パネル1:第15回労働政策フォーラム
副業はこれから拡大するか?—企業と働く人にとっての意味—
(2006年1月31日)

開催日: 2006 年 1 月 31 日開催

※無断転載を禁止します(文責:事務局)

配布資料(PDF:20KB)

パネリストからの報告1「兼職について」

NEC MCシステム企画本部人事統括マネージャー  但田 潔

ただいまご紹介に預かりました但田でございます。本日は、企業の事例ということで私どもNECの事例を簡単にご紹介させていただきたいと思います。

最初に人事制度について若干お話をさせていただきますが、当社では 1990年代以降、他の企業と同じく、成果主義を導入し、個人が自分のアウトプットを意識するような時代が10年ほど続きました。

2000年以降を私は、「キャリアの時代」と呼んでおりますが、個人が自分のキャリア形成を考え、企業と個人の関係を真剣に考えてもらうことを施策として展開しています。その結果、「ライフタイムキャリアサポート」というセカンドキャリアのような施策も90年代の終わりから積極的に取り組んでおり、そうした面でも、本日の兼業という問題は、個を考えるという視点から、また、そのような施策の一端を提供する会社の立場からも若干、関係があるかと受け止めています。

1.兼職を考えるポイント

(1) 誠実職務遂行の期待

当社で兼業、副業について考えるとき、貴重なリソースである社員には誠実に職務を遂行してほしいという意識がありますので、本業が疎かになることへの不安、拒否感が根強くあります。労務管理においては、従業員との信頼感やコミュニケーション、良好な関係が不可欠ですので、法的に兼業が可能かどうかの理屈とは別に、業務に専念してほしいという意識が前面に出てきてしまいます。

(2) 企業秘密の漏洩への対応

2点目は、企業秘密の漏洩に対して、最近、非常に過敏になっております。各企業ともCSR等に力を入れておられますが、企業機密・情報の漏洩は、個人のレベルでは済まずに企業自体が大きな危険にさらされる場合があり、それはどうしても兼業と結びつきやすいので、非常にセンシティブになっています。

(3) 難しい就業管理

3点目は、就業管理が非常に難しいことが挙げられます。届け出がないと把握できないものであったり、就業時間外に従業員が何をやっているか見えない、把握できないということで、非常に難しいと感じております。或いは就業時間内であっても、例えば、家にサーバーを置いてネット取引をする、サーバーが勝手に動いているという例も実際、聞いたことがあります。こうしたものは把握しづらく、どのように把握していくのかという点は議論になっています。

(4) 個別対応について

4点目は、就業規則で兼業を禁止しておりますが、実際、個別に対応いるケースもあります。特に、会社業務と全く関係のない兼業、例えば実家で会社を経営して役員に名前だけ貸すとか、あるいは学校で教えたり、NPOなどの団体で理事や役員をするなど、そうしたものについては実際、申請により認めております。ですから、個別に確認して特段問題がなければ拒否するものではありませんが、例えば、友人と企業を起こして当社と同じような業務をするということもあり得ます。そうしたケースについては、先ほどの情報管理、あるいは労働時間の問題からも、認めるのが難しいということになります。

(5) キャリア開発/ワークライフバランスの視点から

最後のポイントは、冒頭申し上げたように、キャリア開発/ワークライフバランスの視点から対応しているものが3つほどあります。一つ目は、「セカンドキャリア休暇」を創設して、 45歳以上の人が1カ月単位で最大2年間の休暇を取得できるようにしています。次のキャリアを見つけて挑戦したいという人は、会社に届け出て休暇を取るものですが、それについては兼職の緩和をしております。二つ目は、雇用延長との関係で、現在、56歳以上の管理職は、届け出れば週3日勤務、または週4日勤務が可能となっています。そうした人が兼職をする可能性は低くないと思いますが、週3・週4日労働を選択する人は現実に少なく、まだ全社でほとんどありません。とはいえ、雇用延長は今後の課題でもありますから、この可能性を広げていきたいと考えています。三つ目が、キャリア形成支援の視点から兼職緩和の要求が2004年、労働組合から持ち上がりました。

2.就業規則について

当社の就業規則は、従業員、パートタイマー、臨時従業員すべてに対して、「許可なく会社以外の業務に従事してはならない」という、非常にあっさりしたものになっております。実際には、届け出てもらい、個別に対応しています。

能力開発期間中の兼職制限緩和というのは、先ほどご紹介したセカンドキャリアという休暇を取得した人に対しては、他企業での試用就労や、起業のためのアルバイト修行――例えば居酒屋を経営したいということで板前の資格を取る実習とか学校に行くといったこと――は認めています。なお、この期間の厚生年金保険、健康保険、雇用保険は継続してNECに加入しますが、労災保険については兼職先で加入することになります。

3.労働組合の要求

2004年の春闘において、多様なキャリア形成を支援する諸施策の充実の一環として、兼職制限規程の改訂を労働組合が要求しました。会社側の回答について、労働組合は議案書の中で次のように述べています。

「多様なキャリア形成を支援する観点から改めて現行の考え方について確認を行いましたが、会社からは職務専念義務、秘密漏洩リスク、就業管理上の問題等の観点から、兼業を従来以上に前向きに認めることは困難であることの認識が示され、改訂には至りませんでした。今後は、今回示された考え方に照らして、個々の事例で問題があれば、労使で対応を協議していきたいと考えます」

最後に、社員の兼業・副業に対しては様々な可能性を考えていかなければならないと認識しております。今後、労働力が減るなかで人材確保の施策として活用するという議論もあります。ただ、本業のアウトプットや生産性の変動と、兼業との関係をどうやって測っていくのか、まだまだ悩ましい部分もあります。

簡単ではありますが、以上で私からのご説明を終わらせていただき、あとはパネルでお話ししたいと思います。

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