現場報告2 若年就労支援機関における取り組み

講演者
山本 佳奈
アネシス学院株式会社若者就労支援部統括責任者
フォーラム名
第83回労働政策フォーラム「若者と向き合うキャリアガイダンス─若年の就職困難者支援の現場から─」(2016年1月25日)

私は、2009年にNPO法人育て上げネット(本部:東京・立川市)に入職し、就労支援に関わらせて頂くようになりました。ちょうふ若者サポートステーションの所長などの経験を経て2014年から育て上げネットでは非常勤職となり、アネシス学院若年就労支援部で統括責任者をしております。このアネシス学院は母が経営しており、創業当時は個別の学習塾を営んでおりました。個別学習の塾に通う子たちのなかには不登校の子などもおり、そうした子たちのために何かできないかということで、代表がフリースクールを始め、その後、通信制・単位制高校のサポート校を始めました。ほぼ同時期に、公共の職業訓練委託校として職業訓練を行うようになりました。

現在は、福島県から就労体験等事業(福島県南地区担当)、平たく言うとジョブトレーニング事業を受託しており、2013年度からは、厚生労働省の地域若者サポートステーション事業を受託し、ふくしま県南地域若者サポートステーションを運営しています。

また2015年度からは福島県の子ども未来局からユースプレイス自立支援事業を受託し、就労の前段階にある方の活動の場所として運営をしています。若者の就労を支援するこれら三つの事業を進めているところですが、アネシス学院ではキャリアカウンセラー、臨床心理士、支援コーディネーターなどが支援に関わっています。

相談に訪れる若者が抱える課題の特徴をいくつかの側面からご紹介したいと思います。

まず知識やスキルにおける課題として、就職活動の仕方や段取りがわからなかったり、一度仕事に就いたが離職してしまい、ブランク期間があるため悩んでいるといった特徴が窺えます。自己理解の面では、自分の得意・不得意が整理されていない、経験や能力に合わせた仕事内容や労働条件のマッチングの仕方がわからない等です。

社会性・コミュニケーションの点では、人と接することに自信が持てない、過去に仕事の経験はあっても人間関係などのトラブルを経験し、再び働くことを躊躇してしまっている等がおおよその傾向として見られます。

次に、就労支援のプロセスをご紹介します。来所頂いた方には、まずインテークを行い、これまでのことやお困りごと、今後のご要望などを伺い、アセスメントを行いながら必要な支援プログラムを組み立てます。

支援計画については、クライエントから頂いた情報を整理し、課題を分析したうえで作成します。ご本人の課題を解決するために必要な支援が不足している場合は、他機関とも連携する場合があります(一つの機関では全ての支援メニューを担保することはできないため)。

また、個人の特性に応じた支援をしていくため、アセスメントツールを活用することがあります。

ここで、アセスメントツールを利用した支援事例を一つ紹介します。20代男性で、大学在学中に内定が出ず、地元へ戻り就職活動を開始したがうまくいかず来所しました。アルバイトの経験は多少あるものの、自分の得意・不得意がよくわからず、応募条件の整理の段階で迷っていました。

GATBで自分の適性を見ることを提案したところ、客観的に自分の職業適性を考えるきっかけをつくることができました。GATBは自身の職業適性を見るだけでなく、過去の経験などと結び付けて結果を振り返ることができます。例えば、アルバイトでこういうところでよく怒られていたというようなエピソードと、適性脳プロフィールの結果を照らし合わせてご本人と一緒に振り返ったりするのです。

アセスメントツールを使用するうえで大切にしていることは、どういう目的でどんなツールを使用するのかということや、最終的な実施の判断は本人に決めて頂くということです。

次に、支援現場で大切にしていることは、就労支援のマップを広く持ち、自分たちの就労支援機関で補えない支援は他機関と適宜連携するということです。私どもでは、キャリアカウンセラー、ジョブトレーニング担当者、臨床心理士など、あらゆる視点からケース検討を行って、支援計画を立てます。支援計画がスムーズにいくときもあれば、そうでない場合もあります。そういった場合は私たちも焦らずご本人と一緒にどういったことが必要なのかということを考え、試行錯誤しながらご本人の意思決定を支えるよう伴走的な支援を行えるよう心掛けています。

プロフィール

山本 佳奈(やまもと・かな)

アネシス学院株式会社若者就労支援部統括責任者

福島大学大学院教育学研究科学校臨床心理学専攻臨床心理領域卒業。臨床心理士。大学院卒業後、一般企業に勤務。2009年NPO法人育て上げネット入職。たちかわ若者サポートステーション、ちょうふ若者サポートステーションにて所長を務め、若年無業者のキャリア形成支援に携わる。2014年、同法人の非常勤職員となる。アネシス学院株式会社にて若者就労支援部の管理業務に従事する傍ら、臨床活動を行っている。