緊急コラム
新型コロナウイルス感染症と労働政策の未来

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JILPT研究所長 濱口 桂一郎

2020年4月14日(火曜)掲載

はじめに

2020年度は何層もの新たな労働政策の門出として出発するはずであった。いや、確かに、法制上はそのように始まった。2018年6月に成立した働き方改革推進法により、既に大企業には2019年4月から施行されていた長時間労働の規制が、2020年4月から中小零細企業にも適用された。同法のもう一つの柱である非正規労働者に対する同一労働同一賃金は、大企業と派遣事業については2020年4月から施行された。2017年5月に成立した民法(債権法)改正の施行日も2020年4月であり、これによる消滅時効の改正に合わせて、2020年3月末に駆け込みで成立した労働基準法第115条の改正(本則5年、附則で当分の間3年)も、同年4月から施行されている。さらに、2019年5月の労働施策総合推進法等の改正により、いわゆるパワーハラスメントに対する事業主の措置義務が、2020年6月から施行され、セクシュアルハラスメント等他のハラスメントへの規制も強化される。このように、労働政策上の大きなエポックになるはずであった2020年度は、しかしながら、2020年初めから世界的に急速に蔓延しパンデミックとなった新型コロナウイルス感染症への緊急対策が続々と打ち出される中で始まることとなった。ほんの数か月前までは誰も想像していなかったであろう事態であり、現時点ではほぼ誰もその行き着く先を予想することもできない状況である。そうした中で労働政策の未来を論ずるのもなかなか難しいところがあるが、本稿では新型コロナウイルス感染症への緊急対策として打ち出されてきている政策を分析することを通じて、今後の労働政策の方向性を考えてみたい。

1 外的ショックに対する雇用維持型政策の再確認と修正

まず、近年「行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への転換」というキャッチフレーズの下で、ややもすれば否定的な視線を向けられることの多かった雇用調整助成金が、二度にわたる要件緩和で一気に雇用政策のスポットライトを浴びたことが注目される。新型コロナウイルス感染症の蔓延やそれに対する対策としての営業自粛要請によってサービス業を中心として事業活動が急激に縮小し、労働需要が収縮していることに対して、雇用維持を図るための休業手当の相当部分を国(雇用保険財政)が補填するというこのスキームは、ドイツやフランスといったヨーロッパ大陸諸国ではこれまでも(石油ショックやリーマンショック時に)活用されてきた仕組みであり、今回はイギリスでも(史上初めて)導入されるに至っている。

「行き過ぎた雇用維持型」という批判は、何事もない平時に、本来なら外部労働市場を通じた労働移動によって(当該労働力をより必要とするはずの産業分野へ)適切に再配分されるべき労働力が、(当該労働力を相対的により必要としていない旧来の産業分野の)終身雇用的慣行を過度に保護する雇用維持型政策によって不当に留められてしまうことに対する批判であろう。そのような批判には、少なくとも平時の政策論としては一定の正当性があることは否定できないが、今日のような「有事」においてはあまり意味をなさない。なぜならば、そもそも雇用調整助成金が設けられたきっかけである1970年代の石油ショックにせよ、2000年代末のリーマンショックにせよ、そこで問題となったのは、中長期的には一定程度の労働需要が存在し続けるはずの分野において、国外からやってきた急激な経済的ショックによって、労働需要が急激に収縮するという事態である。それに対して(今日に至るまでアメリカでは基本的にそのような対応がされているが)外部労働市場を通じた調整、つまり当面不要となった労働者を解雇し、将来ショックが和らいできて労働需要が復活してくればそれに応じて労働者を採用していくというやり方は、当該労働者にとってのみならず当該企業にとっても望ましいものではない、という判断がその背景にある。

