという問題になりました。先ほど申しましたように、主として従事していたにもかかわらず、営業が承継される会社に行かないで残ってくれと言われた方や、従として従事していたのに営業が承継される会社に行けと言われた方には、異議申立権があります。しかし、作成時点の少し前に企業が逆のほうに配置転換をしてしまうと、異議申立権が実は消えてしまうわけです。
 この点につきましては、資料12ページ(資料4)の第2-2-(3)-ロ-(ハ)に考え方を書いてあります。「分割計画書等作成時点で判断することが適当でない場合」の(イ)と(ロ)は、研修等の場合です。(ハ)の部分は、労働者をどちらかに行かせたい、あるいはどちらかに行かせたくないがために、それまでの人事ローテーションその他から考えて、まったく合理的な理由もなく配置転換を行った場合です。こういった場合につきましては、本来あるべきほうで判断してくださいということにしてあります。
 作成日の1カ月前、あるいは半年前の配置転換はないものとして考えるといった議論もあったわけですが、人事ローテーションというのは企業によってそれぞれ違いがありますし、それが正常な場合もあれば、ここで指摘したような意図を持った場合もあります。期間をあまり長く見ると、そもそも会社分割を考えていなかった時点の配置転換までないものとして考えるかということにもなってしまいます。労使にも入っていただいて議論したことですが、そこは期限で見るのではなく、むしろそれまでの人事ローテーションその他から見ておかしいというものについては、それをないものとして考える。つまり一定の期間で区切るのではなく、対応において判断するしかないということになりました。それで、排除など別の目的で行ったような配置転換につきましては、それをないものとして主従の判断をするという指針になっているわけです。
 ただ、各企業にいろいろな実態がある中で、「どうも少し目的が違う配置転換をされたのではないか」と労働者が受け取る場合など、いろいろなケースが想定されると思います。そういうときは、ハの「分割会社と労働者との間で見解の相違がある場合」のところですが、できるだけ両当事者の話し合いで解決していただきたいとするとともに、最終的には裁判によって主従の関係、それに基づく異議申立権の有無が判断されることになると書いてあります。私どもといたしましては、できるだけ円滑な労使関係という意味から、労働者との協議を十分尽くし、適切な人事配置、要員配置をしていく中で、争いにならない形で適切に対処していただければありがたいと思っております。そうはいっても、なかなか話がつかないという場合につきまして、最終的に今申し上げたような形で法律的に整理されているということであります。

労働者の理解と協力

 「分割手続の流れ」の図(資料5)で一番上から一番下まで矢印がついているところですが、「労働者の理解と協力」という部分について次にご説明したいと思います。
 「労働者の理解と協力」は、国会の議論で修正が行われて新たに入った条文です。会社が分割するということは、労働者にとってもこれまで勤めていた会社組織が変わるということで大きな影響があります。そういう労働者からできるだけ理解を得つつ、分割を円滑に行っていただく必要があるということで、労働契約承継法の法文の中でも会社側の努力義務として、理解と協力を得るよう努めると規定したわけです。
 法文上は、労働者の理解と協力を得るということで書いたわけですが、では具体的にどういう形で得るのかということにつきましては、省令で書くことになりました。それが省令である施行規則第4条になりますが、過半数を代表する労働組合があればその組合と協議を行う、そういう組合がないような場合、過半数の労働者の代表と協議を行っていただくということを基本的な姿として書いてあります。
 ただ、「その他これに準ずる方法」ということで、それに必ずしも限定していません。ある程度、それと同等であると認められるような形の協議であっても差し支えないということでお願いしています。「その他これに準ずる方法」にはいろいろな制度があると思います。例えば、企業の中に労使協議会のようなものがあり、そこできちんとした協議が行われるのであれば、それでいいのではないか。名称のいかんを問わず、労使対等の立場で誠意を持って協議を行える、そういう場が確保されていることが必要だということであります。
 この協議は、個々の労働者の希望をある程度聞いて配置していただくためという、先ほど申しました協議とは異なります。会社分割が行われるまでの間、労働者の不安を解消すべき事項としていろいろなことが想定されますが、その期間を通じて労使間で十分な話し合いをしていただきたいということです。総体としての労働者とのかかわりの中で、会社分割をなぜ行うのか、それによってどのように変わるのかということを含め、労働者の理解を得ていただくことを主眼としたものです。会社分割を行う背景、理由などを十分説明していただき、なぜ今、会社分割をするのかということについても労働者全体の理解を得ていただきます。
 それから、それぞれの会社は泥船ではなくて、現在の経済社会の中で発展していくために必要であるということや、これは個々の労働者ともかかわるわけですが、主として従事する労働者の判断基準など、とにかく全体としての労働者との関係について、十分な話し合いをお願いしたいという趣旨であります。
 この手続は、ある意味で一番早く始めて、最後までお願いしたいことです。例えば、個々の労働者との協議に先立ち、分割の背景などについて労働者総体に理解を求める。協議のやり方等についても、こういう形でやっていくということで理解を得る。会社分割の考え方が整理された段階、このタイミングにはそれぞれあるかもしれませんが、個々の労働者との接触が始まる最初の段階で始めていただきたいと思っています。
 これは1回説明して終わりというのではなく、個々の労働者から意見聴取をして出てくるいろいろな問題について、ある程度フィードバックしながら、できるだけ円滑に解決できるように適宜、協議を重ねていただきたいという趣旨です。そういう努力義務が書いてありますので、労使それぞれの立場から積極的に協議していただき、会社分割が全体として円滑に行われるようにお願いしているわけです。

