パネルディスカッション
女性活躍新法と企業の対応

佐藤 パネルディスカッションを始めます。進め方ですが、企業の事例報告の内容を中心に、パネリストの皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

女性の登用を経営戦略として推進

佐藤氏

最初のテーマは、管理職への女性の積極的な登用です。先ほど、矢島主席研究員が指摘されたように、これには女性を育成しながら積極的に登用の機会を与えることと、女性にとって有利な形で登用することの二つの考え方があり、それぞれに留意すべき点があります。その点について、まずLIXILの成田室長にお聞きしたいと思います。

成田 当社の女性管理職の登用ですが、現社長が着任してすぐに着手しました。「女性の能力が活用されていない。我々のビジネスは女性が決定権を持つ商材を多く扱っている。にもかかわらず、これでは女性の意見が反映されない。これはビジネスチャンスを失っているようなものだ」。当時、女性社員は全社員の約23%で、メーカーとしては少なくない比率です。ただ、業務上の役割が男女で明確に分かれており、女性は活躍の仕方が限定されていました。いろいろな場面に女性がまざっていなければならないと考えた時に、最も手を打つべきポイントが管理職でした。そのようなことから、女性管理職の登用を経営戦略として積極的に進めることになりました。

背伸びして届くぐらいの役割を

成田氏

始めた当初は、女性を無理に引っ張り上げることで男性のモチベーションが落ちるかもしれないといった意見がありました。女性も、若年層はやる気満々ですが、勤続年数の長い人は、「今さらそんなことを言われても」とか「私たちはそういう訓練を受けていないし、その気もない」等と考える人もいました。そこで、HRのトップが、「これは当社の戦略であり、今やらなければ永遠に変われない。女性は能力を発揮する機会が無かっただけで、能力は十分にある」とあらゆる機会、場面でメッセージを発しました。登用に当たっては、女性が活躍できる事をまず示さなくてはならず、パフォーマンスを周囲が認めることで取り組みがフィットしていくであろうことを想定しました。具体的には、あえて少し大変なチャレンジをさせて、それを男性リーダーがしっかりサポートする。パフォーマンスが発揮できた上で登用していくなど、周囲の理解も得ながら進めています。

佐藤 一気に登用するのではなく、その前に男性上司のサポートもつけながら、本人が背伸びすればどうにか届くぐらいの役割を与えるわけですね。あまりに高いハードルを課すと本人も困ってしまうので、これはとても大事なことだと思います。矢島さんは、LIXILの取り組みを見て、どのように感じられましたか。

性別問わずチャンスを与えて評価する

矢島 女性のポジティブ・アクションに踏み込むには、経営戦略としての必要性をきちんと示すことが重要です。LIXILの報告を聞くと、やはりそこに配慮されていることがわかります。

矢島氏

さらにもうひとつ、気づいたことがあります。LIXILの業務実績を見ると、採用数やシックスシグマのプロジェクトリーダーの数が、2013~14年にかけて大きく増えているようです。これによって、男性にもチャンスを与えつつ、会社全体として採用やプロジェクトリーダーの女性比率を上げていくことが可能になっていると思います。もちろん、会社としての成長がある中で、可能となっている面もあるかと思いますが。

成田 矢島先生が仰ったように、当社はやる気や能力がある人には公平に機会を与えます。そのような中で女性にもしっかり目を向けようということです。女性は能力があっても、自らは手を挙げない人も多いので、少し背中を押すようにします。男性も、女性にフォーカスしているからといって、やる気のある人が能力を発揮できないようなことはありません。パフォーマンスを発揮した人は性別を問わず、評価されています。

消極的な女性からもモデルケースをつくる

佐藤 女性の活躍を経営戦略として進めると決めた時に、「やっといい機会が来た」と受け止める女性がいる半面、「えっ、今ごろ?」という女性もいたとの話がありました。女性社員のなかにも温度差があったわけで、そのあたりの対応はどうされたのでしょう。

成田 従来消極的だった人たちを積極的に引き上げ、モデルケースをつくりました。すると、以前は「管理職=何か特別な人」と思っていたような人の中に、「自分もできるのではないか」との思いが芽生えるようになりました。

佐藤 女性のなかにもいろいろな考え方があり、会社が女性の活躍推進に取り組むことをよいと思う人ばかりではありません。だからといって、その人たちが悪いわけではなく、会社として今までそのような活用の仕方をしてきたことが根底にあります。

矢島 今、女性社員への研修の要望が多く寄せられていて、特に管理職一歩手前の層を対象に研修を行う時に、二つのタイプの課題があります。

一つは、女性のみを対象に研修を行うことについて、参加者から強い反発を受けることがある点です。反発の内容を分析すると、「私たちは男性と同じように仕事をしてきているのだから、『女性のみ』といった扱いをしないで欲しい」というものや、「この会社は長時間労働を始め、男性主体の働き方やマネジメントが問題なのに、女性の活躍が進まない理由を私たちの意識の問題かのように研修をするのはおかしい」といったものです。女性社員に働きかける時は、管理職にも同時に行うべきですし、労働時間等他の重要な問題にも取り組むべきです。それができていないとこうした反発を招き、出口が見つかりにくくなることがあります。

もう一つの課題は、佐藤先生が指摘されたように、これまで一般職だった人や、そういった区分はなくても男性と異なり女性は同じ仕事をずっと続けるという企業風土で働いてきた人に、いきなり「キャリアアップを目指しましょう」とすることの難しさです。こうした人たちへの働きかけは難しく、いきなり管理職うんぬんではなく、一つ上の仕事を目指すとか新しい仕事にチャレンジする意欲を促します。成田室長が話されたように、今までは管理職にならないと思っていた人たちの中からモデルを出すのが、最良のロールモデルになると思います。

佐藤 永田統括研究員は、このあたりのことで何かお考えがありますか。

永田 報告でも述べましたが、管理職自体を魅力的なものにしていくことが、意欲の面で大きな影響があると考えています。もう一つあるとすれば、女性の仕事に対する意欲に一番影響しているのは、やはり家事責任だと思います。ですから、男性社員側の意識変革もあわせて取り組むことが重要ではないでしょうか。

人事部門も巻き込んだ意識改革を

佐藤 では、次のテーマに移りたいと思います。「女性の活躍」や「働き方改革」を一歩進めようとすると、人事部門による制度の運用の見直しや改革の取り組みが凄く大事になってきます。ダイバーシティの推進というと、研修や職場風土変革等の取り組みが主になります。しかし、例えば、昇進・昇格や人事配置、管理職登用の基準等をどう変えていくかなどといった人事制度の核心にも手をつけないと、「女性の活躍」や「働き方改革」が進んでいかないのです。とはいえ、一般的に人事部門は非常に保守的で男性が多く、仕事中心の働き方をしている会社が少なくありません。そういう人事部門を巻き込んで、意識改革も進めてもらうにはどうしたら良いのでしょうか。

 当社では、2014年7月に事業構造改革があり、ドコモグループ全体のフォーメーションを大きく変えるとともに、人員配置についてもお客様により近いフロント部門へと大幅にシフトしました。グループ会社自体の統合もあって、当時は新たな組織における役割や、組織間連携の再構築など多くの課題が生じました。

本氏

そこで、人事部としてグループの一体感や士気を高めていくことを推し進めていかなければならないという気風ができ、同時に前社長からは「社会的課題となっている“少子化問題”に対し、責任ある企業として、何か解決できないか」といった話もあり、人事部内において部門の垣根を超えた検討プロジェクトを立ち上げました。人事部の各部門から代表メンバーを選出し、プロジェクトメンバーとして一緒に検討を重ねる中で、世の中の動きも含め、「女性活躍推進」や「働き方改革」の本当の意味やその重要性について、メンバー全員が共通認識を持つことができ、これまでにない新しい支援策や施策を形にすることができたと実感しています。その中から生まれてきたのが、先ほどの事例報告でご説明した女性社員の活躍支援やメリハリのある働き方の施策です。

成田 事例報告で、「当社は国内住宅設備・建材メーカー5社が統合した」と話しましたが、それに加えて社長とHRトップがGE出身者ですので、実際には六つの考え方の違いが生じました。その中で、唯一ダイバーシティの有効性を実感している社長とHRトップが自分たちの経験を踏まえ「女性の活躍は当たり前に必要なことだ」と説き、それに人事部門が組織を挙げて動いたことで現在の結果に繋がっていると思います。

多様な人材が働ける環境づくりに注力を

佐藤 ダイバーシティ経営あるいはワーク・ライフ・バランスシェアを実現させるには、採用から定年退職までの人事制度全体を見直す必要が生じてくると思います。人事は、伝統的に公平を重視し、できれば全ての社員を同じ様に扱うことになりがちです。しかし、ダイバーシティ経営では、違うものは違うように扱うことが実は公平になるのです。

例えば、人事制度の見直しでは、夏の賞与は4月1日を基準日にして、その日に在籍しているか否かを支給要件にしている会社がまだ多く残っています。これは、社員が休業を取得することを想定していないからです。また、育児休業を1年取得した人や短時間勤務する人の評価はどうすべきなのでしょう。その点、女性活躍推進法の現状把握と行動計画の立案の段階では、こうした点について、かなり見直しを行わなくてはならないようにも思えます。各社の取り組みの現状はどんな感じなのですか。

矢島 問い合わせが多いのは、課題分析のデータをどういう風に取れば良いかといったもので、数字を取ること自体がネックになっています。ただ、遡って数字を取ったりグループ会社も含めた全体の数値を見ることで、今までは見えていなかった問題が見えてくるようになります。そして、これまで「意欲的な女性がいるか否か」といった感覚的なイメージだけで語られていた女性の活躍の問題が、実際に数値を見ることで構造的な課題として整理され、人事としてやるべきことが浮かび上がってくると思います。

また、女性の意欲や意識は研修を行えば、短期的には比較的すぐに高まります。これが下がってしまう根本的な原因は、やはり時間的な制約があるなかで多少頑張っても評価されないとか、キャリアアップもできない仕組みがあるからです。実際、一般社員の目標設定と評価の納得感も得られていない会社が多いなかにあって、短時間勤務の目標設定・評価といっても凄く難しい。そういう人事制度そのものやその運用における問題があって意欲が持てないということを認識したうえで、中長期的な視点で多様な人材が働ける環境づくりに力を入れてもらいたいと思います。

女性の積極採用とともに雇用の安定も

佐藤 三つ目のテーマは、職場の風土改革です。武蔵境教習所は、今でこそ男女関係なく、社員全体が顧客視点で仕事に意欲的に取り組む風土づくりができていますが、過去を遡れば、恐らくはそうではなかったのではないでしょうか。男社会の職場風土を変えてきた経緯について、インストラクター等、女性の職域拡大を実施してきたことも踏まえてお話いただけますか。

稲益氏

稲益 出発点は、女性に安心して通っていただける教習所をつくろうと、教育業からサービス業に意識改革したことです。男性職場で男性が集まる場所といった教習所のイメージを払拭し、女性に安心して通ってもらえるようにするために、1992年から女性を積極的に採用してきました。女性のインストラクターも徐々に増え、今では80人いるインストラクターの約3割が女性で、おそらく都内最多になりました。

また、2005年には、社員の雇用を守ることも進めようと、全社員の正社員化を実施しました。それまでは有期の契約社員が多く、労働時間を長くすることに意識が向いていましたが、正社員化に伴い、教習やサービスの内容が充実するようになりました。

その内容については、お客さまの卒業時にアンケート調査を行い、トップから80番までランキングが出る形にしました。すると、上位の約半数を女性インストラクターが占めて、男女の差はありませんでした。また、評価はお客さまのアンケート結果だけでなく、担当したお客さまの教習時間がどのぐらいかかったかも見られるようになっていて、そこでも特に男女の差はなく、むしろ女性インストラクターが担当した方が短時間で卒業していたりもします。

佐藤 実際に働いている時間も、女性の方が短かったりするのですか。

稲益 はい。女性インストラクター及び受付スタッフのなかには子育て中の女性が6人いることもあって、平均時間は短くなっています。現場のインストラクターで見ると、男性の平均労働時間が月220時間程、女性は約180時間です。

トップのコミットメントを得るカギは

佐藤 今日、事例報告のあった3社は、いずれもトップのコミットメントがあることが共通しています。「女性の活躍」や「働き方改革」に取り組むためには、トップのコミットメントの重要性がわかるわけですが、それは決して簡単なことではありません。トップのコミットメントを得られるカギになるものは、どういったことが考えられますか。

永田氏

永田 例えば、次世代法では「くるみん」が有能な女性の採用に最も効果があったと考えられています。そういった効果の部分をトップ層に訴えるなどして、会社の中の意識改革に繋げていく方法があると思います。

佐藤 確かに「法律で決まったので、やらなければならない」というのが一つの説得材料になると思います。それ以外にはいかがでしょうか。

矢島 この質問を受けることは、本当に多くあります。ポイントの一つは、人事から経営陣にデータを示すことがあると思います。特に従業員の構成を見て、「今後のどれだけ炯炯人材が不足するか」を理解してもらう必要があります。また、「採用において女子学生だけでなく男子学生を採ることも難しくなっている」「女性社員を受け入れられない現場がまだある」等の実情をトップに伝えて、問題が単純でないことを理解してもらうことが大切です。もう一つのやり方としては、他社の経営トップの話を聞いてもらうことも効果的です。

 当社では、役員や社外の著名人等を講師に招き、定期的に「ダイバーシティフォーラム」を開催しています。テーマは特に定めておらず、直面している課題や旬な話題など、その都度気になっていることを取り上げています。それぞれのテーマに関わる社員や管理職に参加してもらい、日常では接することのできない様々な考えや意見に直接触れることで、“新たな気づき”を与えていくことも効果的だと考えています。

成田 当社ではダイバーシティについて社長、HRトップが積極的で推進者の私が煽られるぐらいです。浸透させていくにはトップのコミットメントを受けて幹部層が各事業部でどのように推進し続けてくれるかということがポイントになります。そこで事業部の取り組みを「見える化」して情報を共有したのですが、良い意味で競争が生まれ推進力が高まりました。「巻き込む力」は重要ですね。

佐藤 トップはコミットしているけれど、その下を見ると温度差があることは少なくありません。そのため、NTTドコモやLIXILのようなやり方をするのも大事なことだと思います。

キャリア形成を見据えた上司とのコミュニケーションを

あと一つ、議論したいと思います。女性の活躍の場を拡大していくには、次世代法で取り組んでいたような両立支援も不可欠です。ただし、ただ長く働き続けられればよいわけではなく、活躍することが求められます。そういう意味では、育児休業や短時間勤務をちゃんと利用してもらいながら、自らの将来のキャリアを考えて、無理なくできるだけ早くフルタイム勤務に復帰してもらうことが必要になってくると思います。

成田 キャリア形成については以前行ったアンケートで、育児休業に入ってから考えるのでは遅いことがわかりました。そこから見えてきたのは、妊娠がわかったときから上司とコミュニケーションを取り、今後の働き方や要望等について話し合い、双方で考えることで、本人の意識と覚悟が固まるということ。時期が来たので休み、復帰しようと思った時に待機児童の問題が立ち塞がったのでは、自分のキャリアを主体的に考える機会がなくなります。

男性上司から「今後どうやって働きたいか聞き難い。聞いてよいものなのか?」という声が聞こえてきます。また、「休業中もコミュニケーションを望んでいた」女性と、「休業中に連絡したら悪い」と思い控えていた男性上司とのコミュニケーションミスがあることも分かりました。それならば、復帰してくるまでコミュニケーションをスムースにすることでそういったミスマッチを減らし、キャリアを考えることを支援する仕組みをつくろうと現在取り組み中です。本人が「自分の人生を積極的に考える」ことにフォーカスしていきたいと思っています。

フルタイムへの早期復帰を目指す

 当社は2015年4月から育児休職を取得する場合には、事前に上長・本人・人事部で三者面談を行い、休職前から復帰後の働き方等を考えてさせ、当事者意識を持ってもらう機会を設けています。

また、復帰前のタイミングには上司との面談を徹底しています。ここでは、上司から「あなたには復職後、こういう仕事をしてもらおうと考えている」、「工夫すればこのような働き方ができないだろうか」といった動機付けを行っています。あらかじめ心構えを持ち、“働くイメージ”をしっかりと描いておくことで、不安感の払拭にも繋がり、安心して復職することができています。

また、復職後には再度三者面談を実施し、育児と仕事とを問題なく両立できているか確認する機会も設けています。その際には、人事部から上司に対し「育児中だからといって過度に考慮したりせず、むしろ大変な時こそチャレンジングな仕事をすることでさらに成長できる。上司として部下の成長を考え、意識してチャレンジできる仕事を与えてほしい」旨を必ず伝えています。

もう一つ、育児との両立を支援する制度として短時間勤務制度を設けています。

当社では、子どもが小学校3年生まで短時間勤務の選択が可能ですが、いつの間にか期間中であれば短時間勤務で働くことが当たり前といった風土ができあがっていました。

そこで、短時間勤務からフルタイムに戻した社員に協力してもらい、短時間勤務者に対して「こんな風に生活を整えれば、フルタイムに戻しても育児と両立することができる」といった経験者の声を直接伝える機会を設けています。

矢島 調査をしていると、本人よりも上司が配慮し過ぎて、楽な仕事をさせてしまう傾向の方が強いようです。つまり、働きかける時も、本人にだけ「もっと頑張りましょう」と言っても何もならず、本人と上司の双方に職務設計をしてもらうことが大事です。その時によく言うことは、「短時間勤務になったからといって、正社員であることと、これまでの役割等級であることに変わりはない。これからも成長できるよう育成の必要もあるので、それを忘れないで欲しい」ということです。短時間勤務を取得することで、上司も当人も何か特殊なポジションにあると考えてしまいがちなので、「そうではない」ということを互いに認識してもらって話し合うことが大切だと思います。

なお、フルタイムに戻る意欲を持つことはとても大事ですが、会社側の取り組みとして、まず、短時間勤務自体の仕事の質を上げることの重要性も指摘しておきたいと思います。

永田 今日、報告した調査の一つ前に行った調査で、「育児休業等からの復帰では、フルに使ってしまう人より、早期に復帰した人の方が昇進意欲が高く、実際に昇進している割合も高い」という結果が出ています。可能ならば、そういった実態と管理職になることのメリットを示しながら早目に復帰してもらい、サポートもしていくことが大切だと思います。とはいえ、その一方で、どうしても休業期間をフルに取得することが必要な人もいます。そういう人についても、やる気を削がないような人事管理を行うことも併せて大切だと思っています。

配偶者も巻き込んでキャリア形成を考える

佐藤 短時間勤務の人に、「いつまで短時間勤務を使うのですか」と聞くと、その会社の上限まで使いたいと答える人がほとんどです。それが悪いという意味ではありません。自分のキャリア考えた結果、そういう回答であれば問題ないのですが、そうではないことが多く、そこが問題なのです。妊娠・出産から産休を取り、育休を取り、短時間勤務を終えてフルタイムに戻った後、どうするのかを早目に考えることが必要です。そのためには、上司が「無理に戻れ」ではなく、「早く戻って活躍して欲しい。期待している」ということを伝える必要があるでしょう。

もう一つは、夫やパートナーがいる場合には、やはり夫婦でどう子育てするかを考えるべきです。調査によると、短時間勤務を長く活用している女性の夫・パートナーは、長時間働いているケースが実は多いのです。これは、夫・パートナーは、妻が短時間勤務なのだから、1人で仕事と子育てを両立できると思いがちなことも関係します。女性には、配偶者も巻き込みながら、いつ仕事に復帰し、自分のキャリアをどのように築いていくかを考えてもらうことが大事です。

両立支援と活躍支援は、車の両輪として進めていくことになります。そういう意味で、女性活躍推進法をうまく使って、社内の働き方改革や女性の活躍を進めるきっかけにして欲しいと思いますし、今日の報告や議論をその参考にしていただければと思います。本日はどうもありがとうございました。