一時的な経済ショックに対しては、公的な財政支援によって雇用を維持しつつ、労働需要の回復を待つ、というこの「行き過ぎない」雇用維持型の政策は、今日においては、少なくともアメリカという例外を除き、先進諸国ではほぼ共通した政策として確立したといってよいであろう。日本では2020年2月末に、第1弾として、対象事業主の拡大や生産指標、雇用指標、被保険者期間等の要件の緩和等が行われ、4月には第2弾として、これらのさらなる緩和に加え、助成率の引き上げ(大企業1/2→2/3、解雇を行わない場合には3/4。中小企業2/3→4/5、解雇を行わない場合には9/10)も行われた。これらはリーマンショック時の特例に類するものであるが、今回の特例で特に注目に値するのは、雇用保険財政が財源であることから当然の制限と考えられてきた雇用保険被保険者が対象という要件を撤廃して、「雇用保険被保険者でない労働者の休業も助成金の対象に含める」こととした点である。第1弾における被保険者期間6か月以上という要件の撤廃もこれと同様の性格を有する。

この背景には近年の非正規労働対策の展開がある。雇用調整助成金という形で雇用維持政策が導入された1970年代の日本社会においては、妻子を養う正社員の雇用を維持することが社会的要請であって、その正社員の扶養家族であると想定されたパート主婦やアルバイト学生の雇用を維持することは必要とは考えられなかった。しかし1990年代以降の雇用就業構造の変化の中で、その稼得賃金で生計を維持しなければならない家計維持型非正規労働者が大きく増大し、有期契約労働者の雇止め規制や非正規労働者の均等・均衡処遇が政策課題として浮かび上がってきた。その一つの政策的帰結が、2020年4月に大企業と派遣事業について施行された同一労働同一賃金政策であることは周知のとおりである。他方、1970年代の石油ショック時とは異なり、2008年のリーマンショック時には、多くの非正規労働者が雇用保険の対象とならないことが批判の的となり、それまでの1年以上雇用見込みという要件が1か月以上に緩和された。しかし、それでもなお雇用保険非加入の非正規労働者は少なくないし、また加入していても6か月の被保険者期間を満たさないことも多い。拠出型社会保険制度である以上、雇用保険制度自体を無制限に緩めるわけにはいかないが、緊急事態に対処するための雇用調整助成金が、金の出どころである雇用保険の事情に引きずられることによって、守られるべき非正規労働者の雇用が守られないとすれば、それは是正されるべきであろう。今回の特例措置における対象労働者にかかる要件緩和は、以上のような意味において、非正規労働者に対する保護の拡大という政策の一環としてみることができよう。

2 テレワークの推進が問い直すもの

2020年3月初めには、新型コロナウイルス感染症対策として、新たにテレワークを導入した中小企業事業主に対する特例的な時間外労働等改善助成金(テレワークコース)が設けられた。それに先立つ同年2月末に、政府がテレワークや時差出勤の推進を打ち出したことを受けての施策である。新型コロナウイルス感染症対策としてテレワークを新規で導入する中小企業事業主に対し、テレワーク用通信機器の導入・運用等にかかる費用の1/2を補助するというものである。

実は、テレワークの推進は既に過去何年にもわたって政府の政策課題であり続けてきた。とりわけ、2017年3月の『働き方改革実行計画』においては、「テレワークは、時間や空間の制約にとらわれることなく働くことができるため、子育て、介護と仕事の両立の手段となり、多様な人材の能力発揮が可能となる」と賞賛したうえで、テレワークの利用者がいまだ極めて少なく、その普及を図っていくべきとしていた。これを受けて、厚生労働省は柔軟な働き方に関する検討会を開催し、その報告書に基づいて2018年2月に新たな「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」を公表した。しかしながら、日本企業における仕事の進め方のスタイルが、空間を共有して仲間意識を強める中で、必ずしも文字化されない様々な情報を共有する形でスムーズに行われるという傾向が強いこともあり、テレワークはなかなか普及していかなかった。

そのような状況の中に、突然飛び込んできたのが今回の新型コロナ感染症であった。2020年2月末に新型コロナウイルス感染症対策本部で決定された「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」では、「患者・感染者との接触機会を減らす観点から、企業に対して発熱等の風邪症状が見られる職員等への休暇取得の勧奨、テレワークや時差出勤の推進等を強力に呼びかける」とされ、加藤厚生労働大臣、梶山経済産業大臣、赤羽国土交通大臣が、日本経済団体連合会(中西会長)、日本商工会議所(三村会頭)、経済同友会(櫻田代表幹事)、日本労働組合総連合会(神津会長)に、感染拡大防止に向けた協力要請をした中に、「テレワークや時差通勤の活用推進」が盛り込まれた。