 

労働契約の承継

(1)原則として労働条件は維持される

 手続としては以上ですが、そういう形で整理され、異議申立権などがある中で、労働者がどちらに行くのかが決まっていきます。分かれていくBのほうに行く方につきましては、労働契約はそちらのほうへ移ります。その場合、労働契約の中身はどうなるかと言いますと、その契約関係は包括的に承継されるという考え方で整理されております。その契約内容である労働条件を含めまして、基本的にすべてそのまま承継されるというのが基本的な考え方であります。
 その辺は13ページ(資料4)の第2-2-(4)「労働条件等に関する事項」に書いてありますが、「基本原則」にありますように、労働契約は包括的に承継されるので、その内容である労働条件も維持されるということです。この場合の労働条件につきましては、2つ目のパラグラフにありますように、労働契約や就業規則等で明記されているものは当然のことながら、いろいろな労働慣行で確立されている部分につきましても、あわせて労働契約の内容として維持されるという考え方であります。
 それから、年休日数や退職金の算定等にかかわる勤続年数等も包括承継されますので、当然のことながら通算されることになります。要するに、まったく同じ中身でそのまま移るというのが基本です。ですから、会社分割のみが理由になって労働条件が変わることは、基本的にあり得ないことになっております。
 ただ、例えば500人の企業から30人を出すような会社分割をして、その規模においては福利厚生制度を維持できないなど、制度的に難しい場合も想定されます。その点につきましては、代替措置を含めて、労使間で十分話し合ってくださいということにしてあります。不可能な部分までまったく同一でなければいけないというようにはできません。制度の対象にならない場合や、あるいは第三者との関係で、同じ形で提供することが不可能な場合には、どういう形でその部分を代替していくかということにつきまして、十分話し合ってくださいということです。
 それから指針には、厚生年金基金や健康保険組合、財形貯蓄などについて、それぞれ引き継ぐ際の注意事項等を書いてあります。これらはそれぞれの制度の説明でありますので、後ほどご参照いただければと思います。

 

