「同姓でも別姓でも構わない」とする労働者が64%
 ――連合の「夫婦別姓と職場の制度に関する調査2022」

国内トピックス

連合(芳野友子会長)は選択的夫婦別氏制度(以下、選択的夫婦別姓)に対する意識や職場の制度の実態を把握するため、「夫婦別姓と職場の制度に関する調査2022」を実施し、8月25日に結果を公表した。64%の労働者が同姓でも夫婦別姓でも構わないと回答。選択的夫婦別姓が導入された場合に「夫婦同姓がよい」とする割合は独身で約39%、既婚で約62%だった。職場で旧姓の通称使用が認められている労働者の割合は約42%だった。調査は2022年7月15~16日の2日間、インターネットで実施し、20~59歳の働く男女1,000人の有効サンプルを集計した。

夫婦別姓でも構わないとする人の半数は「自分は夫婦同姓がよい」

夫婦の姓のあり方について聞いたところ、「同姓でも別姓でも構わない」が64.0%と6割を超え、「同姓であるべきだ」の18.3%を大きく上回った。「わからない」との回答も17.7%あった。

男女・年代別にみると、「同姓でも別姓でも構わない」の割合は、20代女性(73.6%)や30代女性(72.0%)など若い年代の女性で高く、最も低いのは40代男性(55.2%)だった。なお、「同姓でも別姓でも構わない」との回答の内訳をみると、「自分は夫婦同姓がよい、自分たち以外はどちらでも構わない」が31.7%で、「自分は別姓が選べるとよい、自分たち以外はどちらでも構わない」が32.3%となっている。

選択的夫婦別姓が導入された場合、どうしたいか聞いた結果(複数回答)を婚姻状況別にみると、「夫婦同姓がよい」としたのは独身で39.3%、既婚で62.3%と20ポイント以上の差が出ており、婚姻状況が同姓別姓の見解に大きく影響している様子がみられる。

婚姻届を提出した人(520人)に姓を変えたか聞いたところ、「変えた」とする割合は、男性が6.8%、女性が92.2%。「変えていない」は男性が93.2%、女性が7.8%となっている。姓を変えたとする割合を男性に絞ってみると、若い層ほど高くなっており、20代男性では16.1%となっている。

旧姓の通称使用(=戸籍名とは別に旧姓を通称として使うこと)について尋ねたところ、「不便・不利益がなくなると思う」が57.9%で最も割合が高かったが、「通称として旧姓を使うことができても、それだけでは対処しきれない不便・不利益があると思う」が25.8%と4人に1人の割合にのぼり、「結婚した以上は、戸籍名を名乗るべきだと思う」は15.5%だった。

情報通信業や公務、教育・学習支援で旧姓の通称使用容認が多い

職場で旧姓の通称使用が「認められている」と回答したのは42.3%、「認められていない」は11.9%だった。

これを業種別にみると、「認められている」とした割合が最も高いのは「情報通信業」(72.7%)で、次いで「公務」(62.7%)、「教育、学習支援」(58.9%)、「金融業、保険業」(52.5%)などの順だった。

労働組合の有無別にみると、「認められている」としたのは労組がある職場では51.8%、労組のない職場では37.7%だった。

6割に配偶者手当あり、うち雇用形態問わず支給は2割

調査では、職場にある生活関連手当(配偶者関連、子ども関連、その他の家族関連、住宅、通勤、食事)の有無についても聞いている。

「配偶者に関する手当」から結果をみていくと、「あり」が60.6%で、「なし」が39.4%だった。「あり」と回答した労働者に、雇用形態によって内容や基準が異なるかどうか尋ねたところ、「雇用形態の区別なく同じ金額」が20.6%、「雇用形態により金額が異なる」が9.6%、「正規雇用のみで非正規は支給なし」が10.7%、「雇用形態による違いはわからない」が19.7%という結果だった。

「子どもに関する手当」では、「あり」が60.3%、「なし」が39.7%。「その他の家族に関する手当」では、「あり」が50.1%、「なし」が49.9%となっている。