しかしながら、4月初めに厚生労働省がLINEを通じて行った調査によると、仕事をテレワークにしているのはわずか5.6%に過ぎず、新型コロナウイルス感染症がやってきたからと言って、そう簡単にテレワークを導入できるような状況にはないという日本の職場の実態が改めて示された。その雇用システム的背景は上述の通りであるが、それとともに事業場外勤務に対する労働時間法制の適用の在り方をめぐる問題がテレワークの導入に対する制約になっている面もあるかもしれない。そこで、近年の動きをざっと概観しておきたい。

労働基準法には主として外勤の営業職を念頭に事業場外労働のみなし労働時間制が規定されているが、1987年に出された解釈通達では無線やポケットベル等で随時使用者の指示を受けながら労働している場合にはみなし制の適用はないとしている。携帯電話もいわんやスマートフォンも存在しなかった時代の情報通信環境を前提にしたこの解釈が今日も生き続けている。

上述の2018年2月の事業場外勤務ガイドラインでは、テレワークだからみなし制が適用できるわけではなく、情報通信機器が使用者の指示により常時通信可能な状態に置くこととされていないこと等の要件を充たす必要がある。それゆえテレワークでも原則は通常の労働時間制度を適用することとなり、そのうえで例えば中抜け時間を休憩時間として取り扱うとか時間単位の年休として取り扱うといった方法が提示されているが、長時間労働の是正という問題意識が大きく横たわっている状況下で作られたということは踏まえても、やや過剰規制のきらいはぬぐえない。

今回は新型コロナウイルス感染症によって急激に問題意識が持ち上がったが、過去十数年にわたる情報通信技術の発展によって、今や世界的に「いつでもどこでも働ける」状況が広がりつつある。その中で、産業革命時代の労働者が工場に集中して一斉に労働するというスタイルを前提にした労働時間法制の在り方について再検討する必要性が各方面から提起されてきている。今後はむしろ、裁量労働制の見直しとも絡むが、業務の遂行手段と時間配分の決定等について使用者がいちいち指示しないことに着目する形で、テレワークに対する労働時間規制の在り方を見直していく必要があるように思われる。今回どこまでテレワークが拡大するかはまだ不明であるが、今回初めてテレワークを実践することによってさまざまな問題点が指摘され、その法制の在り方が見直されていくきっかけになれば望ましい。

3 小学校休業等対応助成金とフリーランス労働対策の(意図せざる)出発

今回の新型コロナウイルス感染症に対する対策のうち、労働政策の広がりという意味で極めて重要な意味を持つのは、子どもの通う学校の休校に伴い、親である労働者の休暇取得を支援することであり、その支援がフリーランス就業者にも拡大したことである。これは、2月27日に官邸で開かれた新型コロナウイルス対策本部で安倍晋三首相が、3月2日から全国すべての小学校、中学校、高等学校等で、春休みに入るまで臨時休校とするよう要請したことがきっかけである。

幼い子どもを抱えて働く労働者にとっては、学校がある意味で託児所的機能を果たしていることは間違いなく、その学校が休校してしまうと、子どもの世話と会社での仕事の板挟みになってしまう。そこで、厚生労働省は急遽「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」を創設した。

これは、新たな助成金ではあるが、あくまでもこれまでの雇用助成金の枠組みの中にある。すなわち、(1)新型コロナウイルス感染症に関する対応として臨時休業等をした小学校等に通う子ども、(2)新型コロナウイルスに感染したまたは風邪症状など新型コロナウイルスに感染したおそれのある、小学校等に通う子ども、の世話を保護者として行うことが必要となった労働者に対し、労働基準法上の年次有給休暇とは別途、有給(賃金全額支給)の休暇を取得させた事業主に対する助成金制度である。なお、1日1人当たり8330円が助成の上限となっており、大企業、中小企業ともに同様である。