(2)分割のみを理由に解雇はできない

 あと、指針の中で特記して書いてありますのは、14ページ(資料4)の第2-2-(4)-イ-(ロ)のところですが、会社分割を理由とする労働条件の不利益変更についてです。新しい会社、新しい契約関係だということで、使用者がそれを勝手に決められるということでは一切ありません。先ほど申しましたように、これは包括承継です。契約関係がそのまま承継され、労働条件の中身もそのまま基本的に承継されます。こちらの関係が終わり、こちらで新たな契約関係ができるという関係にはなっていないということを十分ご理解いただきたいということです。
 もちろん、労働協約改定などの労使交渉を否定しているわけではありません。そういう中で労使の合意が得られた部分につきましては、それに基づいて変更があり得るということです。全体としてどういうバランスで労使間の合意が得られるかというのはそれぞれ交渉事ですけれども、例えば他の会社と合併するようなケースもありますので、それに応じた労使間の団体交渉や、それに基づく合意がある場合の契約の変更まで否定しているわけではありません。それは一般的な契約や就業規則を変更する際の法理に基づいて判断されるべき事項だということです。
 私どもが強調したいのは、会社分割をしたから労働契約の中身を変えていいという論理には、一切なっていないということです。それと当然のことながら、新しくできた会社で必要な要員はこれだけだから、あなたはもう要りませんというように、分割したことを理由に解雇するといったこともできないということです。
 もちろん、整理解雇の法理に基づいて、会社分割を理由としない形でいろいろな対応が行われることまでは否定しませんが、これも会社分割が理由となることは基本的にあり得ません。会社分割というのはあくまでここにある会社をどういう形で切り分けるかというシステムですから、整理解雇などがいつの時点でどのようになるかというのは、その法理に基づいて対応していただくことになります。会社分割の法制度には、そういうものが入り込む余地はないということで、指針の中で明記させていただいております。

 

労働協約の承継

(1)規範的部分と債務的部分

 最後に労働協約の関係で若干の規定がございますので、ご説明したいと思います。労働契約は、どちらかの会社に割り振られるかが決まっていきます。しかし、労働協約につきましては、A社とB社の両方、それぞれ分かれていく労働契約のいずれのほうの条件についても決めています。したがいまして、組合員が両方の会社に分かれた場合、どちらかに労働協約が行ってしまうというのはやはりおかしいわけです。その労働協約が射程に置いている組合員、あるいは労働条件を決めてある労働契約が移る限りにおいて、両方の会社で適用されるべきであろうと考えております。
 会社分割法制では、原則としてすべての契約関係がどちらかに割り振られます。しかし、労働協約につきましては、対象となる組合員が移った限りにおいて両方で適用される、要するに同じものが両方の会社に適用される形で法律上整理されているわけです。
 ただ、労働協約のいわゆる規範的ではない債務的な部分について、例えば組合事務所を貸すというのが書いてあったとして、A社とB社の両方にその労働協約が適用されるとなると、A社でもB社でも組合事務所を貸さないといけないのかということになってしまう。あるいは専従役員を2人まで認めている場合、それぞれの会社に2人ずつとなるのかという議論もありました。
 この部分につきましては、労働協約がコピーされて2つになるわけですので、規範的な部分はそれで何の問題もないのですが、組合事務所を貸すとか、専従組合員を何人認めるかという債務的な部分までコピーされてしまうと、両方の会社を足し合わせた負担が倍になると解されることもあります。それはやはりおかしいので、その部分は全体の負担が元と変わらない範囲内で、どちらの会社で組合事務所を貸すかとか、専従組合員が2人の場合は1対1、あるいは2対0にするかといったことについて、会社と労働組合との間で合意を得て、その合意の範囲内で適用が決まるという法制度になっております。
 したがいまして、労働協約の関係では、最初の段階で、債務的な部分につきまして、両当事者の間でどのように割り振るかを決めていただく必要があります。先ほど、「分割手続の流れ」の図(資料5)の真ん中を説明しましたが、労働契約のほうだけ説明して、労働協約のほうを飛ばしておりました。2段目の左側ですが、「労働協約中の分割計画書等記載部分の労使合意」というところです。組合事務所をどちらが貸すのかなど労使間で話し合って決めていただく事項は本来、分割計画書等の中で書くべき事項にもなるわけですので、その作成までに合意するようにしていただきたいということです。
 それから、労働組合におきましても、労働協約のかかわり等もありますので、どういう形で分割され、それによって組合員がどうなるかを知る必要があるだろうというわけで、労働者とともに、労働組合にも一定の事項を通知してくださいということになっております。これが「労働組合への通知」です。基本的には、法律上は労働協約を締結している労働組合に通知してくださいということで整理されているわけですが、協約がない場合におきましても通知が望ましいということで、指針の中でお願いしているところです。

 