その他の福利厚生手当の状況をみると、「住宅手当」は「あり」が52.6%で、「なし」が47.4%、「通勤手当」は「あり」が85.3%で、「なし」が14.7%、「食事手当」は「あり」が29.0%で、「なし」が71.0%となっている。労組の有無別にみると、いずれの手当についても、労組がある職場のほうがない職場より「ある」割合が10ポイント以上高くなっている。

実際の配偶者・子ども手当支給率は男性が30ポイント高い

職場に制度がある人で、実際にこれらの手当を支給されている人の割合をみると、「配偶者に関する手当」が32.2%、「子どもに関する手当」が35.3%、「その他の家族に対する手当」が22.0%、「住宅手当」が46.2%、「通勤手当」が85.6%、「食事手当」が48.3%という結果だった。

これを男女別にみると、支給されている割合はいずれも男性のほうが高くなっている。特に、「配偶者に関する手当」では、30.9ポイントの差(男性46.0%、女性15.1%)があり、「子どもに関する手当」でも29.6ポイントの差(男性48.4%、女性18.8%)、「住宅手当」でも21.7ポイントの差(男性55.8%、女性34.1%)が付いた。

雇用形態別にみると、いずれの手当も、正規雇用のほうが非正規雇用よりも支給されている割合が高い。この結果について連合は、「通勤手当や食事手当など、厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドラインに記載があるにもかかわらず、均等・均衡処遇が確保されていないことが分かった」と指摘している。

職場に制度がある人に、手当の支給条件について尋ねたところ、「配偶者に関する手当」では「婚姻届を提出している」が39.9%、「世帯主である」が10.2%、「主たる生計維持者」が8.9%、「事実婚にも支給」が3.1%、「同性パートナーにも支給」が2.8%などの順となっている。

配偶者の収入条件の有無については、「収入条件はなく、配偶者の収入にかかわらず支給される」との回答割合が15.7%、103万円や130万円、150万円以下など「収入条件がある」と答えた人の合計割合が41.6%となっている。

一方、その他の手当の支給条件をみると(複数回答)、「子どもに関する手当」「その他の家族に関する手当」については、「婚姻届を提出していると支給される」がそれぞれ31.3%、25.1%となっている。「住宅手当」では、「世帯主であると支給される」が21.7%で最も高かった。

配偶者・子ども手当等支給に「雇用形態による区別をなくすべき」が3割

これら手当(配偶者、子ども、住宅手当)についての考えを、全回答者に聞いたところ(複数回答)、「配偶者に関する手当」では「雇用形態による区別をなくすべき」が29.6%で最も高く、「世帯主であるかを問わず支給すべき」が10.6%、「同性パートナーにも支給すべき」が9.9%、「事実婚にも支給すべき」が9.7%、「主たる生計維持者であるかを問わず支給すべき」が8.1%だった。一方で、「手当を廃止し、基本給に入れるべき」が7.5%、「変える必要はない」が11.6%となっている。

「子どもに関する手当」や「住宅手当」についても、「雇用形態による区別をなくすべき」との回答が3割を超えている(それぞれ30.1%、30.3%)。連合は「手当の支給に際し、雇用形態による違いを設けず、一律に条件を設定すべきと考えている人が多いようだ」とまとめている。

調査を担当した連合の井上久美枝・総合政策推進局長は、「選択的夫婦別姓は、夫婦同姓やそれを望む人たちを排除するものではなく、すべての人がみずからの選択のもと、平等に利益を享受でき、かつだれにも損失をもたらさない制度」としたうえで、「国民世論で実現を望む声が高まっていることを踏まえれば、一刻も早い導入が必要だ」と指摘。「多くの人たちが選択的夫婦別姓について『容認』している」調査結果をふまえ、「多様な家族のあり方やライフスタイルを認め合う社会、相応しい制度の実現と、男女間、雇用形態間の差別のない職場の実現に向けて引き続き取り組む」とコメントしている。

(調査部)