これは「雇用」助成金であるから、当然対象は雇用される労働者に限られるわけであるが、子どもを抱えて働いているのはフリーランス就業者も同じなのに、そちらが対象にならないのはおかしいではないかという議論が出てきた。そう言われればそうだが、そもそも雇用労働者を対象とする雇用政策をそう簡単に自営業者に拡大できるものではない。ここ数年来、雇用類似の働き方をする者に対する対策の在り方をめぐって、政府の検討会等において繰り返し議論が重ねられてきたが、雇用と非雇用の間には暗くて深い川が流れていて、そう簡単に飛び越えることはできないのである。

ところが、ここで瓢箪から駒のように、新型コロナウイルス対策という名目で、一気にフリーランス就業者のための休業補償が創設されることになった。3月10日に制度の大枠が公表された際には、「1日当たり4100円(定額)」という金額が、雇用労働者の「1日当たり8330円(上限)」と比較して低すぎるではないかという批判が広がった。

その後3月18日には早速申請受付が始まったが、その時その名称は「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金」となっていた。雇用労働者向けの方が「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」であるのとは性格が違うのだということを示しているようである。その支給要領では、支給対象者たる「委託を受けて個人で仕事をする方」がどういう人を指すのかが具体的に示されている。支給要領から該当部分の文言をそのまま引用しよう。

2.支給対象者

支援金の支給対象者は、次の(1)から(5)のいずれにも該当する保護者とする。

(1)次の①又は②のいずれかに該当する者であること。

  • ①小学校等のうち、コロナウイルス感染症に関する対応として臨時休業(学校保健安全法[昭和33年法律第56号]第20条)又はこれに準ずる措置(以下「臨時休業」という。)を講じられたものに就学又はこれを利用している子どもの世話をした者
  • ②小学校等に就学又はこれを利用している子どもであって、コロナウイルス感染症に感染又は感染したおそれがあるとして小学校等から登校等の自粛を認められた子どもの世話をした者

(2)上記(1)の①については臨時休業の前に、上記(1)の②については子どもの世話を行う前に、次の①から③のいずれにも該当する契約を発注者と締結していること。

  • ①業務委託契約等に基づく業務遂行等に対して報酬が支払われていること。
  • ②発注者が存在し、業務従事・業務遂行の態様、業務の場所・日時等について、当該発注者から一定の指定を受けていること。
  • ③報酬が時間を基礎として計算されるなど、業務遂行に要する時間や業務遂行の結果に個人差が少ないことを前提とした報酬形態となっていること。

(3)臨時休業が講じられた期間及び上記(1)の②の措置(以下「臨時休業措置」という。)に係る上記(2)の契約について、上記(1)の子どもの世話を行うために、発注者との業務委託契約等に基づく仕事を取りやめていること。

(4)雇用保険被保険者でないこと。

(5)労働者を使用する事業主でないこと。

(6)国家公務員又は地方公務員でないこと。

6.支給対象日

支援金の支給対象日は、支給対象期間のうち、上記2の(3)の発注者との業務委託契約等に基づく仕事を取りやめた日とする。ただし、当該日の一部(時間)でも、発注者との業務委託契約等に基づく仕事を行った日は支給対象日から除くものとする。

7.支給額

支援金の支給額は、支給対象日数に日額4,100円を乗じて得た額とし、厚生労働省雇用環境・均等局長(以下「局長」という。)は、予算の範囲内において支給することができる。

3月10日にこの大枠が公表された時には、雇用労働者の「1日当たり8330円」の半分というのは低すぎるではないかという批判が広がったことは前述した。そういう批判に隠れてしまったが、この制度の問題点の本質は、そもそも論からいえば、使用者の指揮命令下にあり、勤務時間中は労働義務を負っている雇用労働者向けの制度枠組みを、そうではないフリーランスの自営業者にどこまで応用することができるのかという点にこそある。当然ながら、厚生労働省の事務局もそのあたりの問題点は重々意識しており、たとえば制度の大枠で「個人で就業する予定であった」とされていた部分については、支給要領においては「臨時休業が講じられた期間及び上記(1)の②の措置(以下「臨時休業措置」という。)に係る上記(2)の契約について、上記(1)の子どもの世話を行うために、発注者との業務委託契約等に基づく仕事を取りやめていること」と明記している。つまり、少なくとも既に発注を受け、仕事に取りかかっているか取りかかろうとしていたけれども、子どもの学校の休業でそれを取り止めたことが支給要件である。