(2)労使協定の効力

 あと、指針の19ページ(資料4)の最後、第2-5の「その他の事項」のところに細かい話が幾つか書いてあります。その(1)ですが、安全衛生法等で、事業所規模、企業規模により設置要件の異なる委員会等があります。分割された後のそれぞれの会社で見ると、その基準を満たさなくなるような場合、せっかくあるものをなくすのではなく、そういったものをできるだけ維持していただくことが望ましいということが書いてあります。(2)には、労働者派遣法との関係で派遣契約、派遣期間の制約等について一部書いてあります。こういったものにつきましては、分割前後を通算して考えるべきだということです。それから、(4)にありますように、会社分割後を含めまして、労働者の雇用の安定には努めていただきたいということです。
 若干細かいことですが、17ページ(資料4)の第2-3-(3)に、労使協定等の効力について書いてあります。イの「労働組合法第17条の一般的拘束力等」はあまり例がないのですが、ロの「労働基準法上の労使協定」は、24協定や36協定でございます。これは労働基準法上の免罰措置としての協定ですので、その他の債権債務関係と同じような整理ではないということです。
 これらにつきましては、労働基準法の考え方として、「事業場の同一性」があるかどうかで有効性を判断するという整理をしてあります。ですから、会社分割があったとしても、例えばAという工場自体はそのままの形で残ったり、あるいはそのまま新しい会社へ移ったりすると、そのAという事業所、あるいはそこで働く労働者は基本的に同一性を失っていない。もちろん人事ローテーションにかかわるような部分はあったとしても、基本的に同一だと認められる場合には、それまであった24協定や36協定がそのまま有効に存続するということです。
 これは、会社分割に伴い事業所自体が2つに分かれた場合、こちらは大きいから残るとか、小さいからなくなるということではなく、同一性が無くなれば新たなところで過半数要件を持った方と協定を結んでいただく必要があるという考え方です。これは労働基準法の解釈ということであるわけですが、指針の中で書かせていただいております。
 以上、手続の流れを見ながらご説明いたしました。指針に書いてあることはおおむねお話ししたつもりです。あと30分ほどありますが、質問があればと何なりとおっしゃってください。担当係長も来ておりますので、ある程度、細かい質問にも答えられると思います。

 

質 疑 応 答

【質 問】 資料19ページのハ「労働組合法上の団体交渉権との関係」に、「団体交渉の申入れを拒否できない」と書いてあります。この一文の解釈についてですが、労働契約承継法があるといっても、団体交渉に対する応諾を怠ると労働組合法に抵触するおそれがある。したがって、その会社分割そのものに法律上の瑕疵が生じるおそれがあるといったような意味にとるべきかと思うんですが、いかがでしょうか。

【回 答(岡崎氏)】 会社分割の手続に瑕疵があるというよりは、労働組合法第7条の団体交渉応諾義務に反しているということです。ですから、分割無効の手続のほうで問題になるというよりは、むしろ労働組合が労働委員会に救済を申し立て、そちらのほうで団交命令が出たり、そういう形になっていくことだろうと思っています。

【質 問】 その場合、分割そのものを否定するような救済措置はされますか。

【回 答(岡崎氏)】 これは労働委員会がどう判断するかという話で、私どもとしてコメントしにくい面もあります。ただ、商法上の手続までひっくり返すような判断までするかどうか。これは相当な救済が必要だと見られる場合に限られるのではないかという気がいたします。けれども、私どもとしましては、そういうことを考えずに、誠実な団交をしていただきたいと思っております。

【質 問】 労働協約の継承についてちょっとお伺いしますが、さきほど規範的な部分は継承されると言われました。資料を見ますと、はっきりとは書いていないのですが、今回の分割法は転籍が原則であると伺っております。ある労働協約が継承されたとして、そこには出向にかかわる協約しかなかったとします。組合はそれを盾に転籍を拒否できるんでしょうか。
 それと、分割計画書の株主総会への提示、議案としての提示が必要であるということですが、それは定時である必要はないのでしょうか。臨時でもよろしいのでしょうか。

