過去1年間にメンタルヘルス不調で1カ月以上休業・退職した労働者のいる事業所割合は10.1%
 ――厚生労働省の2021年「労働安全衛生調査(実態調査)」

国内トピックス

厚生労働省は7月5日、2021年労働安全衛生調査(実態調査)結果を発表した。過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1カ月以上休業、または退職した労働者がいた事業所の割合は10.1%で、前年比0.9ポイントの増加となった。調査は2021年10月末現在について実施し、事業所調査は7,831所、個人調査は労働者7,426人から回答を得た。

<事業所調査>
1カ月以上休業した労働者がいる事業所割合は8.8%

2020年11月1日から2021年10月31日の1年間に、メンタルヘルス不調により連続1カ月以上休業した労働者がいた事業所の割合は8.8%で、前年に比べ1.0ポイント増加。また、メンタルヘルス不調により退職した労働者がいた事業所は4.1%で、こちらも同0.4ポイントの増加となった。

事業所規模別にみると、1,000人以上では1カ月以上休業した労働者がいた割合が92.5%、退職した労働者がいた割合が68.6%、500~999人では同77.0%と49.3%、300~499人で同65.0%と33.2%、100~299人で同36.5%と13.9%、50~99人で同22.1%と12.9%、30~49人で同8.2%と2.9%、10~29人で同4.4%と2.0%となっており、規模が小さくなるほど、両割合は低くなっている。

産業別では、連続1カ月以上休業した割合は、「電気・ガス・熱供給・水道業」(33.5%)や「情報通信業」(26.7%)などで高く、退職した労働者がいた割合は「情報通信業」(11.7%)や「複合サービス事業」(7.3%)などで高い。

6割の事業所がメンタルヘルス対策に取り組む

メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は59.2%で、前年調査の61.4%からやや減少した。取り組みの内容(複数回答)は、「ストレスチェックの実施」が65.2%、「職場環境等の評価及び改善(ストレスチェック結果の集団ごとの分析を含む)」が54.7%で、「メンタルヘルス対策に関する事業所内での相談体制の整備」と「メンタルヘルス不調の労働者に対する必要な配慮の実施」がともに50.2%で続く。

ストレスチェックを実施した事業所のうち、結果を部や課などの集団ごとに分析した事業所の割合は、76.4%(前年比2.2ポイント減)だった。また、分析を実施した事業所のうち、分析結果を活用したのは79.9%だった。

活用の具体的な内容(複数回答)は、「残業時間削減、休職取得に向けた取組」が53.3%、「相談窓口の設置」が44.6%、「上司・同僚に支援を求めやすい環境の整備」が41.1%などとなっている。

がんなどの治療と仕事の両立に取り組む事業所は4割強

過去1年間に一般健康診断を実施した事業所のうち、所見のあった労働者がいる事業所の割合は66.1%だった。そのうち92.1%が、保健指導を行うなどの何らかの「措置を講じた」と答えている。

がんや糖尿病などの私傷病を抱えた労働者に対して、治療と仕事を両立できるような取り組みがある事業所の割合は41.1%だった。規模別にみると、1,000人以上では85.0%、500~999人で74.6%、300~499人で73.3%、100~299人で65.3%、50~99人で44.9%、30~49人で47.8%、10~29人で37.2%と、おおむね規模が大きくなるほど割合が高くなっている。

取り組みの内容(複数回答)は、「通院や体調等の状況に合わせた配慮、措置の検討(柔軟な労働時間の設定、仕事内容の調整等)」が91.1%で突出しており、「両立支援に関する制度の整備(年次有給休暇以外の休暇制度、勤務制度等)」が36.0%、「相談窓口等の明確化」が32.1%などと続く。

8割の事業所で治療との両立の取り組みに困難があると回答

こうした取り組みがある事業所のうち、79.9%が取り組みに困難や課題があると感じているとしている。困難や課題の内容(複数回答)を聞くと、「代替要因の確保」(70.5%)や「上司や同僚の負担」(48.3%)、「休職を繰り返す労働者への対応」(30.4%)などがあがっている。

<労働者調査>
労働者の半数以上が「仕事や職業生活に強いストレスがある」と回答

労働者に対する「個人調査」の結果によると、現在の仕事や職業生活で、「強いストレスとなっていると感じる事柄がある」とした人は53.3%(前年調査54.2%)と半数を超えた。ストレスの内容(主なもの3つ以内)をみると、「仕事の量」が43.2%、「仕事の失敗、責任の発生等」が33.7%、「仕事の質」が33.6%、「対人関係(セクハラ、パワハラを含む)」が25.7%などとなっている。

ストレスの内容(主なもの3つ以内)を就業形態別にみると、正社員では「仕事の量」(45.6%)や「仕事の質」(36.0%)が高いのに対し、契約社員では「仕事の失敗、責任の発生等」(33.9%)が最も高く、パートタイム労働者では「仕事の量」(37.8%)に次いで「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」(36.0%)が続く。一方、派遣労働者では、「雇用の安定性」を65.0%があげており、他のストレスに比べ大幅に高くなっている。

こうしたストレスについて、相談できる人がいると回答したのは92.1%と9割を超える。相談相手(複数回答)は「家族・友人」が80.1%がトップ。次いで、「上司・同僚」が75.2%だった。

これを男女別にみると「家族・友人」が男性76.2%、女性84.1%、「上司・同僚」が男性79.0%、女性71.1%となっている。

ストレスについて相談できる相手がいる労働者のうち、実際に相談した労働者の割合は69.8%。相談した相手(複数回答)は、「家族・友人」が71.5%と最も多く、次いで「上司・同僚」の70.2%だった。これを男女別にみると「家族・友人」が男性64.8%、女性78.1%、「上司・同僚」が男性73.4%、女性67.2%となっている。

(調査部)