しかし、この支給要領を読むと、支給対象となるフリーランスの範囲が、雇用労働者に近い態様の者、いわゆる「雇用類似の働き方」に限られているように見える。すなわち、上記2(2)のとりわけ②(業務従事・業務遂行の態様、業務の場所・日時等について、当該発注者から一定の指定を受けていること)と③(報酬が時間を基礎として計算されるなど、業務遂行に要する時間や業務遂行の結果に個人差が少ないことを前提とした報酬形態となっていること)の要件は、いわゆる労働者性の判断基準において労働者と判断する方向に用いられる要件なのである。

そういう観点から見ると、今回の新型コロナウイルス感染症対策として瓢箪から駒のように創設された「支援金」は、ここ数年来、厚生労働省の雇用環境・均等局で累次の検討会において議論されてきた「雇用類似の働き方」に対する政策の一部が、思いもよらず先行的に実施されてしまう事態が起こりつつあるのかも知れない。そこで近年の動きをざっと概観しておきたい。

こちらも近年の動きの出発点は2017年3月の『働き方改革実行計画』である。そこで「非雇用型テレワークを始めとする雇用類似の働き方が拡大している現状に鑑み、その実態を把握し、政府は有識者会議を設置し法的保護の必要性を中長期的課題として検討する」とされたことを受けて、厚生労働省は2017年10月から「雇用類似の働き方に関する検討会」を開催し、関係者や関係団体からのヒアリング、日本や諸外国の実態報告の聴取などを行い、2018年3月に報告書をまとめた。この報告書は2018年4月に労働政策審議会労働政策基本部会に報告され、その後同部会でもヒアリングや討議が行われて、同年9月に部会報告「進化する時代の中で、進化する働き方のために」がまとめられ、翌10月に「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」が設置され、検討が進んでいる。本来なら2020年3月に報告書が取りまとめられる予定であったが、新型コロナウイルス感染症対策で先送り状態となっている。そこで、2019年6月に取りまとめられた「中間整理」から、雇用類似の働き方に関する保護等の在り方について論じているところを見ていこう。

基本的な考え方として、客観的に労働者性が認められず自営業者であるが、労働者と類似した働き方をする者について、①労働者性を拡張して保護を及ぼす方法、②自営業者のうち保護が必要な対象者を、労働者と自営業者との中間的な概念として定義し、労働関係法令の一部を適用する方法、③労働者性を広げるのではなく、自営業者のうち一定の保護が必要な人に、保護の内容を考慮して別途必要な措置を講じる方法の3つを示している。このうち①は判断基準の抜本的見直しを伴うので困難として、当面は自営業者のうち、「発注者から委託を受け、主として個人で役務を提供し、その対象として報酬を得る者」を中心に③の方向で検討するとしている。

具体的な施策として提示されているものを羅列すると、①雇用類似の仕事を行う者の募集の際のその条件の明示を促す方策を検討、②委託する際や就業条件を変更する際に、委託者から雇用類似就業者への就業条件の明示を促す方策を検討、③契約の終了について、委託者に対し事前に予告を求めることや契約の解除や打切りの事由に一定の制限を設けることを検討、④報酬の支払確保について、報酬を一定期日までに支払うことを促す方策を検討、⑤報酬額について、最低賃金や最低工賃を参考とした最低報酬の設定の要否を検討、⑥安全衛生について、雇用類似就業者に対する危害を発生させる可能性のある設備や物品等を譲渡等する場合に危険防止のための措置を定めるなど、一定の措置を促す方策を検討、⑦紛争が生じたときの相談窓口等が検討されている。

上述したように、この検討は最終段階でストップしている状態であるが、その間に瓢箪から駒のように今回のフリーランス向け小学校休業等対応支援金が設けられ、実施されていることは、あたかも「雇用類似の働き方」に対する政策の一部が、思いもよらず先行的に実施されてしまったかのような事態である。今回の緊急対策がいったん終息したのちに、雇用類似の働き方に対する政策がどのように展開していくことになるのか、引き続き注目してみていく必要があろう。

(注)本稿の主内容や意見は、執筆者個人の責任で発表するものであり、機構としての見解を示すものではありません。