【回 答(長谷川一也・厚生労働省労政担当参事官室法規第3係長)】 まず、第2点目でございますが、株主総会は定時である必要性はありません。臨時であっても一向に問題ありません。
 第1点目でございますが、これはそもそも労働協約の中に、転籍にかかわる規定が何もない、出向の話しか規定されていない、そういう仮定の話ですか。

【質 問】 それが実在するかは別としてですね。

【回 答(長谷川氏)】 いずれにせよ、分割計画書等の記載に基づく労働契約の承継は、法律である労働契約承継法だけでなく、会社分割制度の規定に従って、その法律の定めによって労働契約を動かすことでございます。労働協約の定めがあるからといって、それを盾にとって転籍を拒否するということには直ちにはならないのではないかと思っております。
 ただ、組合員が設立会社等と言われる新しい会社のほうに動くときには、まさに労働条件を構成するおおもととして労働協約も同時に動いてしまうわけです。そのあたりを考えれば、協約自体の見直しというのをやったほうが望ましいと、これは間違いなく言えると思います。

【質 問】 気がついたら、そういう動きもあるかもしれません。しかし、気がつかなくて、いま仮定した協約がそのまま継承されたとしたら、転籍はそのまま何の問題もなく、抵触もなくできるということですか。

【回 答(岡崎氏)】 会社分割制度というのは、もちろん新しい会社のほうへ移るという意味では転籍というふうに評価されるのかもしれません。ただそれは、1つあるものを2つに分ける。個別の承継ではなくて、包括承継という形で整理する。そういう法律的な制度をつくって、一定の異議申立権等を認める中で整理したシステムであります。一般的に転籍の規定がないからといって、このシステムが否定されるということはおそらくないんじゃないかなと思います。

【質 問】 異議申立ての部分で、承継されていくBという会社で主として従事している労働者が、おおもとの会社に残りたいというような形での異議申立てというのは、先ほどのご説明では受け入れられないような、そんなご説明だったかと思うんですけれども、その点についてのお考えを。

【回 答(岡崎氏)】 その場合、移っていくほうに主として従事している方には、異議申立権がないわけです。従として従事しているのに移れと言われた方には異議申立権がありますので、異議申立てをすると元のA社のほうへ残ります。自分の仕事とともに移れ、あるいは自分の仕事とともに残れと言われた方に異議申立権はありません。主として従事していないほうに行けと言われた方について、異議申立権があります。残るほうもそうですし、行くほうもそうです。要するに、主として従事していた仕事と切り離されたかどうかで、異議申立権が有ったり無かったりするという整理になってます。

【質 問】 おっしゃることは理解できるんですが、仕事という切り口ではなくて、雇用契約をA社と継続しておきたいというような個人の意思は、この法律の中では認められないということですね。

【回 答(長谷川氏)】 まず、理論的な話からいけば、要は仕事、業務とのつながりをまず第一義で考えよう。それが会社分割制度を前提とした労働契約の承継、その特例をどうするかと考えたときの労働契約承継法のコンセプトでした。労働条件等々も含んで、労働者にとってはその仕事とのつながりを維持することが、まず守られるべきであろう。そういう考え方に立って、労働契約承継法を作って参りました。
 ですので、仕事とのつながりは維持されます。賃金や労働時間を含めた労働条件についても維持されます。でも、「私はこの会社にいたい」という方につきましては、個別に拒否をするとか、そういう形の異議申立権はこの労働契約承継法に設けていないところです。これが理論的な話です。
 ただ、そういう話は現実問題として起こり得ると思います。そこを解決する手法として、国会における修正という形で設けられたものではありますが、商法の規定に基づく労働者個人との協議があります。労働者個人の意思・希望を会社側が十分に聴取し、労働者側の意向をできる限り踏まえた形で分割計画書等というプランを作っていく必要がある。そういう手続が1つ設けられました。
 これはあくまでも会社分割によって承継させよう、移そうと考えている営業に何らかの形で従事している労働者に限った手続ですが、その会社が雇用している全労働者に対しましても、労働契約承継法第7条に「労働者の理解と協力」というのがございます。事実上は労働組合等との協議ですが、この中で労働者ないしは労働組合の意向を会社が十分にくんでいただく。その会社の考え方を労働組合や労働者に提示し、双方で意見交換を十分に行って溝を無くしていくことが、結果として円滑な会社分割につながっていきます。
 使用者にとって、分割がうまくいくということは幸せなことです。労働者や労働組合にとっても自分の意向に従った形で会社分割が進展するということは、労働者保護に資することになります。まさに労働契約承継法が目指した趣旨にかなうわけです。ですから現実の話として、協議の中で労働者ないしは労働組合の意向を使用者側は十分に配慮していただきたい。そういう機会がせっかくあるわけでございますので、その機会を活用して、労働者や労働組合の意向に配慮していただきたいと考えております。

