相談、助言・指導、あっせんの全ての項目で「いじめ・嫌がらせ」の件数が最多
 ――2021年度の個別労働紛争解決制度の施行状況

国内トピックス

厚生労働省が7月1日に発表した「2021年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、2021年度は、民事上の個別労働紛争の総合労働相談、助言・指導の申出、あっせんの申請の全ての項目で、「いじめ・嫌がらせ」の件数が最も多かった。「解雇」の件数はいずれの項目でも前年度から減少している。

「個別労働紛争解決制度」は、労働条件や職場環境などをめぐる労働者と事業主との間のトラブルを未然に防止し、迅速な解決を図る制度。都道府県労働局や労働基準監督署内、駅近隣の建物などに設置された総合労働相談コーナーで相談員が対応する「総合労働相談」や、都道府県労働局長による「助言・指導」、都道府県労働局に設置されている紛争調整委員会のあっせん委員が紛争当事者の間に入って解決を図る「あっせん」がある。

総合労働相談の件数は14年連続で100万件超え

2021年度の総合労働相談件数は124万2,579件。前年度に比べ3.7%の減少となったが、14年連続で100万件を超え、高止まりしている。助言・指導の申出は8,484件で同7.1%の減少。あっせん申請は3,760件で同11.6%の減少となった。

総合労働相談のうち、民事上の個別労働紛争相談件数(28万4,139件)の相談内容の内訳をみると、「いじめ・嫌がらせ」が8万6,034件(前年度比8.6%増)で最も多く、次いで「自己都合退職」の4万501件(同2.5%増)、「解雇」の3万3,189件(同12.3%減)、「労働条件の引き下げ」の3万524件(同5.5%減)の順。

相談件数を、相談者の就労形態別にみると、「正社員」が36.4%を占め、以下、「短時間労働者」の13.8%、「有期雇用労働者」の11.1%、「派遣労働者」の4.6%などと続く。

助言・指導の申出件数で次いで多いのは「労働条件の引き下げ」

労働局長による助言・指導の申出件数は8,484件で、2年連続で減少した(前年度は9,130件)。申出の内訳をみると、「いじめ・嫌がらせ」が1,689件で最も多く、次いで「労働条件の引き下げ」(816件)、「自己都合退職」(771件)、「解雇」(736件)、「退職勧奨」(572件)、「雇い止め」(527件)などの順となっている。前年度に比べると、「いじめ・嫌がらせ」は7.8%減、「労働条件の引き下げ」は9.0%減、「解雇」は23.5%減、「退職勧奨」は9.6%減で、「自己都合退職」は4.8%増。

就労形態別にみると、「正社員」が50.7%とほぼ5割を占め、「短時間労働者」は19.4%、「有期雇用労働者」は18.0%、「派遣労働者」は6.6%などとなっている。

助言・指導の申出があったなかで、処理を終了した件数は8,466件で、その内訳は「助言・指導の実施」が8,159件(96.4%)、「取り下げ」161件(1.9%)、「打ち切り」118件(1.4%)など。

紛争調整委員会によるあっせんの申請件数は3,760件で、3年連続で減少している(前年度は3,760件)。内容別にみると、「いじめ・嫌がらせ」が1,172件(29.2%)で最も多く、次いで「解雇」の743件(18.5%)、「雇い止め」の373件(9.3%)、「労働条件の引き下げ」の326件(8.1%)、「退職勧奨」の268件(6.7%)などの順となっている。前年と比べると、「いじめ・嫌がらせ」は7.1%減、「解雇」は24.4%減、「雇い止め」は12.6%減、「労働条件の引き下げ」は4.2%増、「退職勧奨」は10.4%減などとなっている。

就労形態別にみると、「正社員」が49.5%とほぼ5割を占め、「短時間労働者」が18.3%、「有期雇用労働者」が20.4%、「派遣労働者」が7.5%など。

あっせんの処理件数は3,819件で、その内訳は「当事者間の合意の成立」が1,263件(33.1%)、「申請の取り下げ」が173件(4.5%)、「打ち切り」が2,360件(61.8%)などとなっている。

(調査部)