昨年の労働災害の死亡者数が新型コロナの影響で4年ぶりに増加
 ――2021年労働災害発生状況

国内トピックス

厚生労働省は5月30日、2021年の労働災害発生状況を公表した。労働災害による死亡者数が、新型コロナウイルス感染症による死亡者数の増加により4年ぶりに前年を上回った。

労災死亡者数は前年比8.1%、死傷者数は同14.3%増加

2021年1月~12月の労働災害による死亡者数は前年比65人増の867人(8.1%増)と4年ぶりに増加した。ただし、新型コロナウイルス感染症による死亡者を除けば778人で、前年の同784人より6人少ない。

死亡者数を業種別にみると、建設業が288人(前年比11.6%増)で最も多く、次いで製造業が137人(同0.7%増)、陸上貨物運送事業が95人(同9.2%増)などとなった。

休業4日以上の死傷者数は14万9,918人(前年比14.3%増)、と1998年以降で最多となった。

業種別では、社会福祉施設の死傷者の増加が目立つ

死傷者が多かった業種は、製造業の2万8,605人(前年比11.4%増)、社会福祉施設の1万8,421人(同38.8%増)、小売業の1万6,860人(同9.9%増)、陸上貨物運送業の1万6,732人(同5.8%増)、建設業の1万6,079人(同7.4%増)など。いずれも増えているが、特に社会福祉施設の増加幅が目立つ。

類型別の死者は交通事故以外で増加

事故の類型別にみると、死者は「墜落、転落」が217人(前年比13.6%増)、「はさまれ、巻き込まれ」が135人(同7.1%増)、「交通事故」が129人(同21.3%減)、「激突され」が62人(同14.8%)の順。交通事故(道路)を除き、対前年比で増加した。

死傷者では、新型コロナウイルス感染症へのり患による労働災害を含む「その他」が1万3,408 人(対前年比176.0%増)が突出して増えたほか、「転倒」の3万3,672人、(同8.9%増)「墜落・転落」の2万1,286人(同1.5%増)、「動作の反動、無理な動作」の2万777人(同8.7%増)、「はさまれ・巻き込まれ」(同3.1%増)などの順で多くなっている。

死傷者の4分の1が「60歳以上」

死傷者を年齢別にみると、全年代で増加している。特に「60歳以上」が3万8,574人(前年比10.4%増)で全体の約4分の1を占め、次いで「50~59歳」が3万6,576人(同13.9%増)、「40~49歳」の3万507人(同12.6%増)と、中高年層が続く。

新型コロナウイルス感染症による死亡者・死傷者が大幅増加

新型コロナウイルス感染症による労働災害死亡者数は、前年比71人増の89人(同394.4%増)、死傷者数は1万9,332人(同220.0%増)と大幅に増加しており、全体の数値を押し上げた。

また、厚生労働省は5月31日、2021年の「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」についても公表。2021年における職場での熱中症による死傷者(死亡・休業4日以上)は前年比41%減の561人で、全体の約4割が建設業と製造業で発生。熱中症による死亡者数は20 人(前年比10%減)で、死亡災害は8月に集中している。

(調査部)