【質 問】 この制度が定着したとき、転籍という言葉がやはり使われるんでしょうか。概念が違うとすると、従来の転籍とはちょっと違って、例えば「承継転籍」だとか「分割転籍」だとか別の概念を実際に使うようになるかということについて、お答えいただけますか。

【回 答(岡崎氏)】 言葉としてどう使われるかは、それがこなれていくかどうかということだと思います。A社からB社に移ることを転籍と言うとして、法律的にはこちらも新しいB社となりますから、転籍と言えば転籍かもしれません。しかし、会社分割法は1つのものを2つに分けるという発想ですから、どちらへ行ったとしても「分割に伴う移籍」と言っていいのかもしれません。
 ただ、分割法の特別の規定である労働契約承継法の規定では、一定の場合だけ異議申立権を認め、それ以外の場合にそれはないという整理しています。そこは一般の転籍の法理を気にするのではなく、労働契約承継法の異議申立権がどういうときにあるかということで判断していただきます。ですから、これを転籍と呼んだとしても、一般の転籍にかかわる同意権や異議申立権とはまったく法律的に違うものだと理解していただくしかないと思います。

【質 問】 積極的に転籍と呼ぶと、やや混乱するんじゃないかなと。

【回 答(岡崎氏)】 それはそうかもしれませんね。そこはただ、皆さん方がこれをどう呼ぶかということだろうと思いますが、法律的には違う法理になっていると思います。

【質 問】 今回の法律では、包括的に労働者の権利義務が承継されていくということですが、問題は承継された内容の有効期限と言いますか、会社側と組合との話の中で、それはいつまで保証されるものなのか。あるいは、新設分割を考えていて、組合がどうなるかわからないという場合、新しい会社で組合はできるのか。分かれたとき、包括的に承継される権利義務の有効というものを会社は何らかの形で保証しなきゃならないのか。あるいは期限について、何か具体的な指針は出ているのかどうか確認したいんですけれども。

【回 答(岡崎氏)】 分割に伴い契約関係が移行する段階で包括承継に、それは契約の中身である労働条件を含めて代わるということですが、これをいつまでそのままにしなきゃいけないとか、そういうことについての指針その他はありません。むしろ会社の業績その他で上がる場合もあれば、下がる場合もあると思います。そこは一般の労使交渉、あるいは就業規則の変更と同じ形でご議論いただきます。したがいまして、新しい会社で労働組合ができれば、この労働組合との交渉の中で新たな労働協約を結んでいく。もちろん、その中で上がる部分と下がる部分があり、会社の業績などいろいろな関係の中で、普通と同じように交渉していただくことだろうと思います。

【質 問】 当然、ある一定の時期に分割されることになるわけですが、作業上のことから、間接部門、管理部門といったところの転籍時期をずらすということは、この法律では問題があるのでしょうか。

【回 答(岡崎氏)】 どちらに帰属するかという意味では、会社が2つに分かれた時点で帰属が決まるわけです。おっしゃっているのは、帰属はこちらだけれども、数カ月間は新しいほうの、例えば人事システムなどの面倒を見るので少しそちらにいてくれということでしょうか。でしたら、むしろその期間、在籍出向をやっているということになるような気がいたします。

【質 問】 例えば勤続年数を検証する時、転籍管理など特定部門は作業面から考えて半年後に(転籍を)行うということを最初から明示しておいて、その間については他のものの転籍時期と一体にするという考え方は可能ですか。やはり同一時期にして出向するとか、業務請負のような形にするのでしょうか。

