国家公務員の給与改定について、昨年を上回る1万5,056円の引き上げを勧告
 ――2026年度の人事院勧告

2026春闘における賃上げ等の状況

人事院(川本裕子総裁)は8月7日、2026年度の国家公務員の給与改定について、月例給を平均1万5,056円(3.51%)引き上げるとともに、特別給(ボーナス)を昨年比0.05月分増の4.70月分とするよう、国会と内閣に勧告した。月例給の引き上げ額は、昨年の1万5,014円を上回る「高水準のベースアップ」(川本総裁)となった。勧告はまた、転勤に伴う経済的負担を軽減するための手当の新設も盛り込んだ。

2年連続での1万5,000円台、3%台の引き上げ改定

人事院が、4月分の常勤の国家公務員(行政職俸給表(一))と企業規模100人以上の民間事業所の常勤従業員(事務・技術関係職種)の給与水準を調査して比較したところ、民間給与が公務の給与を平均1万5,056円(3.51%)上回ったため、その分の較差を解消するための引き上げを勧告した。

率では昨年の3.62%には及ばなかったものの、額では昨年の1万5,014円を上回り、2年連続での1万5,000円を超える引き上げ勧告となった。引き上げ率が3%台となったのも、これで2年連続。

中堅層以上について昨年を上回る引き上げ幅に

具体的には、「業務遂行において重要な役割を担っている中堅層以上」の職員について、昨年を上回る引き上げ改定を実施する。行政職俸給表(一)の平均改定率は、1級が4.0%、2級が3.6%、3級が3.4%、4級が3.1%、5~10級が3.0%で、全体では3.3%となる。

また、初任給について、「民間の動向や人材確保の重要性を踏まえ」、一律9,500円引き上げる。これにより、総合職(大卒)は25万1,500円(プラス3.9%)、一般職(大卒)は24万1,500円(プラス4.1%)、一般職(高卒)は20万9,800円(プラス4.7%)となる。

さらに、再任用職員(いわゆる定年後の再雇用職員)の月例給についても「民間の再雇用者の状況を踏まえ」改善。再任用職員の8割以上を占める係長級の官民の給与差をベースに月例給を改善することにし、行政職俸給表(一)全体の平均改定率は8.5%となる。

これらのベースアップは2026年4月実施とする。

ボーナスは年間で4.70月分に

ボーナスについては、2025年8月から今年7月までの民間の支給割合と公務の年間の支給月数を比較した結果、民間の支給割合が4.72月だったのに対し、公務の平均支給月数が4.65月だったことから、民間との差を埋めるために現行の4.65月から0.05月分引き上げて4.70月分とする。引き上げ分は、期末手当と勤勉手当に0.025月分ずつ配分する。2026年4月実施とする。

また、高い成績率を適用可能とすることで、高度の専門性を有し、高い業績をあげた人材の給与水準を確保するため、特定任期付職員の勤勉手当を見直す。これにより、最高で俸給等を含め年間約3,380万円の報酬が得られるようになる。こちらについては2027年4月に実施する。

転勤に関する新たな手当は2027年4月に新設

このほかでは、転勤に伴う経済的な負担の軽減などを盛り込んだ。

具体的にはまず、「転勤に伴う転勤に係る経済的負担を軽減し、円滑な人事配置に資することを目的」として、単身赴任者に限らず、転居を伴う転勤を行った職員を広く対象とする手当を2027年4月に新設する。官署を異にする異動を命ぜられ、異動後の官署への通勤が困難であるため、一定距離以上の転居をした職員を対象に支給し、支給期間は異動から3年間とする。なお、単身赴任者でやむを得ない場合には3年間を超えて延長することも可能とする。

これにより、例えば、東京から大阪に転勤した場合、年間で、家族での赴任や独身者であれば約22万円、単身赴任者であれば約49万円が3年間支給されるという。

広域異動手当の支給割合を引き上げ

また、「広域異動手当」について、広域的な異動に対する給与上のインセンティブをさらに向上させるため、支給割合を引き上げる。「60キロメートル以上300キロメートル未満」は5%だったが、8%とする。「300キロメートル以上」は10%だったが、16%とする。2026年4月実施とする。

さまざまな事情に対応できる「無給休暇」を新設

人事院は給与改定だけでなく、職員の勤務時間・休暇の改定についても勧告を行っている。具体策の1つが「無給休暇」の新設。

勤務時間法を改正して、すべての職員を対象に、公務の運営に支障がない場合に、取得事由を問わず、無給で年間7日まで取得できる休暇を新設する。日単位でも、時間単位でも取得を可能にする。

育児・介護に限らず、さまざまな事情を抱える職員が継続して活躍できるようにすることや、既存の休暇の付与日数を超えて勤務できない事情を有する職員へのセーフティネットとして機能させること、また、時間単位で取得することにより、フルタイム勤務の継続が一時的に困難となった職員が、一定の期間、短時間勤務を行うことを可能にすることを狙いとしている。2027年4月1日に施行する。

代休日の指定でも見直しを講じる。勤務時間法を改正し、職員の健康福祉の増進を図る観点から、休日や週休日(日曜日および土曜日)に勤務した場合に取得できる代休日の指定や週休日の振替等について、現行の取得単位(代休日の指定は1日、週休日の振替等は1日または4時間)に満たない場合でも可能とする。

長時間労働の是正が喫緊の課題となるなか、職員の総実労働時間を減少させるのが狙いだ。2027年4月1日に施行する。

このほか、遺族補償年金の受給資格要件等を見直す国家公務員災害補償法の見直しも盛り込んだ(2027年4月1日施行)。

人事制度見直しの具体的な報告は来年夏を予定

人事院はまた、公務員人事管理に関する報告のなかで、「実力本位で活躍できる公務」に向けた本府省幹部職員等を対象とした人事制度の骨格を示した。①職務・職責をより重視した給与体系②能力・実績に応じた人事運用のさらなる徹底③勤務時間にとらわれない勤務を可能とする制度導入――が柱。

特に、職務・職責をより重視した給与体系では、本府省幹部職員等のポストを対象とする俸給表を新設し、各ポストの職務・職責に応じて俸給月額を決定。「人材獲得競争で見劣りしない給与水準」にするとしている。

人事制度の具体的な内容は、来年夏に報告するとしている。

人事制度見直しについては労組と協議を

人事院勧告について、連合(芳野友子会長)は同日、神保政史・事務局長の談話を発表。談話は「政府と国会は、社会全体に賃上げを波及させるべく、速やかに勧告どおり給与改定すべき」だと主張。また、「各府省は、非常勤職員の給与について、非常勤職員の給与に関する指針に沿って、常勤職員の給与改定に準じ、適切に支給すべき」と求めた。また、人事制度見直しについては、「これらの人事制度の見直しはもとより、引き続き働きやすい環境整備に向けた長時間労働の是正もあわせて検討すべき」だとし、「来年の報告に向け、検討状況を労働組合と共有するとともに、丁寧な協議を進めるべき」だと強調している。

全労連(黒澤幸一議長)も同日に九後健治・事務局長の談話を発表。談話は、給与引き上げなどの内容について、「たたかう労働組合・全労連における公務・民間共同のたたかいが一定反映したもの」としながら、「しかし、今回の俸給引上げ額は、長期にわたる物価高騰によって職員のくらしが深刻な影響を受けている現状を踏まえるならば、極めて不十分と言わざるを得ない」と強調。人事制度見直しについては「その検討にあたっては、労働組合の理解と合意を前提とした真摯な協議を行うべき」などとしている。

(調査部)