まとめ―今後の若年者雇用対策の方向性について
ジョブカフェ—若者の就職を支援するために—

開催日:平成16年9月17日

※無断転載を禁止します(文責:事務局)

【小杉】  パネリストの方には既に今後の計画をお伺いしましたので、厚生労働省から、今後、雇用対策をどうやっていくのか、ご説明いただきたいと思います。

【伊藤】  今後の若年者雇用対策の方向性、その中でのジョブカフェの位置づけについて、現時点での厚生労働省の考え方をごく簡単に触れさせていただきたいと思います(配布資料7ページ(PDF:1.9MB)参照。)

現在進めている若年者雇用対策の基本的な考え方は――今日も話が出ていますように実態は必ずしもそうではないのですが――働く意欲を持っている若者に対する能力開発、就職支援、これが今の若年者雇用対策の目的とするところです。若者自立・挑戦プランの目標として、「すべてのやる気ある若者の職業的自立を促進し」云々、こういったくだりに象徴的にあらわれていると思います。ただ、このフレームから外れているニートといわれる若年無業者の問題が社会的にも非常に注目されており、今後の若年者雇用対策にとって、ニートのサポート強化が、新たな重点になるだろうと思います。配布資料の「若者人間力強化プロジェクト」をご覧いただくと、来年度の概算要求に盛り込んでいる厚生労働省の事業が書かれておりますが、まさにそうした観点で立案されたプランになっています。

一つは、学校在学中からの職場体験の機会等を通じた職業意識形成支援の強化ということです。先ほど質問された方が話されていたようなベテラン層と若者をつなぐというアイデアも、こうした部分で生かしていきたいと考えています。また、ボランティア活動を通じた社会参加・社会貢献の意識を形成していくために、その活動実績を記録する「ジョブパスポート」を普及させていくことも取り組んでいきます。

それから、フリーターや無業者になっている方々に対する、自信・意欲の向上のための取り組みとして、新聞などでも報道されているような合宿方式による自立塾、あるいはヤングジョブスポットの機能の見直しなどを検討しております。こうした取り組みを通じて、働くことに対する意欲や準備がある程度整った方に対しては、ハローワークの就職支援強化など、従来の施策を充実させて対応していきたいと思っております。最終的には、若者あるいは若者を取り囲む各層も、この若年雇用問題の重要性や各自が果たす役割などを認識するために、啓発活動を展開していきたいと考えています。

配布資料8ページ(PDF:1.9MB)は、ジョブカフェに係る来年度の厚生労働省としての概算要求の資料です。ジョブカフェの設置数自体も若干増えそうですし、ハローワークの併設要望も上がっています。そうしたものに対応するための予算プラス、本日も関連する話が出ていましたが、大人が若者に支援するというだけでなく、事業の企画運営に若者が参加できるような、そういうスキームを提供していきたいと考えています。それから、ジョブカフェは原則各県1カ所ですから、遠隔地の方へのサービスという視点から、インターネットを活用したサービスの充実を各県が取り組んでいけるような措置も若干盛り込んでいます。もちろんこれからの予算の調整次第で最終的な結果は決まってくるわけですが、今申し上げた点を中心にジョブカフェの機能強化を図り、働く意欲がある若者、必ずしもそうとは言えない若者、より幅広い層に対してジョブカフェが大きなパワーを発揮できることを、我々は期待しております。

若年者の雇用支援という観点では、今後、ジョブカフェが直接事業を実施する以外の側面で様々なサポートが必要になってくると思います。経産省のモデル地域以外の県では能力開発的な取り組みはあまり行われておりませんので、デュアルシステムを含めて無料の訓練機会の提供の拡充を図っていきたいと考えています。小杉さんの講演の中に、無業と学歴の関係がありましたが、高校中退者などに対して、学習あるいは学歴取得の機会を提供する。そのサービス自体はジョブカフェでは出来ないかもしれませんが、少なくともそうした情報を発信する機能は、ジョブカフェもこれから大いに担っていくべきで、より間口の広いサービスを期待していきたい。

最後に、ジョブカフェに対する期待について付け加えさせていただきますが、昨今、政策評価の必要性が問われているなかで、少なくとも言えることは、ジョブカフェが、その地域のために具体的にどういう貢献をしていくのか、来所する若者に対して、あるいは地域の労働市場に、具体的にどういうインパクトを与えようとしているのかという目標自体が明らかでなければ、その効果を評価することはできません。ですから、これまでの数カ月の取り組みを踏まえつつ、各ジョブカフェが目指すものを改めて確認し、政策目標を念頭に置いた取り組みがなされることを、厚生労働省の立場からも大いに期待したいと思っております。

【小杉】  最後に私から一言だけ申し上げます。本年度の概算要求ベースですが、昨年度にさらに輪をかけて、厚生労働省分で440億円と、これまでにない水準になっており、国としても本腰を入れて動く体制になってきたと思います。ただ、現場は都道府県であり市町村であり、直接若者たちに向き合っている皆様方、コンサルタントの方々、そして現場で運営されている方々だと思います。私は、最後は人の力だと思っています。人を動かすのは人であると信じておりますので、これらの予算を背景に、皆様の力を目一杯発揮していただければと願っております。

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