月例給、ボーナスともに引き上げるのは3年ぶり
 ――2022年度の人事院勧告

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人事院(川本裕子総裁)は8月8日、今年の国家公務員の給与改定について、月例給、特別給(ボーナス)ともに引き上げるよう、国会と内閣に対して勧告した。月例給の引き上げ幅は平均921円(0.23%)で、ボーナスの引き上げ月数は0.10カ月。月例給、ボーナスともに引き上げる内容は3年ぶりとなった。また勧告では、社会や公務の変化に対応した給与制度のアップデートの必要性にも言及している。

月例給は初任給3,000円~4,000円アップを含めて若手職員のみ改定

人事院は、月例給について、公務と民間(約45万人分)の4月分の給与を調査して比較。民間給与が公務の給与を平均921円(0.23%)上回ったため、その分の較差を解消するために引き上げを行うよう勧告した。921円のうち、103円は俸給の改定に伴い諸手当の額が増減する「はね返り分」となるため、純粋に俸給の引き上げ分となるのは818円となる。

具体的な改定方法については、行政職俸給表(一)について、民間の初任給との間に差があることから、総合職試験および一般職試験(大卒程度)で採用される職員の初任給を3,000円、一般職試験(高卒者)で採用される職員の初任給を4,000円引き上げる。それ以外の層については、 20歳台半ばに重点を置き、初任の係長級の若手職員にも一定の改善が及ぶよう、30歳台半ばまでの職員が在職する号俸について改定するとしている(平均改定率は0.3%)。俸給表の改定は今年の4月1日に溯って実施する。

ボーナスの支給月数は4.40カ月で引き上げ分は勤勉手当に配分

ボーナスについては、約1万1,800民間事業所の昨年8月から今年7月までのボーナスの支給月数と国家公務員の支給月数を比較。民間の支給月数(4.41カ月)が国家公務員の支給月数(4.30カ月)を上回ったため、年間支給月数について、現行の4.30カ月から0.10カ月引き上げ、4.40カ月にするよう勧告した。引き上げ分は、業績評価の結果が反映される「勤勉手当」部分に全て配分し、その一部を用いて上位の成績区分にかかる原資を確保するとしている。俸給表の改定は法律の公布日に実施する。

なお、指定職俸給表適用職員、再任用職員、任期付研究員および特定任期付職員の期末手当についても、同様に支給月数を引き上げる。

今年のボーナスは6月にすでに、 期末手当部分として1.20カ月、勤勉手当部分として0.95カ月が支払われていることから、12月のボーナスの期末手当部分を1.20カ月、勤勉手当部分を現行より0.10カ月多い1.05カ月とする。来年度以降は、6月、12月それぞれ、期末手当部分が1.20カ月、勤勉手当部分が1.00カ月となる。

月例給、ボーナスともにプラス改定を求める勧告は2019年以来のこと。月例給は2020年、2021年ともに改定なしが続き、ボーナスは2020年に0.05カ月引き下げ、2021年に0.15カ月引き下げとなっていたが、今回3年ぶりのプラス改定となった。

テレワーク実施時の手当についても言及

勧告ではこのほか、博士課程修了者等の初任給基準について、博士課程修了者等の処遇を改善するため、本年中に初任給基準の改正を行い、2023年4月から実施することを提示。在職者についても所要の調整を講ずることとしている。

テレワークに関する給与面での対応では、テレワーク実施にかかる光熱・水道費等の職員の負担軽減等の観点から、テレワークを行う場合に支給する新たな手当について、具体的な枠組みを検討するとしている。

課題解決に向けて給与制度もアップデートを

給与制度の整備については、社会や公務の変化に適応した人事管理が求められるなかで、給与制度についてもアップデートが必要であることを指摘。若年層などの人材確保に向けた公務全体のあるべき給与水準や、初任層、中堅層、管理職層といったキャリアの各段階における能力・実績や職責の給与への的確な反映などの課題に対応できるよう、2023年に骨格案、2024年にその時点で必要な措置の成案を示し、施策を講ずることを目指すとしている。

人材確保・育成や勤務環境の整備に取り組む(人事院総裁談話)

人事院の川本総裁は同日の談話で、公務組織が能率的で活力のある組織であり続けるために「能力のある多様な人材を継続的に採用し、戦略的に育成すること」や「職員のWell-beingの実現を図り、一人一人が意欲とやりがいを持って生き生きと働き続けられる職場環境を整えることが不可欠」と指摘。公務職場の魅力を高め、より多くの人材を惹きつけるため、①採用試験の見直し等による人材確保②人材育成と能力・実績に基づく人事管理の推進等③勤務環境の整備④給与制度のアップデート――といった取り組みを、スピード感を持って進めることを強調した。

「早期に勧告どおりの給与改定を実施すべき」(連合)

連合は同日、清水秀行事務局長の談話で、「早期に勧告どおりの給与改定を実施すべき」とコメント。また、人事委員会が置かれている地方自治体では地方公務員の給与にかかる勧告が行われることから、「地域経済の底支え・活性化に向けて、人事院勧告を踏まえ、少なくとも同様の引き上げ勧告がなされる事を期待する」などとしている。

全労連は8月10日の黒澤幸一・事務局長談話で、3年ぶりとなる本俸の引き上げ勧告を「全労連・国民春闘共闘がケア労働者の賃上げを中心に粘り強く春闘をたたかってきたことの成果」とする一方、昨今の生活必需品等の値上げで「実質賃金は減少の一途」として、「公務員賃金の大幅引き上げを行うよう求める」などとした。

(調査部)