【回 答(岡崎氏)】 そこは幾つか整理の仕方があると思います。時期をずらして転籍するとすれば、それは普通の転籍の法理でやるしかないと思います。分割の法理というのは、その会社が分割され、全体の債権債務関係が整理される時期における法理ですから、その法理を適用したいのであれば、そこを整理した上で在籍出向するとか、業務請負をするということになるでしょう。時期をずらしてということであれば、その間において、一旦は分割の法理で整理され、あとは転籍の法理でいけるかいけないかという整理をするしかないと思います。
 退職金を払うのか、あるいは払わないで通算するかということは、もう分割の法理ではなくて、転籍の際に退職金を引き継いでもいいわけですし、両者間の話し合いと、それを受けた中で労働者が同意するかどうかという話になると思います。

【質 問】 労働者への通知について伺いたいのですが、パートや短期間と言いますか1年契約などで、まさに分割日前、あるいはその直後ぐらいに雇用契約が終わる予定の人たちに対しても通知すべきかどうか、そのあたりの基本的な考え方を教えていただきたいのですが。

【回 答(長谷川氏)】 労働契約承継法の適用対象となる労働者が通知の対象でもあります。これは主として従事する、従として従事する労働者でもあるのですが、分割会社、つまり分割をするもとになる会社に雇用されている労働者です。ですから、労働契約承継法の適用対象となる労働者には、ご質問にありました期間雇用やパート、いわゆる契約社員なども含まれるわけです。パートだから通知しなくていいとか、労働契約承継法の対象にならないというわけではございません。
 その上で問題になるのは、分割計画書等を作ったときは実際に雇用されていますが、分割の日より前にその雇用期間が終わってしまい、再雇用の予定はもうないという方達です。この方達につきましては、仮に通知をして「あなたは分割後、どちらの会社に行くことになりますよ」と言ったところで、その前提となる契約は分割の日に無くなってしまっているわけです。このため、このような方につきましては通知をする意味はないと考えております。再雇用の予定がもう無いということが明確になっている場合には通知は必要ないということです。
 逆に、分割の日の時点ではまだ契約が残っている方につきましては、その分割の日の時点でどちらに所属するのかということを、つまり会社に雇用確保していただかないと困りますので、どちらかに行くのかを決めていただかなければなりません。となりますと、こういう方には通知をする必要が出てきます。
 あと、契約自体は分割の日より前に切れるけれども、再雇用の予定が分かっているような場合は、やはり通知していただいたほうがよろしいだろうと思います。

【質 問】 いわゆる内定者で、まだ入社していない者に対しては、どう考えればよろしいでしょうか。

【回 答(長谷川氏)】 これは指針でも触れていますが、会社との間で労働契約を締結したと言える内定者ないしは採用予定者は、承継される営業に就かせる予定が明確になっている方につきまして、通知をしていただきたいと思っております。指針では、採用内定者だから一律にどうこうしようという規定になっておりません。採用内定者でも労働契約を締結していると言える者について、通知義務が生じてくると考えております。

【質 問】 労働組合と従前、転籍にかかわる一般的な労働協約が締結されていたとしても、それは会社分割、労働契約承継の法理とは直接関係がないから、この労働契約承継に関しては、原則、適用にならないという理解でよろしいですか。つまり、労働契約承継に関するというような文言を付した労働協約を結んでいないと、従来の転籍協定は適用にならないと理解してよろしいでしょうか。

【回 答(岡崎氏)】 協約の中身、書き方にもよるかもしれませんが、新しい会社分割という制度は、いわゆる転籍の法理ではなく、会社分割に伴っていろいろな異議申立権その他がついているシステムです。労働協約がそこまで含めて制限しているというのであれば、それは労使間の取り決めですから、それに応じてということになると思います。そういうものを想定していない段階でつくった協約であるとすると、あとは協約の解釈ですから、一般論で言うのもなかなか難しいと思います。ただ、こういう場合には、もとの法理が違っていますので、そういったことを前提に置いて、最後は労使間でそこまで射程に置いているか置いていないかで判断していただくしかないと思います。私どもが言えるのは、会社分割制度はいわゆる転籍の法理とは違うシステムであり、違う法理を新たにつくっておりますので、そういうことを前提に労働協約の内容を判断していただくしかないだろうということです。