2021年に監督指導を実施した事業場の7割で労働基準関係法令違反
――厚生労働省が技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況を公表
国内トピックス
厚生労働省がこのほど公表した2021年の「技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況」によると、2021年に監督指導を実施した外国人技能実習生が在籍する事業場のうち、72.6%にあたる6,556事業場で労働基準関係法令違反が認められた。違反内容は「使用する機械等の安全基準」が最も多かった。
違反内容のトップは「使用する機械等の安全基準」で「割増賃金の支払」が続く
2021年の1年間に、全国の労働基準監督機関が監督指導を実施した9,036事業場(実習実施者)のうち、6,556事業場(72.6%)で労働基準関係法令違反が認められた。前年は監督指導を実施したのは8,124事業場で、法令違反が認められたのは5,752事業場(70.8%)だった。
主な違反事項は、「使用する機械等の安全基準」が2,204件(24.4%)と最も多く、次いで「割増賃金の支払」が1,443件(16.0%)、「労働時間」が1,345件(14.9%)、「年次有給休暇」が1,140件(12.6%)、「賃金の支払」が907件(10.0%)、「就業規則」が773件(8.6%)などの順で多い。
主な業種に対する監督指導の状況をみると、違反事業場数が最も多いのは「機械・金属」の1,963件で、次いで「建設」(1,228件)、「食料品製造」(1,025件)などの順。違反率が最も高いのは「建設」の80.4%で、次いで「農業」(76.0%)、「食料品製造」(73.0%)などの順で高かった。
主な業種の違反事項をみると、「機械・金属」や「食料品製造」では「安全基準」の違反が最も多く(それぞれ28.3%、36.0%)、「繊維・衣服」「建設」では「割増賃金の支払」(それぞれ19.6%、26.4%)が、「農業」では「賃金の支払」(28.7%)が最多となっている。
技能実習生が労働基準監督署に労働基準関係法令違反の是正を求めて申告した件数は126件だった(2020年192件、2019年107件)。主な申告事項(複数あり)は、「賃金・割増賃金の不払」が126件で最多で、「最低賃金額未満」が16件、「解雇手続の不備」が12件だった。
送検となった重大・悪質な違反は25件
重大・悪質な労働基準関係法令違反として労働基準監督機関が送検した件数は25件で、前年の32件に比べ減少した。その内訳は、「安全基準」違反が11件(44%)で最も多く、次いで「最低賃金の効力」が6件(24%)、「時間外及び休日労働」と「割増賃金の支払」が各2件(各8%)などとなっている。
技能実習生の労働条件の確保を図るため、労働基準監督機関では、出入国管理機関・外国人技能実習機構との間で、相互に通報し、合同監督・調査を実施している。労働基準監督機関から出入国管理機関・外国人技能実習機構へ通報した件数は483件(前年414件)で、労働基準監督機関が出入国管理機関・外国人技能実習機構から通報された件数は1,882件(同1,381件)と、ともに前年の件数を上回った。
(調査部)
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