過労死等の労災請求件数は精神障害事案で増加し3,099件
 ――2021年度過労死等の労災補償状況

国内トピックス

厚生労働省は6月24日、2021年度の過労死等の労災補償状況を公表した。過労死等による労災請求件数は3,099件で、前年度比264件の増加となった。精神障害に関する事案での請求件数が大きく増加したことが要因。また、支給決定件数は801件で、前年度に比べ1件減少した。

労災請求件数は「脳・心臓疾患」で31件の減少も「精神障害」で295件の増加

2021年度に過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスが原因で発病した精神障害の状況について、厚生労働省は労災請求件数や労災保険支給決定件数をとりまとめた。

それによると、労災請求件数は、「脳・心臓疾患に関する事案」で753件(前年度比31件減)、「精神障害に関する事案」で2,346件(同295件増)、あわせて3,099件(同264件の増)となった。「脳・心臓疾患に関する事案」は減少したが、「精神障害に関する事案」が大きく増加し、全体の件数を押し上げた。

「脳・心臓疾患に関する事案」と「精神障害に関する事案」を合わせた支給決定件数は801件(同1件減)で、うち死亡(自殺未遂を含む)件数は136件(同12件減)となっている。

脳・心臓疾患に関する事案の請求では「運輸業、郵便業」が最多

「脳・心臓疾患に関する事案」の請求件数について詳しくみると、業種別では「運輸業、郵便業」155件、「建設業」105件、「卸売業、小売業」92件などとなっている。中分類レベルでみると、「道路貨物運送業」(124件)が最も多くなっている。

年齢別にみると、「50~59歳」が268件、「60歳以上」が256件と、50歳以上が全体の7割を占める。

支給決定件数が最も多い職種は「自動車運転従事者」

「脳・心臓疾患に関する事案」の支給決定件数は172件で、前年度に比べ22件減少している。うち死亡件数は前年度比10件減の57件だった。

支給決定件数を業種別にみると、「運輸業、郵便業」が59件で最も多く、次いで「製造業」が23件、「卸売業、小売業」が22件などと続く。職種(中分類)でみると、支給決定件数が最も多いのは「自動車運転従事者」で53件。

年齢別では、「50~59歳」が67件で最も多く、次いで「40~49歳」の55件、「60歳以上」の36件などの順となっている。うち、死亡件数をみると、「40~49歳」と「50~59歳」が、それぞれ20件で、目立って件数が多い。

精神障害に関する事案の請求件数は300件近く増加

「精神障害に関する事案」の請求件数を詳細にみると、請求件数2,346件(同295件増)で、そのうち自殺の件数(未遂を含む)は16件増加して171件だった。

業種別にみると、「医療、福祉」が577件、「製造業」が352件、「卸売業、小売業」が304件と続き、「医療、福祉」のなかでも「社会保険・社会福祉・介護事業」が336件と最も多くなっている。

年齢別では、「40~49歳」が703件で最も多く、「30~39歳」が556件、「20~29歳」が495件などと、脳・心臓疾患に比べると若い年齢層で多い。

支給決定件数は629件で前年度比21件の増加となった。うち自殺件数(未遂を含む)は79件で前年度比2件の減少だった。支給決定件数を業種別にみると、「医療、福祉」142件が最も多く、これに「製造業」の106件、「卸売業、小売業」の76件などが続く。

支給決定件数の内訳を、発病に関与した事象別に類型化すると、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」が125件、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」が71件、「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」が66件などとなっている。

裁量労働制対象者への支給決定件数は9件

2021年度の裁量労働制対象者への支給決定件数は9件で、うち脳・心臓疾患に関する事案は2件、精神障害に関する事案は7件だった。

脳・心臓疾患に関する事案はいずれも専門業務型裁量労働制対象者で、精神障害に関する事案については6件が専門業務型裁量労働制対象者、1件が企画業務型裁量労働制対象者だった。

(調査部)