大企業勤務者の所定内賃金は36万4,500円、定年退職時の退職一時金は1,873万円
 ―中央労働委員会の「2021年賃金事情等総合調査」確報

国内トピックス

中央労働委員会がこのほど発表した「2021年賃金事情等総合調査」の確報によると、労働者が1,000人以上の企業における平均所定内賃金(労働者数による加重平均)は36万4,500円で、役付き手当の平均額は「部長級」が7万6,800円、「課長級」が4万7,200円となっている。2020年度の退職金支給額の平均は、「定年退職」では1,872万9,000円だった。

所定内賃金は前年から微減も、所定外賃金は1万円以上増加

調査対象は、資本金5億円かつ労働者1,000人以上に該当する企業から、中央労働委員会が独自に選定した380社。2021年6月末日現在について尋ね、234社から有効回答を得た(回収率61.6%)。

それによると、2021年6月分の平均所定内賃金は36万4,500円(前年比3,600円減)、製造業で34万8,500円(同1万800円減)。平均所定外賃金は6万1,800円(前年比1万円増)、製造業で6万1,000円(同1万5,800円増)となっている。

2020年7月~2021年6月の1年間に賃金改定があったのは、賃金表がある139社のうち45社(賃金表がある 企業を100とすると32.4%)で、労働者一人平均の賃金改定額(昇給分+ベースアップ分)は6,195円、率で1.94%だった。2020年7月~2021年6月に賃金のベースアップを実施した企業は、賃金表がある139社のうち41社(同29.5%)。ベースアップ分の額は493円(0.13%)で、前年の668円(0.24%)を下回っている。 なお、同時期で賃金カットを実施したのは全回答企業中、2社のみとなっている。

一方、2021年の夏季一時金(一人平均支給額)は、92万9,400円、月収換算で2.5カ月だった。

半数以上の企業で役付手当有り、支給額は「部長級」では約7万7,000円

「役付手当制度」を採用している企業は54.2%(集計166社のうち90社)だった。また、同制度を採用していない76社のうち、役付の場合に基本給で差を付けている企業が45社あった。なお、「役付手当制度」の採用状況について聞いた前回の2016年調査では、採用している企業は212社中120社だった。

役職別に役付手当の額(定額支給している額)をみると、「部長級」では7万6,800円、「次長級」では5万3,200円、「課長級」では4万7,200円、「課長代理・補佐級」では3万9,800円、「係長級」では2万4,000円となっている。いずれも、5年前の前回調査より数千円~1万円強、高い額となっている。

住宅手当の支給水準は増加

住宅手当の制度を採り入れている企業は93社(集計171社の54.4%)。「扶養の有無で支給額が異なる」企業をみると、「扶養あり」に定額で支給している場合の平均支給額は「借家・借間」で2万5,700円、「自宅」では 1万9,300円だった。ともに前回調査(2016年、集計222社の68.5%)の水準より上がっていて、「借家・借間」は5,100円、「自宅」も400円増えている。

実在者の22歳と55歳での年齢間賃金格差は2~2.5倍

男性の実在者(中途入社を含む)の平均所定内賃金を学歴、年齢別にみると、賃金のピークは「大学卒事務・技術」「高校卒生産」ともに「55歳」で、その額は「大学卒事務・技術」で56万5,600円、「高校卒生産」は38万500円となっている。

実在者の平均所定内賃金の年齢間格差をみてみると(22歳賃金に対する55歳賃金の倍率)、「大学卒事務・技術」で2.54倍、「高校卒生産」で1.93倍だった。

高卒事務の所定内賃金は55歳時点で大卒の77%の水準

実在者の平均所定内賃金の学歴格差についても算出している。大学卒事務・技術(総合職)を100とした場合、22歳時点で、「高校卒事務・技術」は90.7、「高校卒生産」は88.8となっており、格差は1割程度。一方、55歳時点では、「高校卒事務・技術」で77.6、「高校卒生産」では67.3で、格差は2割以上に拡大する。

退職一時金の平均は「定年退職」で1,872万9,000円

今回の調査では、退職一時金・退職年金についても聞いている(介護事業所以外)。それによると、退職一時金制度を採用しているのは89.8%(149社)。

退職一時金制度のある企業のうち、退職一時金の算定基礎に退職時の賃金を用いる企業の割合は14.8%で、それ以外を用いる企業が85.9%だった。退職時の賃金以外を算定基礎給とするとした企業のうち、79.7%は「点数方式(職能等級、勤続年数等を点数(ポイント)に置き換えて算定)」で、14.8%は「別テーブル方式(賃金と連動しない体系又はテーブルで算定)」となっている。

過去2年間(2019年7月~2021年6月)に、退職年金制度を変更した企業の割合は16.8%(27社)となっている。変更した年金の種類は、確定給付企業年金が11.8%、確定拠出年金(企業型)が9.9%など。

2020年度の退職金支給額を退職事由別にみると、「定年退職」で1,872万9,000円、「会社都合」では1,197万2,000円、「自己都合」は447万3,000円となっている。

男性定年退職者の退職金額を学歴、勤続年数別にみると、大学卒は勤続35年で1,903万3,000円、満勤勤続で2,230万4,000円。高校卒ではそれぞれ1,745万7,000円と2,017万6,000円だった。

いわゆる早期退職優遇制度(選択定年制)の適用状況についても尋ねている。制度があるのは50.6%(集計企業166社中84社)で、そのうち勤続年数の要件を定めているのは73.8%となっている。要件とする勤続年数は平均13.8年だった。制度の適用開始の年齢は「50歳」としているのが42.9%で最も多い。

制度のある企業の97.6%に退職一時金の優遇措置があり、優遇措置の内容は、「定年退職と同等に扱う」が51.2%、「退職時の年齢に応じて支給額を加算する」が47.6%、「実勤務年数に定年までの年数を加算する」が8.5%などとなっている。

(調査部)