ハラスメント対策に重点を置いて活動してきた労働組合の割合が2018年に比べ10ポイント近く上昇
 ――厚生労働省が2021年「労働組合活動等に関する実態調査」結果を公表

国内トピックス

厚生労働省は6月8日、2021年「労働組合活動等に関する実態調査」結果を発表した。労働組合活動において、重点を置いてきた事項では「賃金・賞与・一時金」、「労働時間(労働時間の適正把握を含む)・休日・休暇」、「組合員の雇用の維持」などの回答割合が高い状況は2018年の調査と変わらないものの、「セクハラ対策、パワハラなどハラスメント等対策」の回答割合が同年調査(13.8%)と比べ10ポイント近く増加した。メンタルヘルスに関する取り組みを「行ってきた」労働組合は64.3%となっている。

調査は、労働環境が変化するなかでの労働組合の組織及び活動の実態等を明らかにすることを目的として、毎年テーマを変えて実施しているもの。対象は、民営事業所における労働組合員30人以上の労働組合(単位組織組合並びに単一組織組合の支部等の単位扱組合及び本部組合)。一定の方法により抽出した5,083労働組合のうち3,319労働組合から有効回答を得た。

重点を置いた活動のトップは賃金などで、これに労働時間などが続く

労働組合活動において、これまで重点を置いてきた事項(5つまで回答)をみると、「賃金・賞与・一時金」が90.8%で最も高く、次いで「労働時間(労働時間の適正把握を含む)・休日・休暇」(76.9%)、「組合員の雇用の維持」(41.6%)、「職場の安全衛生(メンタルヘルスを含む)」(38.3%)、「定年制、継続雇用制度(勤務延長・再雇用)」(27.4%)、「セクハラ対策、パワハラなどハラスメント等対策」(23.5%)などとなっている。特に、「セクハラ対策、パワハラなどハラスメント等対策」の割合は2018年調査(13.8%)と比べ10ポイント近く増加している。

また、今後重点を置く事項(5つまで回答)についても、上位の順番は同じとなっており、「賃金・賞与・一時金」(76.3%)、「労働時間(労働時間の適正把握を含む)・休日・休暇」(67.3%)、「組合員の雇用の維持」(35.5%)、「職場の安全衛生(メンタルヘルスを含む)」(35.3%)、「定年制、継続雇用制度(勤務延長・再雇用)」(30.2%)、「セクハラ対策、パワハラなどハラスメント等対策」(26.1%)など。「セクハラ対策、パワハラなどハラスメント等対策」の回答割合は2018年調査(19.3%)よりも約7ポイント高くなっている。

9割以上が安定的な労使関係を維持

使用者側との労使関係の維持についての認識をみると、「安定的に維持されている」が59.0%、「おおむね安定的に維持されている」が33.8%。両者を合わせた、労使関係が「安定的」と認識している割合は92.9%にのぼり、2020年調査(89.9%)と比べ3.0ポイント増加した。

労働組合員数の変化の状況についてみると、3年前(2018年6月)と比べて組合員数が「増加した」は31.4%(2018年調査33.8%)、「変わらない」は25.8%(同23.9%)、「減少した」は42.7%(同42.1%)となっている。組合員数が増加した理由(複数回答)では、「新卒・中途採用の正社員の組合加入」が84.4%と突出して高く、「正社員以外の労働者の組合加入」(14.1%)が続く。

一方、組合員数が減少した理由(複数回答)では、「定年退職」(66.7%)、「自己都合退職」(65.0%)がともに6割台。このほかでは、「正社員の採用の手控え」が38.3%、「在籍する組合員の組合脱退」が17.4%、「会社都合退職(早期優遇退職を含む)」が13.3%などとなっている。

7割以上の労働組合が組織拡大を重点課題にせず

労働組合の組織拡大に関する状況についてみると、組織拡大を重点課題として「取り組んでいる」労働組合は26.7%(2018年調査29.6%)と3割弱で、「取り組んでいない」が73.3%(同70.1%)と7割以上にのぼっている。

取り組まない理由(複数回答)としては、「ほぼ十分な組織化が行われているため」が54.7%(同50.4%)と半数を超える一方、「組織が拡大する見込みが少ないため」が27.3%(同20.7%)と約3割にのぼる。

組織拡大の取り組み対象として特に重視している労働者の種類は、「新卒・中途採用の正社員」が41.5%で最も高く、次いで「在籍する組合未加入の正社員」(22.6%)、「パートタイム労働者」(13.6%)、「嘱託労働者」(10.7%)などの順となっている。

4割以上で正社員以外の労働者に関する労働協約の規定あり

事業所に正社員以外の労働者がいる労働組合について、労働者の種類別に「組合加入資格がある」とする割合は、「パートタイム労働者」が37.3%(2020年調査38.2%)、「有期契約労働者」が41.5%(同41.4%)、「嘱託労働者」が39.6%(同37.4%)、「派遣労働者」が6.6%(同6.1%)となっており、それぞれ2020年調査から大きな変化はない。

また、労働協約の規定の状況をみると、「労働協約に規定がある」は42.1%(2020年調査41.0%)。労働協約の規定を事項別にみると、「正社員以外の労働者(派遣労働者を除く)の労働条件」が34.7%(同33.8%)、「有期契約労働者の雇入れに関する事項」が28.3%(同27.2%)、「パートタイム労働者の雇入れに関する事項」が28.0%(同26.5%)などとなっている。

メンタルヘルスの取り組みでは「安全衛生委員会の調査審議」が6割超

メンタルヘルスに関する取り組みの状況をみると、これまで取り組みを「行ってきた」労働組合は64.3%。取り組み事項(複数回答)別にみると、「安全衛生委員会(衛生委員会も含む)の調査審議への参加」が63.1%で最も割合が高く、次いで「組合員を対象としたアンケート・面談等による実態把握」が55.1%、「労使協議機関、職場懇談会等での協議」が54.3%などとなっている。

また、今後取り組みを「行う」とする労働組合の取り組み事項別(複数回答)でも、「安全衛生委員会(衛生委員会も含む)の調査審議への参加」(58.8%)、「組合員を対象としたアンケート・面談等による実態把握」(54.5%)、「労使協議機関、職場懇談会等での協議」(51.6%)がいずれも半数を超えた。

「賃金制度の改定」には9割の組合が関与

単位組織組合及び本部組合における賃金・退職給付制度の改定に関する状況についてみると、過去1年間に組合員が所属する事業所において、正社員の賃金・退職給付制度のうち改定または導入が「実施された」事項は、「賃金制度の改定」が54.7%で最も割合が高く、次いで「退職給付算定方法の見直し」(25.9%)、「確定拠出年金制度や他の退職年金制度等の導入、移行」(22.2%)などとなっている。

各事項で改定または導入が「実施された」労働組合について、改定または導入にあたって「労働組合の関与あり」と回答した割合を事項別にみると、「賃金制度の改定」が92.2%、「退職給付算出方法の見直し」が75.3%「確定拠出年金制度や他の退職年金制度等の導入、移行」が61.1%。労働組合の関与の仕方をみると、すべての事項において「労使協議機関で協議した」が高くなっている。

また、正社員以外の労働者(派遣労働者を除く)の賃金・退職給付制度のうち改定または導入が「実施された」事項は、「賃金制度の改定」が34.6%、「退職給付制度の導入」が20.2%。改定または導入にあたって「労働組合の関与あり」と回答した割合を事項別にみると、「賃金制度の改定」が51.1%、「退職給付制度の導入」が29.4%で、労働組合の関与の仕方はいずれの事項においても「労使協議機関で協議した」が高くなった。